検察は謙虚になるべきだ 「伝説の鬼検事」田中森一氏

2008-02-14 | 本/演劇…など

検察は謙虚になるべきだ 「伝説の鬼検事」田中森一氏
配信元:産経新聞 2007/09/25 10:42更新
 「特捜のエース」「伝説の鬼検事」。そんな勇名をほしいままにして辣腕(らつわん)をふるい、弁護士に転身後は、詐欺事件で刑事被告人となった田中森一氏(64)。今年6月、激動の半生をつづった「反転 闇社会の守護神と呼ばれて」(幻冬舎)が出版され、一躍ベストセラーとなった。その田中氏が産経新聞のインタビューに応じ、検察捜査の問題点などについて語った。真の「正義」はどこにあるのか。古巣への愛憎をにじませる鋭い物言いは、レクイエム(鎮魂歌)のようにも聞こえる。(酒井孝太郎)
 ◆真の「正義」とは
 よく他人から、こう聞かれる。「あなたにとって正義とは何ですか」。あるいは「検察の正義とは何ですか」と。
 前提を確認しよう。そもそも検察は司法機関であると同時に行政機関でもあるわけ。法務省の一つの組織だからね。すると検察は、司法としての正義だけじゃなくて、行政としての正義も考えなければいかん。いわゆる体制維持だわな。
 つまり、「検察の正義」と「検事の正義」が衝突する場合があるということ。体制を揺るがすような事件があり、仮に自分の正義感とは違う方向に展開していけば、現場は良心の呵責(かしゃく)との戦いになる。
 ワシはできるだけ自分の正義、良心、信念というものを大事にしてきた。だから、やっぱり組織になじまなかった。
 よく、特捜部に逮捕された人は「最初に筋書きありき、ストーリーありきだ」と批判するじゃない。そのストーリーが、まさに「検察の正義」なのよ。
 本来なら、被疑者は「私が悪うございました」と頭を下げるものだけれど、最近では大半がそうじゃない。捕まった人たちが単に文句の多い人なんだろうか(笑)。
 それは検察の正義にどこか問題があるからだと思うのよ。犯罪者のたわ言として片付けちゃいかん。もうちょっと検察は謙虚になるべきや。
 なぜそうなってしまったのか。
 特捜部が手掛ける大きな事件では、周りで聞いたことに基づいて事件の筋道を自分たちでつくっていく。それで、例えば政治家に狙いを定めると、いきなり逮捕しちゃうじゃない。
 事前に聴取すれば証拠隠滅や逃亡、自殺の恐れがあるし、事件にしなかったときに社会的影響が大きすぎるから、そのやり方に一長一短はある。だけど、逮捕まで本人の言い分は一切聞かないわけだから、どうしても歪(ゆが)みが出てくるわな。
 いまの検察はメンツばかり重んじて組織の正義を貫こうとするから、途中で見通しが違っていることが分かっても謝ることができないんだ。妙なプライドやうぬぼれがあるんだろう。
 検事の資質の問題も無視できん。被疑者だって全くシロじゃないと思うのよ。でも、いまの検事は、それを認めるよう説得するだけの能力がなくなってきちゃった。
 そもそも、人間の最も汚い食いカスが残っているところを掃除していくのが司法なんや。司法のお世話になるのは、ある意味、一番ドロドロとしたところで生きてきた人間。それを調べる検事が、世間知らず過ぎるのかもしれんな。
 特捜部の検事で、まともに一般人や記者と付き合う人すらいなくなった。そんなことで、どうやって人間形成していくの。どうやって世間の機微を知っていくの。
 捜査対象になるような人たちも変質してきたね。昔のバブルの紳士たちは、やっぱり情があった。自分がもうけたら周りにももうけさせていた。
 ところが、いまはホリエモン(元ライブドア社長の堀江貴文被告)なんかでも経済的な合理性だけ。情がないから周囲は潤わないんや。ヤリ手といわれる裏社会の連中は、バブル崩壊で能力まで根こそぎつぶされてしまったと感じるなあ。
 ◆「ヤメ検」逮捕前こそ力発揮
 元検事の弁護士、いわゆる「ヤメ検」について、「節操がない」とよからぬ声があるのは確かだ。ワシも「センセイ、二重人格ですか」と揶揄(やゆ)されたことがあるわ(笑)。
 でも、刑事事件では普通の弁護士よりヤメ検の方が被疑者のためになる。捜査当局との人間関係はもちろん、何より事件のツボを知っている。それで(立件前に)つぶした事件、ワシでも結構あるよ。
 例えば、仕手筋の小谷光浩(光進元代表)=蛇の目ミシン工業恐喝事件などで有罪確定=が東証一部上場の「国際航業」を乗っ取った後、会社から彼に多額の金が流れた。融資の形を取っていたけど明らかな担保不足で、東京地検特捜部が背任容疑などで狙っていた。
 顧問だったワシは彼に追加担保を差し出すようアドバイスし、もくろみ通り、そのときは立件されなかった。犯罪は成立しているけど、捜査価値をなくしてしまう方法やな。
 逮捕や起訴前に事件をつぶすということは、証拠隠滅と紙一重。だからヤメ検が悪くいわれるんだけど、本当に弁護士として力を出せるのは逮捕前なんだ。逮捕されてからは、実は誰がやっても大差ないんだよ。
 いずれにしろ、検事も弁護士もやることは一緒なの。まずは事実、真実というのがある。この山の頂上に、被疑者の悪口ばっかり言いながら登るのが検事。裏側から被疑者をかばいながら登っていくのが弁護士だわね。
 両方をやってきたけど、全く矛盾は感じないよ。どっちも一生懸命になれるしな。ただ、ワシ自身はやっぱり検事の方が向いてるやろな。いまでも検事が天職だと思う。仮に「特捜部長のイスを上げる」といわれたらすぐにいくわ(笑い)。
 ◆判決どうあれバッジは返上
 出版した「反転」については、そもそも売ろうと思って書いたわけじゃない。当初は、自分の事件について語れば弁解になり言い訳になり、男としてみっともないから放っておいたんや。
 でも、やっぱり自分の子供なんかが、そういう目で見られるわけ。不憫(ふびん)に思い、少なくとも周りの人たちには事件の真実を知ってもらいたいと考えるようになった。
 人の勧めもあって、書き始めたのが去年のゴールデンウイーク前。2審の判決が出て少したったころやね。それで1年ぐらいかけて書き上げたんだけど、その間、いつ最高裁の判決が出て収監されるか分からない。こっちは何の計算もしていないし、たまたまタイミングよく世に出た。
 おかげさまで多くの人に理解してもらい、「あなたの生き方に勇気づけられました」という手紙もいただく。 最高裁の判決についていえば、おそらく100%近く棄却されるだろう。だから弁護士の資格はなくなる。万が一、棄却されなかったとしても弁護士バッジは返上するつもりや。
 残された人生は、前途有望な若者のために奨学財団を作ろうと思っている。その準備としてインターネット上に「田中森一塾」というサイトを立ち上げた。これからも、たくさんの人たちに協力してもらわないかんね。
                   ◇
【プロフィル】田中森一
 たなか・もりかず 昭和18年、長崎県生まれ。岡山大学在学中に司法試験に合格し、46年に検事任官。大阪地検特捜部などを経て、「最強の捜査機関」と称される東京地検特捜部で、撚糸工連事件や平和相互銀行事件などに携わった。62年に検事を退官し、大阪弁護士会に登録。暴力団や株の仕手筋など闇社会、地下経済の住人らと親交を深め、多くの顧問弁護士も務めた。平成12年、実業家の許永中被告らと共謀し、石油卸商社「石橋産業」から約179億円の約束手形をだまし取ったとして、詐欺容疑で東京地検特捜部に逮捕、起訴された。1審、2審とも実刑判決で、最高裁に上告中。「田中森一塾」のアドレスはhttp://tanaka-morikazu.com


2 コメント

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元検事岩橋義明は今公証人として遺産公正証書を偽造している (ym)
2016-11-01 03:17:54
検察庁の天下り先が法務局
元検事の岩橋義明は吉祥寺の公証人役場で遺産公正証書を偽造して
被害者をねじ伏せています、泣き寝入りしかないのでしょうか?
私は被害者です、一人で戦っています。
相続人の遺留分を侵害していると抗議しても
無視、もちろん遺産分割協議はないのに公正証書は
依頼人の希望通りに作成し、報酬のために法律はお構いなし
それで受理まで済ませています
これからどうすればよいのか困っています
返信する
最高検事が更迭される辞職→法務局に天下り今度は公証人で私文書偽造で金儲け、岩橋義明はまだ裏仕事を続けてる (ym)
2016-11-06 10:59:57
公証人、公正証書、遺言・・・・・・・・、これらは、多くの人にとって縁遠いものです。もし関わったとしても、一生で親の死の時と自分の時くらいです
●実際にいろんな被害が出ています
私の父親が亡くなった病院は医療法人財団 三鷹病院です
公証人や司法書士はターゲット探しに、病院にまで出入りしていました
ダウン症の母親たちの間でも有名な人物です。弱味につけこむ卑怯な手口を使うの人達です
この度、私の父が亡くなると、子供の遺留分も認めない遺言公正証書が送られてきました。不当なものと思いました、しかし公証人は下記の者
●浦和地検(現さいたま地検)熊谷支部 岩橋義明検事
2012年12月 最高検公判部長 更迭され2013年4月 辞職
※理由は埼玉愛犬家連続殺人事件で不正を行った結果です
しかし現在、吉祥寺の公証人役場の公証人として岩橋義明は
仕事を続けています
なぜ不正をした者、犯罪人が、よりにもよって法律の権限を持っているのですか?
もし私が弁護士に依頼し、遺留分侵害を訴えても、遺留分も減殺請求書を出して家庭裁判所で戦っても
敗けは見えてます
法を司る裁判官、検察官の天下り先である公証人が不正をおこなっても、いずれは公証人に天下るであろう裁判官が審理を尽くさず不公正な判決を行う実態にやりきれなさを感じざるを得ません。
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