貞観法 和らぎ通信

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軍荼利明王のこと その2

2016-08-13 11:31:33 | 軍荼利明王のこと

我が国における軍荼利明王像の造立は、平安時代の弘仁2年(823年)嵯峨天皇より京都・東寺を下賜された空海が、その講堂内の須弥壇に密教世界の諸尊21体(中央の五智如来・右の五大菩薩・左に五大明王・東西端に梵天・帝釈天。さらに四隅に四天王)の中の五大明王の一つとして作られたものが最初であるとされ、こられの仏像群の構成は「立体曼荼羅」と呼ばれ、それぞれ五体の如来・菩薩・明王はその姿は変わってはいるものの互いに関連づいているとされる。

この如来・菩薩・明王の三種類の性質によって分類する仏身観を指して、密教では「三輪身(さんんりんじん)」と呼んで、自性輪身(真理自性の相である如来)・正法輪身(教化指導の為の相である菩薩)・教令輪身(調伏・降伏の為の忿怒の相である明王)の三つから成‏り立っている。



「軍荼利明王」をこの「三輪身」に照らすと、自性輪身(如来姿)の「宝生如来」・正法輪身(菩薩姿)の「金剛宝菩薩(金剛蔵王・虚空蔵)」と一連の仏像ということになる。

したがって、軍荼利明王の素性をより深く知るのには、その自性輪身である「宝生如来」や正法輪身である金剛宝菩薩(金剛蔵王・虚空蔵)」についても探って見ることが有効な手立てであろうと考えられるのだが、自性輪身の「宝生如来」と聞かされてもあまり馴染みを感じることが出来ないのは、この仏像が単尊で造られていたり、また信仰の対象になっていたりしていないからかも知れないが、「宝生如来」の名が書いて字の如しで、「宝より(が)生れる」と書かれることに私の気は惹かされる。


一方、正法輪身の「金剛宝菩薩」についても宝生如来と同様に耳に馴染みのない仏像の名と思えるのだが、これを顕教の名で云うと「虚空蔵菩薩」ということになるそうで、こちらは遠近の寺に祀られていたり山の名前になっていることもあって多くの機会に耳目にすることが出来るから、親近感が持てる仏像と言えるだろうか。

虚空蔵菩薩と聞かされて、私が直ぐにと思い起こされるのは空海が室戸の岩窟で「虚空蔵求聞持法」を修していると、その口にと物凄い勢いで「明星=金星」が飛び込んで来るという説話であるが(空海入定1150年を記念して製作された映画の一シーンにもなっていた)、この虚空蔵求聞持法自体は空海の時代よりも古く奈良時代の養老二年(718年)に唐より帰朝した道慈によって我が国に伝えられたとされる。

この菩薩名の由来は梵語の「アカーシャガルバ」にあり、アカーシャは「虚空」ガルバは「母胎」を表し、広大な宇宙のように無限な慈悲と智恵とを持ち、そのために智恵や知識、記憶といった面で利益をもたらす菩薩であるのだと云う。

成る程、「虚空蔵求聞法」を修法すると大変な暗記力や智恵を授かれるとされるといった理由も頷けられたのだが、それでは虚空蔵菩薩を念じながら、その真言を百万遍唱えた空海の口にと飛び込んで来たという話にある虚空蔵菩薩と「明星(金星)」との関連とは、どんな背景があっての上で成り立ったのだろうかという問いを抱かされるが、どうも、その答えはインド神話のスーリヤ・チャンドラ・シュクラという三柱の星神が大乗仏教に取り入れられたことに縁っているようで、これを仏教では「三光天子(日天子・月天子・明星天子)」と呼び、宝光天子(日天子)は観世音菩薩。名月天子(月天子)は勢至菩薩。そして、普光天子(明星天子)は虚空蔵菩薩の化身であるとされたことがその起こりのようだ。
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