ある音楽人的日乗

「音楽はまさに人生そのもの」。ジャズ・バー店主、認定心理カウンセラー、ベーシスト皆木秀樹のあれこれ

この胸のときめきを

2017年08月07日 | 名曲

【Live Information】


 ダスティ・スプリングフィールドは、1960年代を席巻したシンガーのひとりです。
 ダスティの代表曲としてまず挙げられるのは、1963年に一躍彼女の名を知らしめた「二人だけのデート(I Only Want To Be With You)」、そして「この胸のときめきを(You don't have to say you love me)」でしょう。





この胸のときめきを/You don't have to say you love me
■シングル・リリース
  1966年3月25日
■作詞・作曲
  ピノ・ドナッジオ & ヴィトー・パラヴィッチ/Pino Donaggio & Vito Pallavicini
■英作詞
  ヴィッキー・ウィッカム & サイモン・ネピアー-ベル/Vicki Wickham & Simon Napier-Bell
■プロデュース
  ジョニー・フランツ/Johnny Franz
■チャート最高位   
  1966年週間チャート  アメリカ(ビルボード)4位(7月)、イギリス1位(4月)
  1966年年間チャート  アメリカ(ビルボード)35位


 ホーンとコーラスを大胆に使ったイントロがまず印象に残ります。
 テーマに入った時のダスティの歌声が実に伸びやか。
 そして美しいメロディ。
 マイナーからサビでメジャーに転調するのにもまた心を揺さぶられます。(同じパターンとしては、ジャニス・ジョプリンの「コズミック・ブルース」などがありますね)
 テンポはアダージョ、リズムはいわゆる3連ノリ(8/12拍子)で、ホーン、コーラス、ストリングス、ティンパニを効果的に使ったアレンジと相まって、曲はダイナミックなものに仕上がっています。
 特筆されるのは、なんといってもダスティのスケールの大きな歌でしょう。
 オーケストラを向こうにまわしても全くひけをとらない、堂々とした歌いっぷり。歌唱力、表現力とも素晴らしく、メロディの良さを存分に引き出しています。


 


 もともとこの曲は「Io Che Non Vivo (Senza Te)」(私はあなたなしでは生きられない)というタイトルのカンツォーネでした。作者のひとりであるピノ・ドナッジオが1965年のサンレモ音楽祭で歌ったのをきっかけに、イタリアチャートで1位になりました。
 1970年には、"ロックンロールの帝王" エルヴィス・プレスリーがカヴァー、全米11位、全英9位の大ヒットを記録して劇的なカムバックを果たしたことでも知られています。


 ダスティは、「ラナ・シスターズ」でデビューしたのち、二人の兄と組んだ「ザ・スプリングフィールズ」の一員として活動していました。
 ソロとなったのは1963年。
 ソロ・デビューの曲が、ポップス史に残る名曲で、のちベイ・シティ・ローラーズがリバイバル・ヒットさせた「二人だけのデート」です。これが全米12位、全英4位の大ヒットを記録し、ダスティは一躍イギリスを代表するシンガーとなったわけです。


 


 1965年のサンレモ音楽祭に出場したダスティは、「Io Che Non Vivo」を聴いた時に思わず涙をこぼすほど感動し、ぜひこの曲を歌いたいと強く思ったそうです。
 英語詞は、プロデューサーのV・ウィッカムと、ウィッカムの友人でヤードバーズのマネージャーだったS・ネピアー-ベルの共作ですが、ふたりともイタリア語はわからないため、原詞にとらわれず作詞したということです。
 元は「夜ごとふたりはここにいるけれど、君は『別れよう』といいたいのだろう。聞いてくれ、胸のときめきを。君なしでは生きていけない。君は僕のものだ」という、秋風が吹くようなふたりの関係をやり直したいという思いがこもった情熱的な歌詞でしたが、英語詞では「あなたが去って私は今ここにひとり。愛しているなんて言わなくていいからただそばにいて。愛さずにはいられないの」と、去っていった恋人を想う歌詞になっています。
 どちらにしても、心のうちをほとばしらせるような、ストレートな内容です。


 ダスティはルックスはアイドルばりでしたが、歌唱力にも定評がありました。
 歌そのものの技術の確かさに加え、感情表現やしぐさまで含めた歌詞を伝える力は、まさにイギリスのポップ・クイーン。
 1963年から1989年にかけて、アメリカで6曲のトップ20ヒット(11曲のトップ40)、イギリスでは16曲のトップ20ヒット(19曲のトップ40)を出しています。
 のち英米両国で「ロックンロールの殿堂」入りも果たしたほか、「ローリング・ストーン誌の選ぶ歴史上最も偉大な100人のシンガー」において第35位、「Q誌の選ぶ歴史上最も偉大な100人のシンガー」においては第29位に選出されています。
 本国イギリスでは、大英帝国勲位(OBE)が授与されています。
 歌唱力ばかりでなく、アレンジやセルフ・プロデュースにも意識を持っていたようです。それに加えてブルー・アイド・ソウル・シンガーの第一人者としても認められていましたし、ファッションでも積極的に自己表現していました。
 言ってみれば、60年代イギリスのトップ・ランナーのひとりだったわけです。


 


 1986年、ダスティとのコラボを強く希望したペットショップ・ボーズがレコーディングを行いました。
 録音された「What Have I Done To Deserve This?」(邦題:とどかぬ想い)は全米、全英とも2位まで上昇する大ヒットを記録、これによりダスティは劇的なカムバックを果たしました。


 のちダスティは乳癌と診断され、1999年に59歳で亡くなっています。



 【「この胸のときめきを」訳詞】


 






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