骨太・今村昌平の映画ＮＯ．５・・・『果てしなき欲望』①

果てしなき欲望

■製　作：日活　
■製作年：１９５８年
■監　督：今村昌平
■出　演：渡辺美佐子、西村晃、小沢昭一、加藤武、殿山泰司、長門裕之

突き進む機関車の車輪の部分をローアングルでとらえた映像からこの映画は始まる。『果てしなき欲望』のタイトルどおり、それは“欲望という名の機関車”に相違ない。そしてサスペンス風の音楽と共に男達が、正午という時間に合わせて駅前に集まってくる、一癖も二癖もありそうな輩たちだ。１０年前に防空壕に埋めたモルヒネを掘り出し、それを売りさばいてひと儲けをたくらんでいる、欲の皮が張った連中だ。

　殿山泰司―その風采からは意外な小心者、中小企業のオヤジ風ラーメン屋
　西村　晃―狡猾でケチで本心を見せない薬剤師
　加藤　武―見るからに暴力的で単細胞のヤクザ男
　小沢昭一―中学教師と云えばそう見えなくもないが、実は一番したたかな男
　　　and
　渡辺美佐子―着物を粋に着こなし高笑いしながら登場する悪女

登場人物それぞれがきっちり性格分けがなされている。宝探し（＝モルヒネ）のための役者は揃った。彼らは１つの目的を遂行するために集まったプロジェクト・メンバー、面子を揃えた瞬間はお互いが疑心暗鬼で、欲と欲がぶつかり合いいざこざが起きるが、まぁまぁ落ち着いてとばかり西瓜を食べながら（この演出が妙！）話はモルヒネを探りあてないと何も始まらないとまとまり、目的達成へとひた走るのだ。もう１つの“プロジェクトＸ”が始まった。

そうは言いながらも男の中に女がひとり、もともと欲深い男達の集まりだ。ムラムラとしないわけがない。バスタオル１枚を纏っただけで髪の毛を台所で洗っている渡辺美佐子。そこへ帰ってきたひたすら穴掘りという肉体労働に勤しんでいる男達、単純に反応する「抱きたい！」と。殿山泰司は電柱によじ登って渡辺の部屋を覗くが、そこではピストルを磨いている姿があった。みるみると頭は冷えて穴掘りに邁進する。

しかし、その作業に何も知らず狂言回し的な存在としてクギをさそうとするのが、
どら息子の長門裕之。なんとも頼りないキャラクターに描かれている、そんな彼を
手なずけるべく半ば強引に誘惑する渡辺。彼女のような美女に誘惑されて抵抗できる男がいるのだろうか？

今村昌平は渡辺美佐子を「色っぽさなんかが足りないんですよ。全然ないと言ってもいい。だから僕は不愉快だったんですね。もう一挙手一投足にね、色気のない女ってのを見ると損したってことをどうしても思うわけですよ。」（「今村昌平伝説／香取俊介河出書房新社より）と評しているが、それは今平さんの好みでしょ？と言いたくなる。個人の好みの問題でしょと。ボクなんかは今観ると都会的雰囲気と大人の色気を持ち合わせた充分いい女に思うのですが・・・。


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