飾釦

飾釦(かざりぼたん)とは意匠を施されたお洒落な釦。生活に飾釦をと、もがきつつも綴るブログです。

江戸川乱歩の研究?10⇒「屋根裏の散歩者」から

2006-03-17 | 江戸川乱歩
ひっそりと他人の生活を覗き見する快楽。屋根裏の散歩者となった郷田は、それに夢中になる。


◆屋根裏から見た真実
“天井からの覗見というものが、どれ程異様な興味があるものだかは、実際やって見た人でなければ、恐らく想像も出来ますまい。仮令、その下に別段事件が起こっていなくても、誰も見ているものがないと信じて、その本性をさらけ出した人間というものを観察すること丈で、十分面白いのです。・・・平常、横から同じ水平線で見るのと違って、真上から見下すのですから、この、目の角度の相違によって、あたり前の座敷が、随分異様な景色に感じられます。・・・そこには、往々にして、滑稽な、悲惨な、或いは物凄い光景が、展開されます。・・・茲に書くことを憚る様な、すさまじい狂態を演じている光景さえも、誰憚らず、見たい丈け、見ることが
出来るのです。”


そして、その興味は留まる事を知らず完全犯罪へと対象が移り、彼は遂に実行してしまうのであった。しかし、明智小五郎の見事な人間心理の裏側までを見通した推理によって、見事見破られてしまうのである。

本作品もそうなのだが、乱歩の小説は反社会的なこと(それを代表に猟奇的なことなど)が、そこで堂々と行われようとも最後はいたってあたり前の常識が勝利するというシンプルな構図を取っているものが多いと思う。実はその部分で読み手がほとんど意識しないが、安心して作品を楽しむことができるという魅力があるのではないだろうか?と密かに感じている。

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