ちいさなちいさな いのりのことば

 * にしだひろみ *

花を一輪

2019年06月28日 | Weblog
手のひらに乗るほどの

ちいさな空き瓶を見つけた


一輪の花がほしい

母の花畑から


白いフランス菊も

黄色いカモミールも

素晴らしいけど

もっと静かな

ささやかな花がいい


季節が合えば

菫のような


泳ぐ目が庭先にとまる

まっすぐに降る雨と

ドクダミ


小さな白と濃い緑

いまのわたしは

この他に色はいらない



一輪だけのドクダミの

その香りが部屋を清め

花びらは十字架の祈り


思い惑う心に

静謐と

一条の光

手紙

2019年06月26日 | Weblog
離れて暮らす夫に

整わない字の手紙を書いて

野良仕事に忙しい両親に

投函を頼みそびれたまま

七日


会いにきた夫に

ポストに入れてねと渡したら

それもいいねと笑われ

夫に用件が伝わるまで

十日



急用でないかぎり

このくらいのスピードがいい

速くないほうがいい

伝わるまでに

知るまでに


あんまり速いと

無くしてしまいそうで


祈る心や

信じる心

待ちながら生きるという

豊かな時間を

信じる

2019年06月15日 | Weblog
「人が生きるのは、

答をみつけるためでもないし、

だれかと、なにかと、競争するためなどでは、けっしてありえない。

ひたすらそれぞれが信じる方向にむけて、じぶんを充実させる、

そのことを、

私たちは根本のところで忘れて

走ってきたのではないだろうか。」

(須賀敦子)



「・・・しかし

あの最大の不幸と思われたることも、

今の悦びに来着くためには、

なくてはならないことだったのかもしれない・・・」

(松田瓊子)



大切にしてきた本に書かれた

これらの言葉が

わたしの心に明かりを灯してくれました


閉ざされるかのように見えたものは

そうではなくて

これまで知らなかったあたらしい道を

開こうとするものでした



そこにこそ

わたしの信じるものが

わたしを充たしていくものがあるのだと

思えるようになってきて


この病に

全てのいきさつに

静かな感謝があふれてきました