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官僚答弁禁止のロードマップ- 解釈改憲という自民党との連続性
平野官房長官が4日、政府の憲法解釈を国会で示してきた内閣法制局長官の過去の答弁にしばられないとの見解をのべました(参照)。
過去の法制局長官の答弁が(自民党)政府の見解として保持されてきたのは周知の事実です。一方で、この間の一連の動きは、民主党が強調してきた官僚答弁禁止という態度が、どこにいきつくのかを暗示しています。いうまでもなく集団的自衛権に照準をあてているということです。
すでに小沢一郎は10月7日、国会での官僚の答弁を禁じる国会改革に関連し、「内閣法制局長官も官僚だ。官僚は(審議に)入らない」とのべ、憲法や法律に関する政府解釈を行う内閣法制局長官の国会答弁を禁止する考えを明らかにしていました(参照)。
この記事にあるように、内閣法制局長官は、人事院総裁・公正取引委員会委員長・公害等調整委員会委員長と並んで、政府特別補佐人として国会に出席させることができると、国会法69条2項は定めています。法制局長官はまた、閣議に非認証官として唯一出席できる。これにしたがい、歴代政府は、幸か不幸か、内閣法制局長官の解釈をもとに、統一した見解を保ってきたといえるわけですね。たとえ、内閣がかわっても、自民党政権はそれを踏襲してきたという側面をみておく必要があるでしょう。
小沢の主張は、政治主導の名で、官僚の介在を排除し、時の内閣の判断ですなわち見解となるようなしかけにしてしまおうというものです。官房長官の踏み込んだ集団的自衛権についての発言は、議論をその方向に加速させる役割を担っているといってよいでしょう。集団的自衛権は、自国の防衛とは無関係の、他国の「防衛」に参加する行為で、憲法九条が定める「自衛のための最小限」の実力行使を超えるものであり、「憲法上認められない」(1981年の政府答弁)というのが現行解釈です。
ですから、官僚答弁の禁止という手段によって自民党政権時代の対応を切断しながら、歴代の自民党政権が縛られてきた内閣法制局見解からの解放を図る。政府の判断によって解釈をかえるというねらいが透けています。
しかし、自民党政権時代にも、法制局見解に縛られる一方で、以下にあげるような検討が加えられてきたのです。現在に近いほうから、2つをあげておきます。
麻生首相(当時)は昨年9月末、首相官邸で自民党の中山太郎憲法審議会長らと会談しています。そのなかで、海外での武力行使を可能にする集団的自衛権の行使について、「国会に設置されている憲法審査会を早く動かして、与野党一体となって国民のために議論してほしい」とのべています。中曽根外相(当時)は、麻生首相の憲法解釈変更の考えについて問われ、「安全保障の環境は変わってきた。国連平和維持活動(PKO)で一緒にいる外国軍、近海で共同演習している米軍が攻撃された場合、どうするかを考えておかないといけない」とのべているのですから、その後、交代という形式的な政権の非連続性があるものの、憲法を解釈によって変えていこうとするベクトルは少しもかわっていないと判断せざるをえないでしょう。
さらに遡れば、その1年前のことです。
安倍晋三は首相として、米軍と海外で共同作戦を行うことを念頭に、公海上で併走中の米艦船が攻撃を受けた場合など四類型で集団的自衛権の行使の可否についての研究を指示しています。諮問を受けた「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」は08年6月に、福田康夫元首相に対し、憲法解釈の変更によって「可能」とする「報告書」を提出していました。その報告書は、「憲法9条は明文上、集団的自衛権の行使を禁じていない」「安全保障環境が変わった」などの理由を挙げて、集団的自衛権の行使は憲法上「可能」としているのです。
政権がかわって飛び出した一連の発言は、その意味で忠実に過去の検討を継承したものです。
新政権の動きに敏感に読売新聞が反応しています(参照)。
本日社説で内閣法制局答弁にしばられないという政府の態度を歓迎する立場を明確に表明しました。
これもまた、脱官僚の名の下に隠されている危険なしかけなのですが、ようは、官僚にたいする批判を逆手にとって、自民党政治がやれなかったことをやろうとする任務を新政権が担う、それを端的に示す問題です。
(「世相を拾う」09250)
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