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このところ上昇傾向にある原油価格であるが、果して底打ちしたのか?

2015年05月10日 16時20分03秒 | 日記
 このところ原油価格が上向き傾向を示し、原油価格の底入れ観測記事も散見するようになった。

エネルギーの専門家と筆者は見ている藤 和彦氏が最近のコラムで、底打ち観測にはまだまだ慎重な見方をされている。

 理由を箇条書きにすると次の通りだ。

 1.米国のシェールオイルの掘削量はコントロールされているように見えるが、フラックログと呼ばれる水圧破砕法による採掘される予定の油ガス井の生産能力は高まっており、現状は栓をされている状態で、原油価格が上昇すると産出量を増やす可能性がある。 という事は価格の上昇の足枷になるという事だ。

 2.サウジアラビアは中東石油の最大の産出国であり、国の経済運営も石油の輸出に頼っている。
 OPEC諸国は、それだけに急激な価格上昇を懸念していると言う。

 3.中国経済の減速は、原油の最大消費国であるだけに、原油消費量の低下の原因になる。

 4.最後に問題になるのは、シェールオイル開発に投資された資本のリスクや、労働人口の余剰問題だ。
 『2015年4月27日付「ウォールストリート・ジャーナル」は、「世界経済は原材料など商品のみならず資本や労働も過剰の状態にあるため、世界経済が今後10年間、低成長・低インフレで低迷するデフレーションを経験する」との暗い見通しを示している。』と最後に少々暗い予測記事を書いて締めくくっている。

 果してどうなる事であろうか?

(JBプレスより貼り付け)

原油価格は本当に底を打ったのか
上昇基調は続かないこれだけの理由
藤 和彦 .
2015.05.08(金)

 米国エネルギー省が4月29日に発表した石油在庫統計によれば、24日までの週のオクラホマ州クッシング(WTI原油先物の受け渡し地点)の原油在庫は、2014年11月28日以来初めて減少した(51.4万バレル減少して6170万バレル。タンクの貯蔵能力は7080万バレル)。

 米国の石油掘削装置(リグ)の稼働数は前週比31基減の703基と2010年以来の低水準となった。3月以降、原油価格は30%超上昇し、米国での原油生産もようやく頭打ちになり、「原油価格は底を打った」との観測が広がっている(5月5日WTI先物価格は昨年12月以来初めて1バレル=60ドルを上回った)。

 4月22日、米シェール生産大手「パイオニア・ナチュラル・リソーシズ」は、「市場環境が改善すれば6月から月2基のペースで掘削リグを増やす」との方針を明らかにした。このようにシェール業界の姿勢も前向きになりつつある。

●「栓」をされている大量の地下原油

 しかし、ここにきて「フラックログ」という伏兵が現れてきた。フラックログとは水圧破砕法によって採掘される予定の油ガス井を指す。ブルームバーグ・インテリジェンスの分析によれば、その数が過去1年で3倍に増加しているという。テキサス州やペンシルベニア州などの油田で操業する企業は4731本の油井を掘削したが生産をいまだ開始しておらず、日量32.2万バレルの原油(リビアの日量原油生産量に匹敵)が地下に眠ったままとなっている(2015年4月24日付「ブルームバーグ」)。水圧破砕により掘削された油田の多くは「栓」をされている。

原油価格が再び上昇するのを待っている大量の原油が地下に存在することは、価格上昇の兆候が見られた時点で原油が直ちに増産されることを意味する。そのため、フラックログは今後の原油価格回復を鈍らせる「足枷せ」になる可能性が高い。

●サウジは今後も増産か

 OPEC各国でも、原油在庫が過去最高水準にまで積み上がっているようである。

 サウジアラビアをはじめOPEC諸国は増産を続けているため、4月24日時点のOPECの原油生産量は、需要に対して日量約200万バレルの供給過剰となっている。これは過去10年間で最大の水準である。こうした状況を踏まえ、市場関係者の間には、「世界の原油需給のファンダメンタルズに大きな変化はなく、原油相場は短期間に少々急速に上昇しすぎた」との不安が頭をもたげてきている。

「世界最大の産油国サウジアラビアは顧客を満足させ、均衡の取れた市場を維持するためのすべての原油需要に対応する」──。こう述べたのはサウジアラビア副石油相のアブドラアジズ王子(54歳、サルマン国王の息子)である。

 サウジアラビアにとって石油は権力の源泉であるため、王族を石油相に就けると権力が集中しすぎて国家運営に支障をきたすとの理由から、優秀なテクノクラートに石油政策を任せるというのがこれまでの慣例だった(20年にわたり石油相を務めたヌアイミ氏や、1980年代にその名を世界にとどろかせたヤマニ氏は、いずれも王族出身者ではない)。

 しかし今年80歳になるヌアイミ石油相の後任と目されていた国営石油会社サウジアラムコのCEOが保健相に任命されたことから、アブドラアジズ王子が王族初の石油相に昇格する可能性がにわかに高まっている。

 サウジアラビアでは4月29日、サルマン国王(79歳)が驚きの人事を発表している。ムクリン皇太子(今年1月に死去したアブドラ前国王が、自らの部族の後見人として指名したとされていた)に代えて、副皇太子だったムハンマド内相(55歳、サルマン国王の兄の息子)を皇太子に昇格させ、自分の息子(アブドラアジズ王子の弟)であるムハンマド国防相(29歳)を副皇太子(皇位継承第2位)に任命したのだ。

 イエメンへの軍事介入に消極的だったと言われるムクリン皇太子(母親がイエメン出身)が退位を申し出たとされているが、事実上の更迭との見方が強い(イランメデイアによれば5月2日、ムクリン元皇太子は声明を発表し、「すべてのサウジアラビア国民はサウジアラビアの国王と皇太子、国防大臣の利己的な行動に抵抗すべきである」と訴えたという)。

 ムクリン元皇太子をはじめとするイエメンへの軍事介入に消極的だった勢力を排除したことで、サウジアラビアの新体制は安全保障の面でこれまで以上に強硬な路線をとるのではないか。そうなればますます軍事費は拡大することになる(5月3日、サウジアラビア主導のアラブ連合軍は限定的な規模の地上部隊をイエメン南部に派遣した)。

 アブドラアジズ王子は長く石油を担当してきた。石油省で実権を握りつつある王子は、弟のムハンマド国防相とともに国防予算確保のために今後も増産を続ける可能性が高いだろう。そうなれば6月のOPEC総会が大荒れになることは避けられない。

●中国経済の変調と原油需要の低迷

 世界の原油需要を見ると、最重要ファクターである中国経済の変調ぶりが目立っている。

 中国経済の実態が、政府が発表するGDP成長率(第1四半期は7%成長)より悪いのは今や常識となっている。

 中国の楼継偉財政部長は4月24日、「中国は急速な高齢化によって、今後5~10年間、50%以上の可能性で『中所得国の罠』に陥る」との見解を示した。中所得国の罠とは、「中所得国がその国の構造的な問題などによって高所得国になれず、経済の発展が停滞する」ことを意味する。これを回避するための方策として、(1)農業改革の実施、(2)戸籍改革の実施、(3)就業問題の解決、(4)土地改革の実施、(5)社会保険の整備を挙げているが、どれ一つとっても過去の政権が先送りしてきた大難題である。

 中でも気になるのは、社債市場でデフォルトが出始めていることである。4月21日中央政府直轄の「中国兵器装備集団」の子会社が8550万元の債券利息のデフォルトを発表、債務不履行に陥った初の中国国有企業となった。

 その前日には、広東省深セン市の大手不動産開発会社「佳兆業集団」が5160万ドルのドル建て債務の利息が支払い不能になったことが明らかになっている。「今後、中央・地方政府は経営不振の企業、特に国有企業の救済を行わないだろう」とする専門家が増えている。

 2014年3月、上海超日太陽能科技有限公司が中国債券市場の初のデフォルトを生じさせた際には、地方政府は9社の投資会社と2社の信用保証機関を斡旋し、すべての債券保有者に利息と元金を支払い、土壇場で同社の破産を回避させた。しかし20~30兆元に達すると言われる債務残高を抱える地方政府は、土地の売却収入が大幅に落ち込むなど財政状態が急速に悪化しており、これまでのように企業を救済する体力がなくなっている。

 資金の海外流出も顕著になってきている。2014年6月に4兆ドル近くに達した中国の外貨準備は今年3月末に3兆7300億ドルに減少している(特に3月末までの3カ月間で約1100億ドルも減少)。「不景気の株高」が続いているが、マクロ経済の一段の悪化が進めば、「株式相場も急落し、広範囲に資本流出が起こり、信用危機が顕在化する」というシナリオも現実味を帯び始めている。

 国有石油企業にも荒波が押し寄せようとしている。原油価格下落によりペトロチャイナ(CNPCの上場部門)の第1四半期利益が前年比82%減少し、2007年第3四半期以来の低水準に落ち込むなど、国有企業各社は苦境にあえいでいる。

 政府は「腐敗防止」の観点から、これまでに中国石油天然ガス集団(CNPC)などの幹部十数人を取り調べてきたが、4月27日「中国石油化工集団のナンバー2に違法行為と党の規律違反の疑いがある」との声明を発表し、国有エネルギー企業への調査がなお拡大していることを示した。政府はエネルギー部門の大リストラも辞さない構えを見せており(5月4日、国有石油大手3社は経営トップの交代をさせるなど政府は経営の監督を強化する意向を明らかにした)、中国の原油輸入量は今後大幅に減少する可能性がある。

●懸念される米国発の金融危機

 米国経済にも原油価格下落の悪影響が出始めている。

 4月29日に発表された米国の経済成長率(速報値)は、年利換算で前期比0.2%増と前期の2.2%増から伸び率が大きく縮小した。特に原油価格の大幅下落の余波で、油井・油田への投資は48.7%減となった(前期は8.1%増だった)。

 また、3月の米新築住宅販売件数は前月比11.4%減の48.1万戸と、市場の予想以上に減少した(2月は7年ぶりの高水準だった)。地域別に見るとシェール層が存在する北東部(マーセラス層)が33.3%減、南部(テキサス州)は15.8%減と深刻だった。エネルギーセクターの苦境が米国全体に波及すれば、個人消費が伸び悩み、今後の原油需要にも悪影響をもたらすだろう。

 第1四半期のGDP成長率が予想外に悪かったことから、複雑なポジションを組んでいるトレーダーらは神経質で不安定になっている。その背景には、金融規制により銀行が社債保有を断念したことが原因で、社債市場の流動性と透明性が低下していることが挙げられる。市場では「過熱する米社債市場は事実上爆発している」との悲鳴が上がっている。

 4月上旬、株主らに文書で「金融危機が再び起こりうる」ことを警告したのはJPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモンCEOである。そのJPモルガン・チェースが銀の保有高を2012年の500万オンスから5500万オンス以上に増加させている(直近の2週間でも800万オンスの銀を購入)。現物の貴金属を大量に保有することで、差し迫る金融危機に備えようとしているのだろうか。

 2015年4月27日付「ウォールストリート・ジャーナル」は、「世界経済は原材料など商品のみならず資本や労働も過剰の状態にあるため、世界経済が今後10年間、低成長・低インフレで低迷するデフレーションを経験する」との暗い見通しを示している。この予想が現実になれば、原油価格も低空飛行を続けることは間違いないだろう。
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藤 和彦    世界平和研究所主任研究員。1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)
(貼り付け終わり)