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この「人間椅子」は文字通り人が椅子の中に入り椅子そのものとなる話である。そしてそこに腰掛ける人の感触を至上の体験として味わう。設定としては乱歩独特の荒唐無稽なものなのだが、不思議なそして行過ぎたマゾヒスティックな快楽の恐ろしさを感じる。この独特な感性は、もしかしたら乱歩は薬物常用者?と思ってしまうほどの尖がった感覚の特異さを描いてはいないか。それが、おそらくは多くのクリエイター達にいまだ指示されている要因の一つなのではないだろうか。
◆椅子は誘惑する
“それは、我乍ら、見とれる程の出来ばえであったのです。・・・なんという坐り心地のよさでしょう。フックラと、硬すぎず軟らかすぎぬクッションのねばり工合、態と染色を嫌って灰色のまま張りつけた、なめし革の肌触り、適度の傾斜を保って、そっと背中を支えて呉れる、豊満な凭れ、デリケートな曲線を描いて、オンモリとふくれ上がった、両面の肘掛け、それらの凡てが、不思議な調和を、渾然として「安楽」という言葉を、そのまま形に現している様に見えます。”
そして、男は悪魔の囁きにのってやがてその椅子の中に入っていく・・・。
※小生投稿記事より
乱歩・・・<人間椅子/1997年>
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◆椅子は誘惑する
“それは、我乍ら、見とれる程の出来ばえであったのです。・・・なんという坐り心地のよさでしょう。フックラと、硬すぎず軟らかすぎぬクッションのねばり工合、態と染色を嫌って灰色のまま張りつけた、なめし革の肌触り、適度の傾斜を保って、そっと背中を支えて呉れる、豊満な凭れ、デリケートな曲線を描いて、オンモリとふくれ上がった、両面の肘掛け、それらの凡てが、不思議な調和を、渾然として「安楽」という言葉を、そのまま形に現している様に見えます。”
そして、男は悪魔の囁きにのってやがてその椅子の中に入っていく・・・。
※小生投稿記事より
乱歩・・・<人間椅子/1997年>
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