小島教育研究所

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Pythonで機械学習を学ぶ前に知っておきたいこと

2021-05-22 | コンピュータよもやま話

AI(人工知能)開発をするならPythonと機械学習の習得は必須項目ですよね。これまで開発された多くのAI(人工知能)にはPythonと機械学習が使用されています。

AI(人工知能)の開発を行うためには、AI(人工知能)の中心技術である機械学習ができることが必須です。その機械学習を最も効率的にできる言語が、Pythonです。そのためAI(人工知能)開発をするならPythonで行う機械学習の習得が必要です。

そしてPythonでの機械学習を勉強する前に「Pythonと機械学習について」と「Pythonと機械学習がAI(人工知能)で多用されているのはどうしてか」を知っておくと、学習内容も理解しやすくなるに違いありません。そこで今回はPythonと機械学習の概要や、2つをAI(人工知能)に用いるメリットなど、知っておくと有利なことについてお伝えします。

目次

機械学習とは何か
Pythonてどんな⾔語
Pythonで機械学習をするメリット
Pythonはインタプリタ型のプログラミング言語
高度な計算が行えるライブラリが数多く備わっている
機械学習の種類とは
教師あり学習
教師なし学習
強化学習
Pythonで機械学習を始めるための環境を整えよう
Pythonで機械学習を勉強できるおすすめ参考書3つ
スッキリわかるPythonによる機械学習入門
Pythonで動かして学ぶ!あたらしい機械学習の教科書 第2版
現場で使える! NumPyデータ処理入門
Pythonで機械学習を学ぶ場合の注意点
Pythonのプログラミング知識が必要
数学・統計学の知識が必要

機械学習とは何か
機械学習とは、AI(人工知能)にデータを学習させて人間のような知的能力を実現させるための技術です。機械学習によってAI(人工知能)はデータや環境から学習し分類や予測などができるようになります。

機械学習の起源はアメリカの科学者アーサー・サミュエルが1952年に機械学習について、次のように定義したのがはじまりです。

「明示的にプログラムしなくても学習する能力をコンピュータに与える研究分野」

これは言い換えると、コンピュータが自動的に学習するようになる研究です。

アーサー・サミュエルはこの定義をコンピュータゲームのチェッカーで形にしました。このコンピュータの開発に用いたのは、コンピュータ自身に数千回もゲームをさせて勝ちパターンと負けパターンを学習させる方法です。この方法でアーサー・サミュエルはコンピュータに数多くのパターンを学習させることで機械学習を形にしました。
現在、多くのAI(人工知能)に用いている機械学習は、パターンではなく大量のデータをAI(人工知能)に学習させる方法です。機械学習が定義された当時はデータを収集するのが難しい時代でしたが、2000年代に入りインターネット網が整備され、そこから大量のデータを収集できるようになりました。それにともなって機械学習で大量のデータを学習に用いることが可能になりAI(人工知能)が進化します。

そして現在に至るAI(人工知能)を飛躍的に進化させたのが、ディープラーニングです。ディープラーニングとは、人間の脳神経細胞の仕組みを模倣した計算システムのニューラルネットワークを用いた機械学習技術の1つです。

機械学習の場合はAI(人工知能)が行うデータの学習に必要な特徴量(データを認識するための基準)を人間が選んでAI(人工知能)に与え学習させていました。しかしディープラーニングはこの特徴量をAI(人工知能)自身が選んで自動で学習します。そのため従来の機械学習よりも高精度な分類・予測が実現できるようになり、現在ディープラーニングはAI(人工知能)開発の主流技術になってAI(人工知能)を急速に進化させています。

そのため、最先端技術のディープラーニングを行いたいなら、まず基本である機械学習について学ぶことが必要です。
Pythonてどんな⾔語

現在あるプログラミング言語は200以上も存在しているといわれています。その中で多くのプログラム開発に使用されているプログラミング言語の1つがPythonです。

Pythonは、他のプログラミング言語よりもルールや記述量も少ないのでプログラミングがしやすい特徴を持っています。これはPythonが「書きやすさ・読みやすさ」を重視して設計されているからです。またWebアプリやゲーム・組み込み系プログラムなど幅広いプログラム開発で使用されており、高い汎用性もあります。

そのためPythonは世界中のエンジニア・プログラマーから支持される大人気のプログラミング言語になっているのです。そのことを証明できる調査結果として、オランダのTIOBE Software社が毎月出している最新のプログラミング言語人気ランキングでPythonは3位でした。(2021年4月の結果)また同ランキングで過去の順位を見てもPythonは常に上位に入っており、これは他の機関が行っている調査結果でも同じです。
そしてPythonの人気が高い理由には先ほどの特徴や高い汎用性などが含まれていますが、近年の一番大きな要因になっているのはAI(人工知能)開発に使用されていることです。

では「なぜPythonがAI(人工知能)で重用されているのか」と考えますよね。実はAI(人工知能)開発においてPythonを使用すると大きなメリットがあるからです。

Pythonで機械学習をするメリット

他のプログラミング言語でもAI(人工知能)開発はできますが、事実としてPythonがディファクトスタンダード(事実上の標準)のプログラミング言語になっています。その理由は、Pythonが現在のAI(人工知能)開発で主流技術になっている機械学習に適しているからです。

具体的にはこれまでさまざまなプログラム開発で使用された実績からの信頼と先ほど紹介した特徴、そしてPythonで機械学習を行う大きな2つのメリットの存在があります。

Pythonはインタプリタ型のプログラミング言語
Pythonは、インタプリタ型のプログラミング言語です。コンピュータにプログラムを実行させるためには2進数の0と1で構成された機械語にコンパイル(翻訳)する必要があり、その方法でプログラミング言語は大きくコンパイラ型とインタプリタ型に分類されます。コンパイラ型とはプログラムをすべて完成させてからコンパイルして実行する方法で、プログラムを1行ごと翻訳しながら実行していくのがインタプリタ型です。

そしてAI(人工知能)開発は試行錯誤をしながら進めます。そこでインタプリタ型のPythonを使用すればプログラムをその都度確認しながら開発を効率よく進めることができます。

高度な計算が行えるライブラリが数多く備わっている
AI(人工知能)は大量のデータを学習してそれを分析し予測や分類をします。その過程の機械学習ではデータを処理する高度な計算プログラムが必要です。Pythonには機械学習で必要な科学技術計算が行える高度なプログラムを集めたライブラリが数多くあります。

その代表的なライブラリには数値計算ができるNumpyやデータ解析が行えるPandasなどがあり、Pythonを使用すればこれらのライブラリをプログラム上で呼び出すだけで利用できます。
2つのメリットのうち特にライブラリは他のプログラミング言語で用意するのは難しく、多くのAI(人工知能)がPythonで機械学習を行っている大きな理由です。これら紹介したPythonが持つ特徴やメリットは総合的に見て機械学習にとても都合がよく、そのためPythonはAI(人工知能)開発で主流のプログラミング言語になっています。

機械学習の種類とは

機械学習はデータの種類や状況で「教師あり学習」「教師なし学習」「強化学習」の3つに分類されます。ではそれぞれの学習について紹介しましょう。

教師あり学習
AI(人工知能)に正解データを学習させる方法が、教師あり学習です。この学習でAI(人工知能)は正解データから正解のルールやパターンを学習して特徴量(データを認識するための基準)を把握します。これによって例えば猫の画像データを学習させると、さまざまな画像の中から猫の画像だけを検出することが可能になるなど、予測や分類ができるようになります。

そして、ディープラーニングはこの教師あり学習から進化した技術です。

教師なし学習
教師なし学習は、教師あり学習のように正解がある教師データを与えません。その代わりに与えたデータを学習してその構造や特徴を見つけ出して、データのグループ分けや情報の要約が行えるようになります。教師なし学習でさまざまな動物画像データを学習させると、犬・猫・鳥など動物を種類ごとにグループ分けできるAI(人工知能)の開発ができます。

強化学習
教師あり学習・教師なし学習は与えられたデータをもとに学習する方法でした。強化学習はそれとは異なりデータから学習するのではなく、AI(人工知能)が与えられた環境で試行錯誤しながら学習を行っていきます。

これはAI(人工知能)がおこなった複数の行動結果から一番適した行動を学習していく方法です。例えば、お掃除ロボットがこれに当たります。

Pythonで機械学習を始めるための環境を整えよう

Pythonで機械学習を行うためにはそれに適した開発環境を整えなければなりません。その開発環境を構築する方法は複数ありますが、中でも比較的簡単に開発環境を手に入れられるのがAnacondaをインストールする方法です。

AnacondaとはPythonや機械学習に必要な複数のライブラリやツールがまとめてあるプラットフォーム(動作環境)です。Pythonや機械学習をはじめる場合にAnacondaは他の方法よりも簡単に開発環境を構築できて使いやすいので多くの人が利用しています。また一般に使用されているWindowsやMacOS、LinuxのパソコンのOSで使用できます。

そしてAnacondaのインストールは公式サイトよりダウンロードして行います。その方法についてはPythonのコミュニティサイト「python Japan」に詳しい内容が掲載されているのでご参照ください。

Pythonで機械学習を勉強できるおすすめ参考書3つ

これからPythonで機械学習を勉強するなら指標になる参考書が必要です。ここではPythonの機械学習が学べる参考書を3冊紹介します。

スッキリわかるPythonによる機械学習入門
機械学習はプログラミングやライブラリ・数学など勉強しなければならない分野が多くあります。そのため初めて勉強する方にとっては「どこから勉強すればいいのだろうか」と迷ってしまいますよね。

「スッキリわかるPythonによる機械学習入門」では機械学習で習得が必要な多くの分野を個別に学ぶのではなく、機械学習の全体像が把握できる構成にしてあります。内容はやさしい題材から初めて段階的にレベルを上げているので初心者でも少しずつ理解できていく参考書です。初めて機械学習を学ぶ人や、他の参考書で挫折した人におすすめする1冊です。


Pythonで動かして学ぶ!あたらしい機械学習の教科書 第2版
先ほどの参考書は初心者向けでした。次はエンジニア向けの参考書「Pythonで動かして学ぶ!あたらしい機械学習の教科書 第2版」を紹介します。

エンジニア向けの機械学習の参考書は他にも複数出版されていますが、その中でもこの参考書はエンジニアの向けとしては丁寧な説明で学びを進められる内容です。前半部分ではPythonと機械学習や必要な数学の基本について解説し後半から本格的に機械学習の勉強に入っていきます。

またディープラーニングについても解説してあり、エンジニアが最初に選ぶPythonによる機械学習の入門書には最適です。これから機械学習に取り組もうと考えている現役エンジニアにおすすめします。


現場で使える! NumPyデータ処理入門
Pythonで行う機械学習でNumpyは多く使用されているライブラリです。またNumpyは、同じく機械学習で使用されるPandasやScipyなど他のライブラリに演算機能を提供しています。そのため、他のライブラリも理解しやすくなるのでNumpyの習得は必須です。

そのNumpyについて「現場で使える! NumPyデータ処理入門」は、Numpyのインストール方法、基礎知識から実践で使用できる方法までを解説しています。最初はNumpyの難しいコードになれない人もいるでしょうが、本書は熟読することで徐々に理解できる内容です。これからNumpyを学習する人が最初に選ぶ参考書としておすすめします。


今回紹介した3冊は初心者向け・エンジニア向けのレベルと、Numpyの学習に合わせた参考書です。それぞれは初学に内容が適しているので参考にしましょう。

Pythonで機械学習を学ぶ場合の注意点

Pythonによる機械学習は、勉強が必要な分野が多岐にわたります。そのため、学ぶ場合に注意点が2つあります。

Pythonのプログラミング知識が必要
1つ目は、Pythonのプログラミング知識が最低でも必要だということです。

Pythonで機械学習を行うためには、Pythonでプログラムを組んで必要なライブラリを呼び出せることができなければなりません。またエラーが発生すれば自分で解決できることも必須です。そのために必要なのはPythonのプログラミング知識であり、なければPythonで機械学習をするのは不可能です。

これからPythonで機械学習をしようと考えていても「プログラミングの経験がない」「かじった程度の経験だけ」の人たちもいるでしょう。Pythonは扱いやすく学びやすいプログラミング言語です。そのためプログラミング経験がない人でも習得しやすいので、まずはPythonを勉強してから機械学習に取り組むことをおすすめします。

数学・統計学の知識が必要
2つ目は、機械学習には数学・統計学の知識が必要なことです。機械学習は実行の過程でデータの計算処理と分析を行います。そのため機械学習には、線形代数や微分積分などの数学知識とデータ分析に必要な統計学の知識が必須です。

これらの知識について高校数学まで学んでいる人であれば、ほとんど心配はないでしょう。もし自信がない場合やエンジニア以外の人は、機械学習に必要な数学・統計学の事前学習をおすすめします。

紹介した2つはPythonで機械学習を学ぶために必要な知識です。もし自信がないなら機械学習勉強をはじめる前に「Pythonのプログラミング知識」と「数学・統計学の知識」を学んでおきましょう。

まとめ
さて、今回はPythonで機械学習を行う前に知っていただきたいことについてお伝えしました。

現在までに開発された多くのAI(人工知能)に用いられている技術が機械学習です。機械学習とはAI(人工知能)がデータや環境から学ぶための学習方法です。この学習でAI(人工知能)は特徴やパターン・最適な方法を学び分類や予測などができるようになります。

そんなAI(人工知能)の開発で多用されているプログラミング言語がPythonです。その理由には開発の進めやすさや高い信頼性などがありますが、中でも高度な計算プログラムのライブラリを備えていることが一番に挙げられます。

機械学習では高度な計算プログラムが必要です。他のプログラミング言語だと用意するのは難しいですが、Pythonを使用すると呼び出すだけでそれらのライブラリを使うことができます。これがAI(人工知能)開発でPythonが主流のプログラミング言語になっている大きな理由です。

そして機械学習には「教師あり学習」「教師なし学習」「強化学習」の3種類あります。

実際にこれらの機械学習を行うためには開発環境が必要です。その構築方法はいくつかありますが、中でも紹介したAnacondaは比較的簡単に開発環境を手に入れることが可能です。また開発環境が整ったら紹介した参考書で実践してみましょう。

スッキリわかるPythonによる機械学習入門:分かりやすい構成なので、機械学習が初めてでも理解できる初心者向けの内容
Pythonで動かして学ぶ!あたらしい機械学習の教科書 第2版:機械学習について、丁寧に解説してあるエンジニア向けの入門書
現場で使える! NumPyデータ処理入門:Numpyの基礎から実践までを学ぶことができる初学者向けの参考書
そしてPythonで機械学習を行うには前提としてPythonのプログラミング知識が必要です。そのため中にはプログラミング経験がない人や、プログラミングが難しいというイメージからあきらめようと考える人もいるかもしれませんが、その必要はありません。初心者でもPythonは学びやすく習得がしやすいプログラミング言語なので、まずはPythonを学んでから機械学習に取り組んでいきましょう。

以上 AIZINEより


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【2021年版】超初心者がPythonを独学するために読みたい専門書9選

2021-05-16 | コンピュータよもやま話



 最近は、ITやゲーム業界だけでなく、世代を超えてさまざまな人たちがプログラミングを学び始めていますよね。しかも独学でマスターする人も多いです。そんな中で注目されているのが、「Python」。

Pythonは、最近とくに人気のプログラム言語でWebサービス・アプリの開発、組み込みアプリの作成、ビッグデータ分析など、大変活用範囲が広いのが特徴です。文法が簡単で初心者でも学びやすいうえ、機械学習を使った最新のAI(人工知能)開発まで可能とあって、世界中で評価が急上昇しています。

この記事では、Pythonについて基礎からわかりやすく解説するだけでなく、プログラミングやPythonを学ぶにあたっておすすめの専門書も紹介します。よって、Pythonを独学したい超初心者だけでなく、デジタルスキルの向上、キャリアアップを狙っている人にも大いに役立つに違いありません。

そこで今回は、Pythonの基礎知識やプログラミング初心者がPythonを独学するメリット、独学のために読みたい専門書をお伝えします。

目次

Pythonて良く聞くけど何言語?
コンパイルが不要
文法が簡単
ライブラリとフレームワークが豊富
プログラミング初心者がPythonを独学するメリット
簡単な割に汎用性が高い
最先端の仕事ができる
就職、転職、キャリアアップに役立つ
習得するまでのコストが安い


まずはプログラミングの基本が学べる専門書3選

『教養としてのプログラミング講座』清水亮(中央新書ラクレ)
『アイディアを実現させる最高のツール プログラミングをはじめよう』池澤あやか(大和書房)
『プログラミングを、はじめよう』立山秀利(インプレス)
Pythonの初歩が学べる専門書3選
『Python 1年生 体験してわかる!会話で学べる!プログラミングのしくみ』森 巧尚(翔泳社)
『3ステップでしっかり学ぶ Python入門』山田祥寛・山田奈美(技術評論社)
『スラスラ読める Pythonふりがなプログラミング』リブロワークス(株式会社ビープラウド)
Pythonがわかってきたら読みたい専門書3選
『退屈なことはPythonにやらせよう__ノンプログラマーにもできる自動化処理プログラミング』AI Sweigart著 相川愛三 訳 (オラリー・ジャパン)
『Python基礎ドリル 穴埋め式』Grodet Aymeric、松本翔太、新居雅行(オーム社)
『Python実践データ分析 100本ノック』下山輝昌、松田雄馬、三木孝之(秀和システム)
Pythonを習得した次にやってみるべきこと
Pythonて良く聞くけど何言語?
プログラミングのイメージ

Pythonは、1991年にリリースされた、JavaやC++などと同じプログラミング言語の一種です。ただ、これらと異なる点がいくつかあるので、解説しましょう。

コンパイルが不要
Pythonの大きな特徴として、コンパイルが不要なスクリプト言語という点があります。コンパイルとは、書いたコードをコンピューター上で実行できる言語にまとめて変換するタイプです。一方、Pythonは、プログラムを書いたら翻訳しながらすぐに実行可能なインタープリタ言語です。よって、コードの確認がスムーズ、試行錯誤もしやすので大変使い勝手が良いでしょう。

文法が簡単
Pythonはコード量が少なく、文法が他の言語と比べて簡単なため、初心者でも独学で習得する人が多いです。例えば計算式一つ書くのもJavaなら数行必要なところ、Pythonならわずか1行で済むことも。しかもC言語などのように行頭に括弧ではなく、一文字下げるインテンドを使って命令ごとにブロック分けするやり方は、誰が書いても同じになります。よって、人により表記法に多様性がある他の言語より圧倒的に単純で覚えやすく、読みやすいでしょう。

ライブラリとフレームワークが豊富
さらにPythonは、ライブラリとフレームワークが豊富な点も見逃せません。ライブラリは、よく利用される機能を部品化したものです。例えば、Pythonには、mathというライブラリがあります。これは、乗数計算や平方根、四捨五入などさまざまな計算が行えるソースコードの集まりです。これを使えば、例えばプログラミングで平方根を使うプロセスは、mathを使えば短時間で完了。このようなライブラリが、Pythonには、数万個も組み込まれているので、それらを上手く活かせば、作業がとてもスムーズに行えます。

フレームワークは、Webサイトやアプリケーション開発を素早く行うためにあらかじめ用意された枠組みです。フレームワークを活かせば、コーディングの手間が省けるため、作業効率が上がり、開発までの時間が大幅に短縮されます。建物建設で例えると、高層ビルなのか学校なのか、あるいはマンションか戸建てか、モデルとなる設計枠が用意されているようなもの。あらかじめひな形があれば、そこから仕上げた方が、一から作るより時短になりますよね。

もちろん誰かと同じでは開発の意味がないので、必要に応じて建物の形状や階数、部屋数、機能性をアレンジするごとく、フレームワークはカスタマイズすることが可能です。Pythonには、ライブラリとフレームワークが豊富なため、プログラミングの単純化と多様化が同時に実現します。
プログラミング初心者がPythonを独学するメリット
勉強のイメージ
プログラミング初心者にとってPythonを独学するメリットは数多くあります。一つずつ具体的に説明しましょう。

簡単な割に汎用性が高い
Pythonは、文法が簡単で読み書きしやすいため初心者の独学にはうってつけです。しかもPCやスマホで誰もが知るWebアプリやサービスなどの開発にも使われている汎用性の高さが大きな魅力です。

YouTube、Instagram、Gmail、Spotify、Dropboxなど、おなじみのSNSやアプリが、数多くPythonを使ってリリースされています。つまり、Pythonをマスターすれば、需要の高いプラットフォームやコンテンツを自作できる可能性がグンと広がるでしょう。

最先端の仕事ができる
Pythonをマスターすれば、機械学習を使ったAI(人工知能)の開発も可能です。AI(人工知能)は、いまや世界の最先端技術をけん引するもっとも注目されるテクノロジーの一つでビジネス、医学、化学、生命工学、教育、行政、マーケッティングやドローンなどさまざまな分野でイノベーションに欠かせない存在といっても過言ではないでしょう。よって、Pythonを習得すれば、今後最先端のやりがいのある仕事につける可能性が広がるに違いありません。

就職、転職、キャリアアップに役立つ
Pythonエンジニアは、世間からの需要が高く、平均年収は600万円を超えます。デジタル人材不足が叫ばれるなか、AIエンジニア、アプリケーションエンジニア、データサイエンティスト、マーケッティングなど、Pythonエンジニアは引く手あまたのため、就職や転職、キャリアアップを強く後押しするでしょう。

習得するまでのコストが安い
Pythonは誰でも開発に参加できソースコードが無償公開されているオープンソースで、ダウンロードも無料です。また、Windows、Mac OS、Linux、Android、iOSなど幅広い環境で使えるので、誰でもパソコンさえあればすぐにでも利用可能。さらに、Pythonの基礎から解説された無料動画やサイト、専門書も数多く用意されているので、独学しやすい環境が整っています。よってPythonは、質が高いのに低コストで独学するにはとてもコスパの高いプログラミング言語でしょう。

まずはプログラミングの基本が学べる専門書3選
基本のイメージ
それでは、ここからプログラミングやPythonについて理解を深めるためにおすすめの専門書を紹介しましょう。まず、プログラミングの基本が学べる専門書3冊です。

『教養としてのプログラミング講座』清水亮(中央新書ラクレ)
プログラミングの基礎中の基礎から学びたい人は、まずこの本を読みましょう。初心者には、プログラミングは難しくてとっつきにくいという印象が強いですよね。しかし、本著はパソコンの成り立ちやそれを動かすプログラミングの仕組みからひも解かれ、実生活そのものがさまざまなプログラミングでできていることを身近な例をあげて紹介しています。よって、プログラミングへのネガティブイメージが払しょくでき、独学へのハードルもグンと下げてくれるでしょう。

プログラミングの知識がなくても、理系が苦手な人でも、1時間ほどで読破可能です。小学生や中学生など、これからプログラミングを学ぶお子さんへの解説書としてもおすすめです。


『アイディアを実現させる最高のツール プログラミングをはじめよう』池澤あやか(大和書房)
この本は定番ですが、プログラミングの初歩、本当に第一歩を踏み出そうとしている人におすすめです。なぜプログラミングが必要か、そしてどんな言語で何ができるのか、しやすいかについてわかりやすく解説しています。

プログラミングの独習でありがちなのが、ルールや理屈が理解できないでリタイヤすることですよね。しかし、本著では、「わからなかったらスルーして」というゆるくて優しいメッセージも込められています。プログラミングが嫌いにならずに確実に前に進んでいける珠玉の1冊です。

『プログラミングを、はじめよう』立山秀利(インプレス)
プログラミングの独学で行き詰ったり、すでに挫折した経験がある人におすすめです。通り一遍のマニュアル通りの解説に馴染めず、飽き飽きしているなら、この本を開いてみましょう。

たとえば、「処理」「分岐」「ループ」といったプログラミングの基礎パーツが何の役に立つのか、どう使うのか、がとてもわかりやすく解説してあります。ただ、機械的に覚えるのではなく、必要性をイメージしながら学べるため、読んでいるとパッとプログラミングへの世界が開けるかもしれません。これから本腰を入れてポジティブな気分で独学したいなら、ぜひ読みましょう。

Pythonの初歩が学べる専門書3選
初心者のイメージ
次は、いよいよPythonのイロハが学べるおすすめの専門書3冊です。

『Python 1年生 体験してわかる!会話で学べる!プログラミングのしくみ』森 巧尚(翔泳社)
この本も定番ですが、Pythonについてまったく何も知らないところからでも読める超初心者向けです。まず基本文法がこれ以上ないというくらい優しく丁寧に解説されています。さらに実際にアプリを作る形でサンプルが用意されているので、ただ字を目で追うだけでなくプログラミングを体験できるのもおすすめポイント。AI(人工知能)作成のさわりも学べるため、初心者にはとても良い刺激になるかもしれません。

この本はヤギ博士とフタバちゃんの会話形式で、まるで童話のように絵が多いので、とても読みやすいでしょう。読後には、「Pythonってて何?」という疑問が見事に解けているに違いありません。


『3ステップでしっかり学ぶ Python入門』山田祥寛・山田奈美(技術評論社)
Python初心者のための解説書ですが、練習問題があって習熟度がはっきりとわかる点がおすすめです。「予習」「実践」「復習」の3ステップに分けて、変数と演算、分岐、繰り返し処理など、プログラミングの柱となる要素を余すところなく学べるので、何度か繰り返し目を通すとPythonの基礎が身につくでしょう。


『スラスラ読める Pythonふりがなプログラミング』リブロワークス(株式会社ビープラウド)
Python初心者向けですが、とても実践的でおすすめです。この本が斬新なのは、プログラムの意味を日本語でとらえるように書かれている点です。例えば、「answer = 10」というコードを「変数answer 入れろ 数値10」という漢文訓読に「数値10を変数answerに入れろ」と読み下し文がつきます。すると英語と数字と記号のみという初心者にはとっつきにくいコードの羅列が、頭の中では日本語として読めるので、違和感なく理解できます。

このパターンで変数や条件分岐、繰り返し文、関数などを解説しているため、コツがつかめると、まさに名前のごとく「スラスラ」読めるようになるでしょう。そして、Pythonの独学が一気に楽で面白いと感じるに違いありません。


Pythonがわかってきたら読みたい専門書3選
専門的なイメージ
最後は、Pythonについて基礎が理解できてきた人向けにおすすめの3冊をご紹介しましょう。

『退屈なことはPythonにやらせよう__ノンプログラマーにもできる自動化処理プログラミング』AI Sweigart著 相川愛三 訳 (オラリー・ジャパン)
ファイル計算や表計算のデータ更新など、何十、何百にものぼる繰り返し作業をPythonで自動処理する方法に特化した解説書です。

ファイル処理やメール送信、ドキュメント操作、スクレイピングなど、仕事ですぐに使えそうな作業の自動化について学べます。ボリュームのある実用書で、読破するには根気が必要かもしれません。(とくに前半)よって、Pythonの基本知識を身につけたうえで読むのがおすすめ。演習問題つきのため、習熟度を確認できる良書です。


『Python基礎ドリル 穴埋め式』Grodet Aymeric、松本翔太、新居雅行(オーム社)
99問の穴埋め式問題集です。基礎問題から応用問題までレベルに合わせてトライできます。オーソドックスなタイプからひねった難問までありますが、簡単に解けそうなところはスキップして構いません。難しくてもクイズ形式のため、楽しんで読み進められるでしょう。解説が非常に丁寧なので、Pythonでプログラミングする感覚が徐々に研ぎ澄まされていくはずです。


『Python実践データ分析 100本ノック』下山輝昌、松田雄馬、三木孝之(秀和システム)
プログラミングが上達するには、一つでも多くのコーディングパターンを経験し、身につけることが大切です。本著は、Pandas、NumpyなどPython10個のライブラリについて、実践問題を通じて学べます。まさに100本ノックのように、次々と出題されますが、その分、ビジネスで必要なデータ分析の即戦力や応用力が身につくでしょう。

データと一言にいっても、ビジネスの現場では、完成度の高い使い勝手のよいものから、眉唾ものの怪しく信頼できないものまで、さまざまです。そんな中から価値ある宝を掘り出すためにどうすれば良いか、という実践感覚が学べるおすすめの1冊。


Pythonを習得した次にやってみるべきこと
データ分析のイメージ
Pythonの習得が進んだら、次はPythonを使って具体的にやりたいことを絞りこみましょう。例えば、Pythonでは、スクレイピング、テキストマイニング、データ分析、画像認識や画像処理などが行えます。これらの中から興味があって試してみたいと思うもの、学習過程で面白いと思った演習があれば、さらに具体的に掘り下げましょう。

例えば、スクレイピングは、配信されるニュースの中から「好きな俳優や歌手」「脱炭素」「ビーガン」など、特定のキーワードに関するデータを自動取得できます。そのためには、seleniumやbeautifulSoupなどのライブラリを利用すると良いでしょう。
また、PythonでMecabやgenimなどのライブラリを使ってテキストマイニングもできます。大量の文章の中から特定の単語や文節出現頻度や相関関係などを分析・解析するのに役立ちます。たとえば、サイトへのユーザーからの要望や苦情は、数字や数値とは違った意味の持つマーケティング上とても有益な情報ですよね。自社に何を求め、何が不足しているかをユーザーの微妙な言動やつぶやきから読み解くことは、今や経営で欠かせない大変重要な要素です。それらを上手くピックアップして戦略に活かしたり、対策を講じることで、業績を大きく左右することも可能でしょう。

このように、やりたいことを具体化し、数あるPythonのライブラリやフレームワークのどれを活用するかを決めたら、それらを使うためのルールやテクニックをどんどん会得していきましょう。そして、最初から大きな成功を望まず、トライ&エラーを繰り返しながら小さな成功体験を積み重ねることが、Pythonエンジニアへの確実な一歩につながるに違いありません。

まとめ
さて、今回は、Pythonの基礎知識やプログラミング初心者がPythonを独学するメリット、独学のために読みたい専門書をお伝えしました。

Pythonは、Webサービス・アプリの開発、組み込みアプリの作成、ビッグデータ分析さらに機械学習によるAI(人工知能)の開発まで、大変活用範囲が広い人気のプログラミング言語です。コンパイルが不要、文法が簡単で読み書きしやすい、ライブラリとフレームワークが豊富、という理由から初心者でも独学でマスターしやすいでしょう。

さらに、初心者には「簡単な割に汎用性が高い」「最先端の仕事ができる」「就職、転職、キャリアアップに役立つ」「習得するまでのコストが安い」と多くのメリットがあります。

超初心者がPythonを独学するには、まずプログラミングとは何か、が学べる基本的な解説書に目を通すのがおすすめです。その点『教養としてのプログラミング講座』は、実生活とプログラミングを結びつけてわかりやすく解説しているので、プログラミングに苦手意識がある人でも、グンとハードルが下がるでしょう。

そして、プログラミングの基礎がわかったら、次はいよいよPythonの基礎を学ぶために、Python専門の基本的な解説書に進みます。漫画を多用して会話形式で学べる『Python 1年生 体験してわかる!会話で学べる!プログラミングのしくみ』はうってつけでしょう。

さらに、Pythonの基礎が理解できたら、次は、もう少しレベルアップ。『Python基礎ドリル 穴埋め式』のような実践形式の問題集、兼、解説書がおすすめです。Pythonの習得は、「習うより慣れろ」で、さまざまなパターンを経験し、体で覚えるのが近道です。

そして、Pythonの習得が進んだら、スクレイピング、テキストマイニング、データ分析、画像認識や画像処理など、興味があり、腕を磨きたいと思う分野をさらに掘り下げましょう。同じ分野でもPythonには複数のフレームワークがあるので、どれを使ってアプローチするのが自分に合っているか、を見極めるのも重要です。

途中で挫折しそうになっても大丈夫。Pythonには、わかりやすく解説した本や動画が山のように存在します。上手くいかなければ別の勉強法を試し、焦らず一歩一歩理解を進め、Pythonをマスターして栄えあるキャリアアップを目指しましょう。

以上AIZINEより

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高校でも“1人1台”の時代に突入 『GIGAスクール構想』で教育現場が変わる!

2021-05-04 | コンピュータよもやま話
 1人1台の学習端末所有を骨子とする『GIGAスクール構想』。小学校、中学校に続き、今年度から高校でも本格的なデジタル学習がスタートしている。

そこで、ICT環境の導入によるシステム上のメリットをはじめ、教育現場での活用例や現状抱えている問題点など、1年前倒しされて開始された高校向け『GIGAスクール構想』の現状を学研プラス社の文教担当者に伺った。

今までデジタル学習への取り組みを行なっていた“現場を知る人”の話だけに、教育ICT環境の現実的な部分が見えてくるはずだ。

生徒と教員をつなぐ「学習eポータル」準拠のプラットフォーム
現在は、2019年度より採り入れられた“探究学習”をはじめ、高校の授業内容の変化・深化が進み、生徒はもちろん、教員からもICTの活用が期待されている状況。必要となるのは、情報の共有や利活用がしやすい“学習のハブ”だ。


↑高校教育コンテンツ事業部で“学習eポータル”を担当する田中宏樹さと教材編集室の室長を務める志村俊幸さんに、ICT環境導入の現状についてお聴きした


「探求学習は、以前アクティブラーニングと呼ばれていたもので、単純な暗記ではなく、自身で考えて能動的に学ぶことができる授業のこと。例えば古地図を見て“この庄屋の生活として考えられることは何か”といったように、正解が書かれていないものを調べ、自分で考えて答えを出すというものです。この例でいえば、地図上にある倉に年貢として集められた米が保存されていたのではないかとか、そういったことが考えられるわけですね。ただし、これだけでは知識と想像止まりです。ここにICTが加わると、文化遺産として現存している屋敷や倉の様子を調べる、検索で異なる見解を見つける、専門家へと連絡してコメントをもらうといったことまで実現できます」(志村氏)

「現実世界と知識を結び付け、自分事として扱うというのが、従来との大きな違いでしょう。小学校や中学校ではこういった傾向がありますが、高校ではもう少し踏み込んだところ、例えば世界が取り組むべき課題に対し、調べながらレポートを作成するとか、問題点を洗い出すとか、それらをまとめてプレゼンする、といったことが考えられていそうです。グループ内の議論やデータの取りまとめなどで“学習eポータル”が活用されれば、教員があとから議論の中身をチェックでき、どの生徒がどんな役割をしていたのかの把握も可能になります」(田中氏)

このように、教科書の中で完結していた学習と違い、外部からの意見を採り入れたり、新しい情報を検索で探せるというのがICTが得意とする部分だ。そして最終的な答えだけでなく、その過程まで共有できる学習のハブとしての役割が“学習eポータル”に期待できる。

「こういった学校での学習はもちろんですが、それ以外でもICTは期待されています。そのひとつが、留学。本来であれば海外へ行くような学ぶ意欲の高い人たちが、コロナ禍によってその道が閉ざされてしまっています。こういった人向けに、世界の人たちとつながれる場所、また、海外の専門家と直接やり取りできる方法として、ICTが活用できるのではないでしょうか」(田中氏)

【ミニコラム01】

『学習eポータル』とは?
ICT環境導入のメリットは、データが収集しやすく、学習や生徒指導、校務などの効率をアップできる点だ。とはいえ、ただデータを集約すれば良いというわけではない。一定のルールに沿ってデータを記録することで、手軽にデータを分析したり、利活用したりといったことが可能になる。収集するデータのルールを定めるのが文部科学省の提唱する『学習eポータル』だ。児童生徒・教職員・学校の基本情報をまとめた“主体情報”、学習内容を記録する“内容情報”、出欠や成績・評価などの“活動情報”の3分野に区分される。全国の学校や児童生徒の属性など、共通化することが目的だ。


生徒の状況を“見える化”することで、効果的な指導を実現!
ICT導入の大きなメリットとなるのは、生徒の状況を“見える化”できること。学習の進捗状況や生徒の行動を把握でき、学力の向上や生徒指導なども、生徒個人に合わせて、より効果的なアドバイスが可能になる。

「ある高校生が数学の成績で悩んでいるといった場合、過去の宿題の提出状況とか、テストの結果などと突き合せれば、どこで悩んでいるのか、何が問題になっているのかを教員が見つけやすくなります。漠然と“勉強しろ”というだけではなく、より効果が高く、生徒に寄り添った指導ができるようになるわけです」(志村氏)

ICTの活用は、生徒の状況を“見える化”することで、問題点を見つけるまでの時間を大きく短縮できるのがメリットだ。今まで以上に的確な指導ができるようになるため、全体レベルの底上げや優秀な生徒のさらなる能力向上も見込めるようになるだろう。


↑ビジネスシーンでは、さまざまな情報をデータ化して記録をとり、そのデータを元に作業の効率化や製品開発の方向性などへフィードバックするのが常識に。今後は教育機関でも同様のデジタルトランスフォーメーション(DX)が求められる


一方で、教材や教育コンテンツとしてデジタル学習が増えていくと、プリントや資料の配布準備といったものが必要なくなり、教員の負担が軽減されていくことは想像に難くない。そうなれば、生徒と向き合える時間がさらに増えるだろう。

また、デジタル学習で期待されていることのひとつが、配信を使ったリモート授業だ。


「以前から配信を使った授業、学習を行なうというのは言われてきていましたが、普及はせず、足踏みしている状態でした。この理由は簡単で、日本では通える範囲に学校があるというのがほとんどで、必要性がなかったからです。海外では学校に行こうとすれば移動だけで半日かかるとか、冬場は雪で閉ざされてしまうので通えないといった地理的問題があり、こういった生徒向けに通信を使った教育が普及してきました。日本ではコロナ禍の影響で学校へ通えなくなってリモート授業の必要性が高まり、多くの現場で急遽導入されるようになりました」(志村氏)

ただし多くの場合、教員の工夫や努力による部分が大きかったのも事実。ソフトやサービスの選定から機器の用意まで、保護者の協力を得ながらなんとか実現したというところも少なくなかっただろう。


しっかり環境が整ったプラットフォームが導入され、1人1台学習端末が行き届くようになれば、こういった準備の苦労をすることなく、授業ができるようになるのだ。


↑以前に取材した埼玉県の『学校法人塩原学園 本庄第一高等学校』では、すでに“1人1台”環境を実現し、リモート授業も対応。加えて、校務の効率化にも活用され、教員をサポートしているという


【ミニコラム02】

“高校GIGA”を視野に入れた教育機関向けのソリューションが登場
ICT導入やデジタル学習におけるメリット、デメリットを多くあげてきたが、運用が軌道に乗れば、教員の負担が減り、授業や生徒への指導に割ける時間が増えるというのは間違いないだろう。そこで注目したいのが、NECの教育クラウドサービス『Open Platform for Education』だ。

↑今年2月に機能強化された『Open Platform for Education』。“探究学習のサポート”や“オンライン進路相談”など、高校教育に役立つ機能を実装されるという

従来までの提供していたデジタル教科書や教材の利用に加えて、新たに文科省の『学習eポータル』へ対応。学習履歴の確認や分析などを前提とした仕組みを取り入れている。

また、設定したテーマに対して専門家や識者なども交えて議論ができる“探究学習のサポート”、社会人や大学生と面談することで将来の目標をより具体的にできる“オンライン進路相談”など、今後、教育現場で必要になる強化が図られている。

今後、本格的にICT環境の導入を検討している高校は、チェックしておきたいソリューションだ。

事前の準備や対策で、ICT導入直後のトラブルは回避できる
ICT導入といっても、生徒に情報端末を配れば完了ではない。情報端末を活用できる環境を整えられなければ、スタート地点にすらたどり着いていないことになる。環境とは、インターネットへ接続可能なネットワーク設備、コンテンツの用意、情報端末のセットアップ、利用マニュアル、トラブル対応できる人材など、多岐に渡る。

こういった点を考えると、Wi-Fi環境の構築と管理ができ、教員の情報端末操作をサポートする仕組み……いわゆる“情報システム部”が欲しくなる。学校ごとに数人常駐させるというのが理想だが、予算や人材面を考えれば不可能に近い。どうしても一部のわかる教員が頼りにされ、負担が大きくなってしまいがちだ。


↑企業では、専門の部署を設けたり、アウトソーシングしたり、ICT環境の構築やメンテナンスは切り分けるのが常識。教育機関では、それらを一般の教員が兼務していることが多く、なおざりにされるケースも


ここで問題となるのは生徒の端末だ。今年度からスタートした、高校向けのGIGAスクール構想では、生徒の端末は“BYOD”が前提となっている。BYODとは“Bring Your Own Device”の略称で、生徒が使う情報端末は保護者が用意し、それを学校に持ち込んで利用するという方法。このBYODのメリットは、情報端末の予算を保護者が負担するため、1人1台のICT導入コストが抑えられることだ。

その反面、教員がカバーしなければいけないデメリットは大きい。

「共通の情報端末でも操作に困るというのに、生徒それぞれがOSもメーカーも性能も違う情報端末を持ってきた時、対応できる先生がどれだけいるでしょうか。トラブルがあった場合の原因切り分けすら難しいでしょう」(志村氏)

パソコンのサポートが本業の人でも、利用したことのない端末をサポートすることは難しい。再起動するだけでも、電源ボタンの場所がわからず、手間取ることもある。ましてや、ICTが触れる機会の少ない生徒や保護者、そして教員である。無制限に端末を持ち込めば、授業の妨げになりかねない。


「こういったデメリットを考えると、メモリーが4GBでCPUがセレロンといった低性能パソコンでもいいから、確実に学習コンテンツが使える共通の情報端末を全員に配る方がよいでしょう。もちろん、小学校から高校まですべて同じにする必要はありませんが、せめて、学年で使う機器を統一する、もしくは、数機種に絞って選べるようにすると運用しやすいでしょう」(志村氏)

↑ビジネスシーンでも、同じタイミングで導入されるパソコンは統一されているのが一般的。いくつかの種類から選べる場合もあるが、BYODのように個人の端末をメインマシンにすることは稀なケースと言える

たとえ“1人1台”環境が実現できたとしても、それを十全に利用できる環境を用意できないのであれば本末転倒だ。とはいえ、高校向けの『GIGAスクール構想』は、本年度からスタートしており、待ったなしの状況になっている。ICTのリテラシーが高い担当者を用意できないのであれば『Open Platform for Education』などのような、統合型のソリューションの導入を検討したほうがよいだろう。

以上

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学校のタブレット 家ではゲーム機 小中学生配備端末に「抜け道」 中日新聞本日朝刊より

2021-05-01 | コンピュータよもやま話
アクセス制限/使い方教育必要

以前関西の私立中高一貫校で全生徒にスマホを持たせた。時間管理の目的もあった。当然有害サイト防止用のフィルタリングも施されていた。
ところが、生徒はフィルタリングを無効としてしまった。どうやって?
初期化して、OSを初期設定に戻して使い始めた。これにはNTTも学校側もお手上げ状態となった。

で、対策はどうするか?
生徒用端末をシンクライアント化するか、起動時に毎回初期状況にするかどちらかだろう。
いづれの場合も、生徒の作成したファイルはクラウドに置くことになる。
また、生徒の使用状況をサーバー側でモニタリングし、通信量が一定の限度額を超えたら通信を遮断もしくは通信速度の低速化を行うようにすることが大切だ。


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大学入試センター・荒井克弘客員教授「共通テストの作問体制は抜本的に変わった」

2021-05-01 | 共通テスト
「学力の3要素」を改革の柱に実施された最初の大学入学共通テストは、問題形式が大きく変わったにもかかわらず、平均点は意外に高い結果に終わりました。思考力より、読解力や情報処理能力を問われたという声も高校現場などから聞かれます。大学入試センター試験の問題作成にかかわってきた荒井克弘・大学入試センター客員教授は、試験の性格が本質的に変わったことを指摘します。

話を聞いた人:荒井克弘さん
       大学入試センター客員教授
      (あらい・かつひろ)東京工業大学理工学研究科博士課程修了。博士(工学)。
       専門は高等教育研究。広島大学大学教育研究センター教授、東北大学教育学部長などを経て、
       2009年から15年まで大学入試センターで教授、試験・研究統括官、副所長を務めた。

思考力測るはずなのに意外な結果

――第1回の共通テストの問題内容を見て、どう思いましたか。

試行テストの問題(形式)に似ているなと感じました。大学入試センターに常勤していた時に問題作成にかかわりましたが、その際に作問は「シンプル・イズ・ベスト」だと学びました。受験生が即座に問題を把握でき、すぐに解答を始められるのが一番大事で、その観点からすると、共通テストの問題はだいぶ余分なものがあります。

問題文の分量が多くて、最後の解答までたどり着かなかったという受験生の話も聞きます。また、資料やデータにこだわりすぎて、そのために細部へ入り込みすぎた問題も見受けました。しかしそれでも、テストの点数は悪くありませんでした。多くの科目の平均点が60点を超え、むしろセンター試験の頃に比べて高い点数だった科目も多い。問題が素直だったのでしょう。時間が足りなくて考える時間もなかったのに点数が高いのは、「思考力を測る」というアピールとはだいぶ違う、意外な結果です。

――大学入試センターの報告書「『センター試験』をふり返る」(2020年12月)や、『大学入試がわかる本』(中村高康編、岩波書店、20年9月)の中で、共通テストは高校寄りになったという趣旨のことを書いています。

誤解している人が多いのですが、共通試験は入学者選抜に使われる資料ですから、共通1次試験もセンター試験も大学入試センターが問題を作っているのではなく、大学教員が問題を作ってきました。

大学の専門知識は新陳代謝が激しく、常に進行形であるのが普通です。それに比べて高校科目は完成度が高く、成熟した知識が多くなります。誤解を恐れずにいえば、高大接続は教育と研究を結びつけるような作業に近いともいえます。

文部科学省と大学入試センターは今回の改革のために、問題作成体制に「抜本的改革」を施しました。その一つが「試験問題調査官」の導入です。新しい専任ポストが多数つくられ、そこに全国の教育委員会から指導主事クラスのベテランが集められました。高校での教科指導の経験があり、教育委員会で行政経験も積んだ人たちです。彼らの職務は、高校教育の現場の様子を伝え、学習指導要領の注釈をすることです。

実際、今回の共通テストに出題された中で新傾向と呼ばれる問題には、彼らの貢献が大きかったはずです。

――それは、ほとんど知られていないことです。

大学入試センターはこれまでも高校関係者と積極的な交流、意見交換を重ねてきました。センター試験問題の点検やその外部評価のために、多くの高校関係者に協力を求めてきました。外部評価の際には、科目部会との面談も行っています。しかし、問題作成の科目部会に高校関係者を常駐させることは、実習科目を除いて、したことはありませんでした。

情報漏洩(ろうえい)を心配したのかもしれませんが、むしろ、共通試験は大学入試の一環だという矜持(きょうじ)によるものだと推察されます。実施主体が代わってしまえば、共通試験の性格が「大学の試験」でなくなるのは当然です。単なる高校教育の到達度試験になり、もはや高大接続のための試験ではなくなってしまいます。

試験問題調査官は科目部会に1~2名ずつ配置されている、と聞いています。現在の出題科目は30あり、各科目の部会とも20人程度の大学教員で構成されています。科目部会の規模からすると、試験問題調査官は少ない人数ですが、部会の大学委員が作業に従事できるのは最大でも50日が限度であることを思えば、常勤の調査官のマンパワーは決して小さいとはいえません。

改革の柱「学力の3要素」は文科省の拡張解釈

――共通テストはセンター試験の延長線上にある後継試験と思われていますが、そうではなく、試験の性格が本質的に変わったということですか。

センター試験とは違う問題作成体制になったということです。現在も試験問題を作成するのは大学教員です。そのことに変わりはありませんが、部会内の協力関係がどのように変わったのかはわかりません。重要なのは、共通試験の一つの要素であった学習指導要領が大きな存在に変わり、共通テストが学習指導要領のツールに成り下がったのではないかという懸念です。

共通テストの2枚看板だった英語4技能試験も記述式の出題(言語表現)も、もとをたどれば、どちらも学習指導要領が掲げる重点課題でした。それが共通テストの看板になったということ自体に、共通テストの危うさが表れています。その点は、いまなお「実施主体」であるはずの大学に十分留意いただきたいことです。

高大接続は、高校教育から大学教育への誘導のプロセスです。ただし、高校教育を延長しても大学教育に接続することにはなりません。

――入試改革の柱とされた学力の3要素(知識・技能、思考力・判断力・表現力、主体的に学ぶ態度)も恣意的なレトリックであると指摘しています。

学力の3要素が小学校から大学教育までを貫く教育目標だと、高大接続答申に書いてあります。学力の3要素はもともと、小・中・高の教育課程の目標を定めた改正学校教育法(2007年)の第30条2項からの抜粋です。3要素が小・中・高の学校教育にとって大事な目標であるのはわかりますが、それが大学教育にも適用できると考えるのは不可解です。学校教育法にもそのような記述はありません。行政の拡張解釈としかいいようがないところです。

共通テストを見舞った最大の異変は、試験の問題作成に行政が介入したことでしょう。学力の3要素が大学教育にも通用すると答申に書いたのは、行政が介入する根拠をつくりたかったからです。次期の学習指導要領を徹底させるには、共通試験を自らのテリトリーに引き込むことが最良の策と考えたのでしょう。

大学教員以外は試験問題に関与するな、と言いたいわけではありません。いまのアプローチが高大接続の改革に必要なステップなのか、疑わしいのです。

共通試験は高大接続を支える要です。試験問題は高校と大学の教育課程を媒介する役割を負っています。高校教科書をめくれば、ポロリと試験問題が落ちてくるわけではありません。高校科目と大学の専門科目の間をつなぐためには、学術の専門家である多数の大学教員を必要とします。

今回の高大接続改革は、そういう地道な高大接続を考慮せず、学力の3要素一つでこの問題を片づけようとしました。小・中・高までの教育課程と、大学の教育はやはり違います。これを同じだと強弁するのは強引すぎる設定です。改革の目的が、高大接続問題の外にある、と思わせるような疑いさえ浮かびます。

「高度な試験」のイメージで国民の目をごまかした

――今回の入試改革は、安倍内閣の教育再生実行会議から中教審の高大接続特別部会を舞台に、政治的な要素が強かったと思います。現場の文部官僚は上から話が降ってきて無理筋であることはわかっていたと思いますが、幹部は別の思惑があったのかもしれません。

「1点刻みからの脱却」、「一発勝負からの解放」、さらには「知識偏重から思考力重視」など、新聞の見出しを埋めるスローガンには事欠きませんでしたが、国民を納得させ、期待を沸き立たせるようなものはありませんでした。今回の改革の欠陥は、大義名分を欠き、誰のための改革なのかさえ、はっきりしないことです。

文科省は共通テストの主導権を牛耳ることには成功したのでしょうが、次に何をしようとするのか、不明です。この共通テスト騒動で国民からの不審が大いに高まったことは否定できません。

――基礎学力テストが議論の途中で消えたのも大きな問題です。大学進学者でも、一般選抜を受験するのは半数しかいません。基礎学力テストのほうが重要な課題だったのではないですか。

基礎学力テストの構想は、高大接続システム改革会議の最終報告の段階で消えました。なぜ消えたかは不明です。代わりに「高校生のための学びの基礎診断」が追加されましたが、体裁を繕っただけの別物です。

共通テストを受験するのは、大学・短大進学を志願する現役生の4割ほどです。高校教育全体でいえば、残り6割の生徒たちの学力問題が放置されている状態です。なぜ、基礎学力テストを構想から消してしまったのか、明らかにする必要があります(図参照)。

共通システムによる高大接続

――共通テストはセンター試験で測れなかったものを測る「高度な試験」と思われてきました。

センター試験は知識・技能中心の試験で、「思考力・判断力・表現力等」を測れるようなテストに変えなければならないと、高大接続答申には書いてあります。より高次の試験の開発を要求されている、と誰しも思ったことでしょう。ところが、どうもそういうことではありませんでした。すでに第1回の共通テストを見たわれわれとしては、疑問は深まるばかりです。試験の出来が悪かったとは思いません。「高度な試験」のイメージを過剰に膨らませて、国民の目をごまかした政策担当者の責任が問われます。

――高大接続改革はどうあるべきでしょうか。

何より、高大接続の現状をしっかり知ることが大切です。思いつきのような観念的な施策を振り回すのではなく、もっと現実に近いところから慎重に検討を積み上げていく努力が必要でしょう。目的は「改革」することではなく、少しでも問題を解決することです。



記事を書いた人
author
中村 正史
朝日新聞社 教育コーディネーター:長年にわたって教育・大学問題に携わり、1994年、偏差値と大学神話に代わる新たな大学評価を求めて「大学ランキング」を企画し創刊。2008~15年に編集長。「AERA with Kids」「医学部に入る」「ジュニアエラ」なども創刊した。朝日新聞出版取締役を経て、20年4月から現職。EduAアドバイザーも務める。

以上EduAより。

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