踊る小児科医のblog

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「甲状腺がん累積174人」という数字(足し算)は無意味。有病率・推定発症率(割り算)が問題

2016年10月08日 | 東日本大震災・原発事故
安倍首相が福島県の甲状腺がんの患者数を答えられなかったからと言って鬼の首をとったように騒いだり溜飲を下げている方たちへ。お願いだから、少し頭を冷やして、一緒になって脱原発や社会のあり方を変えていく方向で考えていただけませんか。

別の原稿を書いている途中のところですが、この2つのグラフの違いは、一目みればおわかりいただけると思います。

1)累積患者数(2016.09)


先行検査①で115人、本格検査②で59人、合わせて174人もの甲状腺がんが発生している、さあ大変!
とおっしゃっている方の頭の中には、こういった積み上げグラフのイメージがありませんか?

2)有病率・推定発症率(2016.09)


こちらについては、確定した評価方法が提示されているわけではありませんが(=そのこと自体が大問題)、先行検査①と、その後の本格検査②とで、有病率や推定発症率がどう変化しているか(増えているのか減っているのか)を比較するために、独自に、
 先行検査① 10で割る(スクリーニング効果10倍)
 本格検査② 2.5で割る(検査間隔2.5年)
という方法でグラフ化したものです。
(詳細は一つ前のentryや、ブログ内で「甲状腺」で検索して過去の記事を御覧ください。)

当ブログでは、先行検査①の「多発状況」が放射線被曝のために増加しているかどうかは保留のままとしております。スクリーニング効果を20倍程度と仮定すれば、ほとんどがそのためと考えることも可能ですが、前entryにも書いたように、そうすると本格検査②との差が更に広がってしまい、本格検査②の検出状況は危機的な数字ということになってしまいます。

1)の累積患者数で先行検査①に本格検査②、本格検査③(まだ始まったばかり)を足していくことでは、何もわかりません。

最大の焦点は、2)のグラフの右下にある本格検査③の0という数字です。
これが先行検査①、本格検査②よりも更に上に伸びていくのか、その中間か、①と同程度か、①よりも下回るか。
それによって、これまでの数字の意味合いは全く変わってきます。

だから、検査はまず三巡目まで見て、その後最低でも10年までは追い続けないといけないのです。

前entryの最後と同じ結びですが、その意味で、福島県小児科医会の要望は言語道断だと言えるのです。