少しずつしか読めない、そんな本に、時々、出逢います。
一語一語、噛み締めながら読む本。
そうしないと、溢れ出して、消化できないような本。
少し読んでは、ため息をついて、本を閉じて、
少しして、また開いて。
家で読んでも十分素敵なんだけど、
森のなかや、静かなカフェで読んだら、どんなにいいかしら・・・。
そんな本。
例えば、この一冊。
『詩の樹の下で』(みすず書房)
長田弘 著
(いつかは私の本棚にも・・・と想いながら、図書館から借りて読んでいます。)
「大きな木から下げられたブランコは、漕げば漕ぐほど木の影のなかへ、じぶんが音もなく没してゆくような感覚に引き込まれる。
木のなかへ、木の時間のなかへ、木のひろがりのなかへ、意識が浮き上がっては、またすぐに沈んでゆく。
(中略)
木のブランコをずっと漕いでいてはいけないのだ。
われを忘れて漕ぎつづけていると、きっと自分を見失ってしまう。」
(「ブランコの木」より)
幼いころ、たのしくてたのしくて、でもちょっとだけ怖かった、あの感覚を、
この人は、なんと的確に表現するのでしょう。
ああ、わかる・・・
そうなの、
きっとそうなんだわ・・・
何度もため息をつきました。
ようやく半分ほどまで読んだ、昨日、
パタン、と本を閉じました。
続きは、どこか、素敵な場所で・・・。
素敵な本を読んだ、素敵な記憶を、より素敵に仕舞いたくなったのです。