地球の裏からまじめな話~頑張れ日本

地球の裏から日本頑張れ!の応援BLOGです。
証券関係の話題について、証券マンとしての意見を述べていきます

YOZANのMPO(こりゃカテゴリーはライブドア問題だわなぁ)

2005-08-09 05:37:06 | ライブドア問題
まず最初に、私は決して個別株の売り煽り、買い煽りをこのBLOGにてしていないことをここに記しておきます。また投資判断は全て個々人の責任の上で行ってください。
そういう前提の元に、今日は表題に関して証券マンとしての率直な意見を述べさせて頂こうと思う。

CBウォッチャーならばご存知だとは思うが、このところ立て続けに新光証券がMPOを引き受けている。
最近ではコーナン商事、そしてゼファーと出している。両者ともMPOに変わりは無いが、それでも「きちんとした証券会社」らしい気配りのようなものが、その発行条件に織り込まれており、また会社側も割と好業績発表と同時にMPOの発行を決議するなど、株価に対しては如何にケアーしているかをアピールしているかのように見える。
もちろん両社とも発行決議の翌日には株価は下げており、特にコーナンの下げがきついが、対するゼファーの方は下げたとはいえ、陽線を出している辺りにちょいと力強さを感じる。

さて、両社の株に関して某掲示板を覗いてみると、いまだにCBに関する知識不足に起因するようなご意見を見る。
まあそれはおいておいて、良く見るご意見が「何故時価発行増資等にしないのか?」と言うものであろうか。
実はこれに関しては先週の金曜日に私の尊敬する元ボスAさんと飲む機会があり、そのときに徹底的にお互いで検証した。
まあ結論は極めて普通と言うか取り立てて騒ぐほどのものではないが・・・
引き受け証券会社の側に立つと、まずは時価発行増資にした場合、当然の事ながら引き受け証券会社は全株販売できるか否か100%の自信が無いわけで、そうなると売れ残りリスクを抱えることになる。ところがMPOにしてしまえばこれは一種「債券」であり、またMSCBスタイルであれば基本的に証券会社は評価の段階での評価損が理論的には発生しない。なぜなら当該CBは常にパリティーベースでオーバーパーになるからで、この辺がひとつ味噌となる。
また引き受け手続きを考えた場合、公募とCBではその作業の度合いが全然違う。公募は一般投資家への販売を前提とするため非常に作業が大変だそうであるが、それに比べてCBの方ははるかに簡単である。そうなると発行企業の手数料負担なんかも異なってくるわけで、その辺で両社の思惑が一致してしまえば基本的にMPOの発行にならざるを得ないかもしれない。

さて、本日度肝を抜かれたYOZANのMPOである。
第2回、第3回あわせて15ページに及ぶ発行資料が手元にある。またそれに伴いYOZANのHPやら何やらをじっくり検証したが、検証すればするほど?????なのである。
ではじっくりと見ていこう。

~~~
まずはLUNAさんから頂いたコメントのリンク記事に以下のようなものがあった。

『ライブドア、MSCBで資金供給 フジとの和解資金活用
ライブドアは、同社がニッポン放送の買収資金を調達するために活用した「転換価額修正条項付き転換社債型新株予約権付き社債」(MSCB)について、今度は自らが資金供給元となったビジネスに乗り出した。調達した際に得たノウハウと、フジテレビジョンとの和解で得た巨額資金を活用する。
(中略)
ライブドアとライブドア証券はニッポン放送争奪戦を経て「ノウハウを身につけた」(幹部)という。6月以降、ネット広告会社のライブドアマーケティング(発行額は50億円)、ネットワーク機器開発のプラネックスコミュニケーションズ(同20億円)、記憶装置メーカーのアドテックス(同15億円)のMSCBを次々と引き受けている。
 ライブドアは「買収資金などに新興企業がMSCBを活用する場面は増えるはずだ」(同社幹部)として、今後も件数を大幅に増やす方針だ。』

まずこの記事を見てちょいと噴出してしまったのは、「ニッポン放送争奪戦を経て、ノウハウを身につけた」
との箇所である。
証券会社の引き受け部隊と言うのは、よく言われるのが「別会社」である。つまりこの部隊の連中は入社早々から引き受け系の仕事に行くのがほとんどで、一旦その中に入るとかなり長い期間そこに居る、と言うことからこう言われる。言ってみれば証券会社が長い何月と金をかけて連中を育成する。引き受けと言うのは担当企業の財務状態を常に把握し、その都度適切な資本政策をアドバイスすべく、非常に大切な部署であり、あの程度の争奪戦にてノウハウを身につけた、と言うのはあまりにおこがましい。
ほんとうにノウハウを身につけた、と公言するならば、全くライブドアの息の掛かっていない会社での調達を斡旋すべきであり、ライブドアマーケティングなんてもろライブドアの息が掛かった会社だし、それを引き受けたから一流の仲間入りなんて思っていたらこれは思い上がりもはなはだしいと言っておこう。
(私はCXとライブドアの攻防戦ではライブドアに組したが、今回の件においては徹底的に叩く)

では今日のYOZANはどうか?
これもYOZANのHPを見れば一目瞭然であるが、先日ライブドアと無線LANにて覚書を交わしたばかりである。
つまり、もしもライブドア証券がソニーだとかニコンだとかのMPOの単独主幹事でも取ったら、それはもう完全に一流の仲間入りであるが、このような身内でちょろちょろやっているようではその意図はばればれであり、きっと何かが起こる気がする。
さてこのYOZAN、第2回はライブドア証券主幹事、第3回はライブドアファイナンスが主幹事である。両方とも毎月転換価格が修正されるパターンであるが、気になった箇所をいくつか挙げよう。

「償還の方法および期限」と言う項目がある。通常はどういうケースが起こればこれが償還されるとか、あるいは投資家側にもモノによってはPUTオプションが与えられたりする、等の事項が書かれる。
このCBにおいては、用はYOZAN側は事前通知を行えば、払い込み日以降いつでも償還が出来る、となっており、また投資家側(この場合はLD証券でありLDファイナンスであるが)も、ある所定の事務手続きを行えば繰り上げ償還を請求できる、と言うものである。
通常会社側のCALLは、パリティーで130%がxx日続けば償還できる、とするのが一般的であり、また投資家側のPUTもある一定の期日を経過して、さらにある期間内のみにそれを行使できる、とするのが一般的であり(例えばゼファーの場合は、転換価格が下限転換価格になった翌日以降、株価が下限価格を下回っていれば、PUTを行使できる、となっている)、こんなあやふやなオプションをお互いに持っていたら、正直トレーダーベースでは碌な運用が出来ない、と言っておこう。私が思うにこれは極めて形式的な対外政策であり、お互いが非常に持たれあってなければ盛り込めないと推測する。

そして一番の噴飯モノがこれである。これは上記HPにも書いてあるが・・・
『LD証券とLDファイナンスを選びました理由といたしましては、条件面で一番優れていたことおよび、グループ会社に当社と発展的な関係の構築が来たい出来る事業会社を保有すること等を総合的に勘案した結果です。』

はっきり言おう。予想を含めて4期連続赤字会社の発行するCBを引き受けようとする証券会社は無い。仮に現場ベースで「やってみましょうよ」となっても、引き受け審査と言うのがあって(極めて独立的な部署である)、ここで間違いなく撥ねられる。
つまり「条件面で一番優れていた」なんていうセリフは、「ここしか条件を提示してくれなかった」と、私には読めるし、普通の証券会社に勤める人間であれば100人が100人同じように読み替えるだろう、と言っておく。
またHPにてはMSCB発行に伴う想定問答集、みたいのが掲載されているが、これも結局重要なことには何一つ答えておらず、極めて不明瞭なものだ。

これが公募増資なり、特にLDあての第3者割り当てではなかった理由がお分かりになるだろうか。
それは上述した通り、MPOにしておけばLDは一切評価損は出ない。もし増資スタイルにしてしまったら、仮に株価が下がればLDも評価損を抱える。
さらにこのCB全体のダイリューションは約43%程度と大きい。
もうこのYOZANの生殺与奪権は完全にLDに握られてしまった、と言える。
仮にLDがこの会社に魅力を感じ、例えば子会社化したいのならば、このCBによって既に1/3の株式を手中にしているし、同時にさらに株価を安くして株を買い増すことなんて簡単なことだ。また、別に買収に興味が無ければひたすら転換して最低120億の10%の利益は得られるし。

私が非常に危惧するのは、こういった掟破りの引き受けをバンバンされてしまうと、間違いなくこのCB全体に規制が掛かる、と言うことだ。
これは前からの持論であるが、この、特に今回のような個人株主を徹底的に無視したやりかた(説明文では多少繕ってはいるものの、それらもちゃんと読めば片腹痛い取って着けたようなモノだ)がいつまでも続く訳が無い。もし続くとすれば、それは当局は徹底的な無能者の集団だと言われても仕方が無い。

LDがグループ内でチョロチョロやっている分にはまだ可愛いが、こういうやり方を、あの世間がお騒ぎした挙句に手に入れた資金を使って今後も推し進めるとすれば、もう誰もLDの息の掛かった株を買わなくなるよ。そしてこれは間違いなく当局から目をつけられていると思う。
今回のこの両社がグルになったようなやり方は、投資家そして証券市場全体を愚弄するものであり、断じて私は許せない!

3 コメント

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あ~あ・・・ (luna)
2005-08-09 20:51:25
小鬼さん



>投資家そして証券市場全体を愚弄するものであり、断じて私は許せない!



そうでしょ?

この夏を、益々暑苦しく不快にさせてるでしょ?

困ったものです。



LDの無線公衆LAN事業は評価しているのですが、

その陰で、まさかこんなアホな馴れ合いビジネスが同時に進んでいたとは想定外でした。



日本は、選挙になっちゃったし、この夏は、とんでもない夏ですよ、まったく!



小鬼さんは、涼しいスイスで、どうか快適な夏をお過ごしくださいね。

そして、涼風のようなレポートをお送りくださいませ。



選挙のせいかも? (luna)
2005-08-09 22:35:45
重要なお知らせ



8日郵政民営化関連6法案が参院本会議で否決されたのを受け、衆議院議員選挙が近く実施されることが決定しました。選挙期間中は道路占有許可を必要とする工事の認可がおりないため、現在作業中のアクセスポイント設置工事が一時的に停止となる見込みです。

今後の工事スケジュールやサービス開始時期への影響については引き続き、本サイトにてご報告申し上げます。皆様にはご迷惑をおかけしますが、何卒ご理解をいただきますようお願い申し上げます。



以上、ライブドア無線LAN、案内ページより





これを読んで、ちょっと見方が変わりました。

選挙のせいで、作業が遅れてYOZANは益々打撃を受けることになってしまうのではないでしょうか?益々赤字拡大へ・・・・

というわけで、実質LD傘下入りも同然の覚悟で今回のMSCBで資金調達することにしたのかも?



YOZANという会社は、あまり知りませんが、

これで2度目のMSCBで、前回の分もまだ残っているようですね。

財務状態は、かなり悪くて、苦肉の一策なのかもしれません。



となると、あまり責められないかしらねえ・・・

Unknown (小鬼)
2005-08-10 06:03:40
確かにYOZANとしては苦肉の策のようにも感じるんですね。

個人的にはこのMPOによる資金注入で、この会社の技術なんかが一層伸びて、結果的にダイリューションをも凌駕するような株価の伸びを期待したいとは思うのです。

ただ、それならそうだとある程度の覚悟のようなものが出てもいいと思うのですが、どうも会社のHPなんかを拝見する限りは木で鼻をくくったようなことが書かれているし、さらにこのMPOの条件を、私が昨日書いたように精査してみると、どうも馴れ合い的な、もっと悪意な言い方をすれば、対外的にはまあ適当にお茶を濁している、って感じに受け取れてしまうんですね。

私はLD対CXの時は徹底的にLDを擁護しましたし、またYOZANに対しては何の感情や恨みつらみもありません。しかしながらこのやり方を通常の証券マンが見れば誰でも憤ると思うんですよ。最終的につまらない茶々が入っちゃいそうな気がしてなりません。

健全に市場を育成するには、その参加者がきちんとルールや仁義に乗っ取った行動が要求されるのはどの世界でも当たり前で、それを完全に裏切るような今回の出来事は、どうしても証券マンそれもCBに関わるものとしては看過できないのですなぁ。