先のエントリーからの続きです。
天気もいいし盛り上がる「BBQミチ&ビール」のイベント会場。ちょうどお昼時で、炭火で焼くミチの芳しさもお腹の虫をぐうぐう言わせます。マイダーリンはこんな日も午後から仕事。24時間365日体制なので致し方なし。会場をひとまわりしただけで「Have a good time !」と言い残し、仕事に行ってしまったのです。
一人残されたワタクシ・マドモワゼル、「ミチ&ビール」のタダ券もゲットしたことだし、BBQ屋台の行列に並んでみようかな~。後のほうは横3~4列でそれなりに並んでいるけれど、前に行くにつれて人の群れが膨らみ、BBQの「お渡し口」はこれまた人だかり。割り込みをせず、列の一番後ろについて「コンニチハ!」、とりあえず周りの人にご挨拶。一人だし、ちょっと恥ずかしかったりします。
で、並ぶこと、ものの数分で戦列離脱。ミチは合挽き肉のBBQ、中まで火を通すのに時間がかかるし、生焼けはこのご時勢、御免こうむります(=豚インフルエンザ!ルーマニアには未上陸でも、ね。)。
BBQ屋台はたくさん用意されているけれど、どの屋台も相当な人だかり。そこらあたりをぐるりと廻り、もう一度先ほどの屋台まで戻ってくると、私が離脱した後、さらに7~8人が並んでいます。でもこの列が一番、「ほっこり」(=穏やかに並んでいる)しているし、もう一度並ぼうかな~。
2度目に並ぶので、又一番後ろにつけると、さきほど並ぶときに挨拶しておいたおじさんが、「ここまでおいで、アンタ、さっき並んでいただろう。」と、手招き。ありがたく数人を抜いておじさんの元に到着、後ろの人たちは何にも言わず、認めてくれました。
おじさん、ひとりで何かしゃべってくれるけれど、余りにも早口なので付いていけません。分かった風をしてうなずくしかないです。そうしていると、おじさん、「ちょっとそこまで行ってくるから、この場所、確保しておいて。」と言い残し、列を後にしていきました。
まあいいや、さっき私を入れてくれたおじさんだし。ひとりになり待つことしばし。戻って来たおじさんの手には、飲みさしの「Timisoarana(ティミショアラナ)」(=ビールの銘柄)。あれ?ここのイベント会場は「Golden Brau(ゴールデン・ヴラウ)」のビールしか扱っていないはず(=チェック済み)。
「どこで買ってきたんですか?」~喉が渇ききったワタクシ、瞬時にお尋ねしてしまいました。日差しも強く気温も上がる中、おじさんの缶ビールには露が浮いています、つめたく冷えているに違いない!
「ここは混んでいるから、外の店だよ。公園を出て、道を渡って、その次を左へ曲がって・・・」~判りにくそうな顔をする私に、「よっしゃ、連れて行ったるわ。」(=大阪弁で話すわけはないけど→そんな感じでした)。
さらに隣の人に「ちょっとこの子とそこまで行ってくるから、この場所、確保しておいて。」、隣の人も「わかった、行っといで。」(=同じく、大阪弁で話すわけはないけど→そんな感じでした。)
冷えたビールを確保して公園に戻るとき、「あんた達、これから公園に行くの?BBQのタダ券、あるけど。」~もしかして売ろうとしているのかな、と一瞬構えたけれど、気前よく全部で3枚、もらいました。
「おひとり様、チケット5枚まで有効」のルールがあり、おじさんはすでに5枚を手にしていたので「3枚は全部あんたのものだよ」、先にもらった1枚とあわせて4人分のミチ・セット券がころがりこみました~こりゃ、待ち時間かかっても、是非ゲットしておうちに持って帰ろう!
勇んで戦列復帰。元の場所に並んでからプシュッと開け、おじさんに向かって「乾杯!」、勢いよく飲み始めた私に後の若い男の子、クスッと笑っていたみたい~そんなこと気にするマドモワゼルではありません、この際。
すっかりおじさんと意気投合、「どこから来たの?」「ここに住んでいるの?」「仕事は?」、日本で仕事をしている、と答えると「お給料、なんぼ?」(=いくら?、大阪弁で話すわけはないけど→そんな感じでした)。周りの人も混じってきて、これまたジャパンのプチ・プレゼン。
このおじさん、もう一人おばさんとも仲良くなっていて、協力して列に並んでいるみたい。ずっと立ちんぼうは疲れるので、テーブルといすを確保して交代で並んでいるのです。おじさんはティムおじさん、おばさんはジーカおばさん、と言います。
周りの人も実に辛抱強く、でもイライラもせずに並んでいます。どちらかと言うとわたしの周り、中高年の人が多かったです~社会主義の時代、食料は配給制、きっとこんな風にして列を作って何時間も並ぶこともあったのだろうな、と。
テーブル席を確保していたティムおじさん、「お~い、ふたりとも、こっちへおいで。(周りの人に)ちょっと離れるからココ、確保しておいて。」、気軽に言い残してジーカおばさんもわたしもティムおじさんのところへ。
おじさんが確保していたテーブルには数人の男性がやってきていて、ミチ&ビールの山。「一緒に食べよう、さあどうぞ。」、どこのどなたか存じませんが、お言葉に甘えてありがたくいただくことにしました。
この男性達、Tシャツではなく赤のポロシャツを着ていて、どうやらこのイベントの関係者のようです。ここでもまた話が弾み、みんな、日本のことを良く知っています。「エンペラー・ヒロヒト(天皇)」「エンペラー・アキヒト」」、「その奥さんはミチコっていうのよね。」とジーカおばさんも博学。
私のルーマニア語が英語混じりになっているのを聞いて、「あんた、英語、話すのかい。わたしは英語の先生なんだよ。」、年齢を聞いてみると57歳。「共産主義時代は、ロシア語を習わされたと聞いていますが。」~わたしも尋ねてみました。1960年から英語教育が行われていたそうです。なるほど。
ミチをたらふく頂きビールも進んで、ティムおじさんもノリノリ。手にしたタダ券はどうするのかなあ、と思っていたら、「さあ、そろそろ順番だよ。」、わたしたちは再々々度、戦列復帰。「列を確保しておいてくれてありがとう、ここ、僕たちの順番だよ。」というティムおじさんに周りの人も何も言いません。「おいおい・・」とつぶやきながら黙って入れてくれるのです。
ジーカおばさんも5人前のタダ券を持っていて、飲み物もセットでゲット。「これ、持って帰るんだよ。」~みんな、考えることは同じ。ちゃんとビニール袋持参。わたしも買い物用にレジ袋とコットンのエコバッグを持っていたので、荷物が増えても安心。
空模様が少し怪しくなってきて、「雷が鳴ったら、高い木の下に逃げるんだよ。」「雨が降ったら、そこのトイレの中に逃げ込めばいい、ちょっと香りがよすぎるけどね。」~二人とも実におおらか。
そのうちに本当に雨粒が落ちてきて、それは土砂降りのにわか雨となり、イベント会場のほとんどの人は急ぎ足で公園前の地下鉄駅へ。用心深く傘を持っていたジーカおばさんにさよならを言って、一緒に駆けて来たティムおじさんとは駅構内の雑踏で離ればなれになり、私はそのまま家路へ。
「夜まで、このイベントは続くのさ。夕方からはディスコティックになるのさ。」と言って楽しみにしていたふうのティムおじさん、楽しい半日をありがとう。
今日の考察:
文中にも描きましたが、いつ順番が回ってくるとも定かでない列に、実に辛抱強く並ぶようす、特に穏やかに並んでいた中高年の人たちを見ると、ルーマニアが共産主義時代だったころの配給制がしのばれるのです。
その時代、秘密警察が暗躍する中、人々は協力しあって生活していた、といいます。列に並ぶときに「場所を確保しておいて。」と前後の人に言い残し、それが3時間以上に及ぶ順番並びの中でも認めてもらえるなかに、汲み取るものがあります。
二人の名前:
ジーカおばさんは、正しくはジョルジカ。「でもみんな、ジーカと呼ぶのよ。」と。「あと3年は働くわよ。」と現役。
ティムおじさんはノリノリで、お名前を尋ねるタイミングを逃してしまいました。最初に手にしていたビールが「ティミショアラナ」なのでここから私が命名。54歳ですがすでに年金生活。「仕事はきつかったから、50歳で退職したのさ。」と。お元気にお過ごし下さい。
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