大山寛人×開沼博 対談 ④ 発信で激化する嫌がらせ…それでも、死刑制度を考えて貰うために伝え続ける

2014-02-03 | 死刑/重刑/生命犯

誹謗中傷、犬の首つり死骸…発信で激化する嫌がらせ  それでも、死刑制度を考えてもらうために伝え続ける
 Diamond online  対談 漂白される社会 2014年2月3日【大山寛人×社会学者・開沼博】
 売春島や歌舞伎町といった「見て見ぬふり」をされる現実に踏み込む、社会学者・開沼博。そして、母親を殺害した父親に死刑判決が下されるという衝撃的な体験をもとに、現在は、被害者遺族が望まない加害者の死刑があることを訴える大山寛人。『漂白される社会』(ダイヤモンド社)の出版を記念して、ニュースからはこぼれ落ちる、「漂白」される社会の現状を明らかにする異色対談。
 被害者遺族が望まない加害者の死刑がある。実名でそう訴える大山氏のもとには、嫌がらせが絶えない。インターネットでの誹謗中傷、あるときは、犬の死骸がドアノブにくくられていた。さまざまな葛藤と向き合いながら、それでも発信を続けたい思いが語られる。大山氏との対談は最終回。

*メディア出演で嫌がらせは激化
開沼 いまはどれくらいの頻度で講演をされていますか?
大山 まちまちです。平均したら2ヵ月に1回ぐらいですね。もっと機会が増えてくれればありがたいとは思うんですけど。
開沼 NHK・ETVの「ハートネットTV」は、何がきっかけだったんですか?
大山 僕のホームページです。ただ、取材が始まったのは「NNN」のほうが早かったですよ。「NNN」のきっかけは、よみうりテレビさんとかが興味があると講演を聞きに来てくれて、そこからですね。
開沼 メディアに出演されてから反響はありましたか?
大山 はい。ただ、悪い反響もありました。
開沼 たとえば?
大山 バッシングや嫌がらせ。「それはあんたのお父さんだからそう思えるだけだよ」と「そうやって、飯の種にしたいんだろ」というメールが来たり、体感できる嫌がらせもありました。
開沼 それは匿名で?
大山 そうですね。匿名のメールで来ます。
*自宅玄関のノブにくくられた犬の死骸
開沼 大山さんにそれを言いたい人たちは、何を求めていると思いますか?
大山 わかりません。小馬鹿にしたいだけなんじゃないですかね。「おまえも同罪だ」「おまえも死刑になれ」というメールもきましたし。一番きつかったのは、玄関のドアノブに犬の死骸がくくってあったことがありました。
開沼 それはよっぽどですね。
大山 警察を呼んでも面倒くさいことになるだろうし、そこに住めなくなったら困るから話を大きくしたくなかったので、こっそり空き地に埋めました。それは本当に鬱になりかけましたよ。
開沼 いや、そうですね。
大山 ちょっと想像を超えていましたね、その嫌がらせは。本当にその理由がわからない、目的が。犬の首をくくってあったので、僕が死刑についての活動をしとるということをわかっているんでしょうね。ただ、パソコンにメールをくれる人というのは、バッシングよりも、温かいメールのほうが多いですね。
開沼 そうでしょうね。
大山 テレビを見たという方よりも、本を読みましたっていう方からのメールが最近とても増えてきていますね。
*素直な疑問をぶつける高校生には感謝している
開沼 いろいろな経験をされてきた、裏切られたこともあるわけですよね。この人は信用できる、この人は信用できないというのは、どうやって見極めていますか?
大山 言葉にするのは難しいんですけど、最後は直感ですかね。僕は最初から敵意を持っている人間とはつるまないようにしています。あまり人と関わらないように生きてきましたから。
開沼 メディアとは?
大山 メディアに対しては疑問もないし、抵抗も特にありません。
開沼 取り上げてもらうことが大事だと。
大山 そうですね。僕の存在を知ってもらわないことには始まらないので、どういう内容の記事であっても、取り上げてもらうことには大変感謝しています。
開沼 これからも活動は続けていきますか?
大山 今後も続けていきます。学生だけではなく、大人相手にでもやりたいとは思っています。メールが来たら、快く引き受けさせてもらうという形です。
開沼 学生はどんな反応をしますか?
大山 やっぱり真剣に聞き入ってくれる方が多いと思います。そういえば、一度、京都教育大学附属高校の生徒さん20名くらいを相手に講演したことがありました。いつも講演のあとに質問コーナーを設けますが、質問の前に何でも聞いてくださいと断ります。子どもながらに、すごいことを聞いてくれるのでありがたかったですね。大人は気を遣ってなかなか聞いてきませんから。
開沼 どんな質問がありましたか?
大山 本当にズバズバ、「お母さんはどんな姿勢で浮かんでたんですか?」「お母さんがもし生き返ったら、何をしてあげたいですか?」とか、変わった質問が多かったですね。「もしもう1度会えるなら何を言いたいですか?」とか。授業の一環ではなくて、人として気になることを聞かれたなと思いました。当時の心境を中心に聞かれたので、特別な経験ができたと思いました。
*父の死刑回避を願う自分を、母は許してくれるのか
開沼 一番印象に残っている質問は?
大山 答えようがなかったのが、「もし寛人さんがお母さんの立場だったら、今の寛人さんを許すことができますか?」と。その質問が一番つらかったですね。つまり、僕が殺されたお母さんだったら、お父さんの死刑を望まない息子をどう思いますかと聞かれたんです。答えに困りました。
開沼 なるほど。何て答えましたか?
大山 「自分の都合よくは考えたくありません」と答えました。僕のお父さんに対する恨みや、死刑になってほしくない、生きて罪を償ってほしいという思いと、お母さんに対する罪悪感というのは常に平行線上にあるんです。それでワンセット、板挟みの状態です。
 お母さんがかわいそうという思いもあるし、お母さんを殺したお父さんの死刑を願わなくてごめんねという気持ちも、お父さんのことばかり相手にしている罪悪感もあります。でも、そういうものに挟まれているからこそ、心身のバランスが取れているんですよ。
 お母さんがどう思っとるのか、聞くすべはないし、わかりません。ただ、きっとお母さんは僕のことを許してくれるだろうと自分に都合よく考えちゃうと、お父さんのことだけを考えている自分になってしまいそうで、心のバランスがおかしくなります。お母さんに対する罪悪感は、これから先もずっとつきまといますし、涙が溢れるくらいつらいですね。
開沼 いろいろと真摯に話していただきありがとうございました。
大山 ありがとうございました。
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◇ 大山寛人×開沼博 対談 ③ 「死刑で罪は償えない やつれて震える父親と会って生まれた感情の変化」 
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