小島教育研究所

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一部国立大の共通テスト「情報」配点ゼロ予告に情報処理学会が反発 「不適切な入試を看過できず」

2022-10-13 | 情報Ⅰ

 情報処理学会は10月12日、大学入学共通テストで「情報」科目の配点を0点にすると予告した一部国立大学に対して、抗議する声明文を発表した。情報処理学会はこのような事態を“不適切な入試”と表現し、全ての受験科目で適切な配点をするよう強く求めている。

 全国86の国立大学で構成される国立大学協会は1月、2024年度実施の国立大学入学試験から「情報」を必須科目に加えると発表。22年度から高等学校の必須科目として「情報I」が順次導入されているのを受けての決定で、必須科目はこれまでの国語、英語、数学、理科、社会に情報を加えた6教科8科目になる。

 この方針を受けて、北海道大学など一部国立大学は24年度の入試では情報の成績は配点しない旨を9月に発表。北海道大学に理由を聞いたところ「新設の科目で前例がないため、問題の傾向や点数が不安定になると予想している。慎重な対応を行いたいため24年度は配点0にした。25年度以降についての予定は未定」と話した。

 情報処理学会はこのような大学の方針を「国立大学協会の基本方針を形骸化するもの」と非難。続けて「入試科目は点数化してその理解到達度を測定するために課すもので、配点しない科目の受験を強いるのは、入試の実施根拠そのものを喪失する」「高校教育の成果を測定する入試において配点しないというのは、高校教育におけるその科目の意義を否定することになる」と指摘している。




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情報教育充実を要請 文科省、全国の教委に

2022-06-06 | 情報Ⅰ
令和4年度から高校でのプログラミング教育が必修化される中、文部科学省が高校での情報教育の充実を求める事務連絡を全国の教育委員会に出していたことが6日、分かった。深刻な専門教員不足の環境改善が進んでいないことを重く見た文科省が一層の対策を各教委に促した。

高校では4年度、新たな学習指導要領に基づくカリキュラムがスタート。必修科目の「情報Ⅰ」ではすべての高校生がコンピューターのプログラミングを学ぶ。新要領で学ぶ高校生が初めて臨む7年度の大学入学共通テストでは出題対象に情報を追加。国公立大も同年度の受験に関し、情報を加えた6教科8科目の共通テスト受験を原則とすることを決めた。

一方、文科省の2年度の調査によると、全国の公立高校の情報担当の5072人の教員のうち、1210人が情報の免許を持っていないことが判明。文科省は今年度も教員不足が解消されていないとみて、4月に具体策を例示した事務連絡を発出。①情報免許保有者の計画的な採用の実施や配置の工夫②専門外の教員の情報免許取得促進③外部人材の活用④遠隔授業による複数校指導-などで環境整備を図るよう求めた。


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エクセル世界一に輝いた女子高生から学ぶ驚異のグラフ術

2022-05-12 | 情報Ⅰ
集英社オンラインより

マイクロソフト社の表計算ソフト「エクセル」の使用テクニックを競う世界コンテストで、日本の女子高生が初めて、世界一に輝いた。審査員に評価された見やすいグラフを、彼女はどうやって作っているのか。ポイントを聞いた。

2021年11月に開かれた、高校生以上の学生がMicrosoft Officeのスキルを競う「マイクロソフトオフィススペシャリスト(MOS)世界学生大会2021」において、福岡県立八幡高校2年生(当時)の中園愛美さんが表計算ソフト「Excel365&2019」部門で優勝した。日本人の高校生が世界一になるのは初の快挙だった。

同大会の試験時間は3時間半。ソフトに関する知識や操作スキルだけでなく、与えられた課題テーマに対する出場者自身の意見や、それを補足するための統計データの分析なども求められた。

「他の出場者とどう差別化するかを考えたとき、グラフの見やすさは必要だなと思いました。新聞や参考書などを基に、人々を惹きつけるグラフづくりを大会前にたくさん勉強しました」と中園さんは振り返る。

中園さんの強みは、グラフの「見栄え」。誰もがわかりやすいよう、できるだけシンプルにすることを心がける。それが世界大会本番でも活きた。そんな若き達人に、ビジネスシーンでも役立つエクセルのグラフ作成術を教えてもらった。

目に優しい色を使う
ビジネスの現場では、エクセルを使ってグラフや表を作成したり、それをプレゼンテーション資料に活用したりする機会は多い。けれども、パッと見ただけでデータの中身が頭に入ってくるようなグラフを作るのに苦労した経験を持つ人は少なくないだろう。

中園さんがグラフづくりにおいて何よりも気を付けているのが、その見やすさである。

「私は決してすごいことをしているわけではありません。まずはグラフを見て、ここの数値は高いとか、上がったり下がったりしているといった傾向をつかみます。その上で、強調したい部分の色を変えたり、補足説明の言葉を加えてみたりしています」

取り扱うデータの分量が多くなると、どうしても表示されるグラフやそれに紐づく数値の数も増えてしまい、乱雑で見栄えが悪くなってしまう。

「例えば、細い棒グラフがたくさん並んでいると見にくくなるので、グラフ1本1本を太くしたり、色をちょっと変えてみたりしています。あとは、グラフの数値の数を減らして、際立たせたいものだけに付けることもあります。その場その場でやり方は変わりますが、ごちゃごちゃしたビジュアルはやめて、シンプルさを心がけています」

© 集英社オンライン 提供
中園さんの作例。目に優しい色を選ぶのが特徴。その上で、強調したい部分の色は濃くしたり、フォントを大きくしたりと、とにかく見やすさを重視する

棒グラフの線は太くして、もっともデータが大きいところ(このグラフで言えば人数が多いところ)だけ色を濃くしている。また変化が激しい「1世帯当たり」人数は折れ線グラフにして変化量を見やすくし、人数もグラフに直接書き込んでいるのがわかる。

目立たせたいところでも、真っ黄色のような原色を使用するのではなく、マイルドな黄色にするなど、全体的に目に優しい色の中でメリハリをつけている。ただし、色彩の理論などを勉強しているわけではない。「数値が低いからブルーにしたり、高いからレッドにしたりと、自分の直感でやっています」と中園さんは話す。

折れ線グラフはマーカーを使おう
見栄えやデザインは、個々人の感性によるところも大きい。ただ、そうした感性に依存するのではなく、誰でもすぐに使えるエクセルの機能のうち、最低限これだけはやってみてほしいというものを中園さんは紹介する。

「折れ線グラフのマーカー(値の部分に使う丸などの印)は大事だと思います。マーカーを付けるだけでも見え方がだいぶ変わります。あと、データを範囲指定して自動的に生成されるグラフだと、縦軸の数字に沿って薄い横線が入りますよね。これを全部消すとスッキリします。折れ線グラフだったら、マーカーに数値を付けることができるので、毎回わざわざ縦軸の数字を見なくても済みます」

エクセルのグラフの自動生成にお任せすると、横軸に細い線が入る。中園さんはスッキリさせるためこれを全部消す
横線を消して、マーカー(折れ線グラフの丸い印)を使う。上のグラフと比較して、かなりわかりやすくなった
中園さんは続ける。

「その中で注目させたい数値のサイズを大きくしたり、太字にしたりする工夫はすごくいいと思います」。

ただし、フォントサイズや色の種類には注意が必要で、多用すればいいというものではない。中園さんが使うのはせいぜい2、3色。フォントサイズは、タイトルを一番大きくして、数値は基本的にそろえる。上述したように、強調したい場合にのみ、その数値だけ他よりも少し拡大したり、太くしたり、色を変えたりする程度だ。

「別に難しいことをやる必要はありません。簡単な工夫で見栄えはずっと良くなるはずです」と中園さんは笑顔でアドバイスする。

見栄えを良くしようと考えて、ついついグラフにいろいろな表現を盛り込みすぎになるが、逆に演出を抑えてシンプルに描くのが、中園流グラフ術の極意である。

新聞記事なども参考に独学でエクセルを習得
中園さんがエクセルの勉強を本格的に始めたのは高校1年のとき。学校の「情報」の授業で、Microsoft Officeソフトの「ワード」「パワーポイント」とともに触れたのがきっかけだ。

「3つの中で、エクセルが一番難しそうだと思い、チャレンジしてみたいという好奇心で選びました。難しいと思ったのは、ワードなどと違って計算式があること。でも、将来のためにも今のうちに勉強しておくことにメリットを感じました」

ソフトの基本的な操作方法は、参考書などを読んで独学で習得した。とりわけグラフや表に興味を持ち、新聞記事などを読んでは、「これはどうやってつくっているのだろう?」「こんな表現の仕方があるのか!」と独自の感性を磨いていった。教材はどこにでもあるのだ。今回、世界一になったことで、高校の先生からも「エクセルを教えて」などと言われたそうだ。

パソコン歴そのものは長く、幼稚園のときにはすでにタイピングソフトで遊んでいた。小学校に入り、母親が勤めるパソコン教室に通い始めてから、ますますパソコンを使う楽しさが増していった。そんな折に出会ったのが「毎日パソコン入力コンクール」だ。これは、毎日新聞社および日本パソコン能力検定委員会が主催する、タッチタイピングの速さや正確性を競い合う大会である。小学2年生で初めて全国大会に出場し、そこからパソコンソフトの操作技術を向上させる気持ちに火がついた。

過去には「毎日パソコン入力コンクール」全国大会で優勝した実績も
「負けず嫌いという性格もあって、うまくいかないと悔しいからもっとやろうとか、大会で良い順位を取るために頑張ろうとか、毎日練習していました。練習すればするほど成果は出るので、達成感を持って取り組んでいました」

中園さんの努力はしっかりと実を結び、小学6年生のときにコンクールで日本一に輝いた。

根っからのパソコン少女だった中園さんは、当然のように理数系だと思いきや、「数学は苦手で、バリバリの文系です。得意科目は英語」と言う。また、小学生のころは地域の祭りで太鼓を叩いたり、中学時代は陸上部で短距離走の選手だったりと、どちらかといえば体育会系であることにも驚いた。

将来は、データを駆使して商品の販売分析などを行うマーケティングの仕事に就きたいと、夢を語る。エクセルのデータなどを使って、資料づくりに悪戦苦闘しているビジネスパーソン諸氏も、中園さんのグラフ作成術から学べることはあるはずだ。

あなたも、エクセルでグラフに挑戦!!

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国立大学の「情報」必須化で2025年度入試は現役生のみの入試になる?

2022-01-15 | 情報Ⅰ
 昨年12月、大学入試センターは、2025(令和7)年度入試の課題とされていた「情報」の出題方法に加え、「情報」を得点調整の対象科目とすることを公表しました。報道によると、これを受けて国立大学協会は、一般選抜の受験者全員に「情報」の受験を義務づけ、基本となる受験パターンを6教科8科目とする方針を固めたとされています。高校の進学指導上での悩みの種がまた1つ増えたことになりますが、本当に悩ましいのは現在の高校1年生です。仮に既卒生として2025年度入試で難関国立大学受験に再チャレンジする場合、現役時とは異なり「情報」の受験が必須となってしまうからです。

ポイントは旧課程問題の出題と新旧科目間での得点調整


昨年、12月17日に大学入試センターが公表した「令和7年度大学入学者選抜に係る大学入学共通テストに関する『「情報」の出題方法』及び『得点調整の対象教科・科目』について」のポイントは次の2点となります。

1つは、新課程科目「情報Ⅰ」とは別に、現行課程で学んだ受験生に対応した「旧情報」科目も出題することです。2022年度4月から新高2生(現高1生)以上となる学年の生徒にとっては現行課程の「情報」科目なのですが、ここでは2025年度入試における対応をテーマとしていること、2022年4月から高校に入学する新高1生を対象とした新課程科目に対しては旧課程科目となることから「旧情報」と記すことにします。
この「旧情報」には「社会と情報」という科目と「情報の科学」という科目があり、どちらを履修するかは高校によって異なりますが、約8割の高校が「社会と情報」を履修しています。そこで大学入学共通テストの出題にあたっては、どちらの科目を履修していても受験生に不利益が生じたいよう、両科目の共通部分に対応した必答問題とそれぞれの科目に対応した選択問題を出題することとしています<図>。さらにこの「旧情報」の試作問題を作成・公表して、さらに配点も公表するという念の入れようです。

もう1つのポイントは、新課程生対象の「情報Ⅰ」と旧課程生対象の「旧情報」の両科目間で平均点に一定の差が生じた場合には、得点調整を行うとしたことです。新旧科目間で平均点差が大きく開いた場合、不公平感が生じて混乱する可能性もありますので妥当な措置と言えます。実は、1997年に行われた大学入試センター試験では、旧課程生対象の「数学Ⅱ」と新課程生対象の「数学Ⅱ・B」で20点以上の平均点差が開いてしまい、受験界は大混乱しました。通常は既卒生の平均点が現役生を上回るのが常ですが、この時は既卒生の平均点の方が20点以上低いという従来にはない結果でした。問題の難易度に明らかな差があったのですが、この時は得点調整が行われませんでした。既卒生でも新課程科目を選択することができたのですが、多くの既卒生は旧課程科目を受験しており、救済もされず、悲劇としか言いようのない状況でした。今回はこの点については改善されています。

国立大学の一般選抜は「情報」必須で6教科8科目がスタンダードに


大学入試センターの発表により、課題となっていた旧課程生への対応が決まったことで、国立大学協会が、国立大学の一般選抜では原則として「情報」を必受験科目とし、6教科8科目を基本パターンとすることを決めたと報道されました。正式な決定は1月末の国立大学協会総会でなされるとされています。もちろん国立大学協会も「情報」科目への取り組みは高校間で差が大きいことも理解していますが、それは国立大学協会が対応する問題ではなく、文部科学省や各教育委員会が対応すべき問題だとして、今回の決定に至ったようです。

確かにそれは正論ですが、高校で進学指導を行う現場では、悩みの種がまた1つ増えたと言うのが実感だと思います。多くの高校では「情報Ⅰ」は、高校1年生で履修するのが一般的です。英語、国語、数学などのように学年が進行しても、学習内容に関連がある場合は、高校1年生の時に履修した科目であっても、知識や思考はつながっています。ただ、「情報Ⅰ」の場合はそうではありません。履修してから、しばらくのブランクを置いて、高校3年生になってもう一度、試験のための勉強を始めるのは新たな負担と言わざるを得ません。

これが旧課程生となれば、現役生よりもさらに1年以上のブランクが開いているため、さらにその負担は重くなります。仮に各大学が「旧情報」の配点を低く抑えたとしても、必受験科目としての重みがなくなる訳ではありません。

「情報」必受験を嫌い、2025年度入試を受験する既卒生は減少する?

かつて新課程入試は旧課程で学習した受験生には有利になるとされた時期もありました。学習指導要領が改訂される度に学習する内容が減っていたためです。これは学習内容の削減ではなく、“精選”と言われていました。しかし、2000年代初頭の「学力低下論争」以降は、必ずしも旧課程生が有利だとは言えない状況になってきています。

また、受験生の立場で考えても、自身が高校時代に学習した科目とは異なる科目の受験対策をしなければならないことや、同じ科目名でも内容が変わっているケースもあり、それだけでも大きな負担です。今回は、さらに「旧情報」必受験が加わりますので、2025年度入試に再チャレンジするのを嫌って、現役(2024年度入試)の時に志望を下げてでも大学に入ってしまおうと考える生徒が多くなることも予想されます。

ただ、全ての受験生が国立大学を志望する訳ではありません。難関私大を目指して再チャレンジする受験生もいます。しかし、大学入学共通テストを必受験とする入試方式をメインとする難関私立大学は増えています。そのため、今後の難関私立大学の「旧情報」への対応が注目されるところです。

それに加えて、予定では2022年の秋冬頃とされている「情報」科目の試作問題の公表は注目度大です。「旧情報」も試作問題が公表される予定ですので、プログラミングを扱わない「社会と情報」の選択問題の内容によっては、既卒生が有利となる可能性もあります。得点調整が実施される予定になっていますが、平均点差が20点以上にならず10数点の差に収まり、得点調整が行われなければ既卒生は、そこでのアドバンテージを保ったまま2次試験に臨むことが可能です。逆に試作問題が新課程「情報Ⅰ」寄りの出題内容だった場合、2025年度入試では既卒生が本当にいなくなってしまうかも知れません。



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高校の新しい情報科、一斉授業だけではNGな理由   元文科省・鹿野利春「"やめる勇気"も大切」

2022-01-05 | 情報Ⅰ

2022年、注目すべき教育界のトピックの1つは、やはり新しい「情報科」だろう。4月に高等学校では新学習指導要領が施行され、「情報Ⅰ」が共通必履修科目となり、23年度からは選択科目「情報Ⅱ」が新設される。現在、全国の高校ではどれくらい準備が進んでいるのか、この時期に教員や学校が準備で押さえておくべきポイントは何か。文部科学省の高等学校情報科担当の教科調査官を務め、新学習指導要領「情報科」および解説の取りまとめに携わった、京都精華大学メディア表現学部教授の鹿野利春氏に話を聞いた。

2022/01/05
制作:東洋経済education × ICT編集チーム

全員「情報Ⅱ」まで学ぶと「ジェンダーギャップの解消」に

――2022年度4月から新しい情報科の授業がスタートします。これまでの学びとどう異なるのか、ポイントをお聞かせください。

まず、従来の「社会と情報」と「情報の科学」を「情報Ⅰ」に集約した点が大きなポイントです。日本人の素養として、両方の領域について全員が学びましょうというわけです。目標は「問題の発見・解決」で、そのためのツールとして3つを扱うことになりました。


鹿野利春(かの・としはる)
京都精華大学メディア表現学部教授
石川県の公立高等学校、教育委員会を経て2015年に文部科学省の高等学校情報科担当の教科調査官を務める。これまで新学習指導要領「情報科」および解説の取りまとめ、「情報Ⅰ」「情報Ⅱ」の教員研修用教材や「情報」実践事例集の取りまとめ、GIGAスクール構想、小学校のプログラミング、情報活用能力調査などに関わる。21年4月から現職。現在、文部科学省初等中等教育局視学委員(STEAM教育)、経済産業省「デジタル関連部活支援の在り方に関する検討会」座長、国立研究開発法人情報通信研究機構主催「SecHack365」実行委員長、大阪芸術大学アートサイエンス学科客員教授も務める


1つ目は、「プログラミング」。小中学校では授業が始まっていますが、引き続き高校でも全員必須で学びます。


2つ目は、「情報デザイン」。これまではWebページやポスターを作成する際の工夫レベルの内容でしたが、今回からは例えば「情報を論理的に構造化したうえでWebサイトのデザインに入っていく」ことができるような、発展的かつ体系的な内容になりました。

そして3つ目が、「データの活用」。新学習指導要領では、数字をベースに物事を考える力の育成に重きが置かれています。そのため、小中高を通して統計教育が強化されているのですが、高校の新学習指導要領の解説には、「情報Ⅰ」と「数学Ⅰ」との連携が今まで以上に詳細かつ具体的に示されています。「情報Ⅰ」も「情報Ⅱ」も2単位しかないので、数学と連携することで相乗効果のある学びが期待できます。また、より発展的な内容となる選択科目「情報Ⅱ」には、「データサイエンス」が盛り込まれ、「数学B」と連携することになっています。

私の思いとしては、文理関係なく、高校で「情報Ⅰ」と「情報Ⅱ」を学び、さらに大学に進んでデータサイエンスをしっかり学んでいただけるといいな、と。全員が学ぶことで、ジェンダーギャップの解消にもつながると考えています。

中学で生じた「格差」は授業を変えればプラスにできる

――情報科担当の教員に求められるスキルや心構えについてお聞かせください。

5教科のように先生が優位な立場で生徒に教えるという、従来の形で情報科の授業をしてもうまくいきません。体育や音楽と同じで、高校生にもなれば絶対に先生よりできる子がいます。情報科はそういう状況にあるという認識と覚悟を持ち、授業への向き合い方を変えていただきたい。目的は、教えることではなく子どもたちの力を伸ばすことです。

だから、例えばプログラミングもできるに越したことはありませんが、「100%全部できなければ」と身構える必要はないのです。どんな環境やどんな形の教材を準備するべきか、どう学ばせるかといった授業設計や配慮を考えることが大事です。

また、数学科との連携が重要になるので、まずは学校内で人間関係をつくっていただきたい。情報収集もしておくこと。情報科の教科書はもちろん、数学科の教科書も連携部分については見ておく。中高接続の観点から中学校の技術・家庭科の技術分野の教科書もチェックして、プログラミングや統計をどう教えているか理解しておいたほうがいい。可能なら、中学校の先生に話を聞いたり授業見学に行ったりできるといいですね。

学校は教育課程の詳細をこれから詰めていくはずです。「数学科と情報科ではこれをやり、総合的な探究の時間でしっかり活用する」といった教科間のタイムラインでの連携なども含めて全体構造の詳細を整えていただきたい。それをシラバスや「総合的な探究」実施マニュアルみたいなものに反映する必要もあるでしょうし、やるべきことはたくさんあります。

――小中学校ではプログラミングの授業が始まっていますが、自治体や学校によって進度や内容にばらつきが出てきそうです。高校ではそのあたりの格差にどう対応すればよいでしょうか。

ばらつきをどう捉えるかですね。先生が教えることが前提なら、それはマイナスになります。しかし、子どもたち同士が教え合う授業を想定するなら、プラスに働くでしょう。ばらつきが解消されるだけでなく、誰かに教えてあげて理解してもらう喜びは自己肯定感にもつながるのではないでしょうか。


文科省が打ち出している「主体的・対話的で深い学び」は、先生が一方的に教える授業を続けていたら絶対に実現できません。子どもたち同士で教え合う場をつくったり、何かに向けて頑張るような設計をしたり、どうしたら子どもたちは楽しいのかというところまで考えないと、「深い学び」には到達しないのではないでしょうか。情報科も、子どもたちの深い学びを考えるならば、授業スタイルは変えていくべきだと思います。

また、現在では無料のものも含めてWeb教材がたくさんあるので、個別最適に学べるツールも活用しながら格差を縮めていくことも可能です。教材に任せられる部分はあるはずで、先生が教えたほうがいい部分や子どもたちが教え合うほうがいい部分もある。今は、いろんなやり方をどう組み合わせればいいかを考える時期です。ロボットや外につなぐ機器などが必要な場合には、間に合うなら予算申請もやっておきたいですね。

――現状、高校の情報科の準備は進んでいますか。

都道府県によって若干の差はありますが、公立も私立も準備は進んでいます。私立の中高一貫校では、すでに情報科の指導が売りになっている学校も出てきています。

1人1台の端末準備も、自治体の予算で賄うところもあれば家庭で購入する自治体もあって方針はバラバラですが、22年度の高校1年生の大部分が自分の端末が持てるでしょう。4月以降、授業の好事例がどんどん出てくることを期待しています。

一方、公立校の人材配置がうまくいっていない印象はあります。ただ、情報科の免許を持っている人の数は、47都道府県のうち45の自治体で足りています。現在、情報科のみを教える専任教員は約2割、ほかの教科との兼任教員が約5割、情報科の免許を持っていないけれど教えている教員が約3割いますが、この3割は人材配置をしっかりやれば解消できるはず。人材が足りていない自治体についても、文科省から1人の教員が複数の学校を回るための手引きなども出ているので対応は可能なはずです。

2025年度から大学入学共通テストに「情報」が入ってきます。詳細は決まっていませんが、高校が「詳細がわからないからやらない」という姿勢では、生徒が不利になってしまいます。入試で扱うとなれば保護者も黙っていないでしょうし、今後学校の対応は進むと思います。

新しい授業づくりには「やめる勇気」が必要だ

――GIGAスクール構想の現状をどうご覧になっていますか。

全国一律で1人1台の情報端末が入ったのはいいこと。ただ、ICT活用の度合いは、自治体ごとに差が出ているようです。文科省としては「クラウド・バイ・デフォルト」を原則としているのですが、そこまで到達していません。

情報端末を十分に活用できている学校も多くないと思います。でも、それは仕方ない。カメラの撮影機能など単機能から使い始めて、だんだんクラウド共有などにステップアップしていけば、しだいに自治体ごとの差は埋まっていくと思います。

そのためにも今、早急に対応しなければいけないのは、学校におけるインターネットの接続速度の改善。ここは間違いなく自治体の仕事です。

――新たな教育を受けた子どもたちが社会人になると、どのようなインパクトがあると思いますか。

プログラミングがいかに大変か、それによって何ができるかなどについて、みんながわかるようになります。だから例えば、会社でシステムの導入を検討する際に「ちょっと君、考えてよ」と社員に投げる社長が消えると思います。経営者側でコストを含めどれだけのメリットがあるのか判断できるようになり、高く売りつけられたり不当に買いたたかれたりすることもなくなるでしょう。

また、社員がシステムを使いこなすだけでなく、足りない部分は社内で作れるようになるので生産性が格段に上がります。とくに公共機関の生産性が上がり、その分サービスを充実させることもできるはずです。

しかし、すでに言われていることですが、新しい産業ができる一方、言われたことを言われたとおりにやる仕事はAIやロボットに奪われてしまう。国際競争力の観点からも、自分で何かを作れる子、何らかの価値創造ができる子でないと、かなりつらい世の中になるのかなと思います。

情報科は情報デザインやプログラミング、データ活用など、積極的に何かを作っていく教科です。子どもたちが将来苦しい思いをしないよう、情報科を通じて力をつけてあげるのはもちろん、新学習指導要領が育成を目指す「思考力・判断力・表現力」や「学びに向かう力」などを評価する仕組みづくりも併せて重要になるでしょう。

――教育現場にメッセージをお願いします。

情報科をはじめ、新しい授業づくりには、働き方改革が必要です。業務の見直しをせずに新しいことをやっても忙しくなるだけで、それは「働き方改悪」になります。

ICTを使ったり職員会議のやり方を変えたりするだけでも楽になるでしょうし、保護者のしつけと学校の指導の線引きもしたほうがいい。負担の大きい服装や頭髪の指導も米国にはないですよね。部活動も残業代が出ないなら、先生方にやるかやらないかの選択権を与えるべき。先生の異動も、地域や保護者の意向を踏まえながら、教育の継続性や発展性をある程度担保できるような配慮のある人事にしてもよいと私は思います。

とにかく働き方改革の基本は、何かをやめること。ぜひ、現場の先生方は「やめる勇気」を持って仕事を見直し、新しい授業をつくっていただきたいと思います。

(文:編集チーム 佐藤ちひろ)







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~高等学校の共通必履修科目「情報Ⅰ」に対応し、シラバス改訂版を公開~ IPA

2021-11-17 | 情報Ⅰ

 IPA(独立行政法人情報処理推進機構、理事長:富田 達夫)は、国家試験であるITパスポート試験(iパス)について、高等学校の共通必履修科目となる「情報Ⅰ」に対応した出題範囲やシラバスの改訂(iパス6.0)を実施し、IPAのウェブサイトで公開しました。

 URL:https://www.jitec.ipa.go.jp/1_00topic/topic_20211008.html

 iパスは、ITを利活用するすべての社会人・学生が備えておくべきITに関する基礎的な知識が証明できる国家試験です。近年ではデジタルトランスフォーメーションの進展に伴い応募者数が顕著に増加しており、令和2年度の応募者数は前年度比24.6%増の14万人に上っています。2009年度の試験開始から2021年8月末現在までの応募者総数は約131万人、合格者総数は約59万人となり、多くの社会人・学生から活用されています。

 AI、ビッグデータ、IoTをはじめとする新技術が企業活動や国民生活に浸透するなか、学校教育においても、小・中・高等学校を通じてプログラミング教育が段階的に実施されています。高等学校においては令和4年度から、全ての生徒が必ず履修する科目(共通必履修科目)として「情報Ⅰ」が新設されます。政府の「AI戦略2021」(令和3年6月11日統合イノベーション戦略推進会議決定)(*1)においても、「情報Ⅰ」の新設を踏まえ、ITパスポート試験の出題の見直しを実施し、高等学校等における活用を促すことが示されています。

 このような状況を踏まえIPAでは、高等学校学習指導要領「情報Ⅰ」に基づきiパスの出題範囲、シラバス等の見直しを実施し、プログラミング的思考力等の出題を追加することとしました。今回の見直しの適用時期は、2022年4月の試験からです。具体的な見直しの内容は以下のとおりです。

■見直しの内容
(1)「期待する技術水準」
 iパス対象者に期待する技術水準として、高等学校の共通必履修科目「情報Ⅰ」で重視されるプログラミング的思考力、情報デザイン、データ利活用などを明示しました。
(2)「シラバス」Ver.6.0
 iパスに必要となる知識の幅と深さを体系的に整理、明確化した資料であり、学習指針となる「シラバス」に、プログラミング的思考力、情報デザイン、データ利活用などに関連する項目・用語例を追加しました。具体的には、擬似言語などによる表現方法、プログラミングの目的を理解することを目標に加えています。プログラム言語の種類や特徴を理解することなども盛り込んでいます。情報デザインについては、情報デザインの考え方や手法を理解することを目標に、デザインの原則(近接,整列,反復,対比)といった用語例を追加しています。情報メディアについては、コンピュータにおける文字、音声、画像などの仕組みを理解することを目標として、代表的な音声・静止画・動画ファイル形式の特徴などを追加しています。
(3)出題内容
 今回の改訂のポイントとして、プログラミング的思考力を問うため、擬似言語(アルゴリズムを表現するための擬似的なプログラム言語)を用いた出題を追加します。擬似言語を用いた出題については、サンプル問題をあわせて公開します。なお、試験時間、出題数、採点方式及び合格基準に変更はありません。

 IPAは、今回の改訂が、情報Ⅰを学習した学生によるiパスの活用度合いの増加、及び情報Ⅰを学習していない社会人の対象知識のアップデートにつながり、わが国全体のデジタルリテラシー向上に大きく寄与することを期待しています。

 改訂版の「試験要綱」Ver. 4.7、「ITパスポート試験 シラバス」Ver. 6.0、サンプル問題等については、試験内容・出題範囲別ウィンドウで開くをご覧ください。


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IPAが高校「情報Ⅰ」の共通必須科目化に伴いITパスポート試験の内容を改訂

2021-11-17 | 情報Ⅰ

IPA(独立行政法人情報処理推進機構)は、令和4年(2022年)度から高校で「情報」が共通必履修科目となるのに伴い、ITパスポート試験の出題範囲や「シラバス」の改訂実施を発表した。

ITパスポート(iパス)とは、「ITを利活用するすべての社会人・学生が備えておくべきITに関する基礎的な知識」を証明するための国家試験。開始は2009年。2021年8月末までの間に約131万人が受験し、約59万人が合格している。

日本国民のデータリテラシーに関する幅広い知識を身に付けさせることがiパスの狙いだが、学校教育においては、言語能力、問題発見、解決能力などに加えて情報処理能力も教科横断的に育てる旨が新学習指導要綱に明記され、さらに令和4年度からは、高校で「情報Ⅰ」が必須履修科目として新設されるなど、プログラミング的思考力、情報モラル、情報活用能力を育てる教育の充実がはかられることになっている。

そうしたなか、IPAは、高等学校学習指導要領「情報Ⅰ」にもとづいて、iパスの出題範囲と、ここでは試験の合格を目指した学習指針に利用できる資料を意味する「シラバス」(ver6.0)の見直しを行った。内容は次のとおり。

期待する技術水準:高校の「情報Ⅰ」にもとづき、プログラミング的思考力、情報デザイン、データ利活用などを追加
出題範囲およびシラバス:高校の「情報Ⅰ」に関連する項目、用語例を追加
出題内容:プログラミング的思考力を問う擬似言語を用いた出題を追加。情報デザイン、データ利活用のための技術、考え方を問う出題を強化
試験時間、採点方法、合格基準に変更はない。また、擬似言語を用いた出題について、擬似言語の記述形式やサンプル問題が公開されている。実施は2022年4月の試験からとのことだ。


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Society5.0が目指すもの。

2021-10-31 | 情報Ⅰ
 詳しくは
   http://www.keidanren.or.jp/policy/2018/095_gaiyo.pdf
をご参照下さ。

今後の日本の進む道が提示してあります。

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共通テスト「情報」、浪人生に別問題 初出題の25年 文科省方針

2021-09-29 | 情報Ⅰ

 2025年の大学入学共通テストで初めて出題される教科「情報」について、文部科学省は、浪人生向けに別の問題を出題する方針を決めた。現役生として25年の共通テストに臨む学年と、それより上の学年では「情報」の授業で学ぶ内容が異なるためで、この年に限って経過措置として浪人生向けの問題を用意する。

 教科「情報」は、来年度の高校1年生から順次適用される新学習指導要領に基づき、プログラミングやデータ分析などを学ぶ「情報Ⅰ」(必ず履修する科目)と、発展的な内容の「情報Ⅱ」(選択科目)に再編される。一方、今の高1以上が学ぶ現行指導要領では、プログラミング学習やデータ分析は必修でない。

 文科省は、来年度の高1が高3になって臨む25年の共通テストから「情報Ⅰ」を出題科目に加えると今年7月に発表。そのうえで、大学・高校の関係者らと、同年の共通テストでの浪人生の取り扱いについて協議を重ねてきた。その議論が28日までにまとまり、現行の指導要領に基づいた「情報」の問題を浪人生向けに用意し、この問題と現役生向けの問題を選べるようにすると決めた。現役生は、浪人生向け問題を選ぶことはできない。

 指導要領の改訂に伴う浪人生への経過措置をめぐっては、15年の旧大学入試センター試験で、数学・理科で旧指導要領の内容を反映した別の問題が用意されたことがある。

 25年の共通テストでの「情報」の扱いについては現在、国立大学協会(国大協)で議論が行われている。国立大の受験生に対し、従来の5教科7科目に「情報」を加えた6教科8科目を課すのを原則とする案が浮上し、賛否両論がある。国大協は11月にも方針を決める見通しだ。

以上朝日新聞デジタルより




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情報処理学会作成 高等学校 情報Ⅰ用研修動画 第4章ストーリー①を視聴できる。

2021-09-28 | 情報Ⅰ
第4章ストーリー1 情報システム

出演:大場 みち子(公立はこだて未来大学)、中野 由章(工学院大学附属中学校・高等学校)

教材:高等学校情報科「情報Ⅰ」教員研修用教材 第4章 情報通信ネットワークとデータの活用

https://www.mext.go.jp/content/20200722-mxt_jogai02-100013300_006.pdf



1.情報システム(1)情報システムとは
https://youtu.be/vhzigKXFhz0

1.情報システム(2)情報システムの具体例
https://youtu.be/JKVX0v6Xw_Y

1.情報システム(3)情報の活用
https://youtu.be/ZfAxhLMjHqc

1.情報システム(4)オープンデータとは
https://youtu.be/-mRm6zeV8S8

1.情報システム(5)オープンデータの活用
https://youtu.be/Qf4oB_9BrNo

1.情報システム(6)オープンデータの組み合わせで
https://youtu.be/KzoemRhGw9g


イラスト:山本 優歌

音楽:辰己 丈夫(放送大学)

台本:大場 みち子(公立はこだて未来大学)、安田 豊(京都産業大学)、中野 由章(工学院大学附属中学校・高等学校)

監督・制作:大場 みち子(公立はこだて未来大学)、安田 豊(京都産業大学)、奥村 晴彦(三重大学)、辰己 丈夫(放送大学)、高橋 尚子(國學院大學)

※ 以上の内容をwordにコピー&貼り付けてご使用下さい。


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