こちら米国の大学についての雰囲気をとてもよくとらえているTIMEの記事:
‘It Doesn’t Matter Where You Go to College (どこの大学に入るかは問題ではない)’
http://time.com/54342/it-doesnt-matter-where-you-go-to-college/
ざっとみてみると、
経済学者Alan Krueger氏とStacy Berg Dale氏が1999年に発表した研究によると、「エリート」大学とそうではない大学の卒業生の20年後を調査したところ、収入的にほとんど、または全く違いがなかったとのこと。
両氏が再び19,000人を対象に行い、2011年に発表された調査でも、同じ結果だったと。
これらの調査は「収入」についてだけれど、作家のGregg Easterbrook氏が 米国中の大学オフィシャルにインタビューし2014年にまとめたものによると、「従事する仕事への満足感」について、「エリート」大学に進学したかどうかは、ほとんど関係がないとのこと。
40年前は確かに「エリート」大学というのは明らかにより高いレベルの教育を提供していた。それでも今日、米国中200近くの大学が、優れた施設とスタッフにより、同じようなレベルの教育を提供しているとのこと。
確かに、博士号をとる人口も増え、トップの大学で博士号をとったりトレーニングを受けた人々が、様々な大学で教えるようになったことも大きいのだろう。今後、オンラインなどで「一流大学」の教授陣がどんどん授業を公開していくことで、大学というもの自体への変化も出てくるのかなとも思う。
またシリコンバレーの雇用エキスパートKris Stadelman氏によると、「雇用する側が興味があるのは、その人物がどんなスキルをもたらし、ビジネスに使うことができるのか。特にテクノロジー産業の分野では、学歴などがつづられた伝統的なレジメよりスキルが欲しいんです」と。
記事の筆者Michael Bernick氏が米国政府労働統計部門専門家のRichard Holden氏と共に行った3年に渡る調査によると、この「スキル重視」の傾向は、テクノロジー産業分野だけでなく、ビジネスや金融、ヘルスケア、ホスピタリティー分野にも広がっているとのこと。
筆者Bernick氏曰く、「場所やサイズやどんなことが学べるのかについてできるだけ多くの情報を集め、大学に進学し学位をとることは重要。ただ、どこの大学の学位をとったということは、ほとんど意味を持たないということを覚えておくといい。最も重要なのは、大学や人生で何をするのか。スキルを改善し続け、自らの人格を発達させ、やり続けること」と。
日本で育ち、こちらに来て、「大学の選択基準」が随分と違うなあというのをひしひしと感じている。何を学べるのか、経済的なり家族の事情なりを照らし合わせての「メリット」をシビアに吟味し、進学先を決める人々に多く出会ってきた。当初は、「え、もっと『有名』なところに行けるのに、もったいないなあ」なんて思ったことも。
また「誰でも入ることのできる大学」で教えていたときも、その場で頑張りこつこつと成果を出していくことで、「一流大学」の卒業生と同じような職種につくことができ、しばらくすれば大学名など何の関係もなくなっていくのだなと実感していた。
トップの大学へ進むことは、卒業生間の学閥的なネットワークにより、就職面で有利とも聞くけれど、とはいえ就職してしまえば、後は実力の世界。トップの大学に進むメリットは確かにあるけれど、トップの大学に進学したからといって何かを保障されるわけでも全くない。トップでない大学であっても、その場でスキルや自らを磨き続けるのなら、道は開けていく。そういうことなのだなと思う。
重要なのは、本当に、大学に入るためのスキルより、長い目で見たライフスキルにフォーカスしていくこと。高校生達を前に、日々思い出していきたい。