学芸員のちょっと?した日記

美術館学芸員の本当に他愛もない日記・・・だったのですが、今は自分の趣味をなんでも書いています

足利市立美術館「リアルのゆくえ」展を観る

2022-07-17 22:50:00 | 展覧会感想
栃木県の足利市立美術館で「リアルのゆくえ」を観てきました。その大きな目的は安本亀八が制作した生人形を観ること。木下直之さんの著書『美術という見世物』を読み、ぜひ本物を観たいと以前から思っていたのでした。

展示されていたのはパーツごとにバラバラになった明治初期の生人形の姿。それでも迫力は充分です。木に彩色されたまさにリアルな作品で、頭部の毛の縮れ具合や力んだ時の飛び出すような目玉の表現、さらに右足の肌はこげ茶で泥の濃淡を表し、細い毛、さらに浮き上がるような血管までが筆で緻密に描かれていました。また、左手首に注目すると爪の間に入った泥まで再現している。まさに生人形という名前にふさわしい作品で驚かされました。

展覧会会場には、生人形が西洋の由来ではない写実性とあり、であるならば、鎌倉時代の一時期に見られた写実的な仏像や肖像の系譜と何か関係しているのかなと思ってみたり。想像が膨らみます。

生人形の話ばかりになってしまいましたが、会場で観た高橋由一の焼豆腐のリアルさ、本田健さんの実在感のある作品の一群、横山奈美さんの岸田劉生風であるけれどモチーフがユニークな最初の物体シリーズ、秋山泉の鉛筆による静物画など、リアル、すなわち物の本質をどう掴むか、作家ごとの答えを観るようで、とても勉強になる展覧会でした。
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

将来の学芸員に

2022-07-16 22:16:43 | 仕事
私が学芸員という仕事を知ったのは高校生のときで、大学に入ってからは美術館の学芸員を目指しました。ただ、実際に学芸員として働いている方と話をしたことはなく、その職業に対しては、本などから得られるぼんやりとした印象しか持っていなかったのが正直なところです。

先日、美術の勉強をしている大学生が授業の一環でいらっしゃいました。将来は学芸員を目指しているのこと。インタビューの中で、学芸員を目指すには、大学時代からどんなことを勉強しておけばいいのでしょうか、と質問を受けました。難しい質問ですが、私の経験を踏まえて話をしました。まず気になる企画展があれば、できるだけ足を運び、本物を見る機会を増やすこと。そして、展示室にも目を向け、展覧会の構成を確認すること。作品の配置、導線、キャプションの位置、文章のわかりやすさなどですね。このほかにも、美術に関する文章を書く力を付けることも必要など。

退館する学生の後ろ姿を見ながら、私の時代と比べて、学芸員と学生との距離も随分近くなったなあ、と感じ入ってしまいました。私も学芸員から色々な話を聞いてみたかったものです。将来の学芸員さん、頑張れ!と心の中で送り出した日常の一コマでした。
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

仕事をたくさん抱える

2022-07-15 21:38:16 | 仕事
仕事をたくさん抱えてしまったとき、私は紙に気になることのリストを書き、なるべく視覚化して冷静さを保つようにしています。

7月も半ば、今年は例年になく仕事をたくさん抱えていて、リストに書きだして見たところが、目を覆いたくなるような有様になりました(笑)そして書き出してみてわかったのは、ほとんどの仕事が他のスタッフから頼まれたものが多いということ!要するに、美術館全体の仕事量が多すぎて、それをこなせなくなったスタッフからのSOSに対応しているというのが、今の現状のようです。そんなこともあってか、どうも頭に血がのぼることが多くて、そういう感情はもちろん心の中にとどめておくわけですが、このままでは心身ともに良くないなあと思う今日この頃。

今のリフレッシュ方法は、ぬるめのお風呂にゆっくり浸かり、寝る前に少しばかりの筋トレとヨガと瞑想をする。これだけでもだいぶストレスが流れていきます(笑)1年間このまま続くわけでもなし(と思いたい)。心身には気を付けて過ごしたいものです。
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする