日弁連の「死刑廃止」宣言・・・全ての弁護士が加入を義務付けられた強制加入団体である日弁連が、このような特定の思想・立場を表明することが許されるのか?

2016-10-06 | 死刑/重刑/生命犯

 産経ニュース 2016.10.5 21:55更新
【熱血弁護士 堀内恭彦の一筆両断】容認できない 日弁連の「死刑廃止」宣言
 「死刑」制度は廃止すべきか?賛否両論あるが、内閣府の世論調査によれば、「死刑はやむを得ない」との回答は約8割もの大多数に上り、「廃止すべき」の1割を大きく上回っている。これが現在の日本国民の率直な民意といえるだろう。
 これに対して、日本弁護士連合会(日弁連)は、今月7日、福井市で開催される「人権擁護大会」において、明確に「死刑廃止」を宣言する予定である。2020年までに死刑を廃止し、代わりに「終身刑」の導入を提言するという。「国際社会では死刑廃止が大勢となっている」「冤(えん)罪(ざい)で死刑が執行されると取り返しがつかない」などが死刑廃止の主な理由である。
 しかし、あまり説得力はない。自国の刑罰をどう定めるかはその国の歴史・文化・国民感情に根差すものであって、日本には日本独自の「けじめ」をつける刑罰観がある。ことさらに国際社会に同調する必要はない。
 「冤罪」についても、神ならぬ人間が行う裁判である以上、冤罪の可能性がゼロになることはあり得ない。死刑囚だけに冤罪があるわけではない。また、「精密司法」と呼ばれる慎重かつ緻密な刑事裁判手続を誇る日本と、独裁国家や「逮捕、即死刑」のような未熟な手続・人権概念しかない国々とを同列に論じることもできない。
 さらに、犯罪被害者の遺族の多くは、「加害者に死をもって償ってほしい」「被害者の無念に報い、遺族がけじめをつけるためにも死刑は必要である」と訴え続けている。このような「被害者・遺族の人権」の視点は不可欠である。
 かように賛否両論ある「死刑」について、議論すること自体は大いに結構なことだと思う。しかし、問題は、全ての弁護士が加入を義務付けられた強制加入団体である日弁連が、このような特定の思想・立場を表明することが許されるのか?ということである。
 死刑に対する考え方は、個人の思想・良心や人生観に深く関わる問題であり、そもそも、弁護士自治や弁護士業務とは無関係な「目的外の行為」である。「死刑賛成」という弁護士も多数いるわけだから、そのような個人の思想・良心に関わる事柄について、あたかも全ての弁護士が「死刑廃止」を求めているかのような宣言を出すべきではない。どうしても「死刑廃止」を主張したいのであれば、強制加入団体としての宣言ではなく、任意で賛同者を集めてやるべきである。「安保法制反対」「脱原発」などの会長声明もしかりである。
 しかも、この「人権擁護大会」は、日弁連のイベントとして毎年開催されてはいるものの、ほとんどの弁護士は関心がないため、参加者が1千人に満たないこともある。全国約3万7千人の弁護士のうちわずか数%に過ぎない。さらには、参加できない場合も委任状による議決権行使が認められていないため、開催地(昨年は千葉、一昨年は函館)に足を運んだ人しか意思表示ができない。したがって、今回の「死刑廃止」宣言も、ごくわずかな一部の弁護士による意見表明でしかないのである。
 このような「弁護士自治」の矩(のり)を踰(こ)えた、特定思想に偏った宣言や会長声明を続けていれば、「弁護士会」という組織そのものに対する国民の信頼は失われていくであろう。日弁連は、そのことに思いを致すべきである。
 【プロフィール】 堀内 恭彦(ほりうち・やすひこ)
 昭和40年、福岡市生まれ。福岡県立修猷館高校、九州大学法学部卒。弁護士法人堀内恭彦法律事務所代表。企業法務を中心に民事介入暴力対策、不当要求対策、企業防衛に詳しい。九州弁護士会連合会民事介入暴力対策委員会委員長などを歴任。日本の伝統と文化を守る「創の会」世話人。趣味はラグビー。

 産経ニュース 2016.10.3 23:28更新
「一方的な多数決、許されない」「正義の押し売り」 波紋広げる日弁連の「死刑廃止」宣言案…被害者支援の弁護士らが反対声明
 日本弁護士連合会(日弁連)が7日に福井市で開かれる「人権擁護大会」に「平成32年までに死刑制度の廃止を目指す」とする宣言案を提出することを受け、犯罪被害者支援に取り組む弁護士らが3日、会見し、「個々の弁護士の思想・良心の自由を侵害した宣言で、被害者の人権への配慮もない」として、採択に反対する声明を発表した。
 宣言案は、32年までに死刑制度を廃止し、終身刑などの導入を検討するよう求めている。大会に出席した弁護士の過半数が賛成すれば、宣言案が採択される。
 声明を出したのは「犯罪被害者支援弁護士フォーラム」。死刑制度については弁護士の中でも多様な意見があり、全弁護士が加入を義務付けられた日弁連が死刑廃止を表明することは「強制加入団体として許される範囲を超えている」と指摘。「死刑制度を維持するかどうかは、国民一人一人が価値観に従って決めるべきだ」としている。
 会見で、高橋正人弁護士は「任意団体だったら脱会の自由があるので、何を決議しようが思想・良心の自由に対する侵害にはならないが、われわれは脱会すると弁護士活動ができなくなる」と説明。「強制加入団体で、こういう思想・良心に関わることを多数決で決めることは、思想・良心の自由に対する侵害だ」と批判した。
 日弁連は27年に、死刑求刑が予想される事件の弁護活動について会員向け手引を作成し、否認事件などでは被害者が被告に質問できる被害者参加制度に反対することなどを盛り込んだ。高橋弁護士は、手引に続いて今回の宣言案が出されることについて、「被害者に対する重大な人権侵害。一方的に多数決で決めることは許されない」と話した。
 「弁護士会として意見を言うのであれば、少なくとも弁護士の何%が賛成していて、何%が反対しているのかを示すべきだ」と話すのは米田龍玄弁護士。「大多数の弁護士が賛成しているかどうかさえ分からない意見を全弁護士の意見であるかのように宣言するというのは、極めて方法として不適切だ」と指摘した。
 山崎勇人弁護士は「死刑を望む被害者の苦しみを想像できていない。彼らは死刑廃止が正義だと思っているのかもしれないが、そうでない人もいる。日弁連がやろうとしていることは正義の押し売りに近い」と話した。
 また、宣言案が採択された場合の影響について、山田広弁護士は「被害者が『自分が加害者に死刑を希望すること自体が世間とずれているのだろうか』と考えるなど、被害感情が萎縮する可能性がある」と懸念した。

 ◎上記事は[産経新聞]からの転載・引用です  *強調(太字・着色)は来栖 
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日弁連、「死刑廃止」宣言案提出へ 2016年10月7日の「人権擁護大会」に
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