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社員の7割が知的障碍者 人は働いて幸せを知る

2009-02-11 15:50:20 | Nonsense
「社員の7割が知的障碍者 人は働いて幸せを知る」
いつもなら不遜にも「長老の智慧」のコラムなんか読むことはないのに、1月17日号の週刊「東洋経済」のチョークを製造する日本理化学工業会長・大山泰弘さんの談話には不肖の私も全く目が覚めるようだった。日本理学工業は、教室で使うようなチョークを製造する典型的な中小企業だが、国内シェアは3割で業界トップ。小粒でも暗雲漂う「あおぞら銀行」なんかよりはるかに優良企業。しかし、従業員72人のうち知的障害者が7割超にあたる55人が働いている。
7割も障碍者を雇用していて生産性は劣らないのか、非合理的な経営に陥らないのか、そんな素人の杞憂に回答してくれたような今日の読売新聞の「はたらく」シリーズではこの日本理化学工業をとりあげていたのである。

厚生労働省によると18~64歳までの障碍者は325万人。なかには、どうやっても働けない状態の方もいるだろう。しかし、年々障碍者の勤労意欲は伸びていて、11万人の求職者数がいて就職できる人も増えてはいるだが、職にあちつけるのは全体の半分にも満たない。障害者雇用促進法に基づく民間企業の法定雇用率は1.8%だが、そんな人たちを雇用するかわりにお金を納める、納めれば企業としての義務を果たすからよいという意見も聞いたことがある。ふけば飛ぶような零細企業ならともかく、一部上場企業でそれはないだろう。政府も障碍者を初めて採用した中小企業向けの奨励金(100万円)、賃金の一部に充てる助成金の拡大と対策をとってきたが、こんな不景気では障碍者は「雇用は最後、失業は最初」となってしまうおそれがある。健康な社員ですら人件費を資本ではなくコストととらえるのもありなので、障碍者の雇用そのものを負担と否定的にとらえる企業も多いのだから、障害者雇用促進法を達成している企業は44.9%。

日本理化学工業では、計量用の重りを数字ではなく色分けし、時間を計るのに砂時計を使用し、通常の作業を複数の工程に単純化し、仕事に人をあわせるのではなく、能力にあった工程に製造ラインに組み直しをした。知的障碍者といっても最初は軽度の方だと思っていたのだが、半分が重度の障碍者だったことに驚いた。大山さんは作業内容や職場環境をきめ細かく対応しやすい大企業よりも中小企業の方が向いているかもしれないとはおっしゃっているが、人も仕事も膨大化している大企業こそ、すきま仕事のような単純な軽作業もあるはずだが、それはきっと下請けの下請けぐらいの派遣社員にまかせているのだろう。

昨年、その第一期生だったHさんが、勤続50年を祝う会が開かれた。彼女は64歳だが15歳から働いているのである。当時大田区に工場があったのだが、近くの養護学校から女の先生が「このままでは働くことを知らずに一生を終えてしまう」と何度断っても通って雇用の受け入れを熱心に訴えたそうだ。期間限定で職場体験に来たふたりの女の子は、休憩のチャイムに気づかないほど夢中で働いた。その一途さが同世代のこどもをもつ社員の胸を打ち、採用を全く考えていなかった人事担当者を社員が囲んだ。「私たちが面倒をみますから、一緒に働かせてあげて」
ふたりの女の子は、その一途さそのままに正社員として入社して定年まで勤め上げた。そのひとりがHさんだった。

障碍者を雇って数年たっても彼らがなぜ喜んで工場に通うのか不思議でたまらない大山さんに禅寺のお坊さんが、「幸せとは、人に愛されること、人に褒められること、人の役に立つこと、人に必要とされること。愛はともかく、あとの3つは仕事で得られる」と語ったそうだ。障碍者の美談と言えば、スポーツや芸術、学者など華やかな舞台で活躍をされる方たちがとりあげられることが多く、それも彼らの可能性を示し希望となるのだが、一番の基本は、やはり働いてお金をえることではないだろうか。
作業を覚えるのも時間がかかるが、明るい笑顔がハンデのある人を支えようと社内の一体感も生まれる効用もあった。米国のダイバー・シティの発想をもっとひろげたのが、日本理化学工業である。

■長老の智慧・・・その1 その2 その3

■こんなアーカイヴも
「クロネコが届けた正しい反骨精神」
「スワンベーカリー」でひととき

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5 コメント

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働ける本人も幸せだしその親も幸せ (blue)
2009-02-11 19:24:18
全く同じ記事が今朝の読売新聞1面に出ていて私も朝からちょっと感動しておりました。^^
日本理化学工業は、半世紀も前からこんな自然な形で凄いことをやっていたのですね。

>一番の基本は、やはり働いてお金をえることではないだろうか。

そう思います。
自分で生きることは人間の尊厳でもある・・・先月「友達と別れたくないから知的障害児を公立の普通科高校に合格できるよう問題を易しくして」と県教委に陳述した愛媛の人権派団体のニュースが流れましたが違うだろ、と。
少しでも早くひとりで生きていける訓練をして就職できる能力を見につけることが先決だと思いました。

私もこの数年、知的障害者の作業所でのパンやクッキーを購入し続けていますが本当に美味しいのです。
ある日何気なく「美味しいから子供が喜んで食べます」と代金にメモをはさんだらとても喜ばれて返事が来ました。
彼らは融通が利かない代わりにとても几帳面で正確にレシピの決まりごとを守り作るので物づくりに向いています。

>彼らがなぜ喜んで工場に通うのか

健常者が忘れかけている”働く喜び”を知っている彼らのほうが幸せかも。
・・・とここまでは美談で終われるけれど・・・
働く喜びを失った定年後の彼らのその後が気になります。
別の生きがいを見つけられていたらよいのですが。。
定年後も一緒にお風呂に入る96歳の母親の胸中を想うと。。。。


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働く喜び・・・本当ですね (樹衣子)
2009-02-13 23:18:21
blueさまへ

私は所謂美談ものはあまり書きませんが、日本理化学工業が最近注目をあびているのは、常識の発想を転換した点にもあり、そこに感心も致しました。
ところで、buleさまがパンを買われた作業所の障碍者がえられる賃金はいくらなのでしょうか。以前知ったところによると作業所の月給は1万円だそうです。日本理化学工業は、10万円以上の賃金を支払っています。働くことと、労働の対価にみあった賃金をえることも大事だと思います。
また、刑務所に収容されている犯罪者の三人にひとりは障碍者である事実からも、社会全体で考えるべきことが多いように思われます。

>「友達と別れたくないから知的障害児を公立の普通科高校に合格できるよう問題を易しくして」と県教委に陳述した愛媛の人権派団体のニュースが流れましたが違うだろ

私もそう思いますよ。高校は義務教育ではないので、その高校にふさわしい学ぶにたる学力が必要であり、そんな理由で試験を簡単にして欲しいという発想はあまりにも幼児化しています。
でも、米国では知的障碍者も大学に進学するそうです。15歳になったら学ぶことと職業訓練のどちらを優先するかですが、長寿国なのだからもう少し彼らも勉強させてあげたい気持ちもあります。
ただおっしゃるとおり定年後の彼らの行く末が心配です。世の中には、お年よりから平気でお金を騙し取る人がいるのですから。どんな風に生まれてきても、人間としての誇りを失わずに生きていって欲しいですね。
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働ける喜び (calaf)
2009-02-14 06:57:30
こんにちは。娘は精神障害者で、1月末から特別養護老人施設で、職業訓練を受けています。訓練ですからもちろん無給ですが、訓練をして頂けるだけありがたいと思っています。わずかの報酬ではありますが、週1回市役所の喫茶部でウエイトレス(古い言葉?)もさせて頂いてます。障害者を一人雇えば補助金が企業に支給されます。障害者には自治体か決めた最低賃金を下回ってもいいことになっています。これを「うまく利用している」企業も知らないわけではありませんが、それでも障害者としては雇用して頂けるだけでも今の世の中「ありがたい」のです。記事の中にあります、定年まで勤め上げた方も立派ですが、企業も賞賛に値します。
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calafさまへ (樹衣子)
2009-02-14 19:34:53
>「うまく利用している」企業

またいいところに話題をふってくださいましたね。
下品な表現ですが、障碍者をくいものにしている企業もあると本で読んだ記憶があります。クロネコヤマトの元会長の小倉昌男さんが、なんとかパンづくりの技術を覚えてもらって採算ベースにのせて10万円以上の給料を支払いたいと言う当時の動機を思い出しました。

それから直接おめにかかったわけではないのですが、私にはどうしてもお嬢さんに障碍があるとは思えないのですね。あれだけ、理路整然としたきちんとした文章をかけるのに。。。
それは兎も角、今日たまたま介護福祉者の方とお話しをしたのですが、介護の仕事は文字どおり3Kです。また人によって向き不向きもあるそうです。
しかし、まさに人に感謝され、必要とされ、人に褒められるお仕事だと思います。高度な金融工学を駆使して世界的な不景気をもたらした仕事を考えれば、お嬢さんが受けられている訓練は尊いことだと思います。これをきっかけに、新しい世界が開かれることをお祈りしております。
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細やかな配慮 (calaf)
2009-02-15 06:05:42
こんにちは。肝心要のことを書くのを忘れておりました。「障碍者」という漢字の使いわけですね。障害者と(私もこう書きました)何気なく使っている漢字ですが、樹衣子さんの細やかな配慮はさすがだと思います。
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