放菴日記抄(ブログ)

これまでの放菴特集・日記抄から「日記」を独立。
流動的な日常のあれこれを書き綴ります。

時計台と運河紀行8

2022年12月13日 00時55分01秒 | あんなこと、こんなこと、やっちゃいました
 今年は猛暑だった。北海道でも猛暑日があって、相当タイヘンだったと思う。札幌では30度を超えていた。でも幸い小樽では涼しい風が吹いていた。でもやたら喉渇いたけど。
 運河沿いの道から一本奥の道に入る。ここには小樽ガラスのお店がずらりと並んでいる。「小樽堺町通り」という。どの建物もレトロ感たっぷり。まず目立つのが「旧三井銀行小樽支店」。国指定重要文化財。「北のウォール街」と呼ばれた小樽市色内(いろない)の面影を残す重厚な花崗岩でできた建造物。さらに似鳥美術館へと続く。重厚の一言。
 あっ、人力車。
 どこかで風鈴の音がする。硝子の風鈴。
 街路灯に風鈴を左右下げて、そよぐ浜風に揺れている。
 小樽の短い夏を彩る、すきとおった音色。

 観光地の王道ですな。
 これだけの風致的建物を保管してきた努力もすごいし、レトロな雰囲気を壊さないよう観光産業に組成させてきた知恵もすごい。堺町通りに限って言えば、やはり小樽ガラスの誘致。街を彩るすきとおった美術品。しかも手にとったり、買い求めたりできる。余談だがガラスはリサイクル率も高い。つまり無駄のない観光資源ってことになる。何と言ってもお店のネーミングが素敵。
 「大正硝子びーどろ館」
 「北一硝子第三号館」
 「オルゴール堂」
 「ベネチアングラス美術館」
 「ステンドグラス美術館」
 などなど、地図の上にレトロな味わいを感じさせる店名ずらりとならび、見ているだけでロマンチックな気分にさせてくれる。観光客のワクワク感を刺激するのがとても上手い。

 さあ、とにかくガラスを見なけりゃ何も始まらない。
 まず「大正硝子館 本店」の暖簾をくぐろう。
 ここは明治に建てられた商家を改装している。木造だけど外壁に花崗岩を使った和洋折衷の建築。冬のオホーツク海から吹き寄せる冷たい風に耐えるよう頑丈に造られている。
 中に入ろうとして、思い直して背負っていたカバンを前に抱え直した。こんなのが製品に接触したらクリスタルdeドミノだ。考えただけで心臓がガラスのように凍る。
 
 暖簾をくぐる。
 案の定、ガラス製品が所狭しと並んでいる。壊れ物が所狭しなんだから怖い事この上ない。けど、テーブルや棚に段をこさえ高低差を強調した展示は、奥行きが感じられて率直に美しい。
 特に窓際。
 窓から差す陽の光をグラスの曲面がまろやかに融ろかしていてまるで液体のよう。アワを内包した器などは光の粒がきらきら星のように燦めいている。
 窓の外は硝子風鈴の音。
 窓の内は融けた陽の光でいっぱい。日常とは別世界。来てよかった。

 ぐるりとお店をめぐり、そのまま別の出口から外に出た。明るい日差しが街を白く輝かせている。出たと言ってもこれで終わりではない。大正硝子さんの次のお店がずらりと並んでいる。びーどろ専用のお店、酒器専用のお店・・・などなど。ちいさな堀端には網が張られ、そこにもガラスの風鈴が吊るされていて涼やかな音を奏でている。お店に入りまた出て次のお店へと繰り返し、キラキラしたものをたくさん見た。お陰様で、どうにかミッションに適うような小物を見つけ、自分たちのためにもサンタさんの買い物をして、小樽ガラス捜査は終了した。

メリークリスマス
世界の平和を心から祈ります。