地球の裏からまじめな話~頑張れ日本

地球の裏から日本頑張れ!の応援BLOGです。
証券関係の話題について、証券マンとしての意見を述べていきます

申し訳ない!

2005-08-29 06:00:02 | ライブドア問題
拙日記に書いたように明日が引越し本番なので、今宵はラストスパート中です。。
コメント欄にまた色々お書きいただいておりますが、レスはもうちょいお待ちください!
ただ明日も普通に出社いたしますので、新しい材料探しについては事欠きませんので(笑)、明日の晩上手くADSLの移転が完了していれば、明日書きますので。
もし明日まだ記事がアップされていなかったら、それはスイスのそういった系統の仕事が遅いのだなぁ、と思ってくださいませ。

ご質問への回答~補足

2005-08-27 08:21:45 | 正しい金融知識
数日前の記事「ご質問への回答」欄にまたまたご質問が寄せられたので(ありがとうございます!)、それはコメント欄にて書くと長くなりそうなので、ここで記事にしますね。

その前にまずは補足である。
最初は例の借株に関してであるが、この分野に詳しいさる業界紙の記者さんと話をした結果、私の認識が間違っていないことを確認した。
つまり海外経由の借り株貸し株については当然日証金の統計には載ってこない、と言うことだ。
さらにこの記者氏が聞いたところによると、ほとんどの貸し株デスク担当が「あの日証金のデータはグローバルで見た場合あまり参考にはならない」と言っていたそうで、残念ながら。
やっぱり外人投資家、買うときゃ徹底的に買うけれど、どっさり持っているのですな、日本株。まさに貸すほど持ってる、って印象でしょうか。

ただ、ちなみに例えば私(在スイスの金融機関)が、例えばロンドンの外資系金融機関とOSLAに基づく株券貸借契約を結び、そしてある日ソニーを10万株借りたとする。これを東京で売ったらどうなるか?
これはきちんと「空売り」である旨明記しなければならない。
もちろん借株の受け渡し日と株の売りの受け渡し日を時差を含めてきちんと一致させておけば問題無いように見える。
ただ、セトルメント(決済)は通常約定日から起算して4日目、海外ではT+3と言うが、実は3日目すなわちT+2において、売り方と買い方の決済証券(カストディーと言う、つまり売り方は相手のカストディーに株券をデリバーしなければならないし、買い方は株券を受け取るとともに相手のカストディー指定の銀行口座にお金を入金しなければならない)の両者の間で「3RD DAY's Check」と言うのが行われる。
この段階で、明日のデリバーは大丈夫です、いやまだ分からないので顧客に確認します、のやり取りがされ、通常はこのチェックのお陰で明日の決済が滞りなく行くようになっている。
恐らく、仮に借株による売却であれば、この段階でそれがある程度分かってしまうと思う。
もっと言えば、何も私は空売りであることを隠す理由って言うのは実は余り無い。
誤解されがちだが、空売りをするな、とは誰も言っていないのである。空売りをしても良いけれど、設定されたルールを守れよ、と言うことなのだ。
報告義務はあるし、アップティックルールはあるし、制約はあるが、それをきちんとやれば良いだけの話といえばそれまでなのであるね。

デスクの担当者に「でも言わなきゃ分からないジャン?」って言ってみたら、「そりゃそうですけど、やはりきちんと最初に宣言しておいた方が良いと思いますよ」との事だった。
つまり空売りを隠すことは恐らく技術的には、特に海外発だと可能だろうとは思う。思うが例えば何かの都合で相手のデリバリーが1日遅れたり、って事にでもなったら間違いなく突かれるだろう。このデリバー遅れ、各社のコンプライアンス(法令遵守を見守る連中)は必ず見ているので、そこからぼろが出る。

もともとこの空売り規制、覚えておられるかもしれないが、その成立自体が極めて世間に迎合するような経緯であった。相場が極めて悪かったとき、「ヘッジファンドによる売り崩しだぁ」と誰かが騒ぎ、それが結局こういう形で出来上がってしまったのだ。
しかしながら経験から言うと、そんなに派手な空売りって言うのは実は余り無い。
海外勢は割りと現物で素直に売ってくる。もちろん空売りとの申し出があれば我々も注記を付けて東京に発注する。
ただ、顧客サイドからこの自発的申告が無ければ、我々海外現法は注文を受注する段階ではそれを確かめる術が無いのも事実だ。しかしながらその場合、万が一空売りであったとしても、現法側には非は無いわけで、それは顧客も十分に知っているから、あえて意図的に空売りを空売りではないように発注してくると言った事は実際にはほとんど無いと考えてよいと思う。

さて、まずは夕凪所長さまからのご質問、JR東海の公募価格決定前の株価下落に関してである。
これは全く私の想像なので、余り責任感のある発言ではないのですが、そこのところをご了解頂いて・・

こういうケースは実はたまに見ます、正直。
但しはっきり言える事は、主幹事は関わっていない、と言うことです。そんな大事なときに主幹事自らがそのような行動に出たら、後はどうなるかは火を見るより明らかです。また主幹事が例えば他の会社を使って売り崩すようなことも、出来なくは無いでしょうが、我々の常識では考えられません。
前に書きましたが、企業のファイナンス前になると突然いくつかの銘柄の借株がタイトになることが良くあります。何故そのような情報が漏れるのか、正直分かりませんが。
例えばある会社が、A証券の借株デスクに「○○銘柄の株は無いか?」と聞いて来たとします。A証券が無ければ今度はA証券が他の同業者なりに同じことを聞きに行くわけです。そうやってこの手の情報はあと言う間に流れます。ですから先ほどの記者氏はそういうデスクと常に連絡を取ってて、そのような動きがあると「○○の株にファイナンスの噂か」みたいな記事になる訳ですね。

ご質問にあるように、割り当てを事前に決めてもらっているヘッジファンド等が株価を借株による売却で下落させることに成功すれば、当然その差額が利益になります。その際に空売り規制逃れをしてまで売るかどうかは正直分かりませんが、ただ少なくとも証券会社の自己勘定はそれはやりませんね。

昔、散見されたのは、CBの転換価格決定日に株価を下げて、そこで価格決定、翌日、昨日売った株を全部買い戻すと今度は株が上がるので、買ったCBも上がる、なんてことを平気でやってた連中が居ましたが、今ではそこまで派手には出来なくなっていると思います。
しつこいですが、手口さえ公表してくれればもっと透明度が増すのにな、と思いますねぇ・・・


さて、DE様からはJブリッジの公募に関してです。
Jブリッジ株が不自然な下落を続け、そしたら公募を発表した、との事でした。私はノーチェックでした、すみません、トホホ。
それに絡んで・・・

『一般的に引き受け価格は公募価格決定日に同時に決定されるものなのでしょうか?』
引受価格とは、公募価格から引受業者の手数料を引いたものがそれに相当すると思いますが、一般的にCBでも公募でも手数料率は大体決まっています。
例えばCBであれば大体2.5%程度が主幹事に入ります。ですから通常のCBで近頃は、102.50の募集価格と言うのをよく見ると思いますが、これは要は主幹事への手数料はそのCBの買い手が負担して、起債会社はきちんと100で調達して最後転換が起こらなければ100で償還、と言う風になっているのですね。
公募の場合は細かい料率は分かりませんが、例えば公募価格1000円となった場合、実際主幹事は1000円x株数分のお金を投資家から払い込んでもらって、そこから手数料を差っぴいた分を起債会社に払い込んでいるわけです。
そういう意味では両者は同一日に決まる、と言えましょうか。

「引き受けるドイツ証券は、最大限の引き受け、公募価格との差益をあげる為にどのような株価操作をしてくるものなんでしょうか?」

主幹事は株価操作はしないと考えて差し支えありません。但しそのイシューが非常にホットな場合(良く新規公開ではありますが)、冷やし玉と呼ばれる売り物を主幹事が意図的に場に放出して、値段を付けさせることはありますが、通常の公募ではそれもありませんね。
ただ、悪意に考えた場合のこの利益の上げ方は、上述しましたように、JR東海みたいなことを行えば理論的には利益は出ますよね。
公募価格と言うのは一般的に時価より下になりますから、公募でもらえる株数が決まっている場合、それと同数をあらかじめ場で売って、公募価格で買えればその差額だけ利益になりますし、受け渡しもその公募で手に入れる株券を充てれば良いわけです。
但し派手にやると必ず当局の手が伸びると考えていいと思います。
実際その手の事をやっていたと思われるあるファンドとかは既に当局にずっとマークされてる、なんて噂も聞こえてきますのでね。

「今回の下げ局面を作り出したのは、少なからず情報を事前に知りえた人間以外にドイツ証券が公募価格を考えて誘導、あるいはベッジ売り等で下落をさせるようなことはあるのでしょうか?」

その下げ局面に仮にドイツが絡んでいたとしたら、それは必ず司直の手が伸びます。ただ、何故かその情報が漏れて、それを利用した奴が居るだろうことは否定出来ませんが、個人的にはドイツが絡んでいるとは思えません。
ましてや主幹事自身が公募価格を考えて価格誘導等すると言うのは、完全に相場操縦に当たりますので、まず主幹事がかむことは無いでしょうね。
但し何らかの形でその情報を事前に知りえた誰かがそれを利用して下落局面を作ったかもしれない、と言う可能性は否定できませんね・・・


~~~
一見、主幹事ってのは何をやっても良いように見えますし、実際ファイナンスが絡んできた場合の不穏な株価の動きと言うのは、主幹事が一枚かんでいるように見えがちですが、この金融機関を取り巻く厳しい目の状況下ではもうそれは不可能なのです。これはきちんとインプットしておきましょう。
コンプライアンスに対する考え方は日本の金融機関は非常に遅れていたのですが、今ではもしかしたらどの業界よりも厳しいものになっているかもしれません。
実は私自身、昨日もロンドンから来たコンプラの英国人と会議をしておりましたが、とにかくモノの見事に我々証券マンの自由度ってのは制限されているのですね。
ですからせっかく主幹事のファイナンスをゲットした証券会社、それをゲットしただけである意味十分潤うわけです。それは手数料と言う利益もそうですが、リーグテーブルと呼ばれるいわゆる業界内の順位ですね、これが上がってますます会社の価値が高まりますし、そうなると他にファイナンスを考えている会社も主幹事を指名してくれるかもしれない、と考えるわけです。
なんだかキレイごとに聞こえるかもしれませんが、せっかく取った主幹事案件を自らで法的リスクを更にとってもうちょい稼ごう、ってのはあり得ないわけです。

この引受の世界って言うのはどの証券会社も相当優秀な連中で固めています。
ですから彼らが知恵を絞って取ってきた主幹事案件を例えばディーリングに居る連中の自己勘定による余計な売買でぶち壊されたりすると大変なのですね。
それゆえ各社には「チャイニーズウォール」と呼ばれる、プライマリー(引受)とセカンダリー(ディーラー、トレーダー、セールス部隊)をきっちり物理的に分離する「壁」があるのです。

但し、そうは言ってもみなさまがご指摘される各案件を見るに付け、その不合理さに悩むわけですが・・・(笑)


いやはや・・・

2005-08-26 07:00:09 | その他よん
みなさんのお陰でこのBLOGのヒット数が徐々に上がってきてとても嬉しい次第です。これが上がると言うことは少しでも正しい知識を得ている方々が増えていると信じておりますので、どうか今後とも宜しくお願いします!

さて、働くと言うことがこんなに大変だとは・・と言う感じで、今も既に夜中の12時ですが、実はさっき帰ってきたばかり。
明日も朝6時過ぎには起きて、会社へは7時半には入っていなくてはいけませぬ。
コメント欄に頂いている質問は会社で目を通し、それぞれのお答えの裏取りはきちんとその方面のプロたちに確認しております。それは業界紙の記者だったり、あるいは外資系の担当者だったり。
明日も夜は遅いのですが、必ずご質問にはお答えいたしますので、どうかこのまましばしお待ちくだされ!

やはりこの手のお話はきちんと準備をして書くのが礼儀だと思いますので、明日明後日には必ずアップ致しますので、どうぞみなさん、このままこのヒット数を維持もしくは伸ばすように宣伝お願いします(笑)。

ちなみに私の日々の記録はさるさる日記の方にアップ(こちらは1000文字と言う縛りがあるので、かなり書きやすいのです)にしておりますので、しばしそちらでお茶を濁していただきますよう、お願い申し上げます!!
ほんとにごめんちゃい!

VWAPとバスケットについて

2005-08-24 07:11:38 | 正しい金融知識
仕事が偉く忙しく、BLOGの更新をどうしようかと思ったのだけれど、せっかくヒット数が堅調に推移しているので、ここで止めては申し訳ないので、今日は相場に関する正しき知識をご披露することにする。

まずはご質問をコメント欄で頂いたその返事に関してである。まずは、
VWAPと言うのをご存知だろうか。
注文の発注の仕方には、成り行きやら指値やらが一般的であるが、海外や国内機関投資家から良くあるのは、「ディスクレッション(Discretion)」と言う方法である。通常我々はディスクレ、と呼んでいるが、ある銘柄に大量の注文を出す際に使われる。つまり一日を通して上手に買ってね(売ってね)と言う注文方法である。
では、
寄り付き 1000円
高値   1050円
安値    990円
引け値  1000円
なんて言う銘柄に100万株の買い注文をディスクレでもらった場合、果たして平均値いくらで約定すれば顧客が喜ぶのか。
昔はディスクレって言う概念が余り浸透していなかったので、常に引け値対比であった。つまり平均値が引け値の1000円より少しでも安ければOKだったのである。
しかしこれは逆手に取る方法がある、つまり引け値での関与だ。引け値を上手く操作すれば格好が付くようなケースがあった訳だ。
ただ昨今この引け値の関与には当局が非常にうるさいので、少なくとも自己勘定ではそれは出来ない。いわんやそれが顧客からの注文であったとしても、最後の30分で出来高の1/3以上を占めるような注文に対しては当局から一言ある。
このVWAP(Volume Weighted Average Price)とは出来高加重平均値、の事であり、各約定、9時5分に1010円で6000株、9時6分に1005円で8000株、みたいなものを全部掛け算してその平均値を出す値段のことを言う。
つまり例え当該銘柄の引け値が1000円であっても、VWAPが990円だったら、平均値1000円の約定は相場に10円負けていることになる。
たかだが10円と侮るなかれ、これが100万株の注文であれば、それだけで約定金額が100万x10円で1000万の差になる。
これだけ負けたらその業者は間違いなく取引停止だろうね。

セールスマンがディスクレ注文を顧客からもらうのは容易ではないのと同時に、実際にそれを執行するエクゼキューショントレーダーたちも大変だ。その注文一つだけであれば一日それに張り付いていれば良いわけだが、大手証券になるとそうはいかない。
アメリカ、ロンドン、スイス、ドイツ、フランス等からその手の注文がいくつも来た場合に彼らがトイレに行く暇も無いのは容易に想像出来よう。
さらに勝てば良いけれど負ければ各店から非難ゴーゴーな訳だし。
「お前らこの注文取るのに俺がどれだけ苦労したのか分かってんのか、このボケ!」くらいで済めば良いほうだ(笑)。

外資系はこのVWAPをもっと機械的にやるために、VWAPシステムのようなものを持っているとか。これは一日に何度も何度も売り買いをオートで繰り返させるような仕組みだそうで、私は外が長いので見たことは無いのだが、何度も繰り返すことによってVWAP値をならしていくような考え方がそのシステムの根底にあるようだ。

それにしてもそうやって居る機関投資家連中よりもデイトレーダー諸氏のパフォーマンスの方が良く見えるのは何故だろうか。
ちなみにVWAPのことをAQR(Average Quoted Recap)と呼ぶこともある。

~~~
バスケットと言うのも近頃は非常に一般的になって来た。
昼のバスケット状況は、買い450億、売り380億で買いが優勢です、みたいな記事をお読みになったことがある方も多いだろう。
機関投資家や海外の大手投資家の中には、一つ一つ注文を出すのが面倒なので、まとめて多岐にわたる銘柄を一発で買いたい(売りたい)と言うニーズがある。
これを一般にはバスケット取引と言う。
一個の大きなかご(バスケット)の中にりんごやみかんやバナナをまとめて入れちゃいましょう、って感じから来た言葉だと思われる。
これは圧倒的に大和SMBCが強い。他社や外資系も頑張って参戦しているが、大和に一日の長がある。
このバスケット注文は各証券会社の自己勘定で一旦受ける。100銘柄のバスケット注文が来て、それを一つ一つ場に流すのが嫌な投資家がそれを使うわけであり、受けた業者はとりあえず自己のポジション状況を鑑みながら、それに対応すべく値段を出す。
つまりバスケットの流れは、
顧客→証券会社の自己売買部門→場(東証だの大証だのJASDAQだの)
となる。一旦証券会社がリスクを取るわけで、ここに各社の強弱が如実に現れる。
ちなみに値段は「ベーシス」で提示する。
顧客も一応コンペスタイルで各証券会社のベーシスを提示させ、一番良い所とDONEをする。

ある顧客が100銘柄のバスケットを買いたい、と言ってきた。
A証券~15BP(ベーシス)
B証券~8BP
C証券~9BP
と言うことになった場合、当然顧客は一番安いB証券にそれを出す。
ここで言うベーシスとはいわゆる手数料の事で、100BPが1%だから、8BPは、0.08%となり、つまり総約定代金が1億円の場合、8BPだと8万円を手数料としてもらえる。(安いっ!)
これを受けた証券会社のバッファー部分は1億円に対してたったの8万円しかないわけで、それを場に執行に行って8万円以上やられたら自己勘定が傷つく。ゆえにこの差は、各社の自己ポジションに余裕があって、しかもバスケットの中味の銘柄にある程度その自己ポジションで対応出来、かつ相場が思惑通り行かないとなかなか儲からない。
買いバスケットの場合は顧客は相場が上がると思っているから買うわけで、それに対して自己は一旦それらを顧客に売ってあげて、改めて買い戻しに行く、と言う流れになる訳だから、(顧客のみならず自分たちも)相場が上に行くと思っているときにそのようなショートポジションを例え一時的にでも振るのは結構な勇気が必要なのである。だから各社で強弱がはっきりしてしまうのだね。

ちなみに上記のようなスタイルは極めて基本形である。
私がロンドン時代の顧客からのバスケットは例えば以下のようであった。
「Mr.Kooni、バスケットのコンペだ。銘柄数は100銘柄、全部東証一部だ。基本的な各銘柄のデータを見せるので、我々が売りのケースと買いのケースとでそれぞれベーシスを出して欲しい。」
と電話があって、その後FAXが流れてくる・・・
これはブラインドバスケットと言って、各銘柄の基本的データ、例えば日経平均に対するベータ値だとかが出ているだけで、銘柄名が無い!しかも相手は自分が売りか買いかも示さない・・・
すぐにそれらのデータを我らがデータ解析班の連中がインプットして、各銘柄名を割り出して(大体9割程度の正解率だったと記憶している)、今度はその銘柄名を元に我らがディーラーが明日の相場やら自己ポジションの様子やらを加味して、
「じゃあ売りなら15ベーシス、買いなら10ベーシスで行こう」
みたいな結果になって、それを顧客に提示して・・・と言う流れになる。
これがDONEになるとロンドン時間の例えばSEAQ市場でカバー出来る物はカバーし、その次に開くニューヨークではADRでカバー出来る物はカバーし、そして使えるポジションを使って、最終的に東京で残ったリスクの処理に行くわけである。
これも結構奥が深いけれど、小型銘柄でのバスケットと言うのは余り無いと思われるので、デイトレーダー諸氏がバスケットによって撹乱される、と言う心配は余り無さそうだ。

ちょっとはお役に立ったかな??

GMOのMPO

2005-08-23 05:33:06 | CB教室
本題の前に昨日の記事の補足である。

まずは借株(貸し株)市場に関してであるが、海外勢を中心とした業者間では、
『OSLA』(Overseas Lenders AssociationだったかAgreementだったか)と言うのがあって、個別の企業なり業者はその内容に基づいて契約を結ぶ。単純に全てが相対契約と言うのではなくて、一応こういう業者横断的なモノがあって、そこに種々のアグリーメントが記されている。私もこのOSLA、どっかにファイルなりがあったと思うので、今度探しておきます。(オフィス移動直後なのでデスクはめちゃくちゃなのでもうちょい待たれよ~笑)

~~~
さて、本日も大型、と言って良い起債があった。
GMOのMPO(3本建て)である。計310億円の起債規模で、当初転換価格で計算するとそのダイリューションは約17%となる。
せっかく18ページに及ぶ資料をプリントアウトしたのに、会社から持ってくるのを忘れた、失礼。
早速某掲示板をずっと拝見していたが、それにしても相変わらずの売り煽り買い煽りの多いこと多いこと。。知識不足を逆手に取ったそれらのやり方は正直少々辟易する。もちろんきちんと事象を客観的に捉えようとしている方々が何人もいらっしゃるのに、それに対する罵詈雑言のようなものを見ていると、改めて株式市場は魑魅魍魎の世界だなぁ、と思う。

私の非常にダラダラした書き方に慣れてきてくださったであろう皆様におかれては、そろそろこのMPOを見るコツなりチェック点の肝なりを把握してくださって来ていると思うので、この起債に関してもその辺を抽出してみよう。

まずはこれはいわゆる「借り換え」である。
280億円の普通社債をかつて発行、それにて調達した資金によりオリエント信販買収資金に当てようとしていたわけだ。
しかし、今回の起債によりこの普通社債をとりあえず全額償還させて、改めてこの起債によってお金の大半をこの買収に使おう、と言うものだ。
本来ならばこの社債がいつ発行されたどのような形態のモノなのかを調べる必要があるとは思うが、ちょっと見ただけではその内容が出ていないので、省略するが、単に「無担保社債」と言っているのでエクイティーファイナンス(いわゆる新株発行を伴う資金調達)では無いだろう。ストレートボンド系だと思う。
この借り換えの意味を無視した投稿が結構あったが、これは株価と言う側面で切った場合には当然大きく違う。
普通社債は基本株価には影響しないが、このCBは希薄化が起きるので、根本的に違う。
普通社債は当然満期に全額償還しなければならないが、CBの場合は転換が進めば企業はその返済の必要は無くなる事は論を待たない。
以上がこのMPOのチェックポイントその1、である。

さてその2であるが、このCB、当初の転換価格は非常に高いところで決めている。
本日の株価に約40%のプレミアムを載せた価格がこの3000円と言う値段だ。
しかもこの値段は基本来年4月までは変わらない。その後は上下限幅がありながらも毎月修正が行われる一般的なMPOスタイルになっており、その修正幅は92%である。
これだけを見ると野村は結構強気のプライシングと言うか、そこまでは絶対の自信があると言うか。
しかしここで見逃してはいけない条項が付いている。

「発行後平成18年3月17日までの間に、当社が必要と認め、かつ新株予約権付き社債の社債権者に対して事前通知を行った場合には、本号①に定める方法と同様の方法により修正されるものとする。」
ちなみに①の方法とは上述した、毎月第3金曜日云々、と言う方法である(若干日時のカウントは異なるが)。

この条項は私はかえって投資家に不信感を抱かせると感じる。
これはあくまで主幹事たる野村ににとっての保険と考えられよう。
いまだに上下限値段まで主幹事が株価をどうとかこうとかしてくる、みたいな憶測があるけれど、それは私も既に書いたように現行ではそのようなことは無いと考えてよい。
また、貸し株についても同様だ。これはつなぎ売りに関しては規定していないようだから、単純なつなぎ売りによる「ちょい借り」はあるだろうと考える。
それらのことをおいて置いても、この条項は引っ掛かる。

ここにいわゆる質疑応答のようなモノが記されているが、どうも有利な点ばかりを強調する姿勢が目立つ気がするのは私だけだろうか。
早期償還に関しても書いてあるが、それだったら今回の社債が(恐らくこれも早期償還なのかな、違ったらすまん)簡単に借り替えられるのならば何も無理してCBを発行せずとも良かったはずである。
「当社株が過度に下落した場合は、当社の選択により(つまり早期償還)、過度の希薄化を抑制することが出来る」とあるが、そこまできちんと言い切るのなら、あのような条項など付けずに、堂々と普通のCBで勝負しても良かったのではないか。

私はこの会社をざっと見た限り、悪くないよな、と思っているのだが、なんだかこの条件はそれだけにちょいと残念なのである。

投資はあくまでも自己責任でお願いします!
私のコメントをどう解釈されようが全くご本人の自由ですが、それによる損害等が出ても当方は一切関知致しませんので、念のため!

ご質問への回答

2005-08-21 02:57:20 | 正しい金融知識
再びアクセス数が上昇して来て、これは皆様方のご尽力のお陰であり、大変感謝いたします、有難うございます!
にも関わらず私自身が記事のアップを怠けてどうする、と。すみません、昨日は久々の深酒@結構仕事絡んでる、でございまして、ようやく復活してきた所です(と言っても時刻はもう夕方6時でございますが・・トホホ)。
その辺の経緯は拙さるさる日記にて後で書かせて頂きます。

さて、金曜日にさる業界系記者の方と電話で長話をさせて頂いたのだが、その記者氏「ダイナシティがMPOを買入消却したと同時に第三者割り当て新株発行を決めたんですけど・・」と。
会社のトップが先日麻薬絡みで逮捕されたのはみなさんご存知の通りであるが、私はこの段階で、この会社に何があろうと関わっては駄目だな、と思っていたので、記者氏にも「関わらなくて良いんじゃない?」と。記者氏ご自身は結構この会社の中味は良いので、こんな変な資本政策は残念です、と。

この会社のMPO、55億は、3月に発行されて、10月10日以降、年に2回のペースで転換価格が修正され、その際の修正幅は95%、上下限は120-80%となっており、当初転換価格は41000円となっている。
しかしその後の社長の逮捕等による株価の低迷、またダイリューション懸念により、恐らくこのCBの転換は進んでいないようである。

今回ダイナシティはこのCBの20億分を100にて買入消却し、同時に新株を27600円で約30億円分発行した。割当先はCBを引き受けた外資系ファンド2社である。

このミッションは誰もが想像出来るように、ダイナシティが割当先ファンドのために転換を肩代わりした、としか思えない。
つまり形を変えた行使価格の大幅修正であり、なんだかなぁ、と思うわけである。
もちろんダイリューションは10億余計なだけだけれど、全く何でもありかよ、って感じですなぁ。

~~~~~
さて、ご質問がたくさん来るとそれだけ書く意欲も増してくる。
ここでお三方から頂いたご質問に対して分かる範囲でお答えしようと思うので、皆様も考えていただいて、知識の増強の一助にしていただければ幸甚です。

<質問1>
『株価を動かしているのは誰?みたいな疑問です。デイトレなどをしていると僕はどんな人と戦っているのだろうと思ってしまうのです。機関投資家やディーラー等どんな人がどんな手口で取引しているのでしょうか。(ピト様)』

果たしてこの魑魅魍魎の株式の世界、株価を動かしているのは。。
何度か申し上げているかも知れないが、ここまでネットが発達して個人投資家が気軽にネット系証券会社を通じてかなり安い手数料にて市場に参加出来るようになったことは、当然市場に厚みが増すわけで、これは市場関係者としては喜ぶべきことであるが、同時に機関投資家なんかはやりにくくなったと考えてると思う。
それまでは国内系機関投資家は外人動向に細心の注意を払っていた訳だが、ここへ来て個人投資家動向も非常に気になる存在になってきた訳である。
とにかく見えない、さっきまでガンガン買っていたのに急にガンガン売る、常識的には買われるべき話が出ても彼らは反対を行く・・・等枚挙にいとまが無い。
一般的には我々は「投資主体別売買動向」と言うのを見て、ほう今月は個人はこれだけ売ったのか、事業法人は相変わらず動きが鈍いなぁ、って感じでそれを頭にインプットする。
ご存知かも知れないけれど、「GCオプティキャスト」ってHPのここ~投資主体別売買動向なんかは分かりやすいと思います。
投資主体を見るときの一般的な分類はそのページにあるように、
「自己、個人、生保・損保、長銀・都銀・地銀、信託銀行、銀行、その他金融、投資信託、外人、事業法人、その他法人」と分けられる。
最初の自己、と言うのは証券会社の自己売買部門のことである。
つまりこれらで分類された各主体がそれぞれと戦っている、とでも言えばよいだろうか。
但し、ネット証券が台頭してくる以前から、個人の売買動向は当然重要ではありましたので、念のため。ゆえに投資主体・・は各社かならず「個人」を前の方に持ってきてます。

~~~
<質問2>

『ライブMに関して1つ質問させて下さい。転換は終了したのですが,引け受け先の日興とライブドアは,まだ売却していないようです。これから先,株価が下がると日興とライブドアにとって損失要因となるので,これから先の売却には細心の注意を払ってくると思います。そのため,転換終了は株価にプラスだと思っています。この予想は一般論として的外れでしょうか?(LD株主様)』

ライブドアマーケティング(旧バリュークリックジャパン)に関するMPOの話題は私も過去に書いた。それはここですな。
私もその後の株価は余り追っておらずすみません・・ただこの転換終了のニュースは私もチェックしたし、冒頭の記者氏ともこの話題をちょいと話をした。

さて、MPOが発行された時の株価下落要因と言われるダイリューション、つまり株式の希薄化、であるが、これが何故株価下落要因になるのかはもう何度も述べているとおりの理論的なモノであるが、しかしMPO発行の翌日からこの潜在株式が実際に市場に出て来るわけではなく、また主幹事も当然株価を崩壊させるような売り方はまずして来ないので、では何故翌日下がるかと言えば、その「恐れ」を株価に織り込みに行っている、と我々は一般的に考えている。
つまりいつそれら潜在株式が出てくるか分からないが、それらが実現した時に慌てることが無いように、株価が動く、と考えるわけだ。
この考え方は一種「材料出尽くし」と表現されるようなイメージであろうか。
つまりある会社なり相場全体でも良いけれど、とっても良いニュースが実際にアナウンスされた日に株価が下がる、って現象であるね。それまでマーケットではその良い話が噂されており、ゆえにそれを株価が織り込みつつ上昇して来たような典型的なケースにてその「材料出尽くし」による下落ってのが観測されるけど、そういうことだ。

さて、LD株主様がおっしゃることは私も正解だと思う。つまり懸念されていた転換が終わったと言うことは、実際に世の中に潜在株が全て現実の株券として生まれてきた、と言うことであるので、その転換された株を例え主幹事がまだ持っていようとも、既にそれは世間できちんと認知され、総株数が確定したわけだから、もう「潜在株」と言うわけの分からない亡霊に脅かされることは無い。
おっしゃる通り後は主幹事の売り方にもよるだろうが、あるいは既に彼らは借株にて売却しているかも知れないし、仮にそのケースの場合は後は持っている株はその返却に回されるだけだし。
つまり結論としてLD株主様の考え方は正しい。的外れでも何でも無い。
但し、今後の株価についての責任は持てませんので、その辺はご了承下さい(笑)。

~~~
<質問3>
さて3番目のご質問は、先日リンクさせていただいた、ダントツ投資研究所の夕凪所長様からである。

『「貸し株市場」というものはどんな存在なのでしょうか。また、この貸し株を利用した「信用売り」は市場を通して行われていると思うのですが、どこかの指標として現れる可能性はありますでしょうか。

つい1ヶ月前に JR東海の公募販売がありました。海外にも売却されたかと思います。この時に公募1-2日前に異様な値下がりが発生しましたが、これは主幹事や誰かが値段をコントロールするようなことはあり得るのでしょうか。』

この貸し株市場、実は外部からは非常に分かりにくいと思われる。
いわゆる日証金経由の借り株貸し株、つまり信用取引に基づく貸し借りってのデータと言うのはここに当然ながら乗ってくる。
例えば個人の信用取引と言うのも、要は証券会社がこの日証金から株を借りてきてそれを個人へ又貸しするような格好で行われて居るわけだ。
しかしながら我々法人系に居る人間にとってのこの市場はこれとはちょいと異なる。
各社(証券会社やヘッジファンドやその他もろもろの会社たち)が相対による契約を双方で結んで、株の貸し借りを行う市場の事を我々は一般に「貸し株市場(あるいは借株市場)」と呼んでいる。
相対であるが故に、何かのデータによってそれらを追っかけられるかと言えば、多分それは出来ないと思われる。(冒頭記者氏仲間に詳しい方が居るそうなので、来週にでもきちんと聞きますが)

この行ってみれば「裏貸し株市場」にては当然各証券会社の外部投資家とのアクセスがその勝敗を喫する。
確固たる統計は無いが、マーケットにて最強と言われている証券会社は、外資系のGS、MS、ML、その辺りであろうか。それにバークレーズ辺りが次点で続く。
アメリカには巨大なファンドがいくつも存在し、例えばカリフォルニア州年金だの軍人退職者年金だの何だのカンダの、さらにアメリカの大手企業なんかもきちんと投資をしており、その中には日本株もどっさり入っている訳だ。
つまりその辺に太いパイプを持つ米系証券は、ほぼどんな銘柄でも借りられる、と言われている。

何か巨大な年金→GS等の証券→ヘッジファンドやら投資家
と言う形で株が貸借される。
さらにこの一種の発展系がいわゆる「プライムブローカレージ業務(Prime Brokerage)」と呼ばれるもので、ヘッジファンドはご存知の通りそのレバレッジを使って巨大なお金を動かす訳であるが、この辺の面倒をまとめて見ましょう、と言うのがそれである。
借株の手配から、その借株を売った代金を保管し、またそれを使うときにはそこからお金を出し入れして・・・みたいなサービスを行っている。同時にヘッジファンドの名前もこのプライムブローカーが隠してしまう格好になる。何故なら株を借りる窓口も株を買う窓口もさらには買った株を保管する窓口も全てこのプライムブローカー行っている訳だから。
良く四季報等の大株主にこれら外資系証券会社の名前+何たら・・って載っているのは、実際はその証券会社では無くてその裏のファンド系だと思って良いだろう。

このプライムブローカレージ業務、お金の面では国内系証券も可能だけれど、この借株の面での力不足が否めないので、私がロンドンに居たとき、隣の部署で頑張っていたけれどさしたる成果は出ていなかったように記憶している。

何かファイナンスの噂がマーケットに流れると、各社借株デスクに突然その銘柄を持ってないか、と言う問い合わせが殺到する。今時のMPOに関してはその参加者は当初から全て決まっているので、ただそれに乗じて空売りを仕掛けよう、なんて連中はやはり繋がりのある借株デスクに打診はしているだろうね。
そういった声を集めてまとめているのが、例えば冒頭の記者氏の属する会社であり、それらの情報は故に残念ながら極めて限定された所へしか行かない。
これがソニーだ日立だって銘柄ならば、いつなんどきでも貸すべき株なんてジャブジャブあるけれど、こと小型銘柄に関してはその証券会社の裏の借り先の豊富さによる。
私もいくつか借株デスクの人とは知り合いなので、たまにその動向を聞いているけれど、実際の数字やらはなかなか教えてもらえないのである。
ゆえに、これは夕凪所長様が頑張っても、恐らくきちんとしたデータは取れないと思われます・・・残念っん。

さて次なるご質問である。
私は実はつぶさに見ていないのであるが、仮にその株価の下落がオフィシャルな公表前だとしたら、それはインサイダーの疑いがある。
一般的に、ある銘柄に関するファイナンスにおいて、その主幹事が値段等をコントロールすると言うことはありません。昔は価格安定操作期間、みたいのがあって、ファイナンスが発表されてから無事に払い込みが終了する期間中はそういうのが設定されることがあった。
しかしこれも、その期間中に変な売りだとか買いがあった場合に、主幹事がそれに向かいましょう、と言うもので、主幹事の意図的な価格操作とは全然違う。
現在もたまにあると思うけれど、また新規公開株において「冷やし玉」なんてのもその変形である。余り過度に買い注文が殺到し値段が付かない場合などに、主幹事があらかじめある程度持っている株をその買いにぶつけて、熱気を冷やして値段を付けよう、と言うものだ。
そう言った意味での主幹事の価格コントロールがあるとは言えるが、例えば公募価格をもっと上げるために主幹事がガンガン買う、あるいは転換価格を下げさせるために売る、といった行為はこれは罰せられます。

ただぶっちゃけ、そういう不穏な動きってのはたまに見られます。
ある会社がCB発行を決議して公表した、しかし株価はその2-3日前から突然下がっている・・・と言ったケース。。
これは主幹事の何処からか情報が漏れて、それをキャッチした投資家なり集団なりが仕掛けたもの、って感じの解釈が妥当だと思われるけれど、主幹事自身がそれをすると言うのは現代では無いと考えて良いでしょう。
我々市場参加者が東証に「手口の公表」を折に触れて求めているのは、その辺の透明度を増すためなのですな。
手口非公表は本当に愚策だと思っております。

とりあえず今日はここまで。
さらなるご質問、お待ち申し上げております!




新株予約権を恐れること無かれ

2005-08-19 02:07:32 | 正しい金融知識
ここもと3日連続で「新株予約権」の発行が決議されている。
16日は松竹、17日は菱和ライフクリエイト、そして今日は綜合臨床薬理研究所だ。

新株予約権、つまりワラントでありオプションである。
まずはこのワラント、その辺りからの基本的な説明をしようと思うが、これ東京では結構な業者がいわゆるカバードワラントなんかを作って値段のクォートを個人投資家向けにやっているそうで。。

もともとワラントが大盛況であったのは80年代から90年代にかけて、その時は通称ドルワラ、つまりドル建てワラントと、スイスフラン建てワラントが主流であった。
私も90年代初頭にスイスに赴任した時は散々やった。
もともとこのワラントは、ワラント債、と呼ばれるものを企業が発行して、それが発行と同時に債券部分とワラント(つまり権利のみの部分)に切り離されて居たのでモノなのである。
そしてその債券部分は「ポンカス」と呼ばれて当時の日系銀行が買い漁る目玉商品であった。その頃は銀行と証券の分離がされていたので、銀行はワラント債の主幹事を(確か)取れなかったので、ポンカス買いを大きな収益源にしていた。
銀行はポンカスにぞっこんだったが、我々証券の側はそんなものには興味が無く(但し証券の債券部は散々欲しがっていたが、何せ彼らの値段が悪かった・・)、ワラントのみを顧客にこぞって販売していた。

企業が仮に100円額面で50億円のワラント債の発行を決議したとする。
主幹事の証券会社はすぐさまワラントとポンカス部分の理論値をそのときのマーケットによってはじき出す。
私は最後はこの発行されたワラント債のポンカス部分の処理とワラント部分の処理を同時にやっていたのであるが、要は、100=90+10、みたいな感じなのだ。つまり、計算によってポンカス部分は大体90円と出た。てことは残る部分はワラントの価値、って事で極めて話は単純なのであるが、でも90円の理論価格のポンカスをそのまま90円で都銀連中に販売しても面白くないので、そこで競売に掛けて、一番高いビッドを出してきた所に基本売って、しかしお付き合いも大事なのであまり良いレートの出ない所へも多少は回してあげて・・って事をやりつつ、ワラント部分も10って理論で売るのはつまらん、と同じ事をやってた訳だ。

ポンカスってのは言ってみればワリ債のようなもので、よって発行企業は満期になればそれを返済する必要があった。(ちなみにワラント部分は最後はゼロになる)
それに対してCBは、もしも転換されれば借金の返済の必要が無いので、その辺は当時ECMがどのように各企業を、あんたはワラント、あんたはCB、って感じに誘導していったのかは分からない。

さて、ここでお気づきになった方もいらっしゃると思うが、現在主流のMPO。
これも「(転換社債型)新株予約権付き社債」なのである。つまりワラント債となんら変わらないのだが、これは商法改正によるもので、あの時はもうCBは発行出来なくなる、と大騒ぎだったのだが、このスタイルを取り、しかも「新株予約権」の分離は出来ないようにしてあり、かつその価値を無償(ゼロ)としているのがその姿である。
ちなみにこのワラント債の考え方が進化して、全く通常のMPOでも何でも無いCBも、現代ではオプション部分と債券部分に分けられて取引されることも多い。ヘッジファンドなんかは債券部分はどっかへ売っちゃって(お金を固定させてしまうので)、そのオプション部分だけ持っている、なんてこともやっている訳だ。

~~~
さて本題に入る。
特に野村證券がMPOを取って「これは公募増資の新たなる姿です」みたいなことを言っているようだ。
結論は、(全部じゃないよ、特に今回の3社の奴ね)、これこそ公募増資の変形なのである。
昨日菱和を見て、そしてそれを追っかけてああ松竹もやってるのか、と思ってそれぞれの説明書きを読んだ訳だ。ところがこれはどう考えても機動的な資金調達とは言えないなぁ、と思って、私が尊敬している方に聞いた。
彼の言をそのまま書くと・・・

「小鬼さん、あれは発行体には資金調達の意図は目先は無いです。ただ今後1年以内位に公募等をやりたいけど、公募増資の手続きってのがすごく面倒なので、企業が意図した株価の時にすぐに出来ない訳ですよ。つまり公募のタイミングを逃さないように設計されたモノですよね。ちなみにこのバリューの計算に当たっては、ブラックショールズを使ったとか二項モデルがどうとか書いてますが、あんなの参考にはしてるかもしれないけど、嘘っぱちです。菱和ではその発行総額が500万ですけど、あれはいつでもCALLが掛けられるように成っているわけで、そんなオプションに500万の価値は無いでしょう。あの払い込み金は言ってみれば手付金みたいなものです。
つまりこれは主幹事に対して『公募枠』を設定したってことですね。」

にゃ~るほど、全てが私もクリアーになった。

松竹の場合は、この予約権が全額行使されたら約130億円になるが、当初主幹事であるみずほが手にする額、すなわち発行総額は約5千万円に過ぎない。
また、菱和の場合も、全額行使で約50億円だが、発行総額は500万円。

これはワラントであるから当然の事ながら最後は価値がゼロになる。
また菱和の場合、最初の4ヶ月間は株価が1000円以上にならないと行使が出来ないロックアップ条項のようなものが付いているから、主幹事のメリルは、株価が1000以上にならなければ動きようが無い。
がしかし、メリルがこれに払った総額はたったの500万円である。つまり最悪損してもこれで終わる訳だ。
さらにロックアップ期間が過ぎれば行使価格は例の如く3営業日の株価平均の90%とかに修正されるので、まあメリルは損はしないだろうが。
但し、松竹もそうであるが、両方とも下限の行使価格が決まっている。ワラントの場合はこれを下回るともうどうしようも無い。
さらに会社側がほぼいつでもCALLを掛けられるので、会社側の意図していない株価になった場合の強引な行使はそれでせき止められる可能性もある。(まあそれをやったら主幹事証券との関係が暗くなりそうだけど・・)

ちなみに行使請求可能期間は、松竹の場合は約3年、菱和は1年である。
菱和の場合そのうちの4ヶ月は1000円シバリがあるので、実質8ヶ月であるが、ゆえに急激なダイリューションは起こらないと考えてよいだろう。4ヵ月後に下限を下回ったまま株価が動かなければ、まあそのまま終わるので、場合によってはダイリューションが全く起こらない可能性もゼロではない。しかしこれが起こらないと言う事はすなわち会社側にもお金が入らないことを意味するわけで、果たしてこれが機動的な資金調達手段なのか、と言う点においては疑問が残るわけだ。
ちなみに菱和の株価は今日2%ちょい下げていたけどね・・・通常の後講釈は、希薄化を嫌気されて・・・になっているだろうけど、可能性を良く考えた方が良い。
ちなみに松竹は毎月第3金曜日に5営業日平均の95%に修正、であるから、主幹事が大手を振ってガンガン行使して稼げるか、と言うとこれも結構しんどそうな気がするなぁ。さらにこれだって下限を下回ったらもうどうすることも出来ないし。

しかし、何度も言うけど仮に行使が出来なかった場合、
主幹事の損するお金は微々たるモノである。
結局発行企業は「機動的な」資金調達が出来ない。

ゆえに、発行企業が望むような株価で『公募』が出来れば良いなぁ、と言う私の教授(笑)のご意見どおりの結論が出るのであるね

CBの場合は仮に下限を下回れば当然主幹事は転換して利益を出すことは出来なくなるのは同じだが、CBの場合は最後は100で償還になるし、最悪下限を下回った場合には発行会社に買い戻してもらうようなスキームも付いている。
ちなみに私の現在読む限りはこの新株予約権に関しては下限価格を下回るときの救済措置みたいのは無い。でも何度も言うように損しても大したこと無い金額なのである。

ちなみに今日決議された綜合臨床・・であるがこれはさらに主幹事にとってしんどい内容になってると思う。
これは全額行使で約50億円、手付金はやはり500万円。
ただこれは発行会社が主幹事メリルに「はい、ここでこれだけ行使して」と指示する内容なのだね。しかも1回に行使権を行使させられる額は、予約権数で100個、すなわち5億円程度、さらにそれをやったらその後にやる時は20営業日置かないとならない・・
なんだかよく分からない感じではあるが、こっちの方がまだ会社にとって機動的かもしれないね。

いずれにせよ、この新株予約権ってのもひそかなブームになりそうな予感だけれど、ある意味証券会社側もリスク(と言っても知れているけど)を取るようになって来たことは評価できるかもしれない。
またこの続編を、精査した上で書きましょう。

MPT(3734)のMPOに関しての考察

2005-08-18 06:20:18 | CB教室
ここ数日ヒット数が減ってきてしまった。どうか読者諸氏におかれてましては拙BLOGの宣伝に励んでいただければと思う(笑)。
いや、ほんとは毎回の記事の最後に「ここをポチッと押してね♪」みたいにランキングとかのリンクの用意でもしておけば良いのだろうが、どうもそれは私の美学に反するのでそれは出来ない。
私はこのBLOGにて、例えば某掲示板でのいらない心配をされている方々や、あるいは聞きかじりの知識にて株式投資をされている方々へ少しでも役立てれば良い、などと偽善者ぶった考えを持っているのであるが、ゆえに皆様の宣伝にて少しでも多くの人が正しい知識を持っていただけるようになれば、と切に願っているだけであるが、何か(笑)。

と、前置きが長くなってしまった。
本日はコメント欄に頂いた、ESCAPEさまのご質問に答えてみようと思う。
ちなみに明日は、最近ちょろっと出てきた『新株予約権』に付いて書くので、お見逃し無く。直近、松竹、そして本日菱和ライフクリエイトがその発行をアナウンスしているが、それに対する誤解を解くための既に識者によるご意見の裏付けは取ってあるのでヨロシク。

さて、ESCAPEさまの質問とは、
『(MPOに関しては)一般的に引き受け後どの程度の期間で転換を完了するのでしょうか。
MPTの場合2回に分けて発行されますが、これは素直に株価下落圧力の緩和のためと解釈できますか?またもし下限価格を割ってしまった場合は引受会社が損を被るのでしょうか?』
と言うものである。
ちなみに彼(もしくは彼女?)は、MPT(エム・ピー・テクノロジーズ)(3734-Mothers)に絡めてこのご質問を書いて下さった。

大変お恥ずかしながら、私はこの銘柄に関する知識はほとんど無く、かつこの会社がMPOを発行していたこと自体をきれいに見逃していた。
ゆえに、調べた(一応仕事もしております、まあ合間に調べた、とここでは申しておきましょう~笑)。

その前にこの質問の1番目に対する答えである。
前に述べたようにこのMPOはもはや主幹事証券会社にとって「引受け」ではなく「投資、純投資」である、と述べた。
投資に対する最も重要なことは、リスクの回避、である。
つまりMPOを司った証券会社はいち早くこのリスクから逃れつつ利益を確定しようと言う投資行動に出るのは当然の事である。
よって、MPOに関してはその転換のスピードは様々であるが、一刻も早く転換して利益を確定するはずだ、と言うのがその答えである。
正直具体的なデータは取っていないが、通常のCBがモノによっては満期まで(大体4年)全く転換されずに終わるケースがある中で、このMPOにとっての唯一のリスクから開放される手段は転換であるわけで、個人的には半年程度、かなぁ、と言う印象がある。

そして次なる質問の、MPTのCBについてである。
このMPOは2本立て(我々はこちらでは、2 Trancheと呼んでいる)で発行されている。
40億x2であるが、第2回の方には「発行後4ヶ月間はある一定の株価以上じゃないと転換出来ません」と言う条項がついている。
1回の方は素直なMPOで、(CBの)行使請求があった場合、その日を含まない直近3営業日の株価平均の90%に転換価格を修正いたします、と言うモノだ。
これはまさにESCAPEさんが考えられているように、株価の下落圧力を多少なりとも軽減させるべくの措置だと考えてよいだろう。
その根拠は、6月14日に会社がアナウンスしている「転換状況のお知らせ」からも読み取れるかと思う。
第1回の方は、40億に対して31億がこの時点で転換されているが、第2回の方は、転換制限価格である764’280円をどの時点でも株価が上回っていないため、転換はゼロとなっている。
第2回の方は9月9日まではこの制限価格を連続した3営業日の平均株価が上回らない限り、転換(行使)は出来ない。
つまり、第1回がかなりの転換率を誇るのに対して第2回は足枷をはめられているがゆえにこのような転換状況になっているわけで、よってESCAPEさんの推測は正しいと結論できよう。

さて、ESCAPEさんはMPTの株価があまりにも上がらないため、それはMPOも一因ではないかと考えられてここへたどり着かれたそうだ。
この転換状況資料をもう一度つぶさに見てみると、これには表が載っていて、
行使日、行使額面総額、交付株数、未行使株数、がそれぞれ載っている。

5月10日、6億円行使、939.40株交付、残り34億
5月11日、1億円行使、154.10株交付、残り33億
5月12日、1億円行使、153.11株交付、残り32億
5月16日、6億円行使、914.07株交付、残り26億
6月14日、17億行使、3670.12株 、残り 9億
合計   、31億行使、5830.80株 、残り 9億

となっている。
さて、この第1回の転換価格修正に関する記述は以下の通りとなっている。
「本新株予約権の各講師請求の効力発生日まで(同日を含まない)の3連続取引日の東証における終値の平均値の90%に相当する額が、当該修正日の直前に有効な転換価格を1円以上上回るもしくは下回る場合には、転換価格は、当該修正日以降、当該修正日価格に修正される」
とある。
正直私もあまり読みなれていないので、なんじゃこりゃ?って感じなのであるが、要はこの場合主幹事のメリルから行使請求を(MPTが)受け取った日を含まない直近3営業日の平均値の90%に転換価格を修正します、と言うことだ。
それじゃあ上の表を見て、例えば5月16日に行使されているがその行使価格は、16日を含まない直近3営業日の平均値を計算すれば出ることになる。
が、もちろんそんなことをする必要は無いことに既に皆様お気づきだろう。
(CBの額面)/(転換価格)=行使株数
と言う公式がある。ゆえに上記の表から転換価格は簡単に求められるのだね。
5月10日~638’705.55
5月11日~648’929.27
5月12日~653’125.204
5月16日~656’404.87
6月14日~463’200.11
平均   ~531’659.46
となる。
ちなみに行使請求期間は5月10日から、となっていることからも、如何に主幹事が鼻から飛ばして行使しているかが良く分かると思う。
これもまさしく上記質問1の答えの裏づけになると思われるが、如何でしょうか。

また仮に転換価格が下限転換価格を下回った場合は主幹事は損するのでしょうか?と言うご質問であるが、それは全くその通りである。
第1回の下限転換価格は、347’400円であるが、全く持って仮に株価がこの半値になった場合、当然CBの理論価格も50円となる訳である。
よって損をします。
但しこの辺は非常に上手く出来ていて、ちゃんと「本社債権者の選択による繰り上げ償還」と言う項目があって、転換価格が下限価格を下回った場合、所定の事務手続きを踏めば、100円で償還できますよ、となっている。
つまりこれが無ければ主幹事はもちろん損をするが、これが契約に盛り込まれているため、実際はそういうケースが仮に起きても主幹事はきちんと逃げられるようになっているのである。
なんだかなぁって気がしません(笑)?
至れり尽くせりの条件の元での投資であるわけであるね。

最後に、何故この会社の株価は上がらないのか?
チャートを見るまでも無く、この行使価格の推移を見てもお分かりになるように、確かに株価は基本ダウントレンドにある。
果たしてこのMPOが悪役なのか?
そこで調べると、この銘柄に対して唯一みずほ証券のアナリストがコメントを出しており、彼は「買い推奨」としている。
実際6月14日に彼は「強い買い推奨」を発表、その日の株価はストップ高となった。
また直近では8月12日に「業績予想変更」と題するメモ書き程度のレポートを発行して、投資判断1(買い)、目標株価を84万円としている。
実際コネを使ってそのメモ書きレポートは入手済みであるので、欲しい方はご一報下さい。

しかしながら私がどうも解せないのは、彼は「買い推奨」をしながらも常にそのレポートの締めにおいて「同社株式への投資に対しては、上場廃止リスクに留意する必要がある」と結んでいる。
これも調べてみると、さる業界系情報端末のニュースに、
「MPTは事業規模が同社を上回る『ゲスト・テク』を買収したため、東証の上場廃止基準に抵触し、2008年7月31日までに新規上場に準じた審査を通過する必要がある」
とある。
一応東証のHPにて確認するとあった。ここの、2005年1月18日の箇所に「合併等による実質的存続性の喪失に係る猶予期間入り(上場廃止基準)」とあるのだね。

またこの株の日々の出来高を見ると、5月中は大体200-300株の出来高、
但し、
5月12日 938株
5月13日 721株
5月24日 698株
6月01日1310株
6月15日3313株
となっているので、その辺でつなぎ売っている可能性はある。6月15日は14日のみずほのレポートにてストップ高した翌日であるからある程度の出来高は予想されただろうし、ある意味絶好の転換売りの機会であったと考えられる。
(一応ここ半年の出来高平均は、398株である)

今の段階では第2回の制限株価を上回る可能性は低い(本日444’000に対して制限価格764’280)と思われるので、この行使開始は今のままで行けば9月以降となろう。
第1回の行使の影響はどうも限定的に見えるし、これは第2回も同様ではなかろうか。主幹事のこのMPO処理班もバカではないので、当然の事ながら場を見ながら場を崩さないように転換売りを行っているのは何度も言っている通り。

結論としては、この会社の株価の低迷原因は単にMPOのみが原因では無く、むしろ私は「上場廃止のリスク」によるものの方が大きいと思うのだが如何だろう。
個人的にかのアナリスト氏には何の恨みも無いけれど、買い推奨をしながらの上場廃止リスクを考慮せよ、と言う論調は少々乱暴に思える。
冒頭で述べたように投資家が常にすべきはリスクの軽減であるのだから、この会社そのものにダイレクトに関わってくる上場廃止リスクに対してもう少し突っ込んだ調査をすべきだろうと思うが、ESCAPEさん、如何でしょうか??

衆議院解散の週の株価棒上げの怪に迫る!(笑)

2005-08-17 07:18:36 | 正しい金融知識
私はいわゆるエクイティー部門のフロントに在籍しているのが、専門は株式では無くてCBである。さらにスイスと言う極めて特殊な場所に居るので、見ている銘柄も大型のモノでは無くて小型株が中心だ。
スイス人と言うのは歴史的に非常に投資と言うより投機が好きで、ゆえに80年代終わり頃からのワラントブームの時はたくさんの日系会社もスイスにてワラントを起債したのは記憶に新しい。但しその際も大きな会社はドル建てワラントを起債したが、スイスで起債した会社はその発行の簡素さやコスト等から小型銘柄が多かった。
これは現在のCBにも受け継がれており、大きな会社は大体ロンドンにてのユーロ円CB、もしくは東証にての起債が中心であるが、スイスは相変わらず小さな会社の起債市場になっている。
また、スイス人投資家自体がソニーや松下よりももっと小型の銘柄を好む傾向にあるため、よって私が普段見る銘柄も小さなモノが多い。
しかしながら大きな銘柄は専門外、なんて事は言っていられない訳で、今日はちょっとその辺に目を向けた記事を書いてみようと思う。

先週8月8日に衆議院が解散になり、その日を含めて、月火水木と日経平均がいきなり4連騰したことは株式をご覧になっている方ならまた記憶は鮮明なはずだ。
この事実をどう考えるのか、と言うのが今宵のテーマである。
名付けて、「衆議院解散の週の株価棒上げの怪に迫る」
はじまりはじまり~

~~~
<事実1>
私は11日(木)、つまり4連騰の4日目に、まずは東京の弊社の日本株ストラテジストに電話して彼の見方を聞いた。
彼の昨年末での、今年の株価の見通しは、日経平均ベースで12500~13000円で、4月ごろ安くて夏場高い、と言う予想はバッチリ当たっているのだが、今回はそのスピードが速すぎると当然感じていた。
例えばハイテク銘柄の在庫調整がまだずれ込んでいる等、昨年の高値を超える材料はまだ出ていないにも関わらずこのスピードは分からない、と。
その時に彼は実に気になることを言っていたのだが、それは・・・
「今週金曜日がオプションのSQなんですが、そこで日経平均が12000円を超える超えないによって、12000CALLの投資家の損益が物凄くブレるのです」

<事実2>
また今回の連騰で話題になったのが、そう「外人買い」である。
見たことのないよな規模の寄り付き前の買い注文だったのはご周知の通りである。
しかしながらスイスはこの週、全く持って投資家の動きは閑散であったのだ。
念のためロンドンに問い合わせても、状況は変わらずであった。
つまりこの週の異常な相場の上昇、外人買いには、在ヨーロッパの青目の投資家はほとんど寄与していなかった。
そうすると残る外人の代表は、アメリカである。

<事実3>
さて、私の友達でさる米系証券東京に勤務する日本株ストラテジストが居る。
彼は良く新聞や雑誌にも名前が出ているし、本もちょろちょろ出しているようで、奴と同じ会社に居たときは、彼には特に政治的な動きについてのレクチャーを良く受けていた。奴は日本株のみならず政治動向にもかなり詳しいのだ。
今回もこの解散~日本株についてのお伺いを立てると、メールにて、
「今回は全く逆に持っていかれて参っているよ・・・」との返事だった。同時に奴の書いたレポートを送ってくれたのだが、それは言う通り完全にはずした格好で、しかしながらその後「何故我々は間違ったのか?」と言うレポートを出している辺りのリカバリーショットはさすがだった。

<事実4>
対するやはり米系証券の著名ストラテジストは、やはりコメントを出しており、
その方は非常に強気の意見を述べると同時に具体的な銘柄名も発表した。
シャープ、アドテスト、東エレク、アイフル、クレセゾン・・・。

<謎に迫る独自調査結果>
NIKKEI 12000CALLによる損益のぶれ。
外人買いの主体はアメリカ。
方や米系の知り合いのストラテジストは相場をはずしたが、方や別の米系のストラテジストは強気のコメントを発表。

そこで私はこの4日間の『日経平均銘柄の値上がり上位』を調べてみた。
8日~クレセゾン、中外、アステラス、東エレク、千代化
9日~ファナック、NTT DATA、キヤノン、日揮、東エレク
10日~KDDI、セコム、ヨーカドー、CSK、京セラ
11日~クレセゾン、トレンドM、NTT DATA、セコム、電通

さて、これらの銘柄についてもうちょいデータを取ってみた。
株価指数構成銘柄のウエートである。つまり日経平均構成銘柄225銘柄において、それぞれの銘柄が日経平均を構成する際にどの程度のウエートを占めるのか、と言うことであるが、この4日間の上昇上位5位の銘柄はどれも大体上位30位以内に入っているのである。
例えば今日付けのウエート順位を見ると・・・
ファナック3位、京セラ4位、東エレク5位、KDDI6位、クレセゾン15位・・・
って感じのオーダーになる。
さらに一応時価総額で見てみると、せいぜいキヤノンが10位程度に食い込む程度である。クレセゾン辺りの時価総額はファナックの半分にも満たない。

さらに皆さんご存知の「提灯」。
これは仕手株なんかでは良く使われる株式用語であるが、ある銘柄が突然買われ出した際、それを見ていた人たちがなんだなんだ?となってとりあえず買ってみよう、と言う行動をとり、やがてその銘柄のボリュームが格段に増えて・・・と言うのを「提灯が点く」とか「提灯買いが入った」と言う。
聞くところによるとまさに江戸時代の捕り物のイメージから付いた用語のようで、暗闇で突然各所に提灯の明かりが灯るイメージだそうだが(笑)。

<謎に迫る結論!!>
これらをまとめての三文小説風結論。
さる米系の巨大投資家が実は日経平均12000CALLを大量に取得した。
もちろん政局やらのタイミングを見ながらの行動である。
オプションのSQまでに解散なりがある、と読んでの行動、と置き換えても良い。
(あるいはやむなき理由により12000CALLを大量に取得せざるを得なかった、と言う前提でも良い)

さて、解散になった。通常で考えれば、外人は政局の不安定を嫌うので、ここは売りか、と言うことになる。
が、その巨大投資家がバックに居るさる米系証券はここで大博打に出た。
日経平均を上げるために、その構成ウエートの高い銘柄を推奨し、そして自らも買って出たのである。
解散と同時に、外人は売り、と誰もが思っていたシナリオが全く逆の様相を呈した瞬間、特に日系証券や日系投資家は一種パニックになる。逆に行かれては当然ファンドの成績も悪化すれば顧客への売り推奨を変えねばならないし・・と言う事で一気に壮大なる日経平均ベースでの提灯が点いてしまったのだ。
そこで誰もがあの米系証券ストラテジストの自信満々の推奨銘柄を思い浮かべるわけだが、実際それらが相場を引っ張っているじゃないか、乗り遅れるな!
実際この4日間で、
KDDI4勝、クレセゾン、東エレク、NTT DATA、CSK各3勝・・ってな感じなのだ。

かつての80年代終わりのバブルの頃、あるいは2000年に入ってからのITバブルの頃、それぞれ大きな銘柄たちが相場を牽引した。新日鉄でありソニーであり、そういった代表的な銘柄が存在していたのだね。
今回の主役は誰なのか?
一般論として今回の相場を「政治はとりあえず置いておいて、日本経済の明るさなり堅調さを買う動きである」と言われているものの、どうも日本の景気に絶対的自信を持ったような銘柄が引っ張っているように見えないではないか??

~~~~
な~んて言うストーリーを考えてみるのも、悪くないなぁ、と思いません?
もちろんそれにはきちんとした裏をとる必要がある訳ですがね。

(注)投資はくれぐれも各人の判断でお願いします!



MPO、昨日のBLOGでの公約

2005-08-16 06:52:42 | CB教室
昨日のBLOGにて公約した、ECMの人間の意見である。
公約通り(笑)、信頼のおける大手総合証券のECMの人間に、昨日のお題である、
「転換価格の上下限の持つ意味」を聞いた。
ECMの人間にとって、ある企業が発行するCBなりの起債を引き受けるに際しては、当然の事ながら守るべき様々な法律がある。
このCBにおいての最大の法的焦点と言うのは、「有利発行か否か」と言うことである。
つまりその起債が一部にのみ(あるいは当該企業に)有利な発行であってはならない、と言うことだ。
私のそのブレーン(もちろん他社の人間ではあるが)は、今までの通常のCBに関して、またその後のMPOに関して、弁護士先生やら商法学者さんたちに対して、一つ一つグレーな部分を潰して行った経験を持つ。
つまり彼はいまやCBなりMPOなりは全て合法な起債である、と胸を張って居る訳だ。
その彼(もしくは彼のチームを含めて)からの意見である。

まず通常のCBについて述べる。
過去に書いたように、通常のCBには一般的に2年後3年後に1回ずつ位、転換価格の下方修正条項が付くことが多い。ちなみにその場合のフロアーは70%なり80%なりが一般的だ。
これがまさに、このスキームのCBは有利発行ではない、という事を弁護士や学者先生たちに納得してもらうための条件だったと言う。
(投資家にとっても、きちんとした保険があります、と言う意味だろう)
そしてMPOであるが、これもこのスキーム自体は上述したように認知はされているが、しかしながら一部の弁護士先生たちのいわゆる心のハードルがまだまだ高いそうで、ゆえに、上下限を付ければ、これは有利発行では無いですね、と言うことになっているそうだ。

また、私自身そんな基本的なことを昨日は見逃していて本当に皆さんすまん!という事がある。
それは各企業の定める「定款」だ。
その企業が発行できる株式数と言うのは定款にきちんと定められており、例えば下限を決めずに最悪1円の転換価格なんてのが存在してしまったら、それは定款に触れるケースも出てくるでしょう、と言うことであった。

しかしながら事の持つ意味はともかく、私自身のディーラーなりトレーダーとしての意見は間違っていないことを彼と確認したので、念のため。
つまり、引き受けたCBはどっさりディーラーなりトレーダーのブックに入ってきて、彼らがその処理を任されるわけだが、その際には一切上限下限なんてのは意識しないし、ましてや昨日力点を置いたように、相場操縦に触れるような行為、例えば上限まで株を上げる、下限まで株を下げる、と言った行為は一切出来ないことに間違いは無い。
ゆえに昨日も結んだように、貴殿が投資している会社が仮にMPOなりの発行を決議し、そしてそのMPOには転換価格の上下限が付いていたとしても、それは上記のような理由により付けられたもので、その値段を少なくともCB処理班はあまり意識しない、と言うことは考慮の対象に入れておいたほうが良さそうだ。

株と言うのはある程度の売り物が出てきて始めてボリュームが増えて、そうして上がって行く場合も多々ある、と言うことも経験則としてあるのだ。

さて、次にYOZANのケースで述べた「引受審査」に関して今日得た新たな知識をここで披露しておく。

引受審査に関しては、MPOの場合は引受ではなくて、主幹事が割り当てを発行体から受けている、と言う考え方がある。これは証券会社のヘッジファンド化を裏付ける考え方だ。
つまりこれは引受行為では無い、と言う見解から、日証協の要請に基づく引受審査(公正慣習規則第14条)をする必要が無い、との事だそうだ。
但し、日証協の要請に基づく審査は不要ではあるが、「投資」なので、社内的な「投資判断」は必要になる。
結局その投資判断自体を、引受審査に準じて行うところもあれば、デイトレ的な考え方の判断をするところもあるそうだ(何処が何処とは言わないがね)。

最後にもうひとつ。これは実は結構重要である。
「貸し株は行わないことになっております、云々カンヌン」と言う記述を最近出す起債が多い。これにより我々が漠然と持つ、空売りは起こりにくい、と考えられ、ゆえに多少の安心感を呼ぶ記述である。
しかしながら、いわゆる転換社債のつなぎ売り、に関しての貸し株借株はその制限を受けないそうだ。
ここで大いなる誤解をひとつ解くと、MPO発行→主幹事の空売りによる株価の下落、そして安くなったところで転換して株を現渡し、みたいなやり方が一般的なように思われているが、何度も言うように少なくとも一流を自負する証券会社は空売りによって株価を下げたり、自己の介入によって株を上げたりしないことはしつこいくらいに述べた。
しかしながら単純なつなぎ売りは別よ、と言うことだ。
転換のスキームをよく勉強されないと良く分からないかも知れないが、仮に、
あるCBがある。株が順調に上がってきて、パリティーが130、さらにプレミアムもマイナス状態、マーケット価格は128で、さらに売り物が1億あるとしよう。
今例えばこの株を1億分(パリティー130の時点での株価で)売って同時にCBの売り物を128で買って転換すれば、2円のさやが抜ける。
しかしCBを転換するとその株がデリバー(自分なり会社の口座に株が配達されること)されるまでに2週間程度掛かる。しかしながら売却した株式は私が買い方にやはりデリバーしなければならない。この期日はご存知T+3日(4日目決済)である。放っておくとこれは未決済になって大問題になって、どこかの時点で株を買い戻さなければなくなる。
それを避けるために、業界で言ういわゆる「ちょい借り」、つまりこの2週間の間だけでいいから株を私に貸してください、と言う行為を行う。
まずは借りた株を4日目の決済に充てて、借りた株は2週間後に転換によってやってくる株で返す、と言うことだ。
これを転換社債のつなぎ売り、と言うのだが、このための貸し株借株は、規定の範囲外ですよ、と言うのがその意味であるね。

ちなみにMPOの場合はとにかく転換価格がVWAPの90%になる訳だから、あまりモノを考えずに単純なる転換で十分にさやが抜ける。一度転換をすると後はそれが株を産んでくれるわけで、よってちょい借りを何度かすればたいていの場合あとはその産まれる株を決済に充てつつ、継続的な転換が出来る。

MPOにおいては確実に転換売りが起こる。よってダイリューションは間違いなく起こる。それはきちんと理論株価を考える上での考慮の対象となるべき事実である、と言える。
しかしながら、相場操縦的な空売りと言うのはかなりの妄想である、と結論付けられるかもしれない。(もっともこれも引受け手、あるいは買い手によるが)

尚、どうぞご質問なりご意見はじゃんじゃんメールなりコメント欄にお願いします。答えられる範囲でお答えしますし、私に分からないことは多少時間を掛けてもその道のプロに尋ねて回答しますので!!