最近の読書は活字ばっかりですが、基本的にマンガ好き。
セーラームーンからこち亀まで、ドラゴンボールの連載終了までは
結構なお金と時間をマンガに費やしていました。
が、今読み直してみると「面白いけど、これが何になるの?」という気がするから不思議。
が、今読み直してみると「こんなにいい本だったんだ」という気がするのはこの本だけです。
連載開始当時、手塚治虫はスランプでした。
そのときはやっていたのは「劇画」といわれる、臨場感のあるマンガ。
主に、暴力シーンや戦いをリアルに描くスタイルでしたが、
戦争を経験した手塚には「子どもにそんなものを読ませるべきではない」
という信念があり、劇画は描けない。だから売れない。
この時期の手塚マンガは本当に面白くない。
作中「大衆に迎合すべきか、それとも自分の信念を貫くべきか」と主人公がこぼしたりもします。
これは本人の叫びなのかもしれません。
そんな中、必死に考えて「これで最後」と思い、描いたのがこの作品。
一話完結のスタイルは手塚初の試みで、読者のためです。
劇性やリアルな人体の描写も読者のため。
ブラックジャックの性格や恐怖感も読者のため。
いろいろと売れる仕掛けを作ったのでしょう。
でも、メッセージは全然迎合していない。
人を生かすことにひたむきなブラックジャックの姿。
最後には丸く収まる水戸黄門的なお話ではありません。
1%でも可能性があるなら、手術する。助けるためには危険も冒す。失敗もする。そして努力もする。工夫もする。
ものすごく当たり前の大切なことを、面白く、知らず知らずのうちに伝える巧さ。
伝えるメッセージの力強さ。
むかし読んだときも、今読んでも、きっと将来読んでも、思うことは一緒だと思います。
天才外科医のブラックジャック。
しかし一番の天才は、手塚治虫その人でしょうね。