火野葦平
「花と龍」
明治の終り、故郷を追われ北九州若松港に流れてきた男と女。
男は玉井金五郎、女はマン。
二人は最下層の荷役労働者となり、度胸と義侠心で荒くれ男を束ね、波止場の暴力と闘う。
男の胸の彫青は昇り龍に菊の花。
原作は何度も映画化されて、Hさんも観た記憶があります。
印象として、所謂、”任侠物”だと思っていましたが、壮大な家族の物語でした。
しかもその家族とは作者とその両親でした!!
多少の脚色はあるようですが、実在した人物が実名で描かれています。
ヤクザに負けない堅気の沖仲仕組合結成の功労者となった夫婦の物語。
そして、その血を受け継いだ息子の物語。
いやいや、面白かった!!
「糞尿譚」
糞尿汲取業を営む彦九郎。
先祖代々の田畑や家屋敷を売り、家にもほとんど帰らず、汲取料を集金するにもひと苦労。
汲取料を上げるべく組合を作ろうとするが・・・。
全編、糞尿の臭いが漂う作品でした。
Hさんの田舎はいまだに”ぼっとん便所”ですから、この手の話は良く判りますね~!!
何を隠そう、子供の頃には裏の畑の中にあった肥溜めに落ちた経験もありますので!!
ラストに彦九郎が怒りを爆発させる場面は壮絶です!!
この小説もかって映画化されたそうですが、今の時代では絶対に無理ですね。
第六回芥川賞受賞作品。
「人魚」
河童が美しい人魚を見つけてうっとりと見つめるうちに、人魚の生き物としての部分まで見てしまい幻滅してしまう。
想像と現実はまったく違うと云う事ですね!
「ゲテ魚好き」
ちょっと見た目の変わった魚の釣に関して面白おかしく綴った一編。
河豚やドンコやイイダコ・・・今じゃ、いずれも人気の食材です!!