学芸員のちょっと?した日記

美術館学芸員の本当に他愛もない日記・・・だったのですが、今は自分の趣味をなんでも書いています

美術の情報を得る

2019-08-31 19:46:36 | 仕事
葉月も今日で終わり。夜になると秋の虫の音が聞こえてくるようになりました。季節は少しずつ進んでいるようですね。

さて、学芸員として、他の美術館の企画展や動向、あるいは美術のトレンドがどうなっているのかを知っておく必要があります。なぜなら、それらの情報を得ることで、自分のスキルアップにつなげられますし、自館の企画を考えるうえでの材料となるためです。私の場合、美術の情報を得るために次のツールを使います。

①他美術館から送られてくる広報物

②新聞

③美術系の雑誌

④yahooのニュース検索

①は週1回の程度の割合で目を通し、自分の気になる展覧会やイベントのチラシを自分のファイルに綴じて記録していきます。ただ、見なければならないチラシの数が多いため、必ず時間を区切って行います。②は毎日の文化欄が充実していて、日曜日に美術特集を組む日経新聞をメインに読んでいます。他紙でも土日に新聞社主催の展覧会などが大きく取り上げられることが多いので、ときどき図書館に行って確認しています。③はトレンドであれば『芸術新潮』、現代美術なら『美術手帖』、ギャラリーを主体とした情報なら『月刊美術』、『月刊ギャラリー』などが強み。美術購買層では『アートコレクターズ』、版画一筋の『版画芸術』なども視点がとても面白い。④はネット検索サイトのyahooに「美術館」または「展覧会」とキーワードを打ち、ニュースでの検索をかけます。これはソースがしっかりしていて、全国で新聞記事になった美術館に関する情報が見られるので重宝しています。ネット検索はきりがないため、普段はこれだけに限定しています。

こうした情報のインプットはため込むだけでは何の意味も持ちません。これらの情報をいかに活かせるかが最も大切なことです。自分が勤める美術館がどんな舵を切るべきなのか、これらの情報をもとに私は判断しています。アウトプットを常に意識しながら情報を集める。これはどんな仕事であれ、必要なことなのかもしれませんね。


コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

水戸芸術館「大竹伸朗 ビル景」展

2019-08-30 19:49:37 | 展覧会感想
私の職場である美術館には、毎日のように全国各地で開催される展覧会の案内が届きます。そのなかに変わった印刷物を見かけたのは1ヶ月程前でした。それはA4のチラシで、真ん中から左右見開きになる仕立て。変わったデザインなのはすぐにわかりましたが、なんとそれだけではない。文字に凹凸があって、おそらくは活版印刷で刷られたもののよう。とても洒落ている!

このチラシを作った美術館は、茨城県水戸市にある水戸芸術館。現代美術の作家大竹伸朗さんの展覧会ということもあり、先日見に出かけました。「ビル景」という展覧会の主題だけあって、会場にはずらりとビルを描いた作品が並びます。それらは必ずしも実景というわけではなく、いろいろな街のビルの姿が重なり合っているそうで、心象風景と捉えていいのでしょうか。ビル、という1つのテーマながら、それを油彩やエッチング、さらには立体など様々な方法を用いて表現しているところに驚かされます。ときおり、社会性を帯びている作品も見かけ、ビルの上空に飛行機が有るものは制作された時期から言ってもアメリカの9.11、つまり同時多発テロなのでしょう。無機質な箱であり、人が集まるところでもあり、経済の小さな中心でもあり、現代文明の象徴でもあり、飛行機の標的にもなるビル。大竹さんの作品を見ていると、「ビル」という物体ひとつで、いろいろな角度からの切り取り方が有ることに気づかされました。

私は定期的に現代美術を見るようにしています。なぜなら、ふだんの日常で凝り固まった頭脳が新鮮になるから。既成概念を乗り越えて創造される作品は、とてもポジティブな印象を受けます。そうした作品の力が、頭のなかをやわらかく、やわらかくしてくれるのでしょう。チラシに引かれて美術館詣で。とても充実した1日を過ごすことができました。
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

美術の勉強

2019-08-23 21:59:10 | その他
当館では毎年中学校、高校生の職場体験を受け入れています。その生徒たちは美術館を希望するだけあって、とても美術に対する興味や関心が高く、仕事も一生懸命こなしてくれます。そのなかで、より美術を学びたいがどのように学んだらいいのでしょうか、と質問を受けることがあります。改めて勉強の方法について聞かれると、中学生や高校生に対してどんなアドバイスをしたらいいのか、いつも悩みます。というのは、現代文や歴史、数学、科学などのように学習参考書が豊富にあるわけではない(本屋さんの教科書コーナーを見てもほとんどない)からです。

それを踏まえ、私はこんなアドバイスをしています。

①美術の教科書をしっかり読むこと。

②自分の好きな作家あるいは好きな絵を1つ見つけること。

③その作家または好きな絵のことを調べてみること。

④その作家や絵を実際に見ること。自分が体験したことは忘れない。それが知識になる。

働いているわけではない中学生、高校生にとって、最後の④はハードルが高いのですが、なるべく本はきっかけにとどめ、本物を観ることを勧めるようにしています。やはり画集では伝わらない本物の力(印象、大きさ、細部など)を目で見ることは大切なことですから。自分の出かけられる範囲で色々なことを体験して欲しいのです。

生徒たちには美術館で職場体験をすることで、さらに美術への興味や関心が高まり、将来は趣味として、あるいは仕事として携わり、人生をより楽しんでくれれば嬉しいと思っています。

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

本屋好き

2019-08-19 20:46:45 | その他
今日は仕事がおやすみ。お盆が終わったとはいえ、まだ街はたくさんの人たちで賑わっていました。まだ子供たちは夏休み時期ですものね。

ショッピングモールへ出かけ、そのなかの本屋さんでぶらぶらとして過ごしました。私は本屋さんが好き。たくさんの本の背表紙を眺めていると、とてもドキドキします(笑)なぜドキドキするのか、それは新しい本との出会いが人生を豊かにしてくれる気がするから。ゆえに本屋は人生の希望にあふれているのです。でも、それだけではありません。確か池上彰さんが著書でおっしゃっていたように思いますが、本の背表紙を眺めていると色々なアイディアが浮かんでくるというもの。実は私もそうで、背表紙を眺めていると仕事に対する新しいアイディアが次々に沸いてきます。色々と羅列した言葉を追っていくと、頭のなかがシャッフルされ、活性化されるのかもしれません。根拠は特にないのですが…。

本は自己投資。もちろん自分の専門分野の本は買いますが、興味のおもむくままに好きな本を選びます。最近は数学や科学など、これまであまり関心の向いてこなかった分野の本も読んでいます。そして世の中知らないことだらけだなあ、と改めて思います。同時に人生は楽しいと。本屋は私にとって無くてはならない場所です。
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

お盆も終わり

2019-08-18 21:53:03 | その他
今年も暑い日が続いていますね。お盆休みも今日で終わり。けれども、私の場合は美術館の学芸員となってから、お盆時期は毎年忙しいために休みをほとんど取ったことがありません。ご先祖様には誠に申し訳なく。

お盆で想い出すのは、子供の頃ののんびりとした時代のこと。祖父母がまだ健在の頃にて、本家に親戚中が集まってお墓参りをし、その後は夜通し食事会、ならぬ飲み会が始まります。一方、子供たちはそこから抜け出し、外で目いっぱい遊びました。鬼ごっこをしたり、昆虫を捕まえたり、水浴びをしたり、夜は花火大会。今では忘れられない思い出です。今は祖父母はすでに亡く、親戚もずいぶん年を召して、いとこたちも仕事で忙しく、みんなで本家に集るということも無くなりました。私自身も仕事で行けないとはいえ、子供のころと比べると、随分寂しい時代になったと感じます。

せめて気持ちだけは、と思い、このお盆時期は自宅の庭から取った菊の花を花瓶に差して過ごしました。ご先祖様に改めて感謝し、また明日からいつもの日々が始まります。
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする