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飾釦(かざりぼたん)とは意匠を施されたお洒落な釦。生活に飾釦をと、もがきつつも綴るブログです。

永遠の妖女#3・・・「サロメ」の変容/井村公江(新書館)①

2008-02-13 | サロメ
「サロメ」の変容―翻訳・舞台/・井村公江(新書館)

日本におけるサロメ受容の歴史を解説した本です。井村君江さんという方はイギリス文学が専門のようです。以下は、備忘録として適当な内容の引用・抜粋です。(要約ではありません)


・明治の代表的な小説家・森鷗外はオスカー・ワイルドの死後7年後の明治40年に「サロメ」を発表、その2年後に戯曲の本編を翻訳したも小林愛雄による翻訳「悲劇のサロメ」が発表されたためこちらの訳の方が早く日本初となったがそのまま埋もれてしまった。

・日本で始めてオスカー・ワイルドの「サロメ」が上演されたのは、大正元年11月横浜のあったゲイティ座でおこなわれた外人喜歌劇団アラン・ウィルキイ一座の公演。サロメを演じたのはハンター・ワッツという女優であった。

・その2年後の9月、島村抱月と松井須磨子の芸術座が、帝国劇場で、中幕物として「サロメ」が上演された。日本人によるはじめてのワイルドの「サロメ」上演であった。

・松井須磨子主演の「サロメ」はその死までの7年間で127回の上演数を数えており、当り役となった。彼女が古代オリエント王女サロメとして結った丸い輪の形にした「かもじ」(つけ毛)が「サロメ巻き」と呼ばれて売られ、頭髪にピンでとめて飾ることが流行したそうである。

・松井須磨子の「サロメ」を演出したのはイタリア振付師ジョバンニ・ヴィットリオ・ローシー。彼が当時の演劇界に与えた功績は多大なるものがあるものの、島村抱月と中村吉蔵(翻訳)は、ローシーの「サロメ」演出に全面的に同意しておらず新聞紙上で論争があったとか。

・大正4年には「須磨子の帝劇のサロメ」に対して「貞奴の本郷座のサロメ」、川上貞奴演じるさ「サロメ」が本郷座で上演される。

・そのサロメを観た奇術師・松旭斎天勝が「貞奴夫人のサロメも、やはり私の求めるサロメではなかった」と有楽座サロメを演じた。天勝がブラジャーの中から七色のヴェールを取り出して踊るという奇術も用いたそうな。

・関東大震災の前後の大正7年から12年頃、舞踊や音楽をつけて自由に改作したサロメが浅草でひんぱんに上演された。その浅草で演じられ踊られたサロメ及びサロメ・ダンスは原作と比べかなりへだたったエロティックなオリエント・ダンスを見せる際物になっていたようだ。
・「サロメ」に人気があったのは、その半裸体姿に魅力があったのだと思う。レビューの脚線美も見られず、ストリップ劇場など夢想もしなかった時代だかから、乳隠しと腰飾りだけで踊る女優の肉体を、舞台の上でたっぷり一時間近く堪能できることは、当時の見物にとっては絶大の魅力であったに違いない、と俳優・田中
栄三の言葉。

・女性の肉体の動きの美をみせるエロティックな要素と、銀の皿にのせられた生首という怪奇趣味とが人々の関心を惹いて、本来のワイルドが示したかった意向からそれて、サロメは大衆の興味に向く通俗性をもった映像に一時は変容してしまった。

・文豪・芥川龍之介の未定稿に「サロメ」という創作劇がある。それは大正時代、そしてワイルドに対するパロディになっており、新しいサロメ像を構築しようとしたがそれが筋の展開をはばむ制約となってしまい、執筆を続けることをやめてしまったとも推測される。

・日夏耿之介は「サロメ」を「院曲撒羅米」として翻訳し昭和13年に発表した。三島由紀夫は「瑰麗にて難解である」しかし「口に出して読んでみると、力があり、リズムがあって、直に心に触れて来る名訳である」と評した。そこで、各訳者の翻訳比較あり。
  How beautiful is the Princess Salome tonaght!
         ↓
 「今宵のあの撒羅米公王(サロメひめ)の嬋娟(あでやか)さはなう!」日夏耿之介・訳
 「何とサロメ様の今夜の美しくみえることよな」小林愛雄・訳
 「サロメ女王の今夜美しく見える事はどうだ」森鷗外・訳
 「サロメ女王の今夜のお美しさと云ったら何うだ」中村吉蔵・訳
 「サロメ王女は、今夜は、まあ、何といふ美しさだ!」若月紫蘭・訳
日夏はbeautifulという語を、嬋娟さという語を使用している。そして感嘆するさまを表わすのに語尾を「・・・・・・なう」の詠嘆調で終わっている。

・三島由紀夫は先の日夏耿之介訳の「サロメ」を2度舞台で演出している。何と2度目は公演の3ヶ前に自決している。つまり自分の死後の遺言を託した形で上演されたのである。三島が生涯で初めて手にした文学作品が実は「サロメ」であったこと。三島の人生の出発と終焉にサロメが位置しており三島文学の円環を閉じる役目をしている。



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