室長です。
先達ての本論では「これが子どもの遊び空間の基本的なものでしょ!」という意味合いで持論を展開しましたが、今回はそれを更に飛躍させて、子どもの遊び空間として本来あるべきオープンスペースの使い方を提案するという形で結論としたいと思います。
去る9月13日、同世代の子どものパパ友の仲間で"なすから子結び団”というチームを結成し、「まちしるべぇ」という子ども向けの一風変わったイベントを企画しました。
このチームは、コロナ禍で市内の公的・私的なイベントが軒並み中止や延期となってしまって、子ども達がワクワクしたり成長したりできる機会が失われてしまっていることに胸を痛めたパパさん達が、その失われてしまった成長の機会を補うべく、子ども向けのイベントを企画しようと結成したものです。
ただでさえ屋外(とりわけ公園やまちなかといったオープンスペース)における集団での遊びが減っている昨今ですが、コロナ禍でますますその風潮は強まり、実に画一的・単一的な経験を繰り返して成長することが果たして子どもにとってマイナス以外のなんの影響があろうかという危機意識がフツフツと生まれてきていました。
そうした状況に対して、このチームが多様な年齢の子ども同士がまちで遊ぶ機会を創出することで、縦横に様々なつながりが生まれて、結果的に周囲のヒト・モノ・コト同士も何かしらの関係性が生まれていく…という期待を込めて「子・結び」という言葉をチーム名にした次第です。
さて、その記念すべき第1回目の企画ですが、このコロナ禍の中にあって3密回避は至上命題ですので、それをクリアすべく、
・屋外のオープンスペースを活用
・他人と接する機会を極力排除した親子単位で楽しめるコンテンツ
・参加者同士がばらけるようなアクティビティ
を企画の大前提としました。
また、地元のモノゴトに親子で触れてもらいたいという狙いから、
・まちなかを広く面的に歩き回ってまちのことを知ってもらう(子どもの歩調で歩くことで、「こんなお店があったんだ!」という発見を親子、とりわけ親にしてもらう)
・拠点やキーとなる場所をあまり地元民が訪れる機会の少ないパブリックな場所に設定する
といった点も加味しました。
色々な案が頭に浮かんではボツとなり、諦めかけた時に、いくつかの記憶のパーツが頭の中で合体して、不意にあるアイデアが閃きました。ちなみに、その記憶というもののうち、一つはNHKのEテレの『おさるのジョージ』という子ども向けのアニメで、主人公たちがまちなかを歩いて数字にまつわる色々な物を集めていくシーンで、もう一つは、暇つぶしにうちの子どもと一緒に新聞紙を広げて、その中の「非最頻出(=一番出てこないであろう)のひらがな」をお互いに出して見つけるというクイズをやったシーンです。
また、まちなかを歩いているとよく目にするこんな風景の断片も思い浮かんできました。
室長の住む那須烏山市の烏山地区はわりと歴史のある城下町で、歩いて回れる中心部に商店や飲食店、事務所がコンパクトに集中しているという特性があります。注意して見てみると、こうしたひらがな(カタカナ)文字がまちに溢れていることに気づかされます。
そんな訳で、「昆虫採集のように"ひらがな”を採取(=歩いて集めて)して、何かをコンプリートするようなゲームをしてみたら面白いじゃん!」という奇跡的なアイデアが閃き、チーム内で色々と検討した結果、親子でまちなかを歩いて文字(ひらがな・カタカナ)を集め、自分の名前を写真に収めつつ全ての文字を見つけるというプログラムのイベント案ができあがりました。
まちの「標(しるべ)」となるモノゴトを「知るべぇ」ということから「まちしるべぇ」という洒落っ気の効いたネーミングには、若干のオヤジ臭を感じはしますがそれはご愛敬ということで(笑)
ブラッシュアップを重ね、最終的には「烏山地区にある商店や事務所、店先の看板等に書いてある「もじ」(=ひらがな・カタカナ)を探しながらまちなかを歩き回り、3つのタスクをクリアしていくゲーム」としました。
3つのタスクというのは以下の通りです。
タスク①:自分の名前と同じ文字を見つけ、一文字ずつスマートフォンの写真に収める
タスク②:受付時に配布する「あいうえお表」(あいうえお…の46文字が記された表)に、見つけた文字をマーキングしていき、できるだけ多くの文字を見つけてコンプリートを目指す
タスク③:八雲神社とJR烏山駅の2カ所をチェックポイントとして立ち寄る(スタンプを押印して行った証拠とする)
※山あげ会館をスタート・ゴールとする
そして、ここがミソとなるのですが、ゴール後、参加者各自のスマホの画像データを主催者側のパソコンに取り込み、その場でトリミング加工等を加えて特定のフォーマットに落とし込んで、それを賞状のような形にアウトプット(印刷)し、上記タスク②の「あいうえお表」の成果と合わせてラミネート加工し、参加記念としてプレゼントするという工夫も加えることにしました。これが後々重荷となるわけですが…(苦笑)
そのフォーマットというのはこんな感じ。ザ・賞状です。
それがラミネート加工されるとこうなります。(サンプルは白黒なので見栄えしませんが、、)
そうして出来上がった渾身のプログラムでしたが、いざ地元の広報紙で募集をする段階になると、「こんな奇特なイベントに参加する親子連れなんてそう多くはないだろう…」という心配が頭をよぎるばかりでした。しかし、いざフタを開けてみると定員をはるかに超える応募が!!
やはりコロナ禍でイベントが激減してしまい、夏の思い出を少しでも作りたいという家庭が多いのでしょうか、ありがたいことに定員の1.5倍もの参加者が集まってくれました。
まずは受付が鬼門で、コロナ対策の受付チェックにはじまり、資料と筆記用具の配布、LINEの交換が重なり、受付完了時点で予定の開始時間を10分以上過ぎてしまっていました(汗)
しかも、室長的にこれだけの規模のイベント(しかも親子向けイベントの主催は未経験)を仕切ったことは初めてで、説明するゲームの内容や注意喚起(熱中症対策や歩行時の安全確保、写真撮影時の注意点等)も多岐に渡り、かなり不足点だらけのスタートとなってしまう始末。
やり直せるならもう一度やり直してビシッと決めたいところでした(笑)それでも子どもたちは集中して説明を聞いてくれて、スタートの合図とともにみんな散り散りとなってまちに歩き出していきました。
まちなかではこんな感じで参加者がまちの至るところに点在する文字をスマホに収めたりしてくれていたようでした。
ゲームの制限時間は80分程度を目安としたのですが、運営側としては参加者を送り出してホッとしたのも束の間、ラミネータの試運転やら戻ってくる参加者を受け入れる場のセッティングやらに手間取ってしまい、あまりゆっくりできず、、
そしてここからが本日の修羅場。帰ってきた参加者が集めた名前の写真データをその都度LINEにて回収し、それをパソコンに共有してパソコン上で画像加工を施してフォーマットに落とし込み、それを印刷してラミネート加工して賞状を作るという作業に突入!
続々とゴールする20数組分の参加者のタスク①の画像データ(1組につき10枚くらいある)をパソコンに放り込みながら「これは誰のデータだっけ?」と名前と画像データを紐づけしつつレイアウトし、それをカラー印刷した後にタスク②③の成果物とドッキングして慎重にラミネート加工する…という作業をひたすら1時間ほど続けました。
当初は全員揃ったところで全員の前で各自の表彰をする予定だったのですが、さすがに1時間も待たせるのは申し訳ないということで、賞状ができあがった順に5人程度ずつのグループに分けて時間差で表彰していくことにしました。(ゴール後に地元菓子屋さんの秀逸な「涼しん棒」という和テイストのアイスをゴール記念に配ったのですが、暑い中歩いてきた子ども達の前では退屈しのぎの作戦としては文字通り焼け石に水の効果でしたw)
結局、最後の組(自分の子どもの同級生をまとめた)の表彰式を終えることができたのは、予定の終了時刻を1時間近くオーバーした12時少し前のことでした。
色々と疲れましたが、子ども達ひとりひとりに「〇〇殿、頑張ったあなたを讃えてここに表彰します」という校長先生お決まりの有名なフレーズを言いながら表彰状を手渡すという(一度やってみたかった)快感を味わうことができて室長的には非常に満足でした!(笑)
さて、そんな訳でイベントの運営裏話的な内容が大部分になってきましたが、要するに伝えたいことは、知恵を絞ればコロナ禍の中でも子ども向けの遊びの場は作ることができるということ。しかも屋外のオープンスペースだからこそ密にならずに済むので、そのまちならではのオープンスペースを活用して様々なアクティビティを考えるというのが、本当の意味でのウィズコロナ(ないしはアフターコロナ)の生活の仕方なのではなかろうかと。
そして、それは昔のように公園でみんなで遊ぶスタイルに単に戻るというのではなく、まち全体を舞台に、そのまちらしいものや現代のツール(スマホの写真機能やGPS機能等)をフル活用しながらワクワクするモノゴトを友達や家族とうまく共有していくという遊び/学びの場へとオープンスペースを昇華していく試みでもあるということです。
まちなかのオープンスペースにはその潜在力があると強く思います。
しかし、自然の流れに身を任せたままですと、現代の子どもの遊び空間は、この一連のオープンスペース活用論の最初に触れたような商業的・消費的スタイルに終始してしまう可能性が大と思われます。なんせ、お金さえ出せば、苦労して考えずとも面白いコンテンツが手に入りますので…。楽なことには人間勝てないもので、コロナを言い訳に考えることを放棄すること(=右へ倣え式のイベントの安易な中止)はその最たるものと言えそうです。
今回、オープンスペースの活用を前衛的に実践したことは、そうした現在の不自然な常識に掉さすアクションになるのではないかと期待せずにはいられません。
自由度の高い場所で楽しみをいかに見つけ出す/創造するか──われわれ大人が向き合わなければならない問いではないでしょうか。
オマケ