#208 ブラインド・フェイス「Sleeping In The Ground」(Blind Faith [2000 Deluxe Edition]/Polydor)
ブラインド・フェイスの唯一のオリジナル・アルバム「Blind Faith」の2000年版より。サム・マイヤーズの作品。
ブラインド・フェイスほど過剰な期待を集め、かつはげしい落胆の対象となったバンドは、他にいるまい。
この69年のデビュー盤は、セールス的には成功したとはいえ、クリームの再生復活を待ち望んだファンの予想を、見事なまでにうっちゃったサウンドだった。
「看板スター」であったエリック・クラプトンのギター・プレイはひどくジミなもので、クラプトンに比べると人気的には劣っていたスティーブ・ウィンウッドの歌を前面に押し出した内容だったからだ。
しかしですね、今聴けばこのアルバム、さほど悪くないんだよねぇ。
ブリティッシュ・ハード・ロックを期待してきくから、肩すかしをくらうだけで、そういう思い入れ抜きにきけば、そんなにガッカリするような内容じゃない。
きょう取り上げるのは、未発表テイクも含めた2枚組となった2000年版だが、オリジナル盤の6曲と合わせて聴けば、「そうか、そういうことがやりたかったのね」と得心がいく内容なんである。
CD化したときにボーナス・トラックで入っていた、出来のイマイチな2曲をちゃんと外してあるのは○。
かわりにこの「Sleeping In The Ground」が、アップテンポのテイクと、スローのテイクの2種入っているほか、おなじみの「Can't Find My Way Home」のエレクトリック・バージョン、インスト・ナンバー、スタジオでのジャム・セッションの記録などが加わっている。
これらを聴いて思うに、ブラインド・フェイスってのは、基本的にジャム・バンドであり、かっちりしたアレンジで勝負しようとしたバンドではないということだ。
ハード・ロックは「アレンジ」の音楽であり、きっちり決まったリフの上に構築される音楽だが、それとは違うものを、最初から目指していたってことだ。
4人のテクニックのあるミュージシャンが、スタジオ内で自由に演奏してみた結果、納得のいくレベルのものが出来てきたときは、それをそのバンドの「作品」とする。そんな方法論だったのだろう。
そこには、「ヒット曲を出してやろう」みたいな意図は希薄である。たしかにメンバーには、過去いくつものヒットをものした者もいたが、それはあくまでも「結果」であって、狙ったところではなかった。彼らが歌いたい曲、演奏したいサウンドを世に出したところ、たまたまリスナーの嗜好と一致した。そういうことなのだ。
ゆえにブラインド・フェイスは、レコード業界のヒット曲量産システムとは、もっとも対極のところに存在するバンドだったのである。
そういうことを考えつつ、このブルース・ナンバー「Sleeping In The Ground」を聴けば、いろいろと腑に落ちるのではないかな。
この曲の作者、サム(サミーとも)・マイヤーズは36年ミシシッピ州ローレル生まれの、黒人シンガー/ハーピスト。キング・モーズのもとでプロのハープ奏者となり、57年この曲で歌手として初録音、エルモア・ジェイムズのバックなどを経て、80年代には白人ブルース・ギタリスト、アンスン・ファンダーバーグのバンドにシンガーとして迎えられるなど、息の長い活動を続けている。
マイヤーズ自身の歌声は高からず低からずで、どこかほのぼのとした味わいがあるが、ブラインド・フェイス版ではウィンウッドが得意の高音域をめいっぱい駆使してシャウトしているので、かなり趣きは違う。でも、どちらにしても、流行り歌的なものとはだいぶん異なるのだ。
アメリカ南部の鄙びた匂い、それがこの曲のよさだ。のちにレイドバックとかいわれるような音楽の原点は、ここにあったといっていい。
クラプトン、ウィンウッド、グレッチ、ベイカー、いずれのメンバーも、永遠不滅なブルース・スタイルを愚直なまでに守って、演奏しているのがうれしい。
個性的で刺激的な音楽ばかりが、いい音楽じゃない。オーソドックスなものにこそ、深い味わいがあるということを、彼らのプレイからぜひ聴きとってほしい。
ブラインド・フェイスの唯一のオリジナル・アルバム「Blind Faith」の2000年版より。サム・マイヤーズの作品。
ブラインド・フェイスほど過剰な期待を集め、かつはげしい落胆の対象となったバンドは、他にいるまい。
この69年のデビュー盤は、セールス的には成功したとはいえ、クリームの再生復活を待ち望んだファンの予想を、見事なまでにうっちゃったサウンドだった。
「看板スター」であったエリック・クラプトンのギター・プレイはひどくジミなもので、クラプトンに比べると人気的には劣っていたスティーブ・ウィンウッドの歌を前面に押し出した内容だったからだ。
しかしですね、今聴けばこのアルバム、さほど悪くないんだよねぇ。
ブリティッシュ・ハード・ロックを期待してきくから、肩すかしをくらうだけで、そういう思い入れ抜きにきけば、そんなにガッカリするような内容じゃない。
きょう取り上げるのは、未発表テイクも含めた2枚組となった2000年版だが、オリジナル盤の6曲と合わせて聴けば、「そうか、そういうことがやりたかったのね」と得心がいく内容なんである。
CD化したときにボーナス・トラックで入っていた、出来のイマイチな2曲をちゃんと外してあるのは○。
かわりにこの「Sleeping In The Ground」が、アップテンポのテイクと、スローのテイクの2種入っているほか、おなじみの「Can't Find My Way Home」のエレクトリック・バージョン、インスト・ナンバー、スタジオでのジャム・セッションの記録などが加わっている。
これらを聴いて思うに、ブラインド・フェイスってのは、基本的にジャム・バンドであり、かっちりしたアレンジで勝負しようとしたバンドではないということだ。
ハード・ロックは「アレンジ」の音楽であり、きっちり決まったリフの上に構築される音楽だが、それとは違うものを、最初から目指していたってことだ。
4人のテクニックのあるミュージシャンが、スタジオ内で自由に演奏してみた結果、納得のいくレベルのものが出来てきたときは、それをそのバンドの「作品」とする。そんな方法論だったのだろう。
そこには、「ヒット曲を出してやろう」みたいな意図は希薄である。たしかにメンバーには、過去いくつものヒットをものした者もいたが、それはあくまでも「結果」であって、狙ったところではなかった。彼らが歌いたい曲、演奏したいサウンドを世に出したところ、たまたまリスナーの嗜好と一致した。そういうことなのだ。
ゆえにブラインド・フェイスは、レコード業界のヒット曲量産システムとは、もっとも対極のところに存在するバンドだったのである。
そういうことを考えつつ、このブルース・ナンバー「Sleeping In The Ground」を聴けば、いろいろと腑に落ちるのではないかな。
この曲の作者、サム(サミーとも)・マイヤーズは36年ミシシッピ州ローレル生まれの、黒人シンガー/ハーピスト。キング・モーズのもとでプロのハープ奏者となり、57年この曲で歌手として初録音、エルモア・ジェイムズのバックなどを経て、80年代には白人ブルース・ギタリスト、アンスン・ファンダーバーグのバンドにシンガーとして迎えられるなど、息の長い活動を続けている。
マイヤーズ自身の歌声は高からず低からずで、どこかほのぼのとした味わいがあるが、ブラインド・フェイス版ではウィンウッドが得意の高音域をめいっぱい駆使してシャウトしているので、かなり趣きは違う。でも、どちらにしても、流行り歌的なものとはだいぶん異なるのだ。
アメリカ南部の鄙びた匂い、それがこの曲のよさだ。のちにレイドバックとかいわれるような音楽の原点は、ここにあったといっていい。
クラプトン、ウィンウッド、グレッチ、ベイカー、いずれのメンバーも、永遠不滅なブルース・スタイルを愚直なまでに守って、演奏しているのがうれしい。
個性的で刺激的な音楽ばかりが、いい音楽じゃない。オーソドックスなものにこそ、深い味わいがあるということを、彼らのプレイからぜひ聴きとってほしい。