『世界の変化を知らない日本人』/人間の“卑小さ”を見せつけた民主党政権/最後の対米自主派、小沢一郎

2013-01-03 | 政治

『世界の変化を知らない日本人』日高義樹著 2011年5月31日第1刷 徳間書店

       

第3章 中国はアジア覇権確立に大震災を利用する
p87~
第2部 中国外相が日本の外相を嘲笑した
 「日本の外相が中国外相に会って、核戦力を削減するよう頼んだが、中国外相は嘲笑しただけだった。日本の民主党政権は、中国が日本と同じ考え方をしていないことに大きなショックを受けた」
 これはシュレジンジャー博士が私に話してくれたことである。
p88~
 この話はアメリカとヨーロッパ各国の関係者の間でまたたくまに広がってしまった。民主党政権はその幼稚な外交戦略を世界に知られることになってしまったのである。
 民主党政権が中国に対して核兵器の削減と軍事力の制限を申し入れたことは、平和主義的で国際主義的な立場からすれば当たり前で、驚くべきことではない。オバマ大統領の「核兵器をなくそう」という政治スローガンと同じだと考えれば、しごく当然の主張ともいえる。
 だが本気で中国に対して「核兵器を制限してほしい」と依頼したのだとしたら、あまりにも幼稚である。中国に対して軍事力を削減しろと求めたり、核兵器を減らせと要求したりするには力が必要であることは、国際政治の常識である。
 もともと日本の民主党の首脳たちの周りには平和主義者や国連中心主義者が多く、平和理想論が世界でまかり通るという間違った考え方を民主党指導部に吹き込み続けている。中国に核兵器の削減を申し入れた「日本の外相」も、そうした間違った考え方にもとづいて行動したのだろう。
p89~
 だが核兵器保有国にとって核戦略は、国家安全の基礎である。核兵器の削減や破棄について話し合うためにはそれ相応の力が必要である。核戦略を廃棄したり削減したりしなければ、中国の安全に関わると考えさせるだけの力を持たなくてはできないことなのである。それには日本が独自の核戦力を開発し、中国に対して核軍事力競争を挑む決意のあるところを示す必要がある。(略)
 いま中国にとって最も厄介なことが起きるとすれば、極東アジアのライバルである日本が軍事力を強化し、核兵器を持つことである。そうなれば中国の軍事的な優位が相殺されてしまう。
p90~
 日本の民主党政権が、理想的な平和主義者たちの言うことをしりぞけて、世界の現実を理解するならば、中国に対して交渉する方法がただ一つある。
 「中国が核戦力を削減しない限り、日本も核武装する」
 中国にとってこの日本の主張は安全保障上の大打撃になる。ある意味では、これまでの努力を帳消しにしてしまうものだ。(略)
 このエピソードほど民主党の持っている国際政治音痴の体質をあらわにしたものはない。他国の政策を変えるのは平和主義ではなく、力であるという単純な原則を、民主党政権は理解していない。

第5章 民主党は日米関係の歴史を壊した
p134~
 私のいるワシントンのハドソン研究所には、アメリカの情報機関で分析官をやっていた人物がいる。彼の話によると、アメリカ政府は小沢一郎はじめ民主党首脳の対中国政策と動きを綿密に監視してきた。
 「中国からの情報もあれば、アメリカ情報調査局や国家安全保障局(NSA)などからの情報もある。あらゆる情報が担当者の手許に集まっている。日本の民主党と小沢元代表が中国に接近していく動きは手にとるように明らかだった
 民主党の小沢元代表は、中国を取り込んで日中の協力体制を作り、アメリカを牽制して外交的にアメリカに対する強い立場を作ろうとした。こういった小沢元代表はじめ民主党首脳の動きは、私ですら耳にしていたのだから、多くの人々が知っていたに違いない。
 小沢元代表が「沖縄の海兵隊はいらない」と言ってみたり、日米安保条約に反対したりしているのをアメリカが苦々しく思ったのは、単に反米的な姿勢だからというだけでなく、中国と手を組んでアメリカに対抗しようとしたからである。
p135~
 小沢元代表の師ともいえる田中角栄元首相も、アメリカに対抗するために石油資源を獲得しようとしてアメリカに敗れた。田中元首相は結局、アメリカの石油メジャーと激突してしまい、ニクソン大統領とアメリカのCIAに打ち負かされてしまった。
 小沢元代表と民主党のアメリカに対する反乱は、そういった過去の出来事と比べるとあまりにも矮小である。まず小沢元代表の態度は中国と対等に手を結ぶというよりは、明らかに中国におもねっていた。民主党政権が発足した当時、長年の同盟国であるアメリカのワシントンではなく、まず北京に挨拶に行くべきだと示唆した態度などに、中国に対するあからさまな媚がよく表れている。
p142~
第2部 民主党の指導者には国家意識がない
 民主党の前原前外相は、在日韓国人から政治献金を受け、責任を追及されるや辞任して姿を消してしまった。日本ではこの問題についてあまり厳しい追及が行われていないが、国際常識から見ると、前原前外相は日本を代表する一員として決してやってはならないことをしてしまった。
 国の外交は、国の利益をまず考えて行われなければならない。外交の先には戦争があると言われるほど、時には国家の命運がかかる。ところが前原前外相は、民主党には外交を理解している者が誰もいないことを暴露してしまった。
 前原前外相は、外国籍の人から献金を受けるというタブーを犯しただけでなく、民間企業のセールスマンをやって、アメリカの人々をあきれさせたJR東海の代表者と共にフロリダ州マイアミを訪れた折、フロリダ州当局に対して、JR東海の新幹線システムを受け入れてフロリダに新幹線を作るよう働きかけたのだ。
p146~
 外務大臣クラスの政治家が、日本のビジネスや、ビジネスプログラムを外国に売るために努力することは、日本経済のためという意味では当たり前である。
 かつてフランスのドゴール大統領に「トランジスタラジオのセールスマン」と揶揄された総理大臣がいた。国民所得倍増計画を標榜した池田勇人である。彼はトランジスタラジオをおみやげに持っていっただけだが、もし売り込もうとしたとすれば、日本のビジネスそのものだったろう。1つの特定商品ではない。
 ところが前原前外相は1企業であるJR東海の新幹線の売り込みに出かけた。この行為は間違っているだけでなく、モラルの点からも許されない。前原前外相はこうしたことをあたかも当然のごとく行い、反省もしていない。
 こうした姿勢は、彼が政治家として国家の代表であることを完全に忘れ去ってしまっていることをよく示している。
p146~
 前原前外相は若くして民主党政権の代表的な立場についたが、その立場にふさわしい経験がない。とくに外務大臣という仕事にふさわしい教育を受けていない。
 一般的にアメリカでは、政治家がしかるべきポストに就くためにはその立場にふさわしい教育や経験が必要とされる。財務長官や商務長官に任命された人々を見ると、自分で会社を興して成功した人も多い。
「事業に成功した人は、自分の会社を大きくするために全力を挙げるが、同時にほかの会社を思うことも大事であることを知っている」
 全米商工会議所のスタッフの一人がこう言っているが、前原前外相は、政治家としてある程度の訓練を経てきたのであろうが、ビジネスマンとしての教育や経験はない。前原前外相の趣味は鉄道だが、だからといって大臣という立場を利用して、1つの会社を助けることは間違っている。
 これまで自民党の陣笠クラスの政治家が企業を助けたことはままあるが、プライベートな会社を、自民党やその代表が助けたという例はほとんどない。これは、政治家は国家を代表する職務であり、企業は私的なものであるという区別があるのを理解しているからだ。
 こうしたことがわからない前原前外相は結局、国家とは何であるかという認識を持っていない、つまり国家意識が欠如していると言わざるをえない。
p147~
 国家意識のない政治家は、国際社会では存続することが許されない。世界は国家と国家の関係によって成り立っている。総理大臣といえども、あるいは末端の官僚といえども、あくまでも形の上では国家を代表する一員であり、すべての行動は国家意識に基づいたものでなければならない。
 前原前外相だけではなく、民主党の政治家たちはこういった国際常識に欠けている上、民間企業の責任者としても行動したことがないため、国家との関わりがきわめて薄い。
 アメリカで1企業のために働く人々は、国家公務員や議員ではなく、コンサルタントやロビイストである。私は、ワシントンで大勢のコンサルタントやロビイストと知り合いになったが、軍隊に加わり戦争に参加したことのある人が驚くほど多い。
「国の安全のために働いてきた」そうした愛国的な気持がビジネス活動につながっている。彼等は1企業のビジネス活動を援助して、外国政府と交渉することも多いが、あくまでも民間人として活動している。
 ところが前原前外相は、ひたすら政治活動だけをつづけ、まわりあわせで外務大臣というポストに就いた。彼は国家全体の利益を考えることなく、1企業のセールスマンになってしまったのである。
 前原前外相の行為に象徴される民主党政権のこうした体質を、アメリカ政府の関係者もよく心得ている。
p148~
 民主党の政治家たちが世界から受け入れられない大きな理由の1つが、彼らの国家意識のなさなのである。
p150~
 いずれにしても国民の命運を定める重大な仕事をする政権は、その責任の重さゆえに、簡単には手にすることができない。ところが日本の民主党政権は、ある意味では何の努力もしないまま政権を手にした。自民党政権が自壊してしまったからだ。
 自民党政権はあまりにも長い間権力の座にあったためにすっかり腐敗して、国民の信頼を失ってしまった。
p151~
 自民党の崩壊は突然に起きた。まるでマスコミに煽られるように国民の大多数が自民党政権を見放し、民主党を選んだ。つまり、このどうしようもなく無責任な民主党政権を作ったのは、まぎれもなく日本国民なのである。
 これは日本の民主主義が他者から与えられたもので、自分たちの手で勝ち取ったものではないからである。日本の人々はいまだに民主主義に慣れていない。そのため政治に対する責任感がない。自分の持っている一票の重みが分かっていない。
 民主党政権が生まれたのは劇場型政治の結果であると言った人が大勢いた。国民が劇場の観客や芝居のファンのような気持ちで政府を選んだという意味だが、これは日本人の民主化が間違ったプロセスで行われたからである。
 日本の民主主義は、第2次大戦に日本が負けた後、占領軍であるマッカーサー司令部が日本国民を統治するために便宜的に与えたシステムである。政治家を選ぶ投票権を簡単に手にした日本の人々は本来、投票権というものが、骨身を削る苦労の末に手に入れるものだということをまったく知らない。
p152~
 アメリカの政治を見ていると、民主主義による選挙とは、それぞれの人のモノの考え方と利益のせめぎあいである。つまり自らの利益を、政治的に確定するために投票を行う。
 アメリカという国は実にさまざまな人々で成り立っている。すでに地位を確立した途方もなく豊かな人々、自分の家を持つというアメリカン・ドリームを実現した人々、アメリカで生まれながら十分な教育も受けられず、その結果、何代にもわたって貧しいままの黒人、外国からやって来て、懸命に働いてようやく帰化が認められ選挙権を得た人々。
 こういった人々が自分の利益を守るために投票し、政府を作るのである。人々の投票によって政治は大きく変わり、オバマ大統領のようにアメリカ生まれかどうか分からないと疑われている政治家が大統領になることもある。
 アメリカ国民は、劇場の観客や俳優のファンではない。選挙というのは、人気投票では決してない。このため、選ばれる政治家は真剣に国のことを考える人々であり、国のために仕事を行う人でなければならない。
p153~
 民主党の政治家が口にすることが無責任で、前に言ったことを平気で打ち消したり、嘘を言ったりするのは、投票した人々と同様、民主主義を理解していないからだろう。だから罪の意識がないのである。
 こういったやり方が現在の日本の政治で許されているのは、劇場型政治などという言葉を軽々と使う日本のマスコミの無責任さにも罪がある。日本のマスコミは、いまや芸能紙やスポーツ紙のようなつもりで政治を伝えている。
 外国の人々は簡単に前言を翻す民主党の政治家を軽蔑するだけでなく受け入れようとしていない。
 世界で共通しているのは、政治家の言葉はいったん出したら引っ込めることはできないということである。
p160~
 くり返すが、民主党の政治家たちには国家意識もない。だから外国人に選挙権を与えようと考え、外国人から選挙資金を受け取っている。全米商工会議所のトム・ドナヒュー会長がこう言ったことがある。(略)
「外国人に選挙権を与えれば、日本が外国の利益に動かされる危険がある。民主党の政治家にはそれが分かっていないのか。おかしなことだ」
 このドナヒュー会長の言葉は世界の常識である。外国人から政治献金を受け取ることができないのは、国を守るための当然のしくみなのである。菅首相が外国人から献金を受けながら、返金してそのまま総理大臣の地位にとどまれること自体、世界の常識に反している。
 ちなみにアメリカでは、アメリカに帰化しただけではアメリカの大統領になることはできない。アメリカで生まれたアメリカ人でなければ、大統領に選ばれる資格はないのである。
 キッシンジャー博士もシュワルツネッガー前カリフォルニア州知事もアメリカ人以上にアメリカ的であり、アメリカのために働いている。だが大統領になることは出来ない。この原則は、国家が国家として存続するための最低限の原則である。理由のいかんを問わず外国人は国を動かしてはならないのである。
 民主党が政権をにぎっている現在、我々はこの問題について、じっくり考えてみる必要があるのではないか。この問題は単に外国人排斥とか、在日外国人に対する偏見といった面から考えてはならない。日本が国家として存続するための最低限の条件について考えなければならない。 *強調(太字・着色)は来栖
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人間の“卑小さ”を見た民主政権
年頭にあたり 文芸批評家、都留文科大学教授・新保祐司
産経新聞2013.1.3 03:08[正論]
 ■強靱な頭脳と精神こそ国難救う
 思い返せば、3年余の民主党政権下の日本に生きていることは、実に不愉快であった。「戦後民主主義」の日本に生活していることがそもそも不愉快なことであり、だから、「戦後レジームからの脱却」を強く願っている一人なのだが、この3年余の期間はその不愉快さも極まったかの感があった。
 ≪日本の「常識」の大道を行く≫
 不愉快さのよって来る原因は、数え上げればきりがないが、「事業仕分け」とか「近いうち」といった茶番劇もさることながら、根本的には人間の卑小さばかりを見せつけられ、人間の偉大さや高貴さを示す事象が実に稀(まれ)であったことである。日本人が日本に生きていることに誇りを感じさせることがなかった。そして、この民主党政権を選択したのが日本人自身であることを思えば、ほとんど国民の現状に絶望しそうになった。
 だが、待ちに待った総選挙で安倍晋三自民党が大勝したことで、何とか絶望しきることがなくてすんだ。これでうんざりすることも減っていくことを期待している。
 安倍政権に望むことは、あれこれ具体的な政策というよりも前に、日本の歴史と伝統に基づく日本人の考え方の「常識」という大道を歩むことである。憲法改正も安全保障も経済政策も教育問題も、すべて日本人の「常識」から発想すればいいのである。逆にいえば、この3年余りの間ずるずると続いた政権が、いかに非常識な考え方を振り回していたことか、ということである。亡国の悪夢を見ていたような気がする。
 近代日本の代表的基督者、内村鑑三は、「武士道と基督教」の中で「我等は人生の大抵の問題は武士道を以て解決する、正直なる事、高潔なる事、寛大なる事、約束を守る事、借金せざる事、逃げる敵を遂わざる事、人の窮境に陥るを見て喜ばざる事、是等の事に就て基督教を煩わすの必要はない、我等は祖先伝来の武士道に依り是等の問題を解決して誤らないのである」と書いた。政治は「人生の大抵の問題」の領域を扱うものである。そして、日本人の「常識」とは、「祖先伝来の武士道」を基盤としたものに他ならない。
 ≪「祖先伝来の武士道」今再び≫
 「正直」「高潔」「寛大」といった徳が今日どのくらい失われてしまっているか、「約束を守る事」ということが「近いうち」という言葉をめぐる騒動でいかに蔑(ないがし)ろにされたか、ということを思えば、「祖先伝来の武士道」に依って生きることも容易ではないのである。「借金せざる事」という禁欲の欠如が国の財政悪化の根本にあるわけだし、「人の窮境に陥るを見て」喜ぶ卑劣な心理が、大方のメディアを成り立たせている。 安倍自民党の公約に「国土強靱(きょうじん)化」というのがあるが、確かに大震災への備えの必要やトンネル崩落事故などに露呈したインフラの老朽化は危機的な問題であり、それを解決していくために「国土」の「強靱化」は不可欠であろう。
 それにしても、「強靱」という表現はいい言葉である。強大や強盛をモットーとする国家と比べて、「強靱」という言葉には引き締まった語感がある。強大や強盛には張りぼて的な虚勢の悲喜劇が感じられるが、「強靱」には自らに厳しい節制がこめられている。
 昨年末の政権交代により、今年の日本は新たな門出のときを迎えるが、その重大な節目にあたって必要なのは、日本人の精神の「強靱化」である。尖閣諸島や竹島、あるいは北方四島といった領土問題や他の外交・安全保障の問題のような、「戦後民主主義」の安逸の中で眼をそらしてきた問題と堂々とぶつかる「強靱」な精神であり、本質的な議論を避けない「強靱」な思考力である。
 ≪小利口さではもはや通用せぬ≫
 昨年5月に桶谷秀昭氏との対談『歴史精神の再建』を上梓(じょうし)したが、その中で氏は新感覚派の横光利一が「今文壇で一番頭の悪いのが中野重治だ」といい、それに対して中野が「俺の頭は悪いかもしれないが、強い頭だ」とある小説に書いたということを語られた。
 「強い頭」、これこそ今後の日本人に必要なものである。教育改革の要諦も、ここにある。戦後の日本の教育は、「いい頭」に価値を置き、「強い頭」を持った人間を育成することを怠ってきた。自分で考えず、ただ回転の速い、整理能力の高い、要領のいい、といった頭を「いい頭」としてきた。
 しかし、こういう頭は、時代の風向きに敏感なだけの小利口な頭に過ぎない。戦後世界の中で小利口に立ちまわってきた日本も、もうそれでは通用しなくなった。いつの時代にもいる「新感覚派」的な小利口な人間たちが、日本をこんなありさまに引きずり落としてしまったのである。
 日本を再生させて内外の国難に取り組んでいけるのは「強い頭」に他ならない。「強い頭」とは、人間と世界の過酷な現実を直視する水平的な勇気を持つにとどまらず、その現実を貫く垂直的な希望を抱いているものだからである。(しんぽ ゆうじ)


『アメリカに潰された政治家たち』孫崎亨著(小学館刊)2012年9月29日初版第1刷発行 

       

p93
第2章 最後の対米自主派、小沢一郎

角栄に学んだ小沢の「第七艦隊発言」
 私は情報局が人材のリクルートのために製作したプロモーション映像を見たことがあるのですが、そのなかで「我々は軍事だけでなく、政治的な分野でも諜報活動を行っている」と活動を紹介し、オサマ・ビン・ラディンの映像などを流していました。そういった一連の映像や画像のなかに、小沢一郎氏の写真が混ざっていて、私はハッとしました。
 彼らにとっては、小沢一郎に工作を仕掛けているということなど、隠す必要がないほど当たり前のことなのです。
p94~
 明確にアメリカのターゲットに据えられている小沢一郎とはどんな人物なのか、簡単におさらいしておきましょう。
 小沢一郎は27歳という若さで衆議員議員に初当選した後、田中派に所属し、田中角栄の薫陶を受けて政界を歩んできました。しかし、1985年に田中角栄とは袂を分かち、竹下登、金丸信らと創政会を結成。のちに経世会(竹下派)として独立しました。
 1989年に成立した海部俊樹内閣では、47歳で自民党幹事長に就任しています。おそらく小沢一郎という人物をアメリカが捕択、意識し始めたのはこの頃だと考えられます。1990年にサダム・フセインがクウェートに軍事侵攻し、国連が多国籍軍の派遣を決定して翌年1月に湾岸戦争が始まりました。
 ここでブッシュ(父)大統領は日本に対して、湾岸戦争に対する支援を求めてきます。
 アメリカ側は非武装に近い形でもいいので自衛隊を出すことを求めましたが、日本の憲法の規定では、海外への派兵は認められないとする解釈が一般的で、これを拒否します。アメリカは人を出せないのなら金を出せとばかり、資金提供を要請し、日本は言われるまま、計130億ドル(紛争周辺国に対する20億㌦の経済援助を含む)もの巨額の資金提供を行うことになります。
p95~
 当時の外務次官、栗山尚一の証言(『栗山尚一オーラルヒストリー』)では、この資金要請について「これは橋本大蔵大臣とブレディ財務長官の間で決まった。積算根拠はとくになかった」とされています。何に使うかも限定せず、言われるまま130億㌦ものお金を出しているのです。
 橋本は渡米前に小沢に相談していました。小沢は2001年10月16日の毎日新聞のインタビューでそのときのやりとりを明かしております。
「出し渋ったら日米関係は大変なことになる。いくらでも引き受けてこい。責任は私が持つ」
 この莫大な資金負担を決定したのが、実は小沢一郎でした。当時、小沢はペルシャ湾に自衛隊を派遣する方法を模索し、実際に「国連平和協力法案」も提出しています(審議未了で廃案)。
 “ミスター外圧”との異名をもつ対日強硬派のマイケル・アマコスト駐日大使は、お飾りに近かった海部俊樹首相を飛び越して、小沢一郎と直接協議することも多かったのです。小沢一郎が「剛腕」と呼ばれるようになったのはこの頃からです。
p96~
 この時代の小沢一郎は、はっきり言えば“アメリカの走狗”と呼んでもいい状態で、アメリカ側も小沢を高く評価していたはずです。ニコラス・ブレディ財務長官の130億㌦もの資金要請に、あっさりと応じただけでなく、日米構造協議でも日本の公共投資を10年間で430兆円とすることで妥結させ、その“剛腕”ぶりはアメリカにとっても頼もしく映ったことでしょう。
 田中派の番頭だった小沢は、田中角栄がアメリカに逆らって政治生命を絶たれていく様を目の当たりにしています。ゆえに、田中角栄から離れて、「対米追随」を進んできたものと思われます。
 しかし、田中角栄の「対米自主」の遺伝子は、小沢一郎のなかに埋め込まれていました。
 1993年6月18日、羽田・小沢派らが造反により宮沢内閣不信任案が可決され、宮沢喜一首相は衆議員を解散しました。それを機に、自民党を離党して新生党を結成し、8党派連立の細川護煕内閣を誕生させました。その後は、新進党、自由党と新党を結成しながら、03年に民主党に合流します。(略)
p97~
 外交政策についても、対米従属から、中国、韓国、台湾などアジア諸国との連携を強めるアジア外交への転換を主張するようになりました。「国連中心主義」を基本路線とするのもこのころです。
 小沢一郎は、09年2月24日に奈良県香芝市で「米国もこの時代に前線に部隊を置いておく意味はあまりない。軍事戦略的に米国の極東におけるプレゼンスは第7艦隊で十分だ。あとは日本が自らの安全保障と極東での役割をしっかり担っていくことで話がつくと思う。米国に唯々諾々と従うのではなく、私たちもきちんとした世界戦略を持ち、少なくとも日本に関係する事柄についてはもっと役割を分担すべきだ。そうすれば米国の役割は減る」と記者団に語っています。
 つまり沖縄の在日米軍は不要だと明言したわけです。
 この発言を、朝日、読売、毎日など新聞各紙は一斉に報じます。『共同通信』(09年2月25日)の配信記事「米総領事『分かっていない』と批判 小沢氏発言で」では、米国のケビン・メア駐沖縄総領事が記者会見で、「『極東における安全保障の環境は甘くない。空軍や海兵隊などの必要性を分かっていない』と批判し、陸・空軍や海兵隊も含めた即応態勢維持の必要性を強調した」と伝えています。アメリカ側の主張を無批判に垂れ流しているのです。
p98~
 この発言が決定打になったのでしょう。非常に有能だと高く評価していた政治家が、アメリカから離れを起しつつあることに、アメリカは警戒し、行動を起こします。
 発言から1か月も経っていない2009年3月3日、小沢一郎の資金管理団体「陸山会」の会計責任者で公設秘書も務める大久保隆規と、西松建設社長の國澤幹雄ほかが、政治資金規正法違反で逮捕される事件が起きたのです。小沢の公設秘書が西松建設から02年からの4年間で3500万円の献金を受け取ってきたが、虚偽の記載をしたという容疑です。
 しかし、考えてもみてください。実際の献金は昨日今日行われたわけではなく、3年以上も前の話です。第7艦隊発言の後にたまたま検察が情報をつかんだのでしょうか。私にはとてもそうは思えません。
 アメリカの諜報機関のやり口は、情報をつかんだら、いつでも切れるカードとしてストックしておくというものです。ここぞというときに検察にリークすればいいのです。
 この事件により、小沢一郎は民主党代表を辞任することになります。しかし、小沢は後継代表に鳩山由紀夫を担ぎ出します。選挙にはやたらと強いのが小沢であり、09年9月の総選挙では“政権交代”の風もあり、民主党を圧勝させ、鳩山由紀夫政権を誕生させます。ここで小沢は民主党幹事長に就任しました。

p99~
小沢裁判とロッキード事件の酷似
 ここから小沢はアメリカに対して真っ向から反撃に出ます。
 鳩山と小沢は、政権発足とともに「東アジア共同体構想」を打ち出します。 対米従属から脱却し、成長著しい東アジアに外交の軸足を移すことを堂々と宣言したのです。さらに、小沢は同年12月、民主党議員143名と一般参加者483名という大訪中団を引き連れて、中国の胡錦濤主席を訪問。宮内庁に働きかけて習近平副主席と天皇陛下の会見もセッティングしました。(略)
 しかし、前章で述べたとおり、「在日米軍基地の削減」と「対中関係で先行すること」はアメリカの“虎の尾”です。これで怒らないはずがないのです。
 その後、小沢政治資金問題は異様な経緯を辿っていきます。
p100~
 事件の概要は煩雑で、新聞等でもさんざん報道されてきましたので、ここでは触れませんが、私が異様だと感じたのは、検察側が10年2月に証拠不十分で小沢を不起訴処分にしていることです。結局、起訴できなかったのです。もちろん、法律上は「十分な嫌疑があったので逮捕して、捜査しましたが、結局不起訴になりました」というのは問題ないのかもしれません。
 しかし、検察が民主党の党代表だった小沢の秘書を逮捕したことで、小沢は党代表を辞任せざるをえなくなったのです。この逮捕がなければ、民主党から出た最初の首相が鳩山由紀夫ではなく、小沢一郎になっていた可能性が極めて高かったと言えます。小沢首相の誕生を検察が妨害したということで、政治に対して検察がここまで介入するのは、許されることではありません。
 小沢は当初から「国策捜査だ」「不公正な国家権力、検察権力の行使である」と批判してきましたが、現実にその通りだったのです。
 この事件には、もう1つ不可解な点があります。検察が捜査しても証拠不十分だったため不起訴になった後、東京第5検察審査会が審査員11人の全会一致で「起訴相当」を議決。検察は再度捜査しましたが、起訴できるだけの証拠を集められず、再び不起訴処分とします。それに対して検察審査会は2度目の審査を実施し「起訴相当」と議決し、最終的に「強制起訴」にしているところです。
p101~
 検察は起訴できるだけの決定的な証拠をまったくあげられなかったにもかかわらず、マスコミによる印象操作で、無理やり起訴したとの感が否めないのです。これではまるで、中世の魔女裁判のようなものです。
 ここで思い出されるのは、やはり田中角栄のロッキード事件裁判です。当時、検察は司法取引による嘱託尋問という、日本の法律では規定されていない方法で得た供述を証拠として提出し、裁判所はそれを採用して田中角栄に有罪判決を出しました。超法規的措置によって田中は政界から葬られたのです。(略)

東京地検特捜部とアメリカ
p102~
 実は東京地検特捜部は、歴史的にアメリカと深い関わりをもっています。1947年の米軍による占領時代に発足した「隠匿退蔵物資事件捜査部」という組織が東京地検特捜部の前身です。当時は旧日本軍が貯蔵していた莫大な資材がさまざまな形で横流しされ、行方不明になっていたので、GHQの管理下で隠された物資を探し出す部署として設置されました。つまり、もともと日本のものだった「お宝」を探し出してGHQに献上する捜査機関が前身なのです。
 東京地検特捜部とアメリカお関係は、占領が終わった後も続いていたと考えるのが妥当です。たとえば、過去の東京地検特捜部長には、布施健という検察官がいて、ゾルゲ事件の担当検事を務めたことで有名になりました。
 ゾルゲ事件とは(略)
p103~
 さらに布施は、一部の歴史家が米軍の関与を示唆している下山事件(略)
 他にも、東京地検特捜部のエリートのなかには、アメリカと縁の深い人物がいます。
 ロッキード事件でコーチャンに対する嘱託尋問を担当した堀田勉は、在米日本大使館の一等書記官として勤務していた経験があります。また、西松建設事件・陸山会事件を担当した佐久間達哉・東京地検特捜部長(当時)も同様に、在米大使館の一等書記官として勤務しています。
 この佐久間部長は、西松建設事件の捜査報告書で小沢の関与を疑わせる部分にアンダーラインを引くなど大幅に加筆していたことが明らかになり、問題になっています。
 この一連の小沢事件は、ほぼ確実に首相になっていた政治家を、検察とマスコミが結託して激しい攻撃を加えて失脚させた事件と言えます。
 『文藝春秋』11年2月号で、アーミテージ元国務副長官は、「小沢氏に関しては、今は反米と思わざるを得ない。いうなれば、ペテン師。日本の将来を“中国の善意”に預けようとしている」と激しく非難しています。
p104~
 アメリカにとっては、自主自立を目指す政治家は「日本にいらない」のです。必要なのはしっぽを振って言いなりになる政治家だけです。
 小沢が陥れられた構図は、田中角栄のロッキード事件のときとまったく同じです。アメリカは最初は優秀な政治家として高く評価していても、敵に回ったと判断した瞬間、あらゆる手を尽くして総攻撃を仕掛け、たたき潰すのです。小沢一郎も、結局は田中と同じ轍を踏み、アメリカに潰されたのです。
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