森羅万象、政治・経済・思想を一寸観察 by これお・ぷてら
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政権交代のなせる技か。
以下の2つの問題において、交わされる言葉はどちらも否定形ですが、政権の非連続、自民党政権から民主党政権にかわったという客観的な変化があったわけですから、それを考慮すると、同じ平野官房長官の態度は、以下の2つの問題で真逆だとみえます。
1番目の官房機密費問題では「公表しない」という態度は、文字どおり自民党政権の継承だといえます。その内容を国民・有権者に明らかにしない。まさに機密ということでしょう。
逆に、2番目の問題では、これまでの自民党政権が準拠してきた一つのモノサシともいえる法制局長官の答弁に拘泥しない、これを否定することもあるというわけです。従来の自民党政権とは、これは明確に異なります。
ただし、ここまでの展開は、自民党と民主党とは異質のものだという前提があったればのことです。たしかに異なる政党です。その主張には、重なりあう部分もあり、斥けあう部分もないこともない。ところが、そうしたちがいを一端、横において、二大政党間の政権交代に積極的な、あるいはこの2つの政党間の交代(こそ)は許容できるという立場にたてば、この2つの問題は上にのべた展開とは違ったものとして解釈できるのではないでしょうか。
機密費の問題は、権力の維持に必要不可欠だという認識があるから、公表しない、自由な行政の運用があってよいという判断になる。権力について、死守してきた部分です。
一方での、内閣法制局見解を見直すかのような発言はどうでしょう。これまでの自民党政権が、乗り越えようと思って乗り越えられなかった部分ではなかったのか。可能であれば、これを見直したかった、そうした意見が内部に存在したのはたしかでしょう。それを、政権交代という現象が可能にしたわけです。私たちの周りでもよくあることでしょう。上司が交代した途端に、従来のやり方を一変させてしまうという。そこに、傍目には何の根拠も提示されていないというのに、席に座る人物が交代しただけという理由で環境が変わるのです。
こうして考えると、平和、防衛・安全保障にかかわっては、この日本国には日本国憲法という他にかえることのできない、重い存在があったし、今もあります。だからこそ、この日本国憲法にたいして常に、さまざまな攻撃が加えられてきたのが日本戦後史の一つの側面でしょう。そもそも自民党という政党は改憲を党是としているのですから。
しかし、戦後史は、それを今日まで不可能にしてきたわけです。65年にもなろうとする長い歳月のなかで、自民党はその意味で足枷をかけられてきた。国会答弁のなかで「約束」させられてきたわけです。その一つが、この内閣法制局見解でしょう。仮に自民党が総選挙でも勝利し、政権を保持していたとしても、このタイミングで平野氏よろしく「過去の法制局答弁にしばられず」とはいえたでしょうか。いえない。なぜなら、これまで法制局答弁に従うことをのべてきたのですから。打ち消すには、重大な責任が伴うし、その意味で勇気が要るのです。
責任はないかのようにふるまい、勇気を出すこともなく見直しをいえるのは、そこに交代という現象があったから。しばしば民主党現政権は、閣僚の答弁のはしばしに前政権は、前政権の、という言葉をのべる。そういって一端、責任を逃れておく。これは政治にとっては有効な手段といえましょう。
そうして、前政権のいったことと突き放し、自民党がしようとしてできなかったことを民主党がやってのけることも想定できる。しかし、そんなことは無条件に許すものではないでしょう。いちいち吟味が必要です。
つまり、機密費を公表しないのは、政権につくもののこれまでの常識であって、法制局答弁を無きものにしようとするのも同様に、少なくともこれまで政権についたものの、できればそうしたいという連続する考えであるだろうということです。
結局、民主党には、自民党がやれなかったことを自民党以上の右寄りの姿勢で乗り越えようとする意思もはっきり存在することを示しましたし、改めて注目したいのは、以上の2つの問題には自民党政治を継承しようという強い意思が貫かれているということです。
官房機密費の使途・金額「公表せず」 平野官房長官 平野博文官房長官は5日の記者会見で、歴代内閣が使途を公開せずに使ってきた官房機密費(内閣官房報償費)について、鳩山内閣でも使途や金額を公表しない方針を明らかにした。民主党は野党時代の01年、官房機密費流用防止法案を国会に提出、03年統一地方選政策集にも機密費改革を盛り込むなど、使途の透明性確保を主張していた。 平野氏は会見で、河村建夫前官房長官から官房機密費の引き継ぎを受けたことを明かしたうえで、「報償費という性格上、少なくとも相手があることだし、オープンにしていくことは考えていない。私が責任をもって適切に判断しながら対処する。発表は差し控えたい」と語った。前政権からの引き継ぎの際の残高についても「発表は差し控えたい」と述べた。 官房機密費の必要性については「内閣・政府にとって重要な情報収集、その情報収集に対する対価」と説明。透明性の確保は「私をご信頼いただきたい」と強調したうえで、「可能な限り今でも会計検査院でチェックを受けている」と述べ、使途を公表しなくても、疑義は生じないとの認識を示した。 歴代政権は、内閣法制局の了解がなければ、事実上、憲法解釈の変更には踏み込まなかった。今回の発言は、憲法解釈も政治主導で行う原則を示したとみられるが、時の政権の都合で憲法解釈が安易に変更される恐れもある。 平野氏は会見で「これまでの法制局長官の憲法解釈には内閣はしばられないのか」と問われ「もちろんそういうことだ」「政治主導だから、政治判断で解釈していく」と述べた。 集団的自衛権の行使を違憲とするこれまでの政府解釈については「現時点では過去に解釈されたことを踏襲する」と述べた。一方で「踏襲はするが、無条件で内閣はしばられないということか」と問われると、「もちろん」と答えた。解釈変更の可能性については「世界情勢が大きく変わったときにはその時点で判断する」と述べた。 |
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