goo blog サービス終了のお知らせ 

千の天使がバスケットボールする

クラシック音楽、映画、本、たわいないこと、そしてGackt・・・日々感じることの事件?と記録  TB&コメントにも☆

『マイレージ、マイライフ』

2010-03-22 19:34:57 | Movie
チョークを製造している日本理化学工業の会長・大山泰弘氏が、多くの知的障害者を採用するようになったきっかけは、禅寺の和尚さんに教えられた「幸せとは、人に愛されること、人に褒められること、人の役に立つこと、人に必要とされること。愛はともかく、あとの3つは仕事で得られる」という言葉だった。それを考えたらもし解雇の勧告をされたら、自分の存在価値の根源をゆすぶられるような過酷な事件になるのではないかっ。

主人公のライアン・ビンガム(ジョージ・クルーニー)は、企業のかわりに従業員に解雇を通告する死刑執行人。年間322日も出張してこんな仕事で能力を発揮する彼は、“バックパックに入らない人生の荷物はいっさい背負わない”のがモットー。物をもたず、人間関係も必要最低限のシンプルさ。勿論、独身でただ今賃貸のアパート暮らし。夢は、マイレージを1000万マイル貯めて航空会社の"コンシェルジェ・キー"を手に入れること。。そんな超身軽な男の飛行に乱気流をもたらすのが、彼と同じく全米を出張して価値観を共有できるアレックス・ゴーラン(ヴェラ・ファミーガ)と、リストラの方法に新しい発想をもちこんだ新人のナタリー・キーナー(アナ・ケンドリック)。優雅で優秀で完璧とも思えるアレックスと、現代っ子で理屈で合理化案を提案するナタリーの存在は、少しずつライアンの心に変化をもたらしはじめる。そんなおり、故郷の姉から妹の結婚の知らせが届くのだが。。。

出張用スーツケースに手際よく必要最低限の荷物をパッキング。きびきびとした身のこなし、「カード」をさっと通せば飛行機の中でもホテルでも”お得意様”扱いで、全米を颯爽と飛び回るライアン。30代以上の女性のSEXアイコンであるジョージ・クルーニーが、お尻がいけてるだけでなく最高にかっこいいのである。金融危機から発生した現代の厳しい空気を盛り込みながらも、軽やかでユーモラスな上質な映画に仕上がったのは、ひとえにジュージ・クルーニーの存在による。ダークスーツをスマートに着こなし、さわやかで最高の笑顔で、解雇を告げた後に「あなたの本当の夢」を説くとってもとっても素敵なクルーニーだから、過酷な死刑執行人が本当は孤独な寂しい人形のような雰囲気をもたらしていく。この役を演じられるのは、クルーニー以外に考えられない。それに、次々と登場する飛行機から眺める米国の風景にも味がある。緑なす平原が続くかと思えば、小さな家の明かりが規則正しく並ぶ街、山あり平野ありビルがあり。昨日は半そでのポロシャツ姿でマイアミのビーチの船上でパーティを楽しんだかと思えば、今日はコートを着込んで雪のデトロイトを車で走る。米国という大陸の大きさと広さがあって成り立つマイレージ。こんな広い大陸を飛び歩くからっぽのバックパックのむなしさとわびしさを教えてくれたのも、意外にもリストラされて呆然自失、仰天して怒ったり悲嘆にくれる人々だった。

実は、本作でライアンからリストラを勧告される22人の人々は、実際のリストラ経験者。失業問題をとりあげたジェイソン・ライトマン監督は、真実がもつ誠実さを求めて「本物を見せるべきだ」との結論に達し、自らのリストラ体験について話してくれる人を募集した。彼らはカメラの前に立つことは承知したものの、自分の本心が大勢の人々に見られることになるとは予想もしていなかったようだ。しかし、映画出演が一つのきっかけとなり、その後の人生をやり直すことになったことは彼らも認めている。なんと「映画のおかげで、次の失業手当を待つ代わりにスーツを着て、仕事探しをやってみようと思えるようになった」と気持ちを新たにした人もいる。 1年後、映画に出演した22人のリストラ経験者たちの多くが再就職に成功しているそうだ。大不況とは言いながらも日本とは異なる男女や年齢の差別もなく柔軟な雇用環境、きるのも簡単だがチャンスも多いという事情も後押ししているのだろう。決して、解雇イコール自分の存在価値を否定されたことではないという励ましが、作品からも伝わってくる。解雇通知という残酷な仕事師を主人公に失業問題まで考えさせられながらも、最後は後味よく夫もしくは妻、こどもという重い荷物をもちたくなる映画である。幅広い年齢層でカップルでの鑑賞もお勧め。特に花の独身を謳歌しているちゅうぶらりんな(UP IN THE AIR)貴方、男性必見である。

監督:ジェイソン・ライトマン
原題:UP IN THE AIR
2009年アメリカ

■こんなアーカイヴも
『サンキュー・スモーキング』ジェイソン・ライトマン監督
『グッドナイト&グッドラック』・・・ジョージ・クルーニー監督のこの映画は★★★★★


最新の画像もっと見る

2 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

コメント日が  古い順  |   新しい順
幸せは (有閑マダム)
2010-03-28 14:23:01
愛されること、褒められること、役に立つこと、必要とされること。
たとえ解雇されたとしても、家庭があればこれらの幸せの条件は満たされることが出来るはずだと思いますが、家庭での幸せは仕事に比べるとずーっと形として見えにくい部分はあるのでしょう。

自分の意のままに生きたい、というなら独りでいることが一番だとしても、それにどこか虚しさや寂しさを感じるなら、思い切って荷物を背負ってみるしかないかも。 重たいだろうと思っていた荷物が、意外とそうでもないかも・・・と思わされるようなエンディングでしたね。

ジョージ・クルーニーがあまりにもはまり役でした!
返信する
結婚とは (樹衣子)
2010-03-28 20:53:09
『Hangover』に有閑マダムさまの「アメリカ人の男性はつくづく結婚に恐怖を感じているんですね」という感想がありましたね。
思わず笑ってしまいましたが、日本の夫とアメリカの夫像はかなり違うのではないでしょうか。メリル・ストリープの『恋するベーカリー』(←この邦題は最悪ですが)で、離婚した元夫が若い後妻に虐げられている?姿には笑いましたが、私は日本とはだいぶ様子が違うアメリカ人夫婦のあり方を感じました。

家庭は仕事の足かせになる部分もありますが、むしろ仕事(社会)と家庭のふたつの世界をもつことで、かえって仕事も充実すると思います。仕事もいつも順調とは限らないし、ちょっとくじけた時にパートナーやこどもの顔を見ることでどんなに救われるか。

>ジョージ・クルーニーがあまりにもはまり役でした!

そうそう!!、調べたら、彼は現在花の独身だそうですね。結婚に恐怖を感じる気持ちもよ~~~くわかるっ、でもやっぱり再婚した方がよいのでは、とお伝えしたいですね。
返信する

コメントを投稿

サービス終了に伴い、10月1日にコメント投稿機能を終了させていただく予定です。