荻窪鮫

元ハングマン。下町で隠遁暮らしのオジサンが躁鬱病になりました。
それでも、望みはミニマリストになる事です。

独身の巻。

2016年09月14日 | 聖なるブログに名も無きカテゴリを




*今回は、2011年に別んトコで書いていたブログに加筆・修正したモノをお送りします。

独身貴族です。

爵位でいうと男爵ですが。

貴族ですので、もっぱら移動は馬車。

『お客さ~ん、カープがついに優勝しましたねぇ~』

とかいう御者でいささか閉口しますが。

『すいません・・・。野球の事はよく分からないので・・・』

貴族ですので、民衆の娯楽には興味が無いのであります。

さて、たまにですが、姫に会うため馬車を走らせます。

そうです。晩餐会に出席するためです。

姫の年齢は若く、姫のご尊父と貴族は同い歳。

でも貴族は気にしません。中世ヨーロッパではよくあった話ですから。たぶん。

貴族は晩餐会の会場に足を踏み入れます。

会場の執事はそれはそれは優しい物腰で『当店は自動延長制になっておりますので・・・云々』と囁きます。

貴族は慣れているので『はいはい』と返すだけ。

すると、

『あーひさしぶりーきてくれたんだーありがとー』

とか言い、手をヒラヒラさせながら姫が現れます。

貴族は姫にタメ口で話しかけられるのが、嬉しくてたまりません。

姫のドレスはとても綺麗です。ネットで買ったとか言ってました。

便利な世の中になったものです。

さぁ。晩餐会のはじまりです。

貴族は晩餐会では、水割りという民衆の飲み物を敢えて飲む事にしています。

しかし、なぜか姫は、炭酸がしゅわしゅわしたピンクの飲み物を飲みたがります。

もえ、だの、ぶうぶ、だの、どん何とかだの・・・、と呪文の様です。

その時だけ貴族の顔は、勇壮な戦士の如く鋭くなるのであります。

転瞬、いつものヘラヘラしたまことにゆるい顔に戻りますが。

晩餐会はおおむね2時間程度でしょうか。

そう言えば、いつも執事は『ワンセットがどうのこうの』と言っていた様な気もします。

さて、楽しい時間というのは早く過ぎてしまうもの。

『またきてねー』

姫は手をヒラヒラ振って貴族を送ってくれます。

すっかり気分の良い貴族は、会場の前に停まっていた馬車に乗り込みます。

帰路の途中、赤坂に、ある立派なお城がたっていました。

エントランスに『ご宿泊』とか『ご休憩』とか書いてあるお城であります。

貴族はなにか急に虚しくなりました。

先程とは異なる御者が言います。

『お客さ~ん、今年は芸能人の不倫が多いね~』

・・・貴族には生きにくい世情の様です。



『どんな貧乏をしても、王族貴族の気持ちを持ち続けた』奥村土牛(ニッポンの画家・1889~1990)


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