地球の裏からまじめな話~頑張れ日本

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YOZANのMPO~その2

2005-08-10 05:56:06 | ライブドア問題
投資が自己責任である以上、様々なニュースをどう解釈してそれを自己の投資行動に役立てるかはご本人の責任である。
がしかし、極めて客観的な解釈の仕方なり説明なりをきちんとすることは、これは証券マンの社会的役割だと思う。
今回のYOZANのMPOにては、某掲示板をずっと拝見しているが、基本的な知識がありながらもそれをどうもご自身の投資行動(それがホールド中なのか、これからの投資を考えているのか、あるいは既に売却されたのか・・)によって、都合よく解釈しよう、と言う(ある意味当たり前かもしれないが)ご意見が散見される。

昨日書いたとおり、証券マンとしてどうしても今回の件にて気になる第1点は、今後のMPO市場に間違いなく当局からの規制なりが入りそうだ、と言うことだ。
このあまりにも仁義無きLDグループの引き受け方法には、少なくとも証券関係者は呆れ返っているはずだ。
相対的に直近の新光証券のMPOが光って見えてしまう辺りがその証左であろう。
ただ、少なくとも、最初に野村が全精力を傾けてこのMPO狩りを行い、また周辺の証券会社も出来る範囲で行い、そして新光辺りが多少気を使いながらそれを行っているさなかに、突如のLDのこのやり方で、恐らく一流どころの動きが多少止まるかもしれない。
これは昨日書いたAさんと一致した見方である(彼は元Nの非常に優秀な証券マン、例のタワーのK氏は彼の後輩であり、Aさんご自身K氏を良くご存知であるようで、結構楽しいエピソードを聞かせてもらっている)。

もう一度今回のYOZANのMPOについての客観的な見方をかいつまんで書いておく。

割と個人投資家の方々が気にする5%ルール。(ちなみに我々はこれは本当に参考程度にしか見ない)
今回のMPOの払込日である8月24日以降、5%以上のホルダーはこの報告義務を負うわけであるが、これは潜在株式もそれに該当する。
つまり間違いなくライブドア証券およびライブドアファイナンスは24日以降に発表されるYOZANの5%ルール報告にその名前が載る。
転換しているとかしていないなんてことは関係ないので、念のため。生株で持っていようが、CBで持っていようが、載る。
CBの場合は、報告締め切り直前の転換価格によってその株数に若干の変化があろうが、その算出方法は皆さんご存知の通り、
CBの保有額/転換価格 にて算出される。
(ちなみに過去に書いたが、これにて算出される株数が「デルタ100%」の値であるね。)

また高取育英会なる会社が、10月1日以降、LD証券に最大4000株を貸借することで合意している。
金額にしてたかだか1億円相当である。
私はこれもどうも対外的目くらましのような気がしてならないのだ。
この程度の貸借をわざわざ書く必要が正直あるとは思えないのだな。
そしてこの情報を持って、中には「この程度の株数では売り崩しは出来ないでしょう」と言う憶測を呼んだりしているが、果たして真相は私にも分からない。
分からないが、転換のプロシージャーを考えること、さらに日本の借株市場を考えることが多少の助けになるかもしれない。

転換社債の転換の過程と言うのは、実は皆さん分かって居そうでちゃんと分かっていないと思う。これは証券マンでもそれに関わっていないとなかなか分からない。
転換社債のホルダーがそのCBを転換したいと思ったときには、
1.転換請求を主幹事に出す
2.主幹事は転換副代理人と呼ばれる日本の信託銀行やら銀行やらへ転換指示を出す
3.転換請求を受け取った副代理人は、当該会社へその旨通知する
4.当該会社は株券を指定の口座へ送付する
5.その株券が入った段階でようやく転換のプロシージャーは終了する

ざっとこのような過程を経る。
スイスにて発行されたCBの場合は、株券はT+3ベースでその株の買い方にデリバーされる。
つまり理論的には今日の東京市場で転換請求を出すと同時に転換売りをすれば、その決済日にはデリバーするべき株券が自分の口座にはいっているはずなので、決済は滞りなく行われるはず・・なのであるが、スイス市場にて発行のCBの主幹事は、在スイスの証券なり銀行が務めるわけで、ゆえに時差の関係でデリバーが一般的に1-2日遅れる。
ゆえにまずはCBを転換して、それから後日当該株を売却せざるを得ない。
これがユーロ市場なり東証であると、株券のデリバーには数週間かかるので、これらの場合は鼻から転換即株売却、と言う行動は理論的には行えない。
(但し保振りがさらに進展すればこのような事は無くなるかもしれないが)

そこで登場するのが、信用のつなぎ売りであり、また借株を使った売却である。
但し、信用の場合は下手をすれば売り方に逆日歩が付き、また借株の場合は借株料が掛かってくる。
さらにマージン(信用取引)の場合、当該銘柄が現物取引オンリー銘柄であれば意味ないし、また借株にしても一般的に小型株の借株と言うのは容易ではない。
そこで特にこのMPOの主幹事を務めるに際して考え出されたのが、大株主から前もって株を借りる、って言うやり方なのであるね。

さてこの借株市場であるが、日本においては外資系が圧倒的に強い。
この借株(貸し株)業務を積極的に行っている証券会社には厳然たるピラミッド構造が存在する。
これにおいて圧倒的に強いのが米系である。
なぜか?
それは米国の巨大年金等にアクセスがあるからなのであるね。カリフォルニア州年金だとか退役軍人何たら年金だとか、この手の巨大投資家は例えば日本株にしてもありとあらゆる銘柄を保有しており、米系証券はその辺からほぼどんな銘柄でも借りられるようだ。
そしてそのおこぼれが次点の証券会社の貸し株デスクに回ってきたりするので、ピラミッド構造と言うわけだ。
ソニーだ日立だはどこの証券会社でもイージーにしかも安く(5BPとか10BPで借りられる)株を調達できるが、ちょいと小型になると普通にこの業務をやっているのではとても調達できない。
例えばある小型株のCBが出た場合、各ブローカーがまず行うことはこの借株を探すことである。いち早く見つけて借株を押さえた所が、第1幕では勝利を収める。
ただ株は借りても肝心のCBが回ってこなければヘッジなりに役立たない。万一勝利を収めたブローカーが実はCBが手当てできずにその株が不要になったらどうするか?
そう、欲しがっている所へ又貸しすれば良いのである。
借株市場を普段から注意しておくと、突如引き合いにでる銘柄があるが、大体そんな時はその銘柄の何かしらのファイナンスが行われる時であるのだ。
(但しそのファイナンス公表前に借株市場が動き出すって事は、その情報がどっかから漏れていることに他ならず、これは個人的にはインサイダーに抵触すると思うのだが、それで摘発された話は聞いたことが無いのが少々不思議である)

CBに関連して借株を使っての投資行動は、何も売り崩しだけが目的では無く、例えばトレーダーにすればそれは転換による利益確定もある。
この際には、種玉さえあればあとは転換請求を継続的に行っていくことにより、株券がどんどんCBから生まれてくるので、最初の種玉を第1回目のデリバーに充てて、後は順次生まれてくる株券をその後の株売却に伴うデリバーに充てていけば、セトルメントはきちんと行える。
今回のYOZANの株券貸借契約を善意に解釈すれば、その方法により1億ずつではあるが、LDは着実に転換売りを執行できる。
しかしながら借株契約と言うのは相対の契約であるので、何も対外的に公表する必要は無い(はずだ、と記憶している)。
つまり、悪意に解釈すれば、対外的にはたった4000株ではあるけれど、こういう契約を一応しています、とアナウンスし、同時に他の大株主からごそっと株を借りている、なんて事もあるかもしれない。
但し、みなさん、ライブーCXの時に学ばれたように、この借株も5%ルールに反映されるので、念のため。

上記のような知識をしっかり習得した上で、あとは各人の解釈によってどんな投資行動を取られようとも、それは自由である。
分からないことを誰かに聞くことは恥でもなんでもない。どうか何か疑問点があればコメント欄にお書きください。分かる範囲でお答えします。