車を買って、その車で免許の実技試験を受け、晴れてユカタン州の運転免許を手にしたのが2月12日。当初の予定では、そんなことは他の事務手続き同様、メキシコ入りしてひと月ほどで終わらせる予定だったが、結局3ヶ月半かかってしまった。免許の話は改めて。
ようやく遠出が可能になったので、いよいよ土地探しの第一段階、地域の選択に着手した。自宅(メリダ北部)から35キロほどのプログレソを中心に、海岸近くの町や村を見て回るのである。
東側の海岸線は、ほぼ真東に向かっていて、海から200メートルくらい離れたところを海岸線に並行して道路が延びている。プログレソの5キロ東には、恐竜絶滅のきっかけになった大隕石が落ちたというチクシュルブという村がある。そこから30キロほど行くと、「鄙びているのにカナダ人だらけ」のテルチャックという村がある。そこから先にも小っさい村はあるが、あまりメリダから離れると帰国するときや家族友人が来たとき不便なので、候補に入れない。
えーと、東京で言うと、方角は違うけど「メリダが23区、プログレソが横浜、テルチャックが横須賀で、その先もまだ行ける」みたいな感覚でしょうか。
この2つの村はなんともシケている。チクシュルブのほうはサイズ的には結構大きいが、雰囲気がシケている。ちょっと離れると何もない土地が延々と続いていて、プログレソからずっと走って来た道路沿いにも、店などはほとんどない。
何もないように見えるところはすべて、海岸とこの道路の間を縦に割ったロットになっている。その一コマを買った開発業者か誰かが、さらに細かく数ロットに分けて、別荘用地として販売している。道路に面したところに警備員小屋付きのゲートを作ってあるロットもある。が、警備員はおろか、共用道路さえゲートから少し行ったとこらへんで終わっている。別荘で埋まればオサレな別荘コミュニティになるんだろうが、実際は土地もほとんど売れていないのか、売れても誰も何も建てていないのか、ゲート周り以外は「低木で覆われたブッシュか殺伐とした更地が広がっている」という状態のロットばかり。
開いているゲート(つまり失敗した開発であろう)から入ってみると、さすがに海岸近くにはポツポツとデッカい家が建っている。5軒に1軒くらいは人が住んでそうで、残りのうち1軒は労働者っぽい服装のメキシコ人がいて何かしていて、家主の不在中の面倒を見ていると想像する。残り3軒は人の気配がしない。ホリデーシーズンには誰か泊まりに来るんだろうが、どのみち海岸でなく道路寄りの土地は上に書いたような状態なので、全体として寂しげな地域であることには変わりない。
メキシコの小っさい村の、陽気で素朴で粗雑な感じが好きなので、この東側地域は頼まれても住みたくないと判断。ただ、外貨をあてにして「開発しちゃえー!」とゲートだけ作って、売れなければ放っておくというのは、ある意味メキシコっぽいとも言える。
というわけで、東側は却下になりました。来た道を戻るんじゃつまらないので、テルチャックから南下してメリダに帰る。内陸には、いかにもメキシコの田舎といった村(広場と教会と学校と診療所とタコス屋と八百屋と酒屋くらいしかない)がポツポツとある。どこもかわいらしかったが、ビーチから離れて住むんじゃ遥々メキシコまで来た意味がないので、通り過ぎるだけで家に帰った。
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