地球の裏からまじめな話~頑張れ日本

地球の裏から日本頑張れ!の応援BLOGです。
証券関係の話題について、証券マンとしての意見を述べていきます

最近の起債(CB)について

2006-03-20 06:41:18 | CB教室
またまた非常に間が空いてしまい申し訳ない。
先週までは強烈に忙しく、自分の席すらを暖める暇が無かったのだが、今週からは少々時間が出来そうなので、少し相場やら何やらに思いをめぐらせる時間も出来そうなので、また頑張ってアップする予定であるので、どうぞみなさま見捨てずにお願いします。

さて、その先週の強烈に忙しい最中に2本のCBの起債があった。
13日(月)の商船三井、そして14日(火)の武蔵精密である。
商船三井はユーロ、そして武蔵はアルパインであった。

弊社ロンドンの後輩がいつも起債があると詳細なレポートを送ってくれるのだが、それには私の印象なんかのヒアリングも入っていて、しかしながら奴の文章力と言うかまとめ方には脱帽する。

<商船三井>
同業の川崎汽船(9107)が04年3月2日に300億円、05年3月15日にも同じく300億円CBを発行しているが、それに次ぐ海運業界の起債。また当社のエクイティファイナンスとしては、1990年以来約16年振りとなる。
当債はコールオプションが付与されただけの極めてシンプルなスキームながら、アップ率仮条件レンジは37~42%と高めに設定されている。
アウトライト系の投資家の中には、当社今期PERは市場コンセンサスで10倍弱と同業2社と同様に低水準にあるが、今後の持続的な成長に対して懐疑的な見方を示す投資家もおり、直近の下落幅程度以上の株価上昇は見込みづらく、参加を見送った先も一部あり。
また一方でヘッジ系の投資家であっても買いに走るレベルではなく、手許の試算ではクレジットスプレッドを20~30bp程度、借株コストを25~50bp程度(本日既に場中で起債の噂は流れていた模様だが、急いで借株を手当てする動きは特に見られず)、100日平均ヒストリカル・ボラティリティ36%程度に対してインプライド・ボラティリティを30%台前半に見た場合、募集価格に近い理論価格が導き出せるが、「2月に入ってからの金利上昇局面を受け日々厳しい条件となっていった」との感想も主幹事から聞かれた程のややタイトな条件設定。
ただこの水準ではインプライド・ボラティリティを35%弱程度まで見る必要があることを考えると、ヘッジ系の投資家であっても決して買いやすい水準とは言えない。
ただ2月中旬からの当社株価下落幅が本債のアップ率と同レベルであったことや、結果としてヒストリカル・ボラティリティが上昇したことで、投資家としても何とか買えるプライシングレベルとなったとの声も一部聞かれたこともあるが、久しぶりの大型起債に対してややタイトなプライシングには不満を持ちつつも、この新発債に対して枯渇感の強いマーケット下、多くの投資家に「買わない」という選択肢はなかったとも言えよう。結局、ロンドン時間7時ローンチ、13時35分プライシングというタイムスケジュールのブックビルディングにより、「200件程度、8倍強」(主幹事)の需要を集め、仮条件レンジ(37~42%)の上限(42.05%)にてプライシングされている。このややタイトにも映る条件設定であっても成功イッシューとなったことに対して、「CBマーケットが最も強かった頃のような起債」との声もマーケットからは聞かれた。
当債は野村及び大和のジョイントディールで「スプリットオーダーの確認等で時間が掛かった」(主幹事)こともあり、アロケーションがロンドン時間17時過ぎとなった模様。そのため本日のロンドン市場でのセカンダリー取引は非常に限定的となっている。

一部割愛しているが、まさにこの通りの動きとなった。

そして
<武蔵精密>
昨日の商船三井(9104)ユーロ円CBに続き、2日連続の野村主幹事株絡み外債。また野村ブックランナーのアルパイン円CBとしては05年9月1日ローンチのアビリット
(6423)債以来となる。
アルパイン円CBとしては初めてCoCo条項を付与していることや、アップ率レンジを27~37%と高めに設定していること等を勘案すると決して割安とは言えない条件設定。
ローンチ後1時間程度経過したところで当債に当社大株主ホンダ(26.2%保有)が保証を付けているといった噂がマーケットに流れ、120/100や79/69といったレベルで聞かれていたクレジット気配値が突如22/17といったレベルにまでタイト化したことで状況が一変。業者も様子見姿勢を強めグレープライスが全く見られなくなった。
元々昨日の商船三井債とは違い、借株の手当てが非常に難しい銘柄(一部では5~6%との声も)ではあるものの、当社業界や今後のエクイティストーリー、そもそもの低PERから来る割安感等がアウトライト系の投資家にも好感される起債ではあったが、この思い違いとも取れるタイトなクレジット気配値が起因する部分も大きく、「ブックは150件程度、10倍程度」の需要を集め、アップ率レンジの上限にてプライシングされている(ロンドン時間13時10分プライシング)。通常であればアウトライ系の投資家はアップ率の高さを敬遠しがちであるが、(昨日の商船三井債と同様)この1ヶ月で株価が急落していることでアウトライト系の投資家であっても買えるプライシングレベルになったとの声が聞かれた。また、商船三井債が本日募集価格を割って推移したこと(店頭終値で102.25/102.50)で投資家からは当債に乗り換える動きも一部見られる等、比較感からも買いやすかった、とも。
「多くの投資家層は重なるものの、昨日の商船三井債とは違い当債はUK大陸のアウトライト系の投資家を中心に広く販売された」とのことだが、「予想外」のホットイッシューでもあったと。またホットイッシューとなった結果アロケーション額が少なくなったことから、一部投資家にアロケーション後直ぐに売却する動きも見られたが、タイトなクレジットを信用した投資家がセカンダリーで購入に動いた模様。主幹事も「明日になって問題にならなければ良いが」と漏らしていた。
手許の試算ではクレジットスプレッドを80~100bp程度、借株コストを400~600bp程度、100日平均ヒストリカル・ボラティリティ45%程度に対してインプライド・ボラティリティを35%程度に見た場合、アップ率上限を前提に募集価格に近い理論価格が導き出せるが、主幹事も「本来であれば仮条件の上限を目指せれば良い」と言うようなプライシングレベル。「特殊要因」のタイトなクレジット気配値により結果として高いグレーマーケットプライスが見られたが、仮にクレジットを25bp程度まで突っ込んだ場合であってもインプライド・ボラティリティを40%近くまで見る必要があることを考えると、実態を反映していないグレーマーケットレベルと言える一方で引き続き需給関係が良好な証左とも捉えられよう。
また、グリーンシューも「全額行使の予定」と。

~~~~~
さて、商船三井はさすがに大型でしかも時期的に3月末で余り買い進まれるような展開は続いていないが、武蔵の方は割りと堅調な動きが続いている。
また、さらに突っ込んだ意見があって面白かったので、それをご紹介しよう。

まず何故この時期にこの大型起債か、と言う疑問に対してマーケットで言われているのは、
「武蔵は払い込みが4月だけれど、商船三井は3月。つまり野村が最後の最後、リーグテーブルでの1位獲得のための逆転ホームランを放ったのだろう」
と言うのが一般的。この起債のお陰でEQファイナンスにおいては野村がどうやらテーブル1位を確実にしたようだ。

銘柄感から言うと、これら船舶会社の需給が逼迫しているというのは従来から言われていたので、それに伴うファイナンス、との見方がもっぱらではあるが、ただ市場では、でもこれから船舶はどうなのよ?って意見も結構ある。反対に武蔵はホンダ系の部品会社で非常に優良な会社であるというのは誰もが知っており、まあ「ホンダの保証が付く」なんてガセネタが流れたようだけれどそれを本気で信じた向きがあったとすればそれは素人であるね。そんな噂を意図的に流した向きがあるんじゃないかなぁ、と邪推しているあっしであるが、それにしてもその噂に伴うクレジットスプレッドの上昇はやっぱり素人くささが伴うと思うな。

さて、最後にこれは皆さんも時間があったら調べて見るといいと思うが、とんでもない話。私自身全くノーマークであったし、実は証券関係者のかなりの人間もノーマークであったであろう事実が出てきた。
社内のある人間が、この商船三井に代わる投資対象として川崎汽船のCBを勧めたところ、ある投資家が「それは買いません。何故なら四季報を見たことがありますか?」と言われたらしい。
それでもって彼が急いで四季報を見てみると・・・

まずは商船三井のページをめくってみよう。
四季報には「ファイナンス」と言う項目があるのだが、なんとこの商船三井に関しては、「06上、転社500億予定」と書かれているではないか!!!

そして川崎汽船のページをめくってみよう。
「06上、転社300億予定」と書かれている!

しかしファイナンス情報ってのはこれはインサイダーをもっとも疑われる情報であるはずなのに、そんな堂々と四季報に書いてあって良いのか?と。このニュースは結構我々業界関係者にはインパクトがあって、みな一様に驚いた。
もしかしたら皆さんはご存知だったかも知れないが、だとしたら我々の怠慢であろうね。

あるロンドンの外人にこれを教えたらすぐにメッセージの返事が返って来て曰く
「小鬼、早く全部のページを調べてくれ」

ふざけるなっつーの、せめて交代でやろうぜ、と返事をしたのは言うまでも無い。
こんなところに転がっているのですなぁ、重要な情報が。。

近頃の話題~その1

2006-03-09 05:49:14 | CB教室
どうにもこうにも忙しく、また若干の休暇なんかも入って居たので更新が出来ずにすみませぬ。

さて、今日は個人的に感じた話題を少々。
本日の富士写真(以下フィルム)の大型CB起債、月曜日に発表になったさる情報ベンダーの月例アンケート調査、そして東証の株式分割に対する規制、この3つが個人的なトピックである。

まずは本日のフィルムの起債に関して今日は書こう。

なんと資本市場からの資金調達は当社にとっては23年ぶりのことだそうで、しかしいきなり23年ぶりで2000億ってのもたいしたものだ。それでもダイリューションは8%弱と、如何にこの会社のマーケットキャップ(時価総額)が大きいか分かるね。
スキーム自体はユーロ円にて発行、それをケイマンにあるSPCに売却、SPCから形を変えて発行されたものが国内投資家向けに販売されるとのことである。
ほら、海外のタックスヘイブンを使った形だよ、マスコミ諸君(笑)。

この起債における若干の疑問は2点。
1点目は、それでなくても昔から万年優良会社(つまり株価には面白みが無い)とか言われていた同社、キャッシュはジャブジャブあるだろうに何故にいきなりの資金調達?
資金使途を見ると、1000億円は設備投資、残りが投融資に充当されるらしい。
投融資においては英国インクジェットプリンター向けのインク染料メーカーの株式取得資金に使われるらしいが、これは既に手元資金にて取得済みだそうで、その穴埋めになるらしい。
まあ後ろ向きな資金調達では無いので余りとやかく言う必要は無いが、それにしてもここへ来て株式相場も若干の調整局面に入ってきているし、このファイナンスがユーロCB市場に与えた影響はそれなりに無視できない。つまりこのファイナンスのお陰でCB市場は結構軟調になったわけで、また、今後もこのような大型起債が突如出るのでは無いか、と言った憶測やら、果たして現在の資本市場からこれだけの資金を吸い取られることによるさらなる市場の翳りへの懸念等があろうと思われる。

さらに私が問題だなぁ、と思うのは、東証上場にしなかった点。
私は現在の東証のCBに対する姿勢を常々疑問視していて、今回もその疑問点を回避するためにこのようなスキームが取られたであろう、と考えられるので、それを考えてますます東証は尻に火をつけるべきだ、と言う点が問題だと思っている。
同社は希薄化に対する懸念を出来るだけ抑えるために当初転換価格を非常に高く設定している訳だが、これが東証上場だと上手く行かないのだね。
つまり東証上場にすると、ローンチからプライシングまで現行法だと約1週間掛るわけで、その間のダイリューション懸念による株価の下落は基本避けられず、とすると当初想定していた転換価格を設定することが困難になるため、ローンチ即プライシングが出来るユーロでひとまず発行して、それを主幹事が全額買い取って、全額SPCに売却する、と言うスキームになったわけで、そう考えるとやっぱり駄目ジャン、東証。
補足すると今回の2000億円は、2011年満期A号、B号、そして2013年満期A号、B号の発行で各500億ずつ、の発行となっているが、この2011年モノのプレミアム(アップ率)は40%、2013年モノのそれは30%となっているのだが、恐らく当初から想定転換価格があり、そしてそこから逆算したアップ率を正当化できるような条件決定がなされたと思うけれど、これが株価が1週間放置されてしまうとその当初転換価格に届かないだろう、と言う懸念があった、と言う事だ。

さて、これら形を変えたフィルム債は、結局主幹事の野村證券の国内投資家に販売されるそうで、海外での販売は無い。
これには一応理由があって、そもそも当社は外人持ち株比率が高く(四季報ベースで50%程度)、また一方で株主数が減少していたため、ビジネス上の理由もあって、野村證券の顧客層をターゲットにした、そうである。
多少は個人投資家にも行くのかも知れないけれど、きっとほとんどが国内機関投資家を中心に販売されるのだろうね・・・

そうなると要はこれって全て野村證券の一人勝ち起債ってことになる。
発行させてまずは手数料を稼ぎ、それを全額買い取ってSPCに売却(この時点でも若干の鞘を取るのかなぁ)、SPCから野村東京が全額仕入れ、そして国内投資家に販売する段階でまた鞘を抜く。。。
全ての段階で勝てる起債だ。
これがもしも東証上場だと、当然幹事団を組むことになって、どうでもいい証券会社も「我も我も!」って感じで幹事団入りを希望して、そうなるとフィルムも付き合っている証券会社は野村一社ってことは考えられないから、色々と付き合いを考慮してそれなりのシ団が形成され、そして野村の取り分がそれだけ少なくなるわけだから、野村としては「してやったり」の起債だったことは想像するに難くない。

やっぱりたいした会社だよなぁ、と同業ながらつくずく思う今日この頃であるね。

「今さら人に聞けない質問」シリーズへのお答え

2005-12-30 07:52:15 | CB教室
またまた拙BLOGでは間が開いてしまいすまぬ。
さて、前回の記事にてコメント欄にやまどらさまからお寄せいただいたご質問、CBを理解する上では非常に大事なご質問であるので、ここで頑張ってお答えしてみようと思う。
上手くポイントを付いた回答が示せるとは、恥ずかしながら思えないのであるが、何かのご参考になれば幸甚であるね。

さて、まずはご質問・・・

『CB=社債と株式のコール・オプションの同時保有、ということだから、その価格は社債の格付け(社債の価値)とコール・オプションの価格、及び株価に依存する、と認識しています。
然らば、コール・オプションとしての価値、即ち転換価格も重要な価値の要素となるかと。これは、Black-Scholesの公式を用いて計算されましょう。

そこで、発行時に変動し得る未確定な要素は、ボラティリティσだけだと思います。

これらを踏まえると、CBの価格形成&転換価格決定スキームでは、
1.幹事会社がその時点で持っているσで、転換価格の仮条件を一旦算出し、
2.投資家が、独自のσから独自の妥当な転換価格を設定し、割安である限り、購入のbidを入れる
3.投資家同士が競合し、妥当なσから妥当な転換価格が形成される。
であるべきなのかなと思います。

しかし、仮に発行前(公表前)に転換価格が最初に決められているとするならば、もっと単純にCBの価格そのものが上がったり下がったりするだけになるのかと思います。
然らば、
主幹事会社の選定においては、設定する転換価格が大きなポイントとなる、と考えます。いかがでしょうか。
もちろん、もうひとつの要素として、スプレッド分(一般に2.5%程度?)の多寡もありますが。』

いやはや実に良くご存知ではないか!!

これに対するお答えに関してまずは実際我々がある銘柄においてCBの単独主幹事を獲得した場合の流れをご説明してみよう。
またそのCBは、ではアルパイン(スイスにての発行)とし、通貨は円としてみる。発行会社を仮にA社とする。

まずは主幹事獲得の前段階として当然の事ながらある種のコンペが行われる。
A社に資金需要がある場合、各証券会社はその調達方法を提案する。A社は当然彼らの意向に沿った調達方法(この場合はCBによる資金調達としよう)を提示した証券会社を何社か選定し、今度はそこで選定された証券会社による条件コンペが行われる。A社としては当然自社に一番有利な条件を提示してくれたところ、またユーロやアルパであった場合、海外においてきちんと販売を行える証券会社を選定することになる。
この段階でまずは現地の我々に東京のECM(引受部、Equity Capital Marketの略)の担当者から軽いヒアリングがある。

「実は○○業界(当然会社名は出さない)で規模は中規模の会社がアルパを検討しているのですが、条件はどんな感じなら販売出来そうですか?」

ここで言う条件とは何か?これがやまどらさまへのお答えの一つになるかなぁ。

発行総額
発行価格、オファー価格
クーポンの有無
年限
PUTオプションの有無
ソフトコールは120%か130%かどの程度か
イニシャル・プレミアム
下方修正条項の有無、あれば何年後でフロアーはどの程度か
グリーンシューの有無

等々である。(もちろんダイリューション、全額転換所要日数等もあるが、ここでは基本部分のみ書いておく)
この段階で当然ECMはA社のボンド価値を類似会社と比較して仮定し、さらにインプライド及びヒストリカルなボラを出して、様々な組み合わせを考慮している。
我々サイドとしてはとにかくそれを顧客であるCB投資家に販売するわけであるから、なるべく我々の顧客寄りになるような条件が欲しい。つまりプレミアムは低けりゃ低いほど良いし、PUTは無いよりある方が良いし、下方修正条項だって無いよりある方が良いし、さらにある場合はフロアーは低けりゃ低いほど良いわけであるね。
対するECMとしては、当然他社とのコンペをやっているわけであるから、彼らにとっての顧客、すなわちA社寄りの条件を提示したいわけであり、条件面では全て我々の反対になればなるほどこのディールが取れる確率が高まる。
ここでECMと現地セールスサイドが条件面で様々なせめぎあいをする。
我々もECMもお互いプロだから、そうは言ってもある程度の落とし処みたいのは心得ている。と言うのはいずれにせよこのディールを取れなければお互い金にならない、つまり会社として儲からないわけであるから。
ECMとしては、ここまでは現地に譲歩出来る、と言うモノを持っているはずで、それよりも譲るとディール自体を取れない、と言う感触はあるようだ。

さて、そのせめぎあいの末に、弊社としてA社に提示する条件が固まり、そしてそれがA社に承認された。
そして、ローンチ当日にそのアナウンスが我々に初めて来る。
この段階で日本は午後2時としよう、スイスは冬時間として朝6時。
「例のA社の件、決まりました。本日東証の引けに合わせて取締役会にて発行が承認されて、引け後に公表されますので、それでローンチとなります。条件は・・・」
(注~この段階では発行が承認される、そして東京時間の本日中つまり夜中の12時までに最終条件が決まった段階でそれも承認を受ける)

東証の引けは午後3時、スイス時間で朝7時である。この段階で正式にスイスでのA社のスイスでのCBの発行が公式発表され、我々の出番が来る。

さてその際の条件であるが、

発行総額→ほぼ決定
発行価格、オファー価格→ほぼ決定
クーポンの有無→ほぼ決定(但し現在はゼロが当たり前なので)
年限→ほぼ決定
PUTオプションの有無→有無はほぼ決定、ある場合はPUT価格に幅
ソフトコールは120%か130%かどの程度か→ほぼ決定
イニシャル・プレミアム→?
下方修正条項の有無、あれば何年後でフロアーはどの程度か→?
グリーンシューの有無→ほぼ決定

しかしながら「?」の部分も上限下限はそれぞれインディケーションがあるので、?とは言っても大体の枠は決まっている。それでECMとA社は握っているわけだ。

さて我々セールスサイドは一斉に顧客に詳細を連絡する。例えば、

銘柄はA社
発行総額→65億円
発行価格、オファー価格→発行価格@100、オファー価格@102.50
クーポン→ゼロ
年限→4年
PUTオプション→有、2年後@100
ソフトコールは120%か130%かどの程度か→130%で連続30日以上
イニシャル・プレミアム→5~15%
下方修正条項の有無→2,3年後でフロアー70%OR80%
グリーンシューの有無→有、5億円

これらの条件を顧客に提示して、我々は一斉に需要を積んでいく。
例えばある顧客の反応は、
「プレミアム5%~10%なら10億、それ以上なら5億」
「プレミアム10%までなら10億、下方修正フロアー70%ならさらに5億」
「10億@MKT(これは全ての条件が上限で決まっても10億買う、の意)」
などなど。

大体スイス時間の午前中2~3時間程度でわぁ~~っと需要を積んで、それを元にECMはA社と最後の条件の詰めに入る。そしてスイス時間の昼過ぎ頃(日本は夜8時頃)に最終条件が決定され、そして我々サイドにて投資家への配分会議が開かれて、何処へ1億、あそこへは5千万・・って感じに配分を決めて、自己に残す分やら東京や他店への配分も決めて、そして配分の連絡を顧客に一斉に行う。
その段階でこのCBは正式に世の中に流通を開始し、私がずっとやっていたマーケットメイクが始まるのであるね。(私は個人的にドンパチと呼んでいるが)


さて、ここでやまどらさんへのお答えである。
『主幹事会社の選定においては、設定する転換価格が大きなポイントとなる、と考えます。いかがでしょうか。』

設定する転換価格の絶対値と言うよりも、イニシャルプレミアムがいくらか、が焦点になる。
A社の本日の引け値が仮に1000円とした場合、5%プレミアムなら転換価格は1050円、15%なら1150円になる訳であるから、意味は同じであるが。
但しCBモデル等においては「プレミアム何%」と言う風に入れるのが通常であり、我々もプレミアムにこだわる、と一応付記させていただこう。

やまどらさんの決定スキームの1と2はまさにその通りの事を我々は通常行っている訳だが、3に関しては少々見方が異なる。
もちろん当該株価のボラから妥当なプレミアム等が算出される、或いはこのCB価格の理論価格が、ボラやプレミアムから算出されるわけであるが、これは投資家同士の競合によっては決定されない。
もちろん我々販売サイドが投資家の需要を積む段階で、余りプレミアムが高すぎると需要が極端に減ってしまう、と言う様な結果が出た場合、それに基づいてプレミアムが5%になることもあるので、そういう意味では合っているが。
と言うのは、このイニシャルプレミアムの幅は5-15%と言う感じに当初は成っている、成っているが実際は大体が上限で設定されるようになっているのだね。
万が一を考えて幅を持たせている、と考えて頂いた方が実態に近い。

ちなみにやまどらさんのおっしゃる、
「仮に発行前(公表前)に転換価格が最初に決められているとするならば、もっと単純にCBの価格そのものが上がったり下がったりするだけになるのかと思います。」
に対しては、新規発行の場合は、公表前に転換価格が決まっていると言うのは一般的には無い。第3者割り当て方式等の場合はその限りではないのであえて「一般的には」と付けさせて頂いたが、通常のCBではそのケースは無い。
前にも書いたかも知れないが、発行公表後、転換価格を即日決定出来るのが、ユーロなりアルパの魅力であり、東証上場のCBの場合は公表から転換価格決定までに約1週間程度掛かる。それは単に有価証券発行届出書だかの効力発生にそれくらいの時間が掛かる、と言う事であって、これが改善されなければこれからも一般企業がCBを発行する場合はユーロやアルパが主流になる。
何故ならば、CB発行を公表した途端株価が動き出すわけで、1000円程度の株価での発行を目論んでいたA社、しかし1週間後にはその発行が嫌気されて株が下がって結局900円程度にての発行となってしまえば、彼らの当初の計画にずれが生じるからであるね。
但し転換価格が決まった後のCB値段の値動きは当然ある意味その株価の変動によってCB価格も上がったり下がったりする単純な動きになる。

さて、最後に、発行会社においての主幹事選定ポイント(と言う理解で宜しいでしょうか?)は、設定する転換価格が大きなウエートを占めるか?とのご意見であるが、単に大きな意味での主幹事選定のポイントと言うのは、如何に当該会社にとって有利な条件を提示出来るか?と言うのが基本です。
またそれまでの付き合いだの何だのって言うある種日本的な部分も相当に絡んで来るのは想像が付くでしょう。
仮に転換価格、つまりプレミアムが大きなポイントを占めるとすれば、その他の条件を大甘にする、なんて事も可能になってしまう訳で。

ロンドンの私の尊敬する(勝手に私は彼をロケット博士と呼んでいるが)K氏によるとCBモデルってのは生株に比べて遥かに不確定な要素が多く、非常に難しいそうで・・・


と、つらつら書いてみましたが、果たしてやまどらさま、答えになっているでしょうか??
また何かありましたらどうぞ遠慮なくお願いしますね!(但しご周知のようにお答えまでこの頃少々時間が掛かっておりますが・・・汗)

またみなさんも、どうぞ遠慮なく、特にこの「今さら人には聞けない」シリーズ、私自身非常に勉強になり、かつまたそれをこのBLOGの一つの売りにしていきたいなぁなんて思っておりますので、どしどし待ってますぜ!!




最近の話題など~ほんと間が開きすぎてすまん・・

2005-10-10 03:10:20 | CB教室
どうか皆様、お許し下さい・・
現在営業のサポートのようなこともしており、スイスではかなり大きなアカウントを開けるべく東奔西走している毎日でござる。
ご存知の方もあると思うが、例えば東京に居てある機関投資家と商売がしたい場合、この時代、相手は一人ではなくて、いくつもの部署にコンタクトしてそれぞれの部署からの評価によって、じゃあxx証券さんと商売を始めましょうか、となる。
またそれを継続するには、単に普段のサービスのみならず、アナリストを何人連れて行ったか、IRはどうか、その他もろもろの評価といつも隣り合わせ、毎期ごとに投票があって、ブローカーズランキングと言うものが決まる。
ブローカー1位になると年間手数料のxx%、2位は○○%というような配分が行われるため、担当者は一瞬たりとも気が抜けない。
新しい所と商売しようと思えばその苦労は並大抵ではないことが分かるだろうか。

さて、この間、さる地場証券の社長さん(但し私より10歳も年下!)がスイスにいらした。ひょんな事から半日お付き合いすることになり、まずは知り合いのプライベートバンカーの所へお連れして、その後弊社にも来ていただき、そして夕食を共にした。
これだけネット系証券が流行っていても、やはり地場である、昔からの強烈なお金持ちの方が結構お客さんで居るそうで、社長のスイス行きもさる大金持ちから「飛行機代を出してやるから付き合え」と言われていらしたそうな。
3代目の社長さん、業界ではその若さもあって結構な要職につかれているそうだ。
非常に面白いなぁ、と思った話が「IPOの抽選」に関する話し合いだった。

読者の方の中にも新規公開をいくら申し込んでも当たらない、当たらないのは不公平ではないか!全部抽選にするべきだ!大手顧客を優先するのはどうか?
とのお気持ちを持たれている方が居ようと思う。
これに関する業界の話し合いの席で、この社長が議長を務めて喧々諤々の議論があったそうだ。
さる証券会社の社長さん「うちで一度全部抽選にしたことがありますが、正直収拾が付きませんでした」
要は全部抽選!ってことで大量の新規口座開設依頼が来て、それだけでも十分にパンク要因なのに、直前になってキャンセルする人も出たりして、事務方がパンクだったそうだ。
結局その話し合いで最後に出た話が「新規公開株の初値が高すぎるのではないか!」と言う議論になってしまったそうで(笑)、要は打開策なんて無いんだよね。

これは正直すごく難しい話だと思う。
証券市場の公共性を考えれば、これは一企業の景品の抽選とはちょっと異なってくるだろう。
また航空会社のように利用頻度に合わせて徐々にそのお客のステータスが上がっていく(xx会員とかね)のともちょっと違う。
しかしながらある新規公開を引き受けて来るのはあくまでも私企業である証券会社であるから、その会社が例えば大口顧客を優先して配分することは果たしていけないことなのだろうか、どうか・・

バブルの真っ最中に東京で営業していた頃の最大のサービス商品は「新発CB」だった。
あの頃は新発CBが上場すれば、すぐに140円、150円、200円になった。
(払い込みは100円)。
強烈な記憶があるのが、三菱重工のCB。あっという間にグレーマーケットで200円とか付いてた。
あのバブルの頃、国内営業体が最も苦労していたのが「投資信託集め」だった。
という事はうまいタイミングならば、「この投信ナンボお買い上げ下されば、ある新発CBを100万円お付けしましょう」と言ういわゆる抱き合わせ販売が横行していた。
その辺の碌に株を知らないおっさんでも、私を証券マンと見るや「まずは新発を持って来い」などと偉そうなことを言われた記憶がたっぷりある。

私企業として、ほぼ確実に儲かるものをそれなりの使い方をするのはある意味当然であると思う。が、証券市場の発展のためには果たしてそれで良いのだろうか?

「新規発行の値段が高すぎる!」と言う議論は一見全く的外れに聞こえるが、しかしゆっくり考えてみるとあながちそうでもないのかも知れない。
これは行き着くところ、ECM部隊の一種の「ミスプライシング」なのである。
本来ならば新規公開値段と初値がほとんど同じであるはずべきものなのである。
この辺の皆様が持たれているご意見に私は非常に興味があるので、何か思うところがある方はコメントをお願いします。


価格決定のメカニズム(ちょっと大袈裟であるが~笑)

2005-09-15 06:52:45 | CB教室
昨日の宣言どおり、本日はこの価格決定のメカニズムと言おうか、まあそんなに大袈裟なものでは無いのだが、この辺を私の経験を元にお話してみたいと思う。

コメント欄に非常に嬉しいご質問を頂いたのだが、何故に各銘柄の板には常時あれほどの売り買いがあるのだろうか、と言うものであった。
確かに考えてみれば何千とある銘柄のそれぞれに毎日あるいは瞬間瞬間にあれだけの売り買いの板があるのは不思議であり、さらにそれらが集約されて値段が付いて行くというのは不思議である。
基本的に株価とは私はその参加者の全ての総意に元づいて形成されるものだ、との考えを持っているのだが、では果たしてそうなのだろうか。
板が薄ければ、資金力のある奴が意図的に値段と言うのを作り出せるのではないか、との疑問が当然あったりするわけで、この辺は単純に不思議だなぁと言うしかない。

今から書くことがそういう疑問を解決するかどうかははなはだ疑問であるが、まあそういう価格形成もあるんだな、という事を知る上ではもしかしたら楽しいかも知れないね(笑)。

私はなんだかんだ言って、結構生まれたてのCBの値段形成に深く関わってきた。
MPO系は別として、ごく一般に、特にスイスで発行されたアルパイン円CBのローンチ後の値段形成は結構やってきた。この経験は、価格形成のメカニズムの一端を知る上では極めて有意義な経験であったと言える。

何度か述べているように今の世の中は、各社各様のモデルによって、それぞれのCBの条件を入れてやればそのフェアーバリューは瞬時に出る。
しかしながら各社各様の要請によって、そのフェアバリューよりも安くして欲しい、高くして欲しい等のリクエストが存在するのも事実であって、そういうときにはさらに私の腕の見せ所であったわけだ(笑)。
仮に、アルパイン円CB、銘柄A、総額50億円のCBが発行されたと仮定しよう。
このCBの主幹事は我々で、シンジケーション団は組まない、SOLO LEADとしよう。
これは何かと言えば、主幹事はその引受リスクが膨大である、と判断すれば、シンジケーション団と言うのを組むことがある。主幹事1社では賄いきれないと思えば、例えば大和とか野村とかあるいは在スイスの投資銀行なんかに声を掛けて、この引受に参加しないか?と呼びかける。なんぼかの手数料を渡して、それにOKした先には前もって50億のうち、5億をxx銀行、3億を○○ファイナンス、1億x7件をそれぞれ△△証券、に前もって渡して、主幹事自らの引受リスクの軽減を図ることをする。
つまりそうやって出来上がった図と言うのは、例えば、
主幹事A証券の引受額35億
xx銀行スイス 5億
○○ファイナンス 3億
い、ろ、は、に、ほ、へ、と の各社1億ずつ
総計50億

みたいな形にして、一斉に投資家に販売する、これをシ団を組んで販売する、と言う。この辺はみなさん、国内IPO系でよくご覧になっていると思う。
こうすれば、主幹事は当初最大50億の引受リスクがあったものの、35億で済むようになるわけだ。

しかしながら近年、特にユーロ円CBやアルパイン円CBの起債においてはこれをする所はほとんど無くなった。何故なら基本儲かるプロダクトであるからだ。
50億引受た分儲かるはずが、シ団を組んでしまって35億の引受分だけ儲かるのでは甘みが少ない、ゆえに近年はほとんどSOLOすなわち主幹事1社が総額を引き受けるパターンが主流である。

また私がやっていたような、ローンチ後の値段形成も、ソロとシ団ではそのやり方が根本から違った。

では本題に戻る。この起債がソロの50億であるとする。
その発行が決議されアナウンスされるのが、大体東京時間午後3時過ぎである。(スイス時間午前9時ごろ)
その段階で、主幹事は需要を顧客から取り始める。それぞれの担当セールスが顧客に一斉に声を掛けて、どの程度買いたいか、需要を集める。
同時に引き受け部隊は会社側と最後の条件交渉に入る。プレミアムをどの程度に設定するのか、云々である。
一通りセールスが顧客にコンタクトし、その集計が大体スイス時間昼ごろに分かる。その段階で例えば50億の起債に対して需要は500億程度集まっている、などの情報が引受部隊に伝わり、その動向によって最終的な条件が決定される。
その決定とともに今度はセールスサイドの方で、アロケーション作業が始まる。すなわちじゃあどの顧客にどれくらい渡そうか、と言う喧々諤々の話し合いである。
あるセールスAは「このお客は今後とっても大事になるから、どうしても1億欲しい」
またセールスBは「いやいやこの客もこの間あんなに大きな注文をくれたわけで、どうしても2億は渡さないと今後のビジネスに差支えがある」
等、のせめぎあいが始まる。
この時間が一番しんどい(笑)。

さて、最終的に各顧客への配分が決まるのが大体スイス時間4時前。つまり日本時間夜中の12時前で、この段階で正式な条件も決まり、顧客への配分も決まり、そして私の出番となる。

話を単純化するために、総勢40社の顧客が1億ずつの配分を、@100で受けたと仮定する。残る10億は私の勘定に入り、それを使って値段形成していくのである。
配分した段階では何の気配値も出ない。
しかし、このCBのフェアーバリューはどうも105近辺らしい。
ゆえに本当は5億の配分が欲しかったある顧客zが、私のところへ来て、あと4億とにかく買いたいが、出来れば値段は105未満で買いたい、と言ってくる。
そうすると私はまずマーケットに「104.50BID」を出す。これは出した瞬間にこのマーケットに関わる業者に伝わる。するとマーケット値段はとりあえず、
「104.50BID、NO OFFER」みたいになる。

さて、1億の配分を受けた顧客がそれを見て、中には「そうか100でもらってもう104.50で売れるのか、それなら利益を確定しても良いなぁ」と言う所が必ず現れる。そういう顧客が私に連絡してきて「104.50なら売るよ」と来る。
そこで私はそれを買って行く・・・
それが総数4億に達したら、さっさとそれを104.75で最初の顧客に売る。
ここで私は0.25儲けるし、全員がハッピーな形が生まれる。買いたい人は105未満で買えた、売った人は瞬間的に4.5ポイント儲かった、私もしっかり儲かった・・・と言う構図であるね。

さて、104.50のBIDがこれで途切れた。しかしこのCBの理論バリューは105近辺なのだから、私は今度は104でBIDを出す。
中には先ほど売りそびれた連中が売って来ることもあるし、全然売り物が無ければBID UPして行く。
再度104.50BIDをマーケットに提示、しかし何も動きが無ければまたBID UPする。
105BIDにした段階でどさっと売り物が来たとしよう。そしたらそれは105で買いつつ、今度はマーケットに「104.75-105.25」のような提示をする。
つまり私は引き続き104.75なら買うし、105.25なら売ってあげるよ、と言う意思表示である。
これで105.25で買ってくれる人が出てくれば、私は105でゲットしたモノを出せば良いし、104.75で売り物がさらに出てくれば、一定の額を買ったところで今度は「104.50-105.00」と出す。
今度も仮にまた105で買いたい人が現れれば、私は今度は104.75でゲットしたモノを出してあげれば良い。
以下同文。

つまり、マーケットに出回っている総数を常に把握していればこのようなオペレーションは比較的簡単に出来るのだね。
50億のうち、自分は今何億をいくらのコストで持っているかを常に把握し、同時にどの顧客がどれくらい持っているかを考え、あの客はさっき5千万売ってきたからあと5千万はあるな、とか、あの客はさっき2億買い増したから現在の持ちは3億だな、とかをきっちり把握していると、極論すれば私自身が思うような値段を作れるのだ。
105にしたければ105に出来るし、これを107にしたければそれも簡単に出来る。また103に抑えたければそれも出来る。

つまりやはりモノの値段と言うのは結局需給関係によって大枠は決まり、かつ参加者の意思をすばやく先取りして、それらを常に頭の中で合致させながら自分のリスクを軽減していけば、意外と簡単なのだね。

何だかダラダラ書いてしまったが、これらの質問は喜んで受け付けますので、どうぞ宜しく!


最近のCB市場

2005-09-14 05:28:09 | CB教室
いやはや、決して忙しさを理由に更新のサボり具合の言い訳をするつもりは無いのだが、何たって毎晩9時ご就寝であるので、そりゃあBLOGも日記も更新できないわなぁ。
と言いつつも一挙にまじめモードに入る。

ここもとのCB市場をご覧になっていらっしゃるだろうか?
8月31日のSALA(サーラ)を筆頭に・・・

8月31日 SALA(2734)、アルパイン円、35億+5億=40億
9月01日 三菱製鋼(5632)、アルパイン円、70億+10億=80億
9月06日 シーフォーテク(2355)、MPO、30億
9月06日 イーシステム(4322)、MPO、20億
9月07日 アビリット(6423)、アルパイン円、85億+15億=100億
9月07日 福山通運(9075)、アルパイン円、約250億
9月08日 明治機械(6334)、MPO、10億
9月09日 ドリテク(4840)、MPO、50億
9月12日 荏原(6361)、MPO、400億
9月13日 新日本建物(8893)、MPO、12億
9月13日 スルガ(1880)、MPO、40億
9月13日 ソフマップ(2690)、MPO、5億
9月13日 モリテックス(7714)、MPO、8億

いやはや、である。
今回は、MPOを除いて、ようやくまともなCBが出てきたので、その辺についてご説明しようと思う。

CB全体のボラティリティーの低下のその最悪期が大体今年の5月とか6月くらいだったのは記憶に新しい。ゆえに巨大CBファンド等の危機説がずいぶんとマーケットに出回った。
ある具体名が挙がっていた会社は、確かに巨大だ。とにかく何でも買う。それも半端な買い方はしない。一時は彼らのマーケットニュートラルファンド自体のパフォーマンスの具体的数字まで出回ったものだったが、そしてその数字を持って「いよいよ危ない」みたいなことがまことしやかにささやかれて居たのを思うと、ちょいと隔世の感がある・・
相場の契機はやはり衆議院解散だったと思う。そこからマーケットは暴騰し、同時にCB市場のボラティリティーも上昇を始め、一気に彼らのパフォーマンスが改善された訳だ。
上手くそのタイミングにてローンチして来たのが、三菱によるSALAであった。
このCB、某掲示板では例の如く「これは下方修正が2回付いているからMSCBだ、ああ、主幹事は下限まで株価をいじるだろう、いや上限まで買ってくるかな」のような、もう反吐が出るほど私が繰り返してきている「あり得ない!」事を、さもありなんと言う感じで煽っていたが(笑)、賢い読者諸氏はもうそんなつまらない意見に惑わされないよね。
4年満期で下方修正が2回あるというのは、もちろん野村証券の用語集ではMSCBとか言っているかも知れないけれど、その野村の連中ですらこれをMSCBとは呼びませんので念のため。
仮に連中がそう言っているとしたら、私が思いっきり笑ってやります。
これらのCBにおける下方修正と言うのは、あくまでもCB投資家にとっての「保険」である。これによってCBのバリュエーションが上がる大切な要素だ。
第三者割り当てMPOの、例の如くの下方修正条項とは、そもそも前提が違う。
大体、そのCB自体の販売先が根本的に異なるわけで、通常のモノは徹底的にCB投資家に販売されるけれど、MPOの場合はあくまでも主幹事による一種の「純投資」であることは、だいぶ前に述べたとおり。

まあいい。

さて、そのSALAであるが、オファープライスが102.50、下方修正2回、当初のコンバーションプレミアムは5%程度、130%のアクセレレーション・クローズ(130%CALL条項)、PUT無し・・・
と言う条件だった。
会社自体は中部地方を中心としたエナジーソリューション(と言えば聞こえも良いが、要はプロパンガス販売会社であるね)で、株価は割りと地味目。
しかしながら、ずっとあのMPOばかりで辟易していた投資家にとっては朗報だった。ようやくまともなCBが出てきた!とばかりに、聞くところによるとその応募倍率は軽く20倍を超え(つまり総額40億の起債に対して、800億円以上の応募があった)、起債自体は大成功だった。
ちなみにこれらの条件をインプットしたあるモデルの試算によれば、このCBのフェアバリューは大体106-107程度であったそうで、実際ローンチ後のスイスでの値段はその辺で付いていた。最後は108近辺まで行って、今日現在もその辺の値段での推移になっている。

さて、翌日の三菱製鋼、これも三菱からの起債であったが、会社の格がSALAと比べれば遥かに良いにも関わらず、三菱は唯一オファープライスを103に設定した以外は、SALAと同じ条件でローンチして来た。
これはSALAを遥かに凌ぐ応募が集まったのは明らかであろう。
同じモデルでの試算結果は約111程度!
ローンチ後の値段は最終的にはその辺に収束した。但しチャートを見ると株価は結構な高値圏にあるため、今日現在のCB値段は110-111をはさんだ展開となっている。
いきなりこのような高い値段が付いてしまうと、さすがに「ミスプライシングだ」と叩かれる懸念もあるが、結果的にこれがその次に出てきた、アビリットや福山通運には追い風となった。

アビリットの100億は驚いた。チャートをご覧になれば分かるが、この会社の株価は年初から約4倍!パチスロの何たら、と言う機種が爆発的人気になって株が暴騰したようだが、確かに仮に私がアビリットの財務担当だったら、株価がここまで来たらファイナンスをしたいだろうなぁ、と思う(笑)。
これも結果的には成功ディールとなり、グレーでは102.50のオファープライスに対して104-105近辺の値段が付いた。

同日の福山通運。
これは少々スキームが難しいかった。何たって久々に見る「割引債」スタイル。
ディープディスカウントで発行し、しかも満期が20年、最後は100で償還になると言うモノ。ゆえに上では「約」250億と言う書き方になったのだね。
これは噂によれば、このようなスキームを欲していた巨大投資家の存在があって、そこと共同で進めた起債だったようだ。ゆえにその投資家が1/3程度を買った、と言われている。
確かになじみが余り無いし、しかしながらまともなCBであることには変わりは無いので、これもきちんとした値段がグレーでは付いていた。

ちなみにこのCB、クーポンが0.01%付いている・・
ほとんどタダのようなクーポンであるが、これがついて居る理由をご説明できる方はいらっしゃいますか??

これは、割債スタイルでゼロクーポンだと、償還時にそのキャピタルゲイン部分が源泉課税の対象になってしまうそうで、ゆえにタダ同然のクーポンを付けて、課税はクーポン部分にして、償還差益部分の課税を回避したがゆえ、との事だったそうだ。
まあ引き受け担当者ってのはその辺もつくづく良く考えているものだなぁ、と感心した(笑)。

ある在ロンドンの引受担当者君から、以下のような電話があった。
「小鬼さん、このアビリットと福山についての簡単なレポートを書かねばならないのですが、何か教えてくださいな」

私は引受は素人ながら、CBに関しては割りと注意してその動きをウォッチしていたのでこう答えた。
「世が世ならさ、アビリットのような起債は結構厳しかったと思うし、福山も余りにもスキームが面倒そうで、少なくともスイスの投資家はほとんど参加していないと思うのね。でもこれらがきちんと成功したのはさ、紛れも無く三菱のSALAと三菱製鋼のお陰だと思うよ。これらが先鞭を付けなかったら、現段階では一体CB市場のレベルがどの辺にあるのか、誰も分からなかったし、だからまずは三菱の2銘柄がきちんと道を掃除しておいたから、これらの2銘柄が難なく受け入れられたと思うよ」
とね。
つまり私が上で「結果的に・・・」と言っていた理由がこれであるね。

ようやくアルパイン円なりユーロ円CB市場に明るさが戻ってきた、と言う感触があるので、私自身は非常に嬉しい。
やはりエクイティー市場と言うのは、MPOのような関係者のみでの完結型ではなくて、広く一般投資家をも良い意味できちんとした形で巻き込んで行かなければ面白くないのだね。

次回は、特にこのアルパイン円CBのローンチから値段が付いて行くまで、をきっちり観察していると、物事の「値段が付く」と言う原理を理解できるのさ、と言うお話をしようと思うので、みなさん、頑張って色々と宣伝するように(笑)。









ご質問への回答~再び

2005-09-10 07:19:58 | CB教室
今日はちょいと記事の予定を変更する。
それは、コメント欄に非常に素晴らしいご質問を頂いたので、それに答えておきたい、と言うことである。
これはアマポーラさまからのご質問で、

『一部の海外発行の新株予約権つき社債等で、発行後海外市場に上場すると記述がある物がありますが、外国の方にとっては知名度も低く、おまけにゼロクポーンだったりする会社の社債が上場して商いはつくのだろうか?とかねてから訝ってました。その種の社債は、本当に取引する人がいらっしゃるのでしょうか??』

非常に良くご覧になっていらっしゃいます。
きちんと会社から出された資料なりを読めば、確かにこの「上場」に関する記述が見つかるものがあるのです。

何度も申し上げている通り、海外、それも特にヨーロッパで起債される日系企業のCBには大きく分けて2つあって、一つはユーロ円CBと呼ばれる、ロンドンで起債されるもの、そしてもう一つはアルパイン円CBと呼ばれるスイスにて起債されるものである。(ここではMPO系は除く、ごく一般的なCBに関しての話であるので、ご注意)

引受各社は大体どこも内規なり社内の取り決めで、大体起債総額を100億円で区切って、100億未満の起債はスイスで、100億以上はユーロで、と決めている。
日本の上場事業会社にもかなりのプライドがあって、特にオオドコロの一部上場企業に至っては「スイスで起債?」ってなところも多々ある。これは「わが社クラスがCBを出すならそりゃあユーロ市場に決まってるじゃない」と言うことなのだ。
つまり、大手企業で100億以上の起債も問題無いところは大抵ユーロで、それ以外の小型系の企業はスイスで、と言う暗黙の了解があって、引受担当者も相手の規模によって起債活動を住み分けているわけだ。

ではこの両者の違いは何か?
一般的にスイスにおける起債の方が遥かに起債に関する手続きが簡単で、費用もかなり抑えられる。対してユーロ、つまり英国法に乗っ取った起債の場合はかなりその手続きが煩雑でその分の費用も余計に掛かる。
さらにスイスでの起債は一般に「私募形式」すなわちそのCBをどこかに上場させる必要が無い。
反対に英国の場合は「公募形式」を取る事が多く、この形態であると当該CBは必ずどこかの市場に上場させなければならない、と言う決まりがある。
(もちろんスイス市場にての公募形式、ユーロ市場においての私募形式と言うのもあるにはあるが、一般的ではない)

そこでご質問の答えである。
海外市場に上場されるCBと言うのは、ゆえに公募形式で発行されたCBである。
海外市場、ロンドン市場や、税金の関係からルクセンブルグ上場などがあるが、実際にそのCBが発行され、そういう取引所に上場されてもまず一般には取引はされない。しかしながら取引所は気配値くらいは出す。
特にユーロで発行されるような大型銘柄のCBの買い手は、かなり有名なファンドなり投資家が名を連ねる。
そして特にその手のファンドは、買った銘柄に対して毎日きちんと公表された値段にての「値洗い」をしなければならない。そのソースがこの取引所が出す気配値、と言うわけだ。
逆に、投資家によっては「(そのCBが)どこかに上場しないと買えない」と言ってくるケースも多々ある。その場合はそれまで私募を予定していたCBが公募に変わる事だってありえる訳だ。

つまり当該CBが上場すると言うことは、そこでの取引を目的としていると言うよりも、規則によってそうなっているから上場させるのであり、また上場することによってきちんとオーソライズされた取引所が値段を公表するので、その値段に乗っ取って、法的に問題の無い気配値にて、そのポジションホルダーは毎日値洗いが出来るから、と言うことになる。
ただ大部分の投資家なりヘッジファンドなりは、各ブローカーの出す値段や、あるいは各社各様のモデルによって算出された値段にて値洗いをしている。
取引所が出す値段でそれをやっているのは、伝統的なファンドや年金系がほとんどであると思われる。

ちなみにこれらのCBのマーケットの流通値段と言うのは、現在ヨーロッパでは、
野村インターナショナル
大和SMBCヨーロッパ
三菱インターナショナル
KBC証券ロンドン
クレディスイス・ロンドン
の5社が気配値を主に提示している。もちろんみずほやメリルやMSやドイチェ、シティーなんかも出すには出しているが、一般にこれらのCBのマーケットメイカーと呼ばれ、市場に強制流動性を保たせているのはこの5社であることを付記しておこう。
各社ブルーンバーグにて気配値を日々公表している。

アマポーラさま、こんなんで宜しいでしょうか??

が~ん・・・

2005-09-09 05:55:00 | CB教室
せっかく力作を書いていたのに途中でPCが突然グリーン一色になって固まってしまった、、、トホホ。麻雀だったら良かったのに・・・なんてジョークも出ないわ。

現在CB市場が徐々に変わりつつあって、先週スイスでは久々のまともなCBの起債が2本あった。SALAコーポと三菱製鋼(両社とも三菱インター主幹事)。
そして昨日は、アビリット(野村スイス)と福山通運(メリルインター)である。
どれもマーケットアクセプタンスは良く、よってCB市場もMPO的なもの一色から徐々に脱却しつつあるように思える。
これらの銘柄の某掲示板を見てみると、相変わらずの事が沢山書かれているので、それらの銘柄の掲示板にアクセスのある方は是非ここを教えてあげてください(笑)。

約1時間かけて書いたものが突然消えたので、これは明日またゆっくり書くが、掲示板で言われているようなことは概ね誤った知識、誤解、偏見が多いので、みさなんは注意するように。
それらの銘柄の詳細は明日書きますので、すみません。。力尽きた・・

プロフェッショナル達の意見~久々の更新、すまぬ!

2005-09-06 04:17:39 | CB教室
とにかく公私ともども非常に忙しい日々が続き、更新がおろそかになってしまってすみません。
このBLOGの事はもちろん片時も忘れたことはございません。今後も若干更新は不定期になるとは思われますが、とにかく数日中には日々更新を目指しますので、どうぞみなさま、今後とも貴重なご意見をお待ち申し上げております!

さて、今日は色々とプロの意見をご紹介したいと思う。もちろん全てCBに絡んでいる。
ご存知の向きもあろう、あるいは勘の良い方は気付くかもしれないが、私自身先週は2つの新発CB IN スイスにて忙殺されていた。両方ともMPOでは無く、極めて普通のCBであったが、どちらもおかげさまで大成功となった。
今回の意見はそれより以前に出た起債に関するものであるが、まずは・・・

8月26日にローンチしたグッドウイルのMPOである。概要は、

『26日のユーロ市場では、グッドウィル・グループの円建て転換社債型新株予約権付社債(250億円、4年、割当先:大和証券SMBCヨーロッパ)の発行が決議された。同債は第三者割当方式による私募で、利率0.0%、発行価格100、アップ率は5.0%(転換価格:20万2742円)で設定されている。
同案件では、大和証券SMBCヨーロッパに対してCBを発行した後、大和SMBCヨーロッパが大和証券SMBCをCBコールオプションの取得者とするデリバティブ契約(対象数量:額面250億円、権利行使期間4年)を締結。さらに大和SMBCは、グッドウィルG会長が経営する折口総研をCBコールオプションの取得者とするデリバティブ契約(同247億円、同2年)を結ぶ。従ってオプション部分は、最初の2年をグッドウィルGが、その後の2年を大和SMBCが保有する形になる。つまり、大和証券グループは、同商品を最初の2年間は普通社債として、その後の2年間は第三者割当型CBとして保有する。』
と言うものであった。

これを私自身見たときの印象は、大和もずいぶんグッドウイル寄りのものを出したなぁ、と言うものだったのだが、これに対する簡潔な印象を私が師と仰ぐロンドンの教授に聞いた。彼の意見はこうだった。

『2年目以降は時価の90%に修正されますが、2年目まではディスカウントがありません。すなわち2年目までの転換は不利なので、転換が起こる可能性はほぼありません。万が一転換されても95%の下限付なので、下限70%のように転換株数が増える事がなく、希薄化が抑制されています。さらに折口総研がコールオプションを保有しているため、当初2年間大和は転換ができず、新株が市場に出回る事がありません。以上の事から、2年目までの転換権はほぼ見た目だけのものであり、最初2年間は転換できないとした場合でも商品性は余り変わらないと思います。
コールオプションの本当の意味は、2年後から通常のMPOと同様に転換が進んでいく前に、一度折口総研が保有額を増やせるかどうかを決められる事にあると思います。コールの判断はその経済性というよりも、折口総研の資金の潤沢度・保有割合を増やして支配を強めたいか否か・株価が低迷して希薄化による株価への影響が懸念されるかどうか、などに影響されると思います。

コールされた場合、大和は発行価格と行使価格の差額5円を得られます。コールされない場合は、その後2年間で時価の95%で新株を投資家に販売すれば、5円の利益が上がります。グッドウィルはJCR格付けBBBなので、クレジットスプレッド100BPとすると、2年の金利0.25%と合わせて2年間の割引分は2.5円。従って大和の利益は2.5円/100円X250億円=6.25億円程度と思われます。』

このCBがローンチしたときにやはり私は某掲示板をずっと拝見していた訳であるが、まあこのコールに対して大和が株価をどうしてくるだのこうしてくるだの、と言う意見がどっさりあって、疲れた。
何度も言うように主幹事が株価に対してその起債と絡めて介入してくることは、現在の当局の管理及び法に照らしても不可能であることを改めてここで述べておきたい。

さて、このディールに対して我が懇意のさる業界系記者の方が記事を送って下さった。この業界系情報会社の記事は、特に各フィールドの人間の意見をつぶさに拾っているので、我々にとっても非常に貴重だ。この記事は無断転載もちろん禁止であるが(笑)、ここではその掟を勝手に破ってご披露する。
こういった正しい記事に皆さんが触れることは極めて重要であるので、記者さん、もし問題があったらぜひご一報下さい。しかしながらこのBLOGの本来の目的をどうぞご理解頂ければ、と同時に思います、はい。

『この案件をHPO(Hybrid Private Offering)と見る向きもあるようだ。HPOだとすると、大和証券グループにとって初めてのスキーム。グッドウィルGがコールオプションを行使する場合、行使価格は105であり、2年後に償還されるとなれば大和SMBCは年2.5%(単利計算)を得る。逆に、行使されない場合は、当初支払われるオプション料のみ。そのオプション料について「10数億円程度では」(市場筋)との見方もあるようだ。グッドウィルGの格付けはトリプルBフラット(JCR)で、クレジット・スプレッドは「60~70bp」(トレーダー)。この条件設定は、「発行体の株価への自信の表れ」(投資銀行部門)との分析も聞かれる。

大和SMBCとグッドウィルGのデリバティブ契約においては、全対象数量が株式に転換されることを想定した場合にTOBに抵触しないよう、会長一族の持株比率が3分の1を超えないように対象額面を247億円に減額したとのこと。

今回のCBのスキームは、「グッドウィルGの株主総会が開催される9月上旬までは確定しない」(大和SMBC)というが、市場関係者の間では「条件設定はリスクに見合う」とされる。

グッドウィルGは、8月15日に業績の下方修正を発表。コアビジネスである派遣・請負事業および介護事業での新規拠点を加速させた結果、新規拠点数が予定を上回ったことによる。期初計画の新規拠点増加数は、派遣・請負が200ヵ所、介護が196ヵ所であったが、実績は前者が365ヵ所(対計画比+83%)、後者は302ヵ所(同+54%)と大幅に増えることに。

派遣・請負市場、介護市場ともに成長市場であり、グッドウィルGは同市場の中でも特に顕著な伸びを示している。このため、今回の成長性への先行投資費用の増加は「来期以降、同社の収益成長に寄与してくる」(日系ナリスト)と見られ、今後は「利益獲得ステージへ移行する」(外資系アナリスト)との予想。目標株価については「25万円」(証券系アナリスト)との試算がある。同社は保守的な業績予想を発表しているものの、市場は楽観的でありアップサイドを期待しているようだ。』

さすがにプロの書く記事だけに、非常にまとまっていてしかも読みやすい。
どうかこの手のものが出た場合、ここを訪れてくださる諸氏におかれては、某掲示板の煽っているような意見を全面的に肯定される前に、きちんとご自身で調べるなり、プロにお伺いを立てるなりをされて欲しい。

ヨーロッパのCB市場は最近ドラスティックに改善されている。かつて巨大ヘッジファンドが危ないのではないか?との憶測などが流れているくらい、CB市場のボラが低下していたわけであるが、この頃の株式市場の若干の改善に伴い、CB市場も息を吹き返してきた。
それゆえまともな起債が市場において物凄いアプセプタンスとなっている。
次回またはその次になるかもしれないが、その辺の事を書いてみようと思う。

尚、コメント欄に対するお返事、明日会社でまとめますので、もうちょいお待ち下さい、、すみません!!


GMOのMPO

2005-08-23 05:33:06 | CB教室
本題の前に昨日の記事の補足である。

まずは借株(貸し株)市場に関してであるが、海外勢を中心とした業者間では、
『OSLA』(Overseas Lenders AssociationだったかAgreementだったか)と言うのがあって、個別の企業なり業者はその内容に基づいて契約を結ぶ。単純に全てが相対契約と言うのではなくて、一応こういう業者横断的なモノがあって、そこに種々のアグリーメントが記されている。私もこのOSLA、どっかにファイルなりがあったと思うので、今度探しておきます。(オフィス移動直後なのでデスクはめちゃくちゃなのでもうちょい待たれよ~笑)

~~~
さて、本日も大型、と言って良い起債があった。
GMOのMPO(3本建て)である。計310億円の起債規模で、当初転換価格で計算するとそのダイリューションは約17%となる。
せっかく18ページに及ぶ資料をプリントアウトしたのに、会社から持ってくるのを忘れた、失礼。
早速某掲示板をずっと拝見していたが、それにしても相変わらずの売り煽り買い煽りの多いこと多いこと。。知識不足を逆手に取ったそれらのやり方は正直少々辟易する。もちろんきちんと事象を客観的に捉えようとしている方々が何人もいらっしゃるのに、それに対する罵詈雑言のようなものを見ていると、改めて株式市場は魑魅魍魎の世界だなぁ、と思う。

私の非常にダラダラした書き方に慣れてきてくださったであろう皆様におかれては、そろそろこのMPOを見るコツなりチェック点の肝なりを把握してくださって来ていると思うので、この起債に関してもその辺を抽出してみよう。

まずはこれはいわゆる「借り換え」である。
280億円の普通社債をかつて発行、それにて調達した資金によりオリエント信販買収資金に当てようとしていたわけだ。
しかし、今回の起債によりこの普通社債をとりあえず全額償還させて、改めてこの起債によってお金の大半をこの買収に使おう、と言うものだ。
本来ならばこの社債がいつ発行されたどのような形態のモノなのかを調べる必要があるとは思うが、ちょっと見ただけではその内容が出ていないので、省略するが、単に「無担保社債」と言っているのでエクイティーファイナンス(いわゆる新株発行を伴う資金調達)では無いだろう。ストレートボンド系だと思う。
この借り換えの意味を無視した投稿が結構あったが、これは株価と言う側面で切った場合には当然大きく違う。
普通社債は基本株価には影響しないが、このCBは希薄化が起きるので、根本的に違う。
普通社債は当然満期に全額償還しなければならないが、CBの場合は転換が進めば企業はその返済の必要は無くなる事は論を待たない。
以上がこのMPOのチェックポイントその1、である。

さてその2であるが、このCB、当初の転換価格は非常に高いところで決めている。
本日の株価に約40%のプレミアムを載せた価格がこの3000円と言う値段だ。
しかもこの値段は基本来年4月までは変わらない。その後は上下限幅がありながらも毎月修正が行われる一般的なMPOスタイルになっており、その修正幅は92%である。
これだけを見ると野村は結構強気のプライシングと言うか、そこまでは絶対の自信があると言うか。
しかしここで見逃してはいけない条項が付いている。

「発行後平成18年3月17日までの間に、当社が必要と認め、かつ新株予約権付き社債の社債権者に対して事前通知を行った場合には、本号①に定める方法と同様の方法により修正されるものとする。」
ちなみに①の方法とは上述した、毎月第3金曜日云々、と言う方法である(若干日時のカウントは異なるが)。

この条項は私はかえって投資家に不信感を抱かせると感じる。
これはあくまで主幹事たる野村ににとっての保険と考えられよう。
いまだに上下限値段まで主幹事が株価をどうとかこうとかしてくる、みたいな憶測があるけれど、それは私も既に書いたように現行ではそのようなことは無いと考えてよい。
また、貸し株についても同様だ。これはつなぎ売りに関しては規定していないようだから、単純なつなぎ売りによる「ちょい借り」はあるだろうと考える。
それらのことをおいて置いても、この条項は引っ掛かる。

ここにいわゆる質疑応答のようなモノが記されているが、どうも有利な点ばかりを強調する姿勢が目立つ気がするのは私だけだろうか。
早期償還に関しても書いてあるが、それだったら今回の社債が(恐らくこれも早期償還なのかな、違ったらすまん)簡単に借り替えられるのならば何も無理してCBを発行せずとも良かったはずである。
「当社株が過度に下落した場合は、当社の選択により(つまり早期償還)、過度の希薄化を抑制することが出来る」とあるが、そこまできちんと言い切るのなら、あのような条項など付けずに、堂々と普通のCBで勝負しても良かったのではないか。

私はこの会社をざっと見た限り、悪くないよな、と思っているのだが、なんだかこの条件はそれだけにちょいと残念なのである。

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