千の天使がバスケットボールする

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私だって聴きたい東京都響「矢部の音」

2005-12-29 22:52:18 | Classic
今日届いた情報誌「選択」で最も興味をひき、真っ先に開いた記事が「名器『ストラディヴァリウス』物語」だった。その中に05年11月N響と東京都響のコラボで、モーツァルトの協奏交響曲におけるコンサートマスターの矢部達也さんの演奏を絶賛している。
以下記事を抜粋(著者は無記名)-----------------------------------------------
正式に発表されてはいないが、矢部の楽器は紛れもなく、最高の状態にあるストラディバリウスに違いない。透明にして鮮烈な音色といい、どんな出自を持つ楽器かはわからないが、名器の風格を十分に備えている。ホールの後に行けば行くほど、楽器の音が際立って聴こえるようになるストラディバリウス固有の不思議な特徴も、矢部の楽器は持っているのだ。(敬称略)

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この耳の鋭い筆者の興奮ぶりは続き、最後に”東京都響と聴衆は素晴らしい宝を神に感謝すべきだろう”と締めくくっている。感謝すべきは、神でなく矢部さんではないか、という半畳もいれたくなるのだが、筆者の言わんとするヴァイオリン、なかでもストラディバリウスの神業の如き美音への深い感動はよくわかる。
昨年、ドイツの誇るヴァイオリニスト、フランク・ペーター・ツィンマーマンのリサイタルをサントリーホールで鑑賞した時のことがよみがえった。(彼の音楽の特徴を最も能弁に語るのが、かってN響と共演したときのベートーベンVn協奏曲であろう。この時の演奏会は、名演奏として今年も再放送されたが、ベートーベンの大きな宇宙観を見事に表現し、尚且つベートーベンの天衣無縫さをもチャーミングに歌っている。)おそらく楽器は、ドイツ財団から貸与されていたストラディバリウスだと思うが、とにかく音が豊饒で艶やかなのである。まるで天上の天使の声のように、輝かしく美しい。そうかと思うと、一瞬のうちに哀切と暗い情念がほとばしる。そのあまりの素晴らしさに、ヴァイリニストの演奏を聴いているのか、ストラディバリウスという楽器を聴いているのか、不思議な感慨さえも覚えた。

アントニオ・ストラディバリ(Antonio Stradivari)は、1644年イタリア生まれ、音量は弱冠落ちるが甘美な音に特徴のある名器の製作者ニコラ・アマティに師事し、後に独立して1737年に93歳で亡くなるまでクレモナで楽器製作に励む。(この長寿をあやしいと私はにらんでいる。ラベルをはるために無理やり長生きさせていないだろうか。)生涯に1200挺を製作(多産家!)、そのうち現存しているのが、600挺と言われている。当時から彼の製作したヴァイオリンは最高級とされ、そのプライドの証としてラテン語では”Stradivarius”と表記されている。

とにかく300年前の彼の製作した楽器を再現してみることは、不可能とも言われている。もっとも楽器の真の価値は、100年たたないとわからないというくらいだから、新作の中に将来のストラディバリウスがかくれているかもしれない。映画「レッド・ヴァイオリン」で女性の生血をニスに交ぜる場面があるが、これもストラディバリウスからくる”伝説”からきている。現代科学を駆使し、ニスの成分や材質を研究し、コンピューターでサイズの黄金比を調べても、美声の謎は今もって解明されていない。いい音の楽器は顔も美しいというのが定説だが、ストラドは写真で観ても本当にほれぼれするほど綺麗な顔をしていてあきない。
ストラディバリウスの使用者は、チャイコフスキー・コンクールに出場するために手にいれた諏訪内晶子さん(現在は日本音楽財団から貸与されている楽器)をはじめ、最近2台めに買い換えてお母さまがことの顛末記を執筆した千住真理子さん、ベテランでは家を売って手に入れた辻久子さん、試奏したら手離せなくて銀行ローンをくんでしまった天満敦子さん、小金がたまったら弓、大金がたまったらヴァイオリンを買い換えると豪語していた高嶋ちさ子さんもつい最近ストラディバリウスをお買い上げ(大金がたまったのか)。こうした使用者をあげても意味がないのだが、往年の名演奏家ヤッシャ・ハイフェッツ、オイストラフから新人ハーバード大学に進学する五嶋龍くんまで、この楽器を愛用。それもそのはず、弦楽器奏者にとって楽器は命の次に大事である。奏でる技量は必要だが、表現したい音をつくるにはそれに応えてくれる楽器が必要という宿命からのがれられない。

300年という時間をこえて、現代の名演奏家が再現するモーツァルトやバッハ、ベートーベン、それらの名演奏にたちあう一瞬こそ、ここに生きていることを神に感謝したい至福の時である。

やっぱり東京都響の定演に行こう♪


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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
明けましておめでとうございます (romani)
2006-01-01 18:48:55
明けましておめでとうございます

今年もよろしくお願い致します。

実は、先月初めて都響の演奏を聴きました。

曲目はベートーベンの第九だったのですが、その時のコンマスは矢部さんではなく、どこかで見た顔だなあと思い出してみると、何と読響コンマスの小森谷さんだったんです。

このあたりの理由は良く分かりませんが、ご紹介のような話を聞いてしまうと、矢部さんの音が聴きたかったなあ。

また、都響を聴きに行きたいと思います。

あけました (樹衣子)
2006-01-01 22:30:21
>何と読響コンマスの小森谷さんだったんです



小森谷巧さんですかっ。どんな事情かわかりませんが、なかなかイキな感じがしますね。

日本のオケも個性的でオリジナルな音が必要だと思います。それとは別に、オケ同士の交流も微笑ましいものです。



新年の講談社の新聞広告は「のだめカンタビーレ」で、狭い下宿のこたつの中で漫画を読んでいる大学生?の周りを、指揮者や演奏家たちが演奏しながらのぞきこんでいるという、なかなかヒットする広告でした。

今年も、音楽とともに宜しくお願いします。^^

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