盲獣
製作:大映1969年
監督:増村保造
主演:船越英二、緑魔子
まだ江戸川乱歩には全く興味なく小説も読んでいなかった数年前に、この「盲獣」を観ました。そのきっかけはCS放送で増村保造監督を特集したラインナップがあり、それを面白がって観ていたのです。
予備知識なしで観た「盲獣」にはびっくりしました。強烈なインパクトを残しました。なんという映画だ!
増村監督の映画は、もともと登場人物は躍動的で、画面の構図も大胆で、直線的・対立的です。役者の吐く台詞もその感情を思いっきり乗せています。常にぶつかりあっている、そんな形容詞がピッタリの演出です。世界観がはっきりしてわかりやすいのも特徴で、伝えたいテーマがダイレクトに観るものに届く。それが何とも心地よく、増村監督の映画を好んで何本か観ていたのです。
そんな監督が江戸川乱歩という素材を映像化したわけですから、強烈に決まっています。登場人物は、母が出てくるもほとんど2人と言っていいでしょう。増村監督は、乱歩の原作の前半部分のみをピックアップし映像化、殺人に狂っていく盲獣=船越英二ではなく、モデル=緑魔子との愛を成就していく存在として描いています。ただ、その仕方が尋常ではないため異常性を感じずにはいられないのです。
ほぼ2人劇という構成になっていますから、映画の尺、つまり約84分は船越英二と緑魔子との感情のドラマです。台詞には感情が乗り、画面は対立的というか挑戦的印象というか、美術も乱歩の原作に忠実でグロテスク、一種カタルシス的結末までグイグイ見せます。
たしかこの映画を観た直後、すごい映画を見つけたと友人に語った記憶もあります。昨年公開された「乱歩地獄」もこの映画に触発されたのがきっかけで制作されたはずです。
石井輝男監督の「江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間」が危険な内容のためビデオ・DVD化されないとして語られるのですが、私の感覚ではこの増村監督の「盲獣」
の方が危険度は高いと思えます。「江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間」はタブー的要素があるものの観方によっては、滑稽度も高いともいえます。よってリアリティ度も低いわけです。しかし、この「盲獣」はほぼ2人しか出てこないことによって、話自体は現実味がなくとも、登場人物の感情を乗せた台詞と演技と映像が絶え間なく展開されるため、ある種の精神的なリアリティ度が高められていくのです、つまり気分が一方向に引っ張られるます。
内容やテーマがハードなこともあり見終わった時は、何とも苦い味の余韻が残ります。それが危険度が高いなと感じるという理由なのですが・・・。ともかくも、この「盲獣」は、多作な増村監督作品の中でも突出した1作であることと、乱歩を映像化した作品群の中でも傑作の1本であることは間違いないといえるでしょう。
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■小説(「盲獣」所収)
■DVD
製作:大映1969年
監督:増村保造
主演:船越英二、緑魔子
まだ江戸川乱歩には全く興味なく小説も読んでいなかった数年前に、この「盲獣」を観ました。そのきっかけはCS放送で増村保造監督を特集したラインナップがあり、それを面白がって観ていたのです。
予備知識なしで観た「盲獣」にはびっくりしました。強烈なインパクトを残しました。なんという映画だ!
増村監督の映画は、もともと登場人物は躍動的で、画面の構図も大胆で、直線的・対立的です。役者の吐く台詞もその感情を思いっきり乗せています。常にぶつかりあっている、そんな形容詞がピッタリの演出です。世界観がはっきりしてわかりやすいのも特徴で、伝えたいテーマがダイレクトに観るものに届く。それが何とも心地よく、増村監督の映画を好んで何本か観ていたのです。
そんな監督が江戸川乱歩という素材を映像化したわけですから、強烈に決まっています。登場人物は、母が出てくるもほとんど2人と言っていいでしょう。増村監督は、乱歩の原作の前半部分のみをピックアップし映像化、殺人に狂っていく盲獣=船越英二ではなく、モデル=緑魔子との愛を成就していく存在として描いています。ただ、その仕方が尋常ではないため異常性を感じずにはいられないのです。
ほぼ2人劇という構成になっていますから、映画の尺、つまり約84分は船越英二と緑魔子との感情のドラマです。台詞には感情が乗り、画面は対立的というか挑戦的印象というか、美術も乱歩の原作に忠実でグロテスク、一種カタルシス的結末までグイグイ見せます。
たしかこの映画を観た直後、すごい映画を見つけたと友人に語った記憶もあります。昨年公開された「乱歩地獄」もこの映画に触発されたのがきっかけで制作されたはずです。
石井輝男監督の「江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間」が危険な内容のためビデオ・DVD化されないとして語られるのですが、私の感覚ではこの増村監督の「盲獣」
の方が危険度は高いと思えます。「江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間」はタブー的要素があるものの観方によっては、滑稽度も高いともいえます。よってリアリティ度も低いわけです。しかし、この「盲獣」はほぼ2人しか出てこないことによって、話自体は現実味がなくとも、登場人物の感情を乗せた台詞と演技と映像が絶え間なく展開されるため、ある種の精神的なリアリティ度が高められていくのです、つまり気分が一方向に引っ張られるます。
内容やテーマがハードなこともあり見終わった時は、何とも苦い味の余韻が残ります。それが危険度が高いなと感じるという理由なのですが・・・。ともかくも、この「盲獣」は、多作な増村監督作品の中でも突出した1作であることと、乱歩を映像化した作品群の中でも傑作の1本であることは間違いないといえるでしょう。
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■小説(「盲獣」所収)
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■DVD
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乱歩ファンとして光栄です。
今後とも宜しくお願いします。
トラックバック有難う御座いました。
「盲獣」は傑作ですね。
飾釦さんの文章は丁寧で愛があります。このブログを読んで、「盲獣」、ひいては乱歩の素晴らしさに気づく人が増えることに期待します。
偉そうな文になってしまいました。ごめんなさい。
僕がこの映画と同様の衝撃を受けた映画を二つ書き込んで置きますね。「愛のコリーダ」、「マル秘 色情めす市場」。乱歩が持つ美しい頽廃感はありませんが、乱歩ワールドを地で行くとこんな感じになると思うので、楽しんで貰えると思います。