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川端同心 思うところあり・・・19

2019年06月07日 | 川端同心の裏方記録1~37

お春はもうしわけなさそうに話をつづけた。

「あんたは、どうしても男ならという考えでいるだろう。

それは、逆におそろしい気もする」

お春がなにか、考え付いていることは、間違いないが

どう恐ろしいのかもわからないし

男ならという考えも皆目見当がつかない。

「男なら誠の生き方をするだろうといいながら、

あんたは、

男が、女に逆上して石?かなにかで女の顔を打つのも

男だというんだ」

「ふむ・・」

お春の言いたいことがみえてこない。

「あたしは、女だから、女に対しての男の態度っていうのを考えるんだ」

首をかしげてしまいそうになるのを、かろうじてねじまげて

うむとうなづいておくことで、お春の話が続いた。

「疋田さまの女に対しての態度というのを考えちまうんだよ。

病がちなお内儀をもらって、子供が出来なければ

疋田さまの家は断絶になる。

それでも、妾ももたずにいたじゃないか。

もらい子・養子の話もなかったようだし

それが、疋田さまの女に対する態度じゃないのかえ?

だから、逆上したとて、

女の顔を石で打つなんて考えられない。」

お春のいいたいことがみえてきた。

―俺は疋田様の政(まつりごと)の態度をみて、

そのまま、女に対する態度と同じであってほしいとかんがえていた。

だが、

留吉に言ったように

男と女は判らない。と、考えるのは、逆に

政の態度が、女への態度になるとは限らない。と、知っているからだ。

ところが、お春は、女に対する態度でお松に対する態度を量ってみている。

お春のいうように考えれば

確かに、疋田さまが石かなんかでお松を打つはずがないと思えてくる―

「じゃあ、徳造なら、どうなる」

「だいたい、男が逆上して、石をもったなら

小さな打ち傷くらいじゃすまないだろう?

徳造さんがお松さんを使って、金もたんまりはいってきてるから

なおさら、疋田さまの亡くなったあとの財産までめをつけたんだろう。

それで、お松さんをはらませようとしたなら、

金づるのお松さんの顔に傷をつけたりしないだろう。

そうでなくても、ああいう家業だから、店の女の人に

店の主人が傷をつけるわけがない。

金づるにしようとしていたなら、

なおさら、殺したり、脅して身投げさせたりしない」

お春の考えは、

徳造が大事な金づるを殺してしまおうと思うほど逆上したなら

打ち傷だって、あんなちいさいものじゃなくて、

思い切り殴りつけているだろうということだ。

「なるほどな。じゃあ、離れの老爺は?」

「お松さんが打ち傷をこしらえることになったのが、

徳造の子をはらんでしまったことを

疋田さまに話しでもしないかぎり、

離れのおじいさんが、お松さんを打ったりしないだろう」

「そうだなあ・・・」

お春の話を浚えなおしてかんがえてみていた川端は

ひとつの疑問に行き当たった。

「なあ、女ってのは、・・・」

お春にきいてみたとて、判るはずがないと川端は言葉をきった。

「なんだい?途中で話辞めてしまったら余計にきになるじゃないか」

「ああ、俺が聞こうとおもったのはな。

女ってのは、腹の子がどっちの男の種か、わかるものなのかなとおもってな。

だけど、こんなこと、おまえにきいたって、わかるわけはないなとおもったのさ」

「確かに二人の男の間ってことをいいだせば、判らないことだけど

およそ、・・・」

話が男と女の密事にふれるものだから、

お春は言葉に窮するようだった。

「およそ、あの時の子だとかね、それが判れば

その時のことで、どちらの子かわかるんじゃないだろうか?」

「その時のことって?」

いささか、鈍すぎる自分だと思いながら川端はお春に尋ね返す。

「考えてもごらんよ。三日おき、四日ごとに

疋田さまがお松さんを孕ませる行為ができるだろうか?

うまくいかなかったり、くたびれたり

もしかしたら、ほとんど、うまくいってなかったのかもしれない。

どの時期に孕んだってのは

お松さんには、わかるだろうし

1年前から通っていて、子供ができなかったところに

突然?

子供を孕んだ。

それが、徳造がお松さんに手をだしたころだとするなら

徳造さんの子だって、かんがえるだろう」

お春の話をもうすこし、考えなおさなきゃならないと思いながら

川端は腰をあげた。

「そろそろ、出るよ」

お春につげるともうかまちに足がむいていた。


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