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『BlackJack The best 12 stories』(手塚治虫/秋田文庫)

2007-11-24 21:55:40 | 手塚治虫



最近の読書は活字ばっかりですが、基本的にマンガ好き。
セーラームーンからこち亀まで、ドラゴンボールの連載終了までは
結構なお金と時間をマンガに費やしていました。

が、今読み直してみると「面白いけど、これが何になるの?」という気がするから不思議。

が、今読み直してみると「こんなにいい本だったんだ」という気がするのはこの本だけです。


連載開始当時、手塚治虫はスランプでした。
そのときはやっていたのは「劇画」といわれる、臨場感のあるマンガ。
主に、暴力シーンや戦いをリアルに描くスタイルでしたが、
戦争を経験した手塚には「子どもにそんなものを読ませるべきではない」
という信念があり、劇画は描けない。だから売れない。

この時期の手塚マンガは本当に面白くない。
作中「大衆に迎合すべきか、それとも自分の信念を貫くべきか」と主人公がこぼしたりもします。
これは本人の叫びなのかもしれません。

そんな中、必死に考えて「これで最後」と思い、描いたのがこの作品。
一話完結のスタイルは手塚初の試みで、読者のためです。
劇性やリアルな人体の描写も読者のため。
ブラックジャックの性格や恐怖感も読者のため。
いろいろと売れる仕掛けを作ったのでしょう。





でも、メッセージは全然迎合していない。





人を生かすことにひたむきなブラックジャックの姿。
最後には丸く収まる水戸黄門的なお話ではありません。

1%でも可能性があるなら、手術する。助けるためには危険も冒す。失敗もする。そして努力もする。工夫もする。




ものすごく当たり前の大切なことを、面白く、知らず知らずのうちに伝える巧さ。
伝えるメッセージの力強さ。


むかし読んだときも、今読んでも、きっと将来読んでも、思うことは一緒だと思います。




天才外科医のブラックジャック。

しかし一番の天才は、手塚治虫その人でしょうね。

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