
主人公のライアン・ビンガム(ジョージ・クルーニー)は、企業のかわりに従業員に解雇を通告する死刑執行人。年間322日も出張してこんな仕事で能力を発揮する彼は、“バックパックに入らない人生の荷物はいっさい背負わない”のがモットー。物をもたず、人間関係も必要最低限のシンプルさ。勿論、独身でただ今賃貸のアパート暮らし。夢は、マイレージを1000万マイル貯めて航空会社の"コンシェルジェ・キー"を手に入れること。。そんな超身軽な男の飛行に乱気流をもたらすのが、彼と同じく全米を出張して価値観を共有できるアレックス・ゴーラン(ヴェラ・ファミーガ)と、リストラの方法に新しい発想をもちこんだ新人のナタリー・キーナー(アナ・ケンドリック)。優雅で優秀で完璧とも思えるアレックスと、現代っ子で理屈で合理化案を提案するナタリーの存在は、少しずつライアンの心に変化をもたらしはじめる。そんなおり、故郷の姉から妹の結婚の知らせが届くのだが。。。

実は、本作でライアンからリストラを勧告される22人の人々は、実際のリストラ経験者。失業問題をとりあげたジェイソン・ライトマン監督は、真実がもつ誠実さを求めて「本物を見せるべきだ」との結論に達し、自らのリストラ体験について話してくれる人を募集した。彼らはカメラの前に立つことは承知したものの、自分の本心が大勢の人々に見られることになるとは予想もしていなかったようだ。しかし、映画出演が一つのきっかけとなり、その後の人生をやり直すことになったことは彼らも認めている。なんと「映画のおかげで、次の失業手当を待つ代わりにスーツを着て、仕事探しをやってみようと思えるようになった」と気持ちを新たにした人もいる。 1年後、映画に出演した22人のリストラ経験者たちの多くが再就職に成功しているそうだ。大不況とは言いながらも日本とは異なる男女や年齢の差別もなく柔軟な雇用環境、きるのも簡単だがチャンスも多いという事情も後押ししているのだろう。決して、解雇イコール自分の存在価値を否定されたことではないという励ましが、作品からも伝わってくる。解雇通知という残酷な仕事師を主人公に失業問題まで考えさせられながらも、最後は後味よく夫もしくは妻、こどもという重い荷物をもちたくなる映画である。幅広い年齢層でカップルでの鑑賞もお勧め。特に花の独身を謳歌しているちゅうぶらりんな(UP IN THE AIR)貴方、男性必見である。
監督:ジェイソン・ライトマン
原題:UP IN THE AIR
2009年アメリカ
■こんなアーカイヴも
・『サンキュー・スモーキング』ジェイソン・ライトマン監督
・『グッドナイト&グッドラック』・・・ジョージ・クルーニー監督のこの映画は★★★★★
たとえ解雇されたとしても、家庭があればこれらの幸せの条件は満たされることが出来るはずだと思いますが、家庭での幸せは仕事に比べるとずーっと形として見えにくい部分はあるのでしょう。
自分の意のままに生きたい、というなら独りでいることが一番だとしても、それにどこか虚しさや寂しさを感じるなら、思い切って荷物を背負ってみるしかないかも。 重たいだろうと思っていた荷物が、意外とそうでもないかも・・・と思わされるようなエンディングでしたね。
ジョージ・クルーニーがあまりにもはまり役でした!
思わず笑ってしまいましたが、日本の夫とアメリカの夫像はかなり違うのではないでしょうか。メリル・ストリープの『恋するベーカリー』(←この邦題は最悪ですが)で、離婚した元夫が若い後妻に虐げられている?姿には笑いましたが、私は日本とはだいぶ様子が違うアメリカ人夫婦のあり方を感じました。
家庭は仕事の足かせになる部分もありますが、むしろ仕事(社会)と家庭のふたつの世界をもつことで、かえって仕事も充実すると思います。仕事もいつも順調とは限らないし、ちょっとくじけた時にパートナーやこどもの顔を見ることでどんなに救われるか。
>ジョージ・クルーニーがあまりにもはまり役でした!
そうそう!!、調べたら、彼は現在花の独身だそうですね。結婚に恐怖を感じる気持ちもよ~~~くわかるっ、でもやっぱり再婚した方がよいのでは、とお伝えしたいですね。