韓国経済が危ない
冷え切った日韓関係で、この危機は乗り切れるのか
2013年9月16日
児玉 克哉
三重大学副学長・教授
韓国経済は、かつての日本経済のように素晴らしい発展を遂げてきました。
停滞し続けた日本経済をしり目に、サムスンを中心に、韓国経済は世界のトップグループに躍り出ました。
日本が学ぶべきものも多いのも確かです。激動する世界経済の中で、日本のしくみは、決定までに時間がかかり、思い切った決断ができませんでした。
サムスンは迅速で、ダイナミックな対応をして、一気にトップ企業になりました。韓国経済は、日本経済に追いつき、部分的には追い抜くところまで来ました。
10年前には全く考えられなかった展開です。
しかし、今、韓国経済は手放しで称賛するような状況にはありません。むしろ、大変な危機にあると言って過言ではありません。
いくつもの複合的な問題があります。
まず第一に、ウォン高があげられます。
というか、特別にウォン高になったというよりも、ウォン安の利を失ってきたということです。
リーマンショック以降、日本の円高は進み、ウォンが比較的に安かったために、韓国製品が一気に世界市場を制しました。
日本の大企業が巨額の赤字に苦しむ中、サムソンを筆頭とした韓国企業は収益をあげました。
今、2~3割のウォン高が起きています。このレベルでのウォン高でも韓国経済には大きな打撃です。
アベノミクスによって円安が進む中、状況は一変しています。特に韓国経済においては輸出産業が占める割合が高く、ここが停滞すると一気に厳しい状況が訪れます。
第二に中国不安です。
韓国は、中国経済に頼るところが大きくなってきました。
最近は日韓の政治的な対立もあり、中国寄り路線はさらに強くなっています。
しかし、この中国経済にも危機が訪れています。シャドーバンキング問題などがでてきており、地方経済は破綻に近い状況になっています。
これが爆発するのか、軟着陸するのかは不明ですが、いずれにしても、中国に頼っていた経済構造は大きな打撃を受けます。
すでに受けつつあり、これが進むと一気に危機的な状況になります。
日本経済がアベノミクスや東京五輪招致などで勢いを増しています。
これ自体はむしろ韓国経済にもいいはずなのですが、海外からの投資が韓国から離れ、日本に向かうということになると、マイナス要因が強くなります。
世界のマネーは、アメリカがダメ、ヨーロッパが危ない、日本は終わった、という感じで、行き場を失い、中国や韓国に流れました。
それが一定のバブル経済を作り上げ、急激な発展をもたらしました。
しかし、日本への行き場がまたできて、中国リスク、韓国リスクが表面化しようとしている中では、資本の引きあげが起こりつつあります。
一定の資本が移ると、バブル経済は崩壊に向かいます。高騰した不動産の価値が落ちつつあります。
いつバブル経済が破たんしてもおかしくない状況が韓国でも中国でもあります。
これは日本が1990年に経験した破たんよりも影響が大きくなるかもしれません。注視する必要があります。
これらは確かに日本経済が経験したことです。違いは、国内資産の量と社会の安定感です。
日本においては、借金を増やしながらもなんとかバブル経済破綻、リーマンショックを乗り越えてきました。
国内の莫大な金融資産があったからです。韓国にはそうした資産はなく、対応は困難です。
1997年のアジア通貨危機の時には、日本は韓国を支えました。しかし、今、韓国と日本との関係は冷え切っています。
巨額の支援に日本国民は賛成しない可能性が高く、また韓国も日本に頭を下げたくないという感情になりそうです。
問題は解決されることなく、責任転嫁でさらに反日が扇動されることも十分に考えられます。最悪のシナリオです。
また、治安の問題もあります。韓国は治安は悪くはありませんが、労使関係では激しい争いがあります。
バブル経済が破たんした時、労働組合は、すんなりと解雇や給与削減を認めるとは思えません。
激しい労使間闘争が予想されます。これがどこまでいくのか。状況によってはさらに深みにはまる可能性もあります。
日韓関係は、東アジアの安定においても重要なものですし、経済的にも非常に大切です。
韓国経済、中国経済が危機にある中で、冷え込む日韓、日中関係は大きなマイナスです。
日本経済の復活とともに、東アジアの安定をどうするか、も大きな課題になりそうです。
たとえ一円でもね!
その前に借金返せよな。