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信州記 vol.1 ~サイトウ・キネン・フェスティバル松本~

2011-08-26 09:01:22 | CD・コンサートレヴュー
今年の夏の旅行は1泊2日で松本へ。目的は明確で、サイトウ・キネン・フェスティバル松本を聴くこと。

この音楽祭を聴きに来たのは2度目。1度目は1997年、この時聴いたのはオペラではなくコンサートで、プログラムはドヴォルザークの弦楽セレナードと「英雄」。コントラバスにツェペリッツ、クラリネットにライスターと往年のベルリンフィルの猛者を配した重厚な響きは今も記憶に残っている。

その後はなんだかんだと遠ざかっていたのだが(東京で2度開催されて、マーラーの「復活」と9番を演奏した特別演奏会には足を運んだが)、今年14年ぶりに松本を訪れたのは、近年小澤征爾の演奏を聴ける機会がめっきり減ってきたことによる。
筆者としても、最も直近で小澤を聴いたのは2年前の新日本フィルとのブルックナー3番にさかのぼる。その後は、聴こうと試みたことはあったのだが、キャンセルなどもあり、かなわなかった。

今回の松本では、小澤はオペラ公演のみ、それもプログラム2曲のうちの1曲だけを指揮するということで、やはり体調面が万全ではないことを窺わせたが、リハーサルは順調に進んでいる、という報道などもあり、安堵し期待もしていた。


バルトーク:バレエ「中国の不思議な役人」
  同   :オペラ「青ひげ公の城」


個人的にはプログラムへの期待も高かった。両曲とも、実演で聴くのは初めて(「青ひげ公の城」は先般インバルが都響で取り上げていたのだが、この時は聴き損ねてしまった)。

「中国の不思議な役人」の指揮は沼尻竜典。この人の実演に接するのもおそらく初めて。後でネットからの情報で知ったことで、本番中ピットの中では気付かなかったのだが、足を怪我しているのか、普段の移動では松葉杖を使っていた。だが演奏はそんなことを感じさせない集中力の高いもので、舞台の視覚的効果も相俟って、バルトークの面白さを堪能できた。



メインの「青ひげ公の城」。しかし小澤が体調不良によりこの日の公演をキャンセル。この数日、天候不順だったので、危惧しているところではあったのだが、的中してしまった。この公演最大の目的を果たせなかったのだが(代役の指揮はピエール・ヴァレー)、危機に際してメンバーが一つになったのか、演奏は満足できるものだった。
演出は、舞踏家で舞踊団「Noism」を主宰する金森穣。この日の2作品の演出では、アイディアに共通項が多過ぎなのでは、と思わないでもなかったが、主要登場人物が黒衣に操られた「人形」に擬す演出は当を得たものだと感じた。

演奏会そのものはまずまず楽しめたのだが、小澤の体調面に関してはますます不安の募るフェスティバルになってしまった。また聴ける機会はあるのだろうか。


(文中、敬称略させていただきました。)


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