「死刑で遺族 変わらぬ」松本サリン事件河野義行さん「麻原さんの死刑には反対」

2008-08-12 | オウム真理教事件

妻の死にも なお「反対」
 1994年に起きた松本サリン事件で5日死亡した河野澄子さん(60)=長野県松本市=を献身的に介護し続けた夫の義行さん(58)が本誌のインタビューに応じ、事件を起こしたオウム真理教(アレフに改名)の麻原彰晃=本名・松本智津夫=死刑囚らに対する極刑を望んでいないとの考えをあらためて明らかにした。(坪井千隼)
 澄子さんの死去で、同事件の死者が8人となり、麻原死刑囚の刑執行が早まるとの見方がある。これに対し義行さんは「私は死刑制度そのものに反対で、麻原さんの死刑にも反対。『命は何よりも重い』と言いながら、国家が人の命を奪っていいはずがない」と述べ、死刑執行に反対の姿勢を明確にした。
 義行さんは「最近、大量に死刑執行されているが殺人事件は減っておらず、抑止力にはなっていない」と指摘。「死刑執行で遺族の心が軽くなったり晴れ晴れしたりするのだろうか。恨みの対象がなくなるだけで、私は変わらないと思う」と自らの心境を語った。
 松本サリン事件が社会に与えた影響については「危機管理の面で警鐘を鳴らし、犯罪被害者の処遇改善の大きなきっかけとなった」と説明。「2004年に成立した犯罪被害者等基本法は、被害回復が国や自治体の責務としてうたわれた」とし、今後の課題は「誰もが犯罪被害者になる可能性があり、被害者の経済的救済にあてる保険のような仕組みが必要だ」と述べた。

 同事件では当初、義行さん自身が容疑者扱いされ、警察の捜査やマスコミ報道などに大きな教訓を残した。来年から始まる裁判員制度について「裁判員になる市民が、自白が(強制でなく)任意かどうかを判断する必要があり、取調べの可視化(録音・録画)の論議がいっそう高まるのではないか」との見方を示した。(中日新聞2008/08/12)
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