『J'sてんてんてまり』“いのしし丼 其の壱?”~にトラックバック。
よく行く近所の焼鳥屋『串若丸』三田店の焼き担当の人と話していたのだが。
食いしん坊はどんな肉でも食いたいよな~、という話題で盛り上がり、桜、牡丹、紅葉(だっけ? 鹿肉)、すずめの丸焼きはありゃあ旨い、熊は臭いらしい、ぎゃははは・・・とやっていると彼が「あ」と右斜め52度方面を睨んで考え込んだ。
「どしたの?」
「いやあ、猪でね、すごく不思議な体験をしたんですよ。ず~っと忘れてたなあ。小さい頃のことなんです・・・」
何でも彼が小学生のとき、家族で静岡にキャンプに行ったらしい。いや間違えた。静岡らしい、という記憶だ。東京から2時間くらいだったということと、西でも東でも北でもなかったと思うとのことから推測して「じゃあ静岡じゃねえか?」となったんだ。
お父さんが道を間違えたのがきっかけ。どんどん田舎にハマっていき、夜もすっかり暮れてしまった。家族はブーイングである。「よおし、とにかくな、温泉入ろう温泉。ほらここだよ」と偶然行き着いたうんっとさびれた立ち寄り湯に入って、今夜はどうしようかと落ち着いて考えたそうだ。すると先客に地元のおじさんがいて、行くはずだったキャンプ場を尋ねるとそんな場所は聞いたことがないという。だが今夜泊まるところがないならウチに来なさい、たいしたもてなしも出来ないが、と嬉しい申し出をしてくれた。お父さんは名誉挽回と感謝の気持ちでそのおじさんを車に乗せて一緒に家に向かった。
風がそよとも吹かず、なま暖かい、それでいて何か背筋が落ち着かないような夜だった(ここは嘘ね)。おじさんの家の中はちょっと散らかっていて、ひょっとしてやもめ暮らしかなあとも思える。しかし玄関には確かに女物の靴があったような。
居間に落ち着いたところでおじさんはカートリッジコンロを用意して、ナベを作り始めた。見れば鮮やかな肉が出てくる。「これは猪。牡丹。こないだ撃ったんだ」おじさんは嬉しそうだ。猟をする主のいる家は荒れるというのは本当らしく、そういえば散らかっているというより何かすさんだというか荒れた感じの部屋だった。
で、肝心の牡丹の味は彼は全く憶えていない。どうしてかというと食べ始まったそのとき、奥の部屋からそれはそれは恐ろしい声が聞こえてきたのだそうだ。彼も兄妹もお母さんもお父さんもピクっとして箸を止める。するとおじさんが言ったらしい。「もし出てきても知らない顔をして下さいよ。絶対に相手になっちゃダメだ」
そんなこと言われたって。
うわあお父さんお母さん僕怖いよ帰ろうよおうちに帰ろうよおいおい落ち着けそんなこと言っちゃ失礼だろううわあんあたしも怖いよ帰ろうよお~・・・。そのあたりからあんまり憶えていないそうだ。
で、よ~く考えると全部夢だったような気もするけど、でもキャンプに出掛けて迷ったのは確かだし、そんな話しを以前家族でしたことがあったんですから夢ではないんです、でも何か恐ろしい童話の中に入り込んでしまったような異様な夜でした・・・。
彼はニッコリ爽やかに笑い「それにしても牡丹って美味いんですかね~」と明るかった。
よく行く近所の焼鳥屋『串若丸』三田店の焼き担当の人と話していたのだが。
食いしん坊はどんな肉でも食いたいよな~、という話題で盛り上がり、桜、牡丹、紅葉(だっけ? 鹿肉)、すずめの丸焼きはありゃあ旨い、熊は臭いらしい、ぎゃははは・・・とやっていると彼が「あ」と右斜め52度方面を睨んで考え込んだ。
「どしたの?」
「いやあ、猪でね、すごく不思議な体験をしたんですよ。ず~っと忘れてたなあ。小さい頃のことなんです・・・」
何でも彼が小学生のとき、家族で静岡にキャンプに行ったらしい。いや間違えた。静岡らしい、という記憶だ。東京から2時間くらいだったということと、西でも東でも北でもなかったと思うとのことから推測して「じゃあ静岡じゃねえか?」となったんだ。
お父さんが道を間違えたのがきっかけ。どんどん田舎にハマっていき、夜もすっかり暮れてしまった。家族はブーイングである。「よおし、とにかくな、温泉入ろう温泉。ほらここだよ」と偶然行き着いたうんっとさびれた立ち寄り湯に入って、今夜はどうしようかと落ち着いて考えたそうだ。すると先客に地元のおじさんがいて、行くはずだったキャンプ場を尋ねるとそんな場所は聞いたことがないという。だが今夜泊まるところがないならウチに来なさい、たいしたもてなしも出来ないが、と嬉しい申し出をしてくれた。お父さんは名誉挽回と感謝の気持ちでそのおじさんを車に乗せて一緒に家に向かった。
風がそよとも吹かず、なま暖かい、それでいて何か背筋が落ち着かないような夜だった(ここは嘘ね)。おじさんの家の中はちょっと散らかっていて、ひょっとしてやもめ暮らしかなあとも思える。しかし玄関には確かに女物の靴があったような。
居間に落ち着いたところでおじさんはカートリッジコンロを用意して、ナベを作り始めた。見れば鮮やかな肉が出てくる。「これは猪。牡丹。こないだ撃ったんだ」おじさんは嬉しそうだ。猟をする主のいる家は荒れるというのは本当らしく、そういえば散らかっているというより何かすさんだというか荒れた感じの部屋だった。
で、肝心の牡丹の味は彼は全く憶えていない。どうしてかというと食べ始まったそのとき、奥の部屋からそれはそれは恐ろしい声が聞こえてきたのだそうだ。彼も兄妹もお母さんもお父さんもピクっとして箸を止める。するとおじさんが言ったらしい。「もし出てきても知らない顔をして下さいよ。絶対に相手になっちゃダメだ」
そんなこと言われたって。
うわあお父さんお母さん僕怖いよ帰ろうよおうちに帰ろうよおいおい落ち着けそんなこと言っちゃ失礼だろううわあんあたしも怖いよ帰ろうよお~・・・。そのあたりからあんまり憶えていないそうだ。
で、よ~く考えると全部夢だったような気もするけど、でもキャンプに出掛けて迷ったのは確かだし、そんな話しを以前家族でしたことがあったんですから夢ではないんです、でも何か恐ろしい童話の中に入り込んでしまったような異様な夜でした・・・。
彼はニッコリ爽やかに笑い「それにしても牡丹って美味いんですかね~」と明るかった。