在東京のいつも色々な情報を下さるさる業界系記者の方より、MPOの05年度第1Qのリーグテーブルを頂いた。
平たく言うと、今年4-6月までの間に発行されたMPO(MSCB)のブローカー別の引き受け実績って事であるね。
2005年と言うとまだまだ2月に始まったライブドアVSフジテレビのMPOによる攻防戦が強烈なインパクトを残しているが、「2005年度」ってのは今年の4月から始まっているので、頭を切り替えねばならない。私はこの「年度」制度ってのはどうもいまだになじめないのだなぁ。
前置きはさておき、この3ヶ月で国内外あわせて一体どれくらいのMPOが発行されていると思われますか?
実に国内外の発行をあわせて『3023億円』!だそうである。
日々CB市場(但しヨーロッパのユーロ及びアルパイン市場が主であるが)に身を置く人間としては、実はこの数字、正直ピンと来なかった。
すでに書いているようにCB市場自体は非常に苦しい展開を余儀なくされており、それは取りも直さず原株のボラティリティー(変動率)の極端な低下が原因なのだが、ゆえにまっとうなCB、つまりせいぜい満期中に2回程度の下方修正条項が付いているようなCBの発行と言うのはほとんどない。
ほとんど無いからこの普段のCB市場(我々はセカンダリー市場と呼んでいるが)に新しい血が入って来ない、もともと存在するCBは動かない、ってな「動かない連鎖」状態になっているのである。
しかしながらそんな市場を横目に見ながらこのMPOのなんたる活況なことよ!
ちなみにトップ3は、
1.野村証券~~~1370億円
2.UBS証券~~~ 565億円
3.みずほ証券~~405億円
と、トップ3で全体のシェアの約80%強を押さえている。
この3社を見て何かピ~ンと来るつながりを発見できる人は相当にこの業界に詳しい人だ。
野村からCBのこのMPO組成、引き受けが出来る人間がUBSに移籍して話題になった。移籍後に松井証券と組んで「夜市」を作ったあの流れだ(現在は夜市はやってないの?)。
そしてみずほ証券のエクイティー関係部署は現在はほぼ元野村軍団が牛耳っている。
つまり、一種の野村ファミリーがこのMPO業界でも完全にガリバーのポジションをゲットしているわけだ。
もちろんファミリーとは言えお互いに違う会社だから、連携とかはあり得ないだろうが、それなりの情報交換はしているだろう。ただ情報交換とは言っても「引き受け」に関する部分、すなわち企業のファイナンスに関わる部分は非常にデリケートで一歩間違えばすぐにインサイダー疑惑を招きかねないので、そういう意味での情報交換では無いので、念のため。
さて、以下は私の想像ではあるが、決して外れては居ないと思うが・・
もともと野村証券がこの「MPOプログラム」を創設し、そこから強烈な刈り取りを始めた。最初は各証券会社は野村のやり方を静観していた感じがある。何故ならこのMPO、完全にOK牧場商品となったのが割と最近であるからだ。
当然野村はその辺は綿密に調べ上げ、そして潔癖である、との確信を得てスタートしたのだろうが。
次に各社が考えたと思われるのは、「仮想敵国」の創設である。
私も何度も書いている通り、まさしくこの「MPOの引き受け=証券会社のヘッジファンド化」に他ならないので、ここで各社仮想敵国を「ヘッジファンド」にした。
それまでも証券市場に関わってくる一般企業の財務担当者には「ヘッジファンド罪悪論」が跋扈しており、そこを上手く突いた。
MPOを引き受けるに当たって、やってることはヘッジファンドとなんら変わりは無いものの、一般企業に対しては、
「このスキームならば訳の分からないヘッジファンドにCBを買い集められちゃう心配は一切ございません。我々がきちんと全額転換するまでCB全額を管理出来ますよ。」
ってな感じなはずだ。
確かに一般のCBは、時間とともに保有状況はかなり偏在化する。
いつのまにかCB総額の1/3をたった1社のヘッジファンドが保有していた、なんて事は実はざらにある。
ヘッジファンドはこの間書いたようなCBアービトラージを運用の基本のひとつに置いているので、とにかく種(たね)となるCBが無ければ話にならない。また資金もある。株が安くなったときに同時に安くなったCBを地道に拾っていくのである。
私も何度も経験があるが、株が下がるとそのCBってのは必ず主幹事に売り物がどさっと来る。私としてはそれを保有してますます含み損が膨らむのがいやだから、多少コストより安くともポジションを軽くしようとする、そうするとそこをきっちりピンポイントで買ってくるのがヘッジファンドである。こうやってだんだんと保有状況の偏在化が進むのである。
それはそのCBを出した企業にとって何を意味するのか?
実は世間やマスコミはいまだに「はげたかファンド」だの何だのと言っているが、ヘッジファンドの少なくともCB運用に関しては、彼らは乗っ取りだのといった事は考えていない。それは証券会社の人間なら良く分かっている。
しかしながら偏在化して来ると場合によっては5%ルール報告に突然見も知らぬハゲタカチックな名前が出ることがある。そうするとその企業の財務担当は真っ青になるわけだ。
財務担当は急いで主幹事証券に連絡を取り「一体こいつは何者なるかぁ?」と言うことになる。
そんなひやひやするような思いをするのなら、満期中ずーっと主幹事証券がCBをコントロールしてくれる方がありがたい、夜もぐっすり眠れる、じゃあ我々もMPOで行きましょうか、となる。
つまり証券会社は一般企業のもっとも嫌がるところを巧みにヘッジファンドを仮想敵国に仕上げることで突いていると言える。
な~んてそのどこまでがほんとか分からないけれど、資本市場ってのは元来食うか食われるかの世界であるので、とにかく取れるものは取る、出来ることはやる、儲けるところではしっかり儲ける、って事を常にやっていかないと必ずや取り残されるのである。
ただ私自身のこれは持論であるが、このMPO、どこかで今のスキームは何らかの問題を抱えてくると思う。
現にこれによって既存株主が受ける影響は甚大である訳で、それを回避する手段は今のところ無い。もちろん当局も弁護士も「OK牧場」って言っている以上、例えば既存株主が「有利発行である」と言ったところで勝てないだろう。もちろんあのニッポン放送の馬鹿げた新株予約権とは訳が違うので、そこは念のため。
その希薄化に対する何らかの手立てを打たないと、結局再度個人投資家離れを引き起こしかねない、と私は思う。
特に大手を中心とした国内系は、バブルの頃の強引な個人の取り込み営業が尾を引いて、気付いてみれば個人はほとんどネット系証券に流れてしまっていると言う苦しい立場に居るわけで、そこに目をつぶってこのMPOを強引に推進することはいかなる結果を引き起こすか、やはり誰よりも良く分かって居るはずだ。
野村証券が「巧み」なのは、私が思うに彼らはそれを見越した上で、業界に先駆けてリスクを取ってそれを上手く収益に結びつけ、そして今はまさに全力疾走でMPOで稼いでいるって事だ。
のんびりと静観していた他社も参入してきているが、やがてそれが大きなうねりになる頃は、多分野村はもう別なことに活路を見出している、そんな気がするのである。
平たく言うと、今年4-6月までの間に発行されたMPO(MSCB)のブローカー別の引き受け実績って事であるね。
2005年と言うとまだまだ2月に始まったライブドアVSフジテレビのMPOによる攻防戦が強烈なインパクトを残しているが、「2005年度」ってのは今年の4月から始まっているので、頭を切り替えねばならない。私はこの「年度」制度ってのはどうもいまだになじめないのだなぁ。
前置きはさておき、この3ヶ月で国内外あわせて一体どれくらいのMPOが発行されていると思われますか?
実に国内外の発行をあわせて『3023億円』!だそうである。
日々CB市場(但しヨーロッパのユーロ及びアルパイン市場が主であるが)に身を置く人間としては、実はこの数字、正直ピンと来なかった。
すでに書いているようにCB市場自体は非常に苦しい展開を余儀なくされており、それは取りも直さず原株のボラティリティー(変動率)の極端な低下が原因なのだが、ゆえにまっとうなCB、つまりせいぜい満期中に2回程度の下方修正条項が付いているようなCBの発行と言うのはほとんどない。
ほとんど無いからこの普段のCB市場(我々はセカンダリー市場と呼んでいるが)に新しい血が入って来ない、もともと存在するCBは動かない、ってな「動かない連鎖」状態になっているのである。
しかしながらそんな市場を横目に見ながらこのMPOのなんたる活況なことよ!
ちなみにトップ3は、
1.野村証券~~~1370億円
2.UBS証券~~~ 565億円
3.みずほ証券~~405億円
と、トップ3で全体のシェアの約80%強を押さえている。
この3社を見て何かピ~ンと来るつながりを発見できる人は相当にこの業界に詳しい人だ。
野村からCBのこのMPO組成、引き受けが出来る人間がUBSに移籍して話題になった。移籍後に松井証券と組んで「夜市」を作ったあの流れだ(現在は夜市はやってないの?)。
そしてみずほ証券のエクイティー関係部署は現在はほぼ元野村軍団が牛耳っている。
つまり、一種の野村ファミリーがこのMPO業界でも完全にガリバーのポジションをゲットしているわけだ。
もちろんファミリーとは言えお互いに違う会社だから、連携とかはあり得ないだろうが、それなりの情報交換はしているだろう。ただ情報交換とは言っても「引き受け」に関する部分、すなわち企業のファイナンスに関わる部分は非常にデリケートで一歩間違えばすぐにインサイダー疑惑を招きかねないので、そういう意味での情報交換では無いので、念のため。
さて、以下は私の想像ではあるが、決して外れては居ないと思うが・・
もともと野村証券がこの「MPOプログラム」を創設し、そこから強烈な刈り取りを始めた。最初は各証券会社は野村のやり方を静観していた感じがある。何故ならこのMPO、完全にOK牧場商品となったのが割と最近であるからだ。
当然野村はその辺は綿密に調べ上げ、そして潔癖である、との確信を得てスタートしたのだろうが。
次に各社が考えたと思われるのは、「仮想敵国」の創設である。
私も何度も書いている通り、まさしくこの「MPOの引き受け=証券会社のヘッジファンド化」に他ならないので、ここで各社仮想敵国を「ヘッジファンド」にした。
それまでも証券市場に関わってくる一般企業の財務担当者には「ヘッジファンド罪悪論」が跋扈しており、そこを上手く突いた。
MPOを引き受けるに当たって、やってることはヘッジファンドとなんら変わりは無いものの、一般企業に対しては、
「このスキームならば訳の分からないヘッジファンドにCBを買い集められちゃう心配は一切ございません。我々がきちんと全額転換するまでCB全額を管理出来ますよ。」
ってな感じなはずだ。
確かに一般のCBは、時間とともに保有状況はかなり偏在化する。
いつのまにかCB総額の1/3をたった1社のヘッジファンドが保有していた、なんて事は実はざらにある。
ヘッジファンドはこの間書いたようなCBアービトラージを運用の基本のひとつに置いているので、とにかく種(たね)となるCBが無ければ話にならない。また資金もある。株が安くなったときに同時に安くなったCBを地道に拾っていくのである。
私も何度も経験があるが、株が下がるとそのCBってのは必ず主幹事に売り物がどさっと来る。私としてはそれを保有してますます含み損が膨らむのがいやだから、多少コストより安くともポジションを軽くしようとする、そうするとそこをきっちりピンポイントで買ってくるのがヘッジファンドである。こうやってだんだんと保有状況の偏在化が進むのである。
それはそのCBを出した企業にとって何を意味するのか?
実は世間やマスコミはいまだに「はげたかファンド」だの何だのと言っているが、ヘッジファンドの少なくともCB運用に関しては、彼らは乗っ取りだのといった事は考えていない。それは証券会社の人間なら良く分かっている。
しかしながら偏在化して来ると場合によっては5%ルール報告に突然見も知らぬハゲタカチックな名前が出ることがある。そうするとその企業の財務担当は真っ青になるわけだ。
財務担当は急いで主幹事証券に連絡を取り「一体こいつは何者なるかぁ?」と言うことになる。
そんなひやひやするような思いをするのなら、満期中ずーっと主幹事証券がCBをコントロールしてくれる方がありがたい、夜もぐっすり眠れる、じゃあ我々もMPOで行きましょうか、となる。
つまり証券会社は一般企業のもっとも嫌がるところを巧みにヘッジファンドを仮想敵国に仕上げることで突いていると言える。
な~んてそのどこまでがほんとか分からないけれど、資本市場ってのは元来食うか食われるかの世界であるので、とにかく取れるものは取る、出来ることはやる、儲けるところではしっかり儲ける、って事を常にやっていかないと必ずや取り残されるのである。
ただ私自身のこれは持論であるが、このMPO、どこかで今のスキームは何らかの問題を抱えてくると思う。
現にこれによって既存株主が受ける影響は甚大である訳で、それを回避する手段は今のところ無い。もちろん当局も弁護士も「OK牧場」って言っている以上、例えば既存株主が「有利発行である」と言ったところで勝てないだろう。もちろんあのニッポン放送の馬鹿げた新株予約権とは訳が違うので、そこは念のため。
その希薄化に対する何らかの手立てを打たないと、結局再度個人投資家離れを引き起こしかねない、と私は思う。
特に大手を中心とした国内系は、バブルの頃の強引な個人の取り込み営業が尾を引いて、気付いてみれば個人はほとんどネット系証券に流れてしまっていると言う苦しい立場に居るわけで、そこに目をつぶってこのMPOを強引に推進することはいかなる結果を引き起こすか、やはり誰よりも良く分かって居るはずだ。
野村証券が「巧み」なのは、私が思うに彼らはそれを見越した上で、業界に先駆けてリスクを取ってそれを上手く収益に結びつけ、そして今はまさに全力疾走でMPOで稼いでいるって事だ。
のんびりと静観していた他社も参入してきているが、やがてそれが大きなうねりになる頃は、多分野村はもう別なことに活路を見出している、そんな気がするのである。