ちいさなちいさな いのりのことば

 * にしだひろみ *

『おんなのこと あめ』*わたしの本棚*

2015年07月02日 | Weblog

わたしには、最愛の絵本が五冊ほどあります。

今日は、そのうちの一冊を。





いま、わたしのところでは、梅雨の折り返し地点。

晴れ間も覗きながら、もう少し雨の日を経て、夏へと向かっていきます。


そんな日に、ぴったりの絵本です。





『おんなのこと あめ』
ミレナ・ルケショバー ぶん
ヤン・クドゥラーチェク え
たけだゆうこ やく






あまりにも美しい絵本。


詩のような本文と、繊細で丁寧な絵。

優しい雨が、心に染み入るように感じられます。




この本の素晴らしいところは、雨の立場から雨の日を描いている、という点です。


雨の日、雨はどんな気持ちでしょう?


それがわかる絵本です。







*****************



ある日、雨は、降りだしました。


その時、雨を大切そうに両手で受け止めた女の子がいました。



雨は、女の子が大好きになります。





女の子は、傘もコートもなかったから、走って家に帰らなくては。



優しい女の子は、

「あめさん いっしょに いらっしゃい。

ね わたしの うちまで」

と雨を誘います。


雨は、嬉しそうについていきます。





でも、家に着いたら、女の子はいなくなり、雨はひとりぼっち。


女の子を探しても、見付かりません。



雨は尋ねます。

大人や、犬に。

でもみんな、雨を嫌がり、払いのけて行きます。

虫も、鳥も、猫も、みんな、逃げていきます。



雨は悲しくて、涙のように、たくさん降ります。





けれど、雨は、女の子を見つけます。

レインコートを着て、戻ってきたのです。





「あめさん あめさん このゆびとまれ」


「ね あめさん はしっていきましょうよ

わたしのあとに ついてきて」


女の子は、雨に声をかけ、一緒に遊んでくれるのです。


雨は、楽しそうに降ります。




そこへ、お日さまが顔を出します。


雨は、とても美しいものを、空に架けるのです。


そう、七色の、虹。




女の子は、かえるに、こう言うのです。

「ね かえるさん
あめって やさしいのね。
びしょびしょ してるけど
わたし あめ だーいすき」





それから、もう少しだけ、雨はしとしと降りました。



幸せそうに、降りました。




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いつも、幸せな気持ちで本を閉じます。


雨を両手で受け止めた日が、わたしにもあったことを、思い出します。

こんな風に、声をかけてあげなかったけど・・・。





やわらかな心にだけ、開かれている世界。

あらゆるものと、心通いあえる世界。

そういう世界が、確かにあるのですね。

すぐそばに。





その世界への扉を、見失っていないかしら?

鍵を無くしていないかしら?




時々、確かめるように、開く本です。















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