神戸まろうど通信

出版社・まろうど社主/詩と俳句を書く/FMわぃわぃのDJ/大阪編集教室講師など多様な顔を持つ大橋愛由等の覚え書き

ロルカ詩祭について

2009年08月11日 13時26分50秒 | 文学
第12回「ロルカ詩祭」の案内です。

今年のゲストは、H氏賞詩人の杉本真維子さん、ラテンアメリカ文学者の鼓直さんです。今回も素敵なゲストをお招きいたします。どうぞみなさん、楽しみにしてください。(鼓さんには、ロルカが属していた「二七年世代」の詩人たちによるロルカ追悼詩〈おそらく本邦初訳〉と、スペイン内戦中に共和派によって刊行された『内戦詩集』を翻訳・朗読してもらいます。スペイン人・アグスティン君には、原語で「夢遊病者のロマンセ」を読んでもらいます)。


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◆--「ロルカ詩祭」について<12回目は8月15日(土)>
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夏が巡り、ロルカがわれわれのもとに甦る!! 
今年は、ロルカと同世代の〈二七年世代〉詩人たちの詩と死が、
七〇年を経て翻訳される!!

-ロルカ詩祭についての説明━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「ロルカ詩祭」は、スペインの国民的詩人であるフェデリコ・ガルシア・ロルカの生誕100年にあたる1998年から神戸で行われている詩の朗読会です。1936年にロルカがファシストによって殺された8月19日に近い日に開催しています。第一部は「ロルカ詩作品」の日本語、スペイン語による朗読。第二部は、ロルカ的世界に身を委ねた詩人たちによる自作詩の朗読です。みなさん、夏の一夕を詩の朗読会でお楽しみください。          
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★朗読する人たち/
1.鼓 直 2.杉本真維子
3.安西佐有理 4.大西隆志 5.大橋愛由等
6.今野和代 7.高谷和幸 8.寺岡良信
9.富 哲世 10.中堂けいこ 11.にしもと めぐみ
12.福田知子 13.アグスティン
★演奏する人たち/
1.中島直樹(コントラバス)
2.福森慶之介(フルート)


★日時 2009年 8月15日〈土〉 開場午後5時00分
★構成 第1部/ロルカ詩の朗読/午後5時30分~(スペイン語、日本語)
    第2部/詩人たちの朗読/午後6時00分~8時30分
★料金 (1)コースA 特別コース(パエリア付き)3500円(チャージ料・税込)
    (2)コースB 2000円(One Drink+ One Food +チャージ・料込)
★場所 神戸三宮 スペイン料理カルメン
    〒650-0012 神戸市中央区北長狭通1-7-1
★問い合わせ先 078-331-2228 スペイン料理カルメン


/////////詩祭への誘い  寺岡良信///////////////////////////////

友を奪われた怒りが詩人に激しい言葉を吐かせた。滾り立つ血をはらわたに漲らせてマチャードは書く。「グラナーダで犯罪が行われた!」と。

 友よ、墓を刻め、
 石の、また夢の墓を、―
 アランブラの宮殿の中に、
 かの詩人のため、
 水の泣く泉の上、
 グラナーダで犯罪が行われた!
 彼のグラナーダで! と

 星もまばらな未明の荒地に曳き立てられ、自らの墓穴を掘らされたあげく、無辜の死を、なぜロルカは死ななければならなかったのか。猛々しい政治という暴力。人間の尊厳など一片の感傷に過ぎぬと鼻先でせせら笑い、ぎらついた権力への志向のみを価値の座標に据える叛乱者どもが、檸檬の実の青く薫る沃土を軍靴で蹂躙したとき、恐怖と密告と阿諛は低く囁き交わし、混濁するこころの水位を不信と猜疑に沸騰させて、人々は、詩人からその美しい歌声を永久にもぎ取ったのだ。
 フェデリコ・ガルシア・ロルカ、行年三十八歳。
 不条理なその死を悼むために、不条理なすべての死を悼むために、私たちは今年もこの港町のたそがれに集う。
 二千九年八月十五日、神戸。
 ロルカ銃殺から七十三年。
 アジア太平洋戦争終結から六十四年。
 死者たちのいまだ止むことのない慟哭をふたたび胸に刻もう。そして大地震が愛する郷里と愛する人々を呑みこみ、繁栄する都市文明が巨大な残骸と化した、あの凍結した記憶をも。
 二千九年八月十五日、神戸。潮騒に合歓の花弁がほどけるこの町に、私たちは集う。



参考に--------------------------------------------

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内戦終結から70年たつも
ロルカの瑕は、まだ深い  大橋愛由等
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 わたしが副会長を務める神戸日西協会の創立三〇周年記念事業のひとつとして、神戸とスペイン文学に関するシンポジウムが、神戸文学館(神戸市灘区)において、六月二七日(土)に行われた。企画と司会進行はわたし(大橋)。パネラーには、安藤哲行氏(摂南大学教授)、鼓直氏 (法政大学名誉教授)、富哲世氏(月刊めらんじゅ)、吉富志津代氏(NPO法人・多言語センターFACIL代表)に参加してもらった。

シンポジウムが始まる前に、スペインを感じてもらうため、フラメンコの演奏をお願いした。中西雄一氏(ギターラ)、カンテ(唄)は吉川あゆみさん、カホン(ペルー発祥の打楽器)は南出真依子さんが担当。アンダルシア出身のガルシア・ロルカが大切にしていたフラメンコのカンテホンドを聴いてもらったのである。フラメンコの世界では今でもロルカの作品が歌われていることはよく知られている。、当日は、その中から(1)「夢遊病者のロマンセ」(2)「LA TARARA」の二曲を披露してもらった。会場である神戸文学館はもともと関西学院大学発祥の地に建てられたチャペルなので、音響効果は佳く、シンポジウムの冒頭から印象深いスタートを切ることが出来た。

 このうち、今回は鼓直氏の報告を中心に書きためておきたい。鼓氏、安藤氏ともども世代は異なるものの、ラテンアメリカ文学の翻訳者として、際だって佳い仕事をしている人たちであるので、今回はどちらかというと専門外のスペイン文学について語ってもらうことになったのは、少々気の毒なことであった。それでもお二人は、今年ちょうど終結から七〇年を迎えるスペイン内戦(一九三六--三九)に関する文学について密度の濃い報告をしてもらった。 

 鼓氏は、去年上梓した『ロルカと二七年世代の詩人たち』(土曜美術社出版販売)の編訳を担当していて、ロルカの文学世界にも深く関わっている(かつて牧神社から「ロルカ全集」を上梓したのだが、版元が倒産してしまって今では古書でも流通していないという)。シンポジウムのために翻訳したのは、ロルカと同世代の詩人達(「二七年世代」と云われている)のロルカを追悼する詩であった。スペイン内戦が始まったと同時にロルカがファランヘ党によって虐殺されたことの衝撃は大きく、殆どが共和派側についていた「二七年世代」の詩人たちは、中南米などのスペイン語圏国に亡命していくのである。その詩人達の中には、一生スペインに戻ってこずに亡命先で客死した者もいれば、フランコが死去(一九七五年)してのちにようやく帰国を果たした者もいた。いずれにしても詩人たちの心の中には、文学同志であるロルカが生き続けていたのである。鼓氏はさらに、内戦の途中に出版された『内戦詩集』(エミリオ・プラドス編)のことを取り上げた。原書をある人に貸与していたのを、今回のシンポジウム参加と、今年のロルカ詩祭のために、返却を要請。ロルカ追悼詩ともども、今年のロルカ詩祭(二〇〇九年八月一五日)で朗読してもらう予定である。ゆ
くゆくは、私が主宰する図書出版まろうど社で刊行することを考えている。こうした果実があったこともあり、わたしにとってこのシンポジウムを実施した意味ははかりしれず大きいものがある。
 ロルカが「二七年世代」の詩人たちの一人であることは、恥ずかしながら知らなかったのだが、その彼らの多くがアンダルシア出身であることに深い興味をいだく。沖縄の戦後詩壇の多くが宮古出身者であることにも関連づけてこれから私なりに思惟していきたい。
(月刊めらんじゅ 09.07月号より)

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