MARU にひかれて ~ ある Violin 弾きの雑感

“まる” は、思い出をたくさん残してくれた駄犬の名です。

Borodin の弦楽四重奏曲

2009-01-25 00:03:07 | 私の室内楽仲間たち

01/25  私の音楽仲間 (13) ~

        Borodin弦楽四重奏曲第2番


          私の室内楽仲間たち (12)




 この集いは、すでに何度かお読みいただいたグループです。




   この集いは、すでに何度かお読みいただいているグループです。

         これまでの 『私の室内楽仲間たち』





 今回のメンバーは、Violin が私、U.さん、Viola B.さん
チェロ Toshiyuki さんです。 いずれも何度かご一緒して
いる方々です。




 チェロの Toshiyuki さんをこの場でご紹介するのは初めて
ですが、室内楽歴 "10×∞ 年" と、たとえ豪語なさっても、
誰もが認める大ヴェテランです。 弾いたことのない曲は無い、
また、パート譜が手元に無い曲も "無い" (!) のでは…、
と思えるほどの、経験や蔵書をお持ちです。

 そして、いつも自動車に譜面台を何本も、私たちのために
積み込んでおられます。 その上、おやつのための何種類
かの食材も! おなじみのSa.さんと相談の上です。





 音源です。




 "Borodin Quartet" plays Borodin Quartet #2, in D Major




 [Ⅰ Allegro moderato 2/2]

 [Ⅱ SCHERZO Allegro 3/4]

 [Ⅲ NOCTURNE Andante 3/4]

 [Ⅳ FINALE Andante - Vivace 2/4]





 大変有名で美しい曲ですが、合せづらい面をいくつも持って
おり、"聴かせる" のは難しい曲です。




 第Ⅰ楽章は二拍子系ですし、テンポが速いわけではない
のに、なぜ "様になりにくい" のでしょうか? それは、おそらく
"白玉の音の伴奏音形" にあると思われます。

 通常はピアノの左手に当たるはずのチェロが、この曲では
メロディーを奏でることが多い上に、たとえ "頭打ち" がある
ときでさえ、書かれているのは全音符や二分音符です。

 長さを大事にしながらも、ほどよくリズミカルに弾かなければ
いけないのですが、誰がやっても、これが難しい…。

 ということは、
"周囲の人間にはリズムが伝わりにくく、テンポも不明瞭に"
なりやすい危険をはらんでいることになります。




 同じことは、チェロほどではないにしても、他のどのパート
にも共通する問題です。 また、頭打ちではなくても
"シンコペーション" という形で現われてくるので、さらに
引きずりやすくなります。




 対策と言っても即効薬は無く、一つ一つの

白玉の音符の、"音の形" を弾き分ける

日頃からの意識、研鑽、努力が必要でしょう。




 「白玉の音符は太い」という、視覚的な先入観が邪魔を
することもあるでしょう。 でも、これが "後膨らみ" になると、
テンポは延びます。 かと言って、"鋭く短く弾く" わけには
いかない。

 それが、"音の形" という表現の意味です。

 音楽には "リズムの長音符" もあれば、"歌の短音符" も
あります。




 この楽章の場合を言葉で説明するとすれば、音符の
後半が "<" よりは "" のような形の音が必要です。

 かと言って、"弓は止まらない" (!) ような音です。
減少するのは弓の "重さ" であり、"スピード" ではない
のです。




 また、これらの白玉音符は "大きくなってしまいやすい"
ので、他の大事なモティーフを音量的に邪魔しやすい
のも、お互いに聞きづらい原因でしょう。







 第Ⅱ楽章はそれほど合せづらくはないのですが、
移弦が難しくて音になりにくい箇所があります。 特に
チェロは大変です。

 また、"一つ振りの三拍子" でテンポは速く、そして
細かく変化するのも難点です。




 私自身は、ゆっくりめのところで Violin が二本で
三度を奏でながら動く箇所があるのですが、U.さんが
とても丸い音で、しかもテンポを正確に合わせてくれた
ので、音程もフィーリングもピッタリ合って、とてもいい
気分を味わえました。





 そして、余りにも有名なノクターン。 これもチェロが
大活躍です。

 低音側に回る、Viola のB.さんの音が、まさに聴きもの
でした。 「この曲は10年ぐらい弾いてない」とおっしゃり
ながら、随所で頑張って全体を支えてくれました。




 再び問題になるのが、シンコペーションの伴奏音形。
ただでさえ引きずりやすいし、音符同士が無関係な
"バラバラ事件" にならぬよう、気をつけねばなりません。

 テンポ自体の速い遅いの問題ではなく、一小節の
三拍をどのように関連付け、一息のフレーズを感じ
させるかでしょう。




 中間部ではテンポが軽くなるので、音も前よりは軽く
しなければなりません。





 第Ⅳ楽章。 ついに、待ちに待った "短い音符の伴奏音形"
が出てきました。

 しかし、これも実に弾きづらく書いてあります。

 移弦が絡んだり、四つの八分音符のうち、二つ目と三つ目
だけが同じ音だったり、三つ目は休符だったり…。 一筋縄
では行かない作曲家です。

 この八分音符から私が思い浮かべるのは、歌劇
『イーゴリ公』の序曲で、同じような音形があります。




 もう一つ難しいのは、2/4拍子で書かれた一小節を
"一拍 のように感じながら、四小節を一つのフレーズ
として楽譜を読んで行かねばならない点です。

 理屈では解っていても、目がなかなか追いつかない。
U.さんも私も、四小節を一まとめに、鉛筆で楽譜に
書き込みをしながらの奮闘です。

 しかし、いつも四小節かというと、そうでもない。
そういう不規則な箇所に足を掬われながらの演奏
でした。





 さて、休憩。 別の部屋で頑張っていた、もう一グループと
合流です。

 この日は、ちょうどSa.さんの誕生日でした。 昨年末の
クリスマス・ケーキに続いて、今日もケーキが! おめでとう
ございます。




 実は、後で知ったのですが、この翌日はU.さんの誕生日
でした。 おめでとうが言えなかった。




 そして実は、さらにその翌日は私の…。

 でも、休憩が終わるまで私は黙っていました。

 なぜならば、"甘いケーキには罠がある" という痛い体験を、
白いクリスマス・ケーキの折に味わったからでした。



 後半の曲は、シューベルトの『死と乙女』。 それだけでも
不吉な予感がするのですが…。