答えは現場にあり!技術屋日記

還暦過ぎの土木技術者のオジさんが、悪戦苦闘七転八倒で生きる日々の泣き笑いをつづるブログ。

ラッキー?

2024年03月05日 | ちょっと考えたこと

 

 去年の夏に開かれ、ぼくもその発表者兼パネリストだった、ある災害復旧関連のシンポジウムでのことだ。もちろん主催は建設関連の団体であり、聴講者もまた業界の人たちばかりだった。

 東北沿岸部から招かれた建設会社の幹部が、4つあるうちのひとつの事例発表を受けもってくれた。となるともちろん事例は、東日本大震災のことで、発災時またその後に、地元の建設業者が何を考え、どのようなことをしたのかについてを、その当事者として語ってくれた。

 そのなかでもっとも印象的な言葉が「ラッキーだった」というものだった。彼の事例発表のなかにあった、従業員が被災しなかったり協力会社が機能したりしたという発言から、パネルディスカッションの進行役が「そういう意味ではラッキーだった?」と問うたのを受け、「たしかに」と言った彼が、その理由として述べたのは、自社直営班にチリ地震津波での経験値があり、みんなで協力して対応できたからというものだった。

 それはちがうだろう。と思ったぼくは、自分に発言の機会が与えられるや、その話を持ちだした。余計なことだったかもしれないが、言わずにはおれなかったのである。

 「ただのラッキーではないはずですよね?そこにはそのラッキーを呼び寄せる御社ならではのものが必ずあったような気がします」と話を振ったぼくの根拠は、15年ほど前に一度だけ酒を酌み交わしたそこの経営者との会話でしかなかったが、アノひとが社長を務める会社なら、という確信ではあった。

 それに対する彼の答えはこうだ。取り急ぎ記したぼくのメモを転載する。

 地域のため
 人のため
 そういう社風
 気持ちいい人の集まり
 人のことを考えられる会社

 おい、みんな聞いたか?
 とでも言いたげに聴衆を見回したぼくは、自分のアシストにひとり満悦し、ミッション終了とばかりにそれ以上の発言を控えた。

 そこには、自らが属する組織に対しての確固たる自信があり、であるにもかかわらず、「ラッキーだった?」と問われれば、「たしかに」と答える冷静さと謙虚さもある。

 世の中には、素敵な会社や素晴らしい人がたくさんいる。
 せめて爪の垢なりと、そう思った。



コメント
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