韓国、「オバマ訪問」原爆離れて日本糾弾「企業進出は要請」
2016-05-21
勝又壽良の経済時評
週刊東洋経済元編集長の勝又壽良
韓国メディアが、再びどぎつい言葉で日本糾弾を始めた。
5月27日、G7サミットで来日するオバマ米国大統領が、
広島の原爆資料記念館へ足を運ぶことに、猛然とジェラシーを示している。
韓国の本音は、オバマ氏に広島へ行って欲しくないのだ。
それは、原爆投下による日本の被害が強調され、世界から同情されることに耐えられないからだろう。
日本は、永遠に戦争加害国として記憶されるべきである。かりそめにも、「原爆被害国」として振る舞ってはならない。
同情されるべきは韓国である。日本に併合された被害国である。これが、韓国の言い分なのだ。
日本は、原爆の被害国という立場を超えて、世界から核の脅威を取り除きたい。
その祈りの場所が広島であり、長崎である。
決して、米国を糾弾するという「恨み」が原点ではない。太平洋戦争開戦の責任は日本にある。
ただ、日本が開戦せざるを得なかった「自衛戦争論」もあることは否定しない。
この理屈に立つと、地球上から永遠に戦争は終わらない。開戦の決意をした日本は、やはりその責めから逃れないのだ。
自衛戦争論の理屈が通ると、中国の尖閣諸島奪取論を正当化させるようなもの。
戦争は、いかなる理由があっても引き起こしてはならない。これが、広島や長崎から発せられる祈りであろう。
韓国の立場は、余りにも視野狭窄症である。
現職の米国大統領が広島を訪問することが、日本の戦争責任を風化させ、原爆被害国という点だけが強調させる。
それが、「羨ましい」という子ども同然の議論をしている。
同時に、日米関係が戦後71年目にして、「原爆」というタブーを乗り越えて、名実ともに「日米同盟」が成立することをやっかんでいる。
本心では、日米関係がギクシャクしていることを願っていることは間違いない。この韓国の「願望」が、オバマ大統領の広島訪問で否定される。それが、たまらなく哀しいことなのだ。
『朝鮮日報』(5月12日付)社説は、「オバマ氏は広島で『加害者は日本、被害者は韓国』と指摘せよ」と論じた。
この記事が、韓国で最大の発行部数を誇る『朝鮮日報』社説であることに注目していただきたい。
この社説に流れているのは日本への「恨み」である。
本心では、原爆が投下されて「ざまあみろ」といった調子の感情論で貫かれている。
これが朝鮮民族の本音であろう。
韓国は北朝鮮の「核保有国」宣言によって脅かされる立場になった。
日本と同じ原爆被害者になる危険性と隣り合わせである。
この認識があれば、日本に対して「ざまあみろ」ではすまされない。
日本と歩調を合わせて、核禁止を主張して当然であろう。
こういう視点が、この社説には微塵もないのだ。
韓国人の価値判断は「感情8割、理性2割」と評されている。この社説では、理性の欠片も見えず、「100%感情」である。
(1)「オバマ米大統領は、米国が第二次世界大戦時に原爆投下した広島を5月27日に訪問すると決めた。米国の現職大統領が被爆地を訪れるのは初めてだ。
ホワイトハウスは、『核兵器のない世界』を目指すという意味だ、と原爆投下に対する謝罪ではないことを説明した。
世界で核兵器の惨禍を経験したのは広島と長崎の2カ所だ。死者は20万人以上で、かなりの数の韓国人も命を落とした。米大統領がこれを悼み、平和を祈ってもおかしくはない」。
このパラグラフでは一応、オバマ大統領に広島訪問の意義が、「核兵器のない世界」を祈ることにある、と理解している。
北朝鮮が核保有国を宣言した以上、北東アジアの日韓は核脅威にさらされることになった。
日韓は共通の利害関係を持つに至った。だが、このパラグラフからは、韓国がそういう認識に立っているとは思えない。
(2)「しかし、原爆の悲劇は日本の帝国主義が起こした戦争と蛮行の結果だ。
太平洋戦争は韓国人数十万人を含め、2000万人以上の命を奪った。
日本は戦争を限界まで引き延ばし、原爆投下を招いた。原爆投下後も『決死抗戦』などと言って狂気を見せた。
戦争が続いていたら、さらに数百万人が犠牲になっていただろう。
それでも日本は自分たちが起こした戦争について継続的かつ誠意ある謝罪を避けている。
安倍晋三首相は、『戦争に対する評価は異なることもある』という奇怪な言葉まで口にした」。
日本は、毎年8月15日の「終戦記念日」でも、先の大戦への反省と謝罪を述べている。
何をもって韓国は、「日本は自分たちが起こした戦争について継続的かつ誠意ある謝罪を避けている」と言えるのか。
韓国は、第二次世界大戦の被害国ではない。法的には、「日韓併合」により日本と一緒に戦った立場である。
戦後、韓国は繰り返し「戦勝国」であると主張してきた。
これは、米国などから否定されている。
この「鬱憤」も手伝って、今でも日本に対して「戦犯国」とどぎつい言葉で投げつけてくる。
オーストリアは、第二次世界大戦時、ドイツと併合されていた事実から、その戦争責任を認めて謝罪している。韓国とは、これほどの違いがあるのだ。
(3)「このように日本は、『広島』を前面に押し出して被害者面をしている。
米大統領の広島訪問で、それがまるで成功しているかのような光景を目にして、オバマ大統領が真の被害者であるアジアの各民族に対してどのように考えているのか気になった。
特に、韓国は日本の最大の被害者だ。
国を失ったからだ。
オバマ大統領には、太平洋戦争のシンボル的な場所である広島で日本の戦争責任を指摘し、その悲劇の原因を作ったのが誰なのか、その真の被害者は誰なのかを明らかにしてほしい」。
日本政府が、原爆被害について米国を糾弾したことはない。
開戦責任が日本にあるからだ。
「日本は、『広島』を前面に押し出して被害者面をしている」とは、まったくのデタラメな記事である
「日本憎し」が、こういう表現をとらせているのだろうが、社説という「高尚」な場所で、「被害者面をしている」という低級な表現は、朝鮮日報の知性のなさを物語っているのだ。
「韓国は日本の最大の被害者だ。国を失ったからだ」と主張している。
ならば問いたい。1965年の日韓基本条約が、韓国にとっては日本から賠償金を取り立てる単なる口実であったのか。
過去の日韓の歴史を清算したからこそ、日韓基本条約が結ばれたはずである。これを反故にして、現在に至っても日本批判するとは、驚くほかない。
朝鮮が、清国やロシアの属国になっていたならば、現在の韓国は存在しないのだ。
今もなお、前近代的な教育と諸制度に苦しみ続けたに違いない。「ヤンバン」(両班)の下で、徹底的に搾取され続けていたであろう。
日本は、原爆による甚大な被害を被った。だが、米国の占領下にあったことで、旧制度を一新して民主主義国へと変わった。
朝鮮が日韓併合という代償を払ったものの、「ヤンバン」の悪習を絶てたことの正当な評価をしたことがあるだろうか。
日韓併合時代を暗黒時代と切り捨てて、一切の合理的な評価を拒んでいる。
台湾は、日本の植民地時代を正当に評価しており、台湾近代化の礎石は日本がつくったとしている。
日本は、韓国と台湾に対して分け隔てなく、殖産興業政策を行ったのだ。
その結果、韓国と台湾は「中所得国の罠」に陥ることなく、順調な経済発展をしてきた。
清国やロシアの属国であったならば、現在の経済発展はあり得ない。この両国は、中所得国の罠にはまり込むリスクと隣り合わせだ。
韓国はこれほど日本批判をしながら、不思議にも日本との経済関係密接化を求めている。
『朝鮮日報』(5月11日付)は、「韓国産業相、日本企業に呼びかけ、『韓日間の投資と貿易の発展を』」と題して、次のように伝えた。
蛇蝎のように嫌っている日本に対して、韓国産業相は協力を求めている。
それほど嫌いならば、なぜ経済面での交流を呼びかけてくるのか。明らかに「二枚舌」である。
「武士は食わねど高楊枝」という日本的な美徳を持ち合わせぬようだ。
悪口雑言と経済取引は別という考えである。日本人には分からない心理状態である。
(4)「韓国産業通商資源部の周亨煥(チュ・ヒョンファン)長官が5月11日、
韓国に進出している日本企業などでつくる『ソウルジャパンクラブ』が主催した懇談会に出席し、
『回復局面にある韓日関係を足掛かりとし、縮小している両国間の投資と貿易を発展させていかなければならない』と呼びかけた。
日本はかつて韓国の輸出の40%近くを占める最大の輸出先だったが、近年は貿易規模の縮小が続く。
昨年の対日輸出額は256億ドル(約2兆7900億円)で前年比20.5%も急減し、輸出全体に占める割合も初めて5%を切った」。
韓国メディアはこれまで、対日貿易比率の低下に対して、日本への依存度が下がって「結構」、と歓迎してきた。
韓国が成長して、日本との格差が縮まったという認識である。
だが、韓国の経済成長率低下によって、日本との関係強化が必要不可欠との意識に変わってきた。
生きるためにはやむを得ない。「反日」ばかりやっていると、大変なことになる。
こういう視点が明らかに出ている。本質は「反日」に変わりない。
オバマ大統領の広島訪問を感情的に阻止したい、という面にはっきりと現れている。
北朝鮮を含めた核廃絶が、韓国にプラスになる。こういう「論理的思考」が働かない民族なのだ。
(5)「周氏は両国企業間の投資協力が有望な4分野として、
①素材・部品、
②情報通信技術(ICT)融合など新成長産業と主力産業の高度化、
③流通・物流、観光・レジャー、文化コンテンツなどのサービス業、
④インフラ建設と資源開発、スマートヘルスケア――を挙げた。
また、昨年の韓国への投資で日本は2番目に多い397億ドルだったとしながら、『両国間の協力を多角化していく上で、ソウルジャパンクラブが積極的に役割を担ってほしい』と促した」。
韓国が日本企業に対して直接投資を希望する業種は、以下の4業種である。
①素材・部品
②情報通信技術(ICT)融合など新成長産業と主力産業の高度化
③流通・物流、観光・レジャー、文化コンテンツなどのサービス業
④インフラ建設と資源開発、スマートヘルスケア
日本はこれら産業技術を、インドやASEAN(東南アジア諸国連合)へ移植したほうが、はるかに効率的であり、現地から永遠に歓迎されよう。
韓国へはいくら善意を見せても、心から喜ばれることはないのだ。そんな無駄骨を折ることは止めよう。
日本は、ことあるごとに「戦犯国」と罵られるのだ。関係の希薄化が、精神面からも日本にとってプラスになろう。
韓国企業は、研究開発投資に不熱心である。
目先の利益を求めて中長期のR&Dを怠ってきた。
それでも、ここまで成長発展してこられたのは、「小判鮫」商法で日本企業のパクリ商法でR&D不足を補ってきたからだ。
こうした認識が、韓国全体に浸透しているとは考えがたい。
韓国メディアが、今回のようにオバマ大統領の広島訪問へ反発するようでは、韓国経済を助ける意味はない。言葉は悪いが、彼らには「恩義」が通用しないのだ。
(2016年5月21日)