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福島県の甲状腺がん検診を青森から憂慮する(全国保険医新聞掲載)

2017年08月04日 | 東日本大震災・原発事故

(全国保険医新聞2017年7月25日号掲載)

 原子力施設が集中立地する青森県では、核燃料サイクル推進、全量再処理の維持を行政や業界は守り抜こうとしている。しかし、使用済みMOX燃料の処分方法は決まっておらず、核拡散防止の観点から再処理によるプルトニウム増加にも厳しい目が注がれており、青森県民は自ら原子力政策の行方を選択していくべき立場に立たされていると言える。

 東日本大震災では六ヶ所再処理工場でも外部電源を喪失し、非常用発電により冷却が維持された。もし大量の使用済み燃料や高レベル廃液が冷却不能となったり、ミサイルや航空機により破壊されたら、放射性物質の拡散は福島を上回るものになると危惧される。

 昨年来、福島県の医療界から甲状腺がん検査の縮小論が唱えられていることを憂慮している。1巡目で確定または疑いと診断された115人(10万人あたり38人)がスクリーニング効果だと仮定しても、2巡目の71人(同26人)は説明がつかず、検査間隔を考慮すると2巡目で増加したと判断できる。

 2巡目の検出率を3地域の市部・郡部に分けて比較してみると、浜通り郡部(同37人)、中通り市部(同31人)、浜通り市部(同24人)の順になっている。地域差が認められないという1巡目での論拠も否定的であり、3巡目以降の傾向を見守る必要がある。

 3巡目でも4人(同3人)が診断されたが、最終的に2巡目より低くなる可能性が高い。それが一過性の増減なのか、診断に関する要因の影響なのかにも注意が必要である。

 現時点で求められているのは、検査の縮小ではなく、信頼回復と客観的評価のはずだ。