パレスチナにかんするラッセル法廷―ケープタウン・セッション(南アフリカ・ケープタウン)

2011-11-14 10:06:52 | 世界
先週、11月5日から7日、南アフリカのケープタウンにおいて「パレスチナにかんするラッセル法廷―ケープタウン・セッション」が開催されました。

一週間前に、アパルトヘイト法にかんする包括的な研究を著した国際法の教授で国連人権理事会の特別報告官でもあったジョン・デュガール氏が「アパルトヘイトとパレスチナ占領」というラッセル法廷の予告記事を書いていますので、拙訳ですが紹介いたします。

5日のラッセル法廷冒頭の開会挨拶には大主教デズモンド・ツツ氏の演説がありましたので、簡単な報告だけ紹介しておきます。講演全文は、追って「ラッセル法廷の勧告と命令」とあわせて報告いたします。

松元@パレスチナ連帯・札幌
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【デズモンド・ツツ氏開会挨拶の一部】
大主教デズモンド・ツツは、黒人が南アフリカのアパルトヘイト体制中に支配下にあったと同様のパレスチナ人の紛れもない虐待を目撃した占領地ヨルダン西岸のチェックポイントで耐えたときの彼の「苦痛」と「深い悲しみ」を想い起こすことから開会挨拶を語りはじめました。筆舌に尽くし難い苦難の数々を被っているパレスチナの民衆、そして迫害と受難にかんする「自らの歴史を忘れてしまったかのような」イスラエルを批判して、大主教ツツは、「神はいつも抑圧され虐げられた弱いもののそばに立っています」ということをイスラエルはすでに見失ってしまったと警告しました。

「この状況では、だれが迫害されているのでしょうか?だれが苦難を被っているのでしょうか?…いつも結局は、貧しい人々、抑圧された人々、周縁に追いやられた(疎外された)人々です。神は彼らのそばにいる、いつも、…聖地にあってパレスチナ人は苦難を受けている人だということが証明されるでしょう。」と語ったと、中東モニターの記者ハナ・チアータが紹介している。

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日本でも今、原発・放射能にかんする民衆法廷が準備されていますが、国際法の未整備ないしは抜け道を利用して「資本=権力」が跋扈している現状では、国際的な民衆法廷の活躍が民衆防護の盾として期待されます。

以下、ジョン・デュガール氏の「アパルトヘイトとパレスチナ占領」


Apartheid and the Occupation of Palestine
http://www.intifada-palestine.com/2011/11/apartheid-and-the-occupation-of-palestine/?utm_source=feedburner&utm_medium=email&utm_campaign=Feed%3A+IntifadaPalestine+%28Intifada+Palestine%29
Posted: 06 Nov 2011 04:14 AM PST

■アパルトヘイトとパレスチナ占領

ラッセル法廷が、すでに南アフリカにおける人種差別主義時代をしのいでいるイスラエルのアパルトヘイトにかんして議論するために召集されている。

2011年11月6日

ジョン・デュガール
by John Dugard

今週、パレスチナにかんするラッセル法廷は、占領されたパレスチナの領土(OPT)におけるイスラエルの行為が1973年の「アパルトヘイト犯罪の禁止および処罰にかんする国際条約」の趣旨に照らしてアパルトヘイト犯罪を構成するかどうかという問題について、その検討に入るだろう。「国際刑事裁判所(ICC)のローマ規定」に組み入れられたこの条約は、南アフリカのアパルトヘイト体制に限定されてはいない。むしろ国際法のもとでは、アパルトヘイトに類似の行為は犯罪行為とみなされている。

ラッセル法廷は、ベトナム戦争中に犯された戦争犯罪を調査するため哲学者バートランド・ラッセルによって1960年代に創始された。それが、国際法にかかわるイスラエルの違反行為を検証するために新たに復活したのだ。これは法的決定力のある法廷ではないが、イスラエルが国際刑法に違反し責任を課されるべきかどうかの審査を追及するために、異なる国々の信頼に足る陪審員によって構成される法廷である。

本質的には、ラッセル法廷は国際的な民衆の評価による国際世論の法廷である。法廷は、1973年のアパルトヘイト条約の禁止令にそれらを盛り込んだように、占領地(OPT)におけるイスラエルの行為、とりわけヨルダン西岸地区におけるこれらの行為が類似しているかどうかという問題にかんして、アパルトヘイト体制によって南アフリカで実行された1973年のアパルトヘイト禁止条約の視野で、ケープタウンにおいては証言を聴くことになるだろう。イスラエル政府は、法廷に先立って証言を求められていたが、この段階では、招待には答えていない。それゆえ、証言の大部分は必然的にイスラエル批判になるだろう。

イスラエルは、国際司法裁判所あるいは国際刑事裁判所のどちらの司法権をも受理することを拒絶しているのだから、いかなる国際法廷もその行為にたいして責任を問うことができない。ラッセル法廷は、国際世論という裁判所によって責任能力を設け、正義にかんする国際システムのこの弱点を改善しようと努めるものである。和平プロセスを妨げたりはしない。それどころか、それを促進したいものである。だが、正義なくして平和はありえない。これは、ラッセル法廷に対して批判記事を書いた(『イスラエルとアパルトヘイトという誹謗』、ニューヨークタイムズ、2011年10月31日)リチャード・ゴールドストーンが、旧ユーゴスラヴィア国際戦犯法廷の検事として人生の多くを捧げた基本原理である。

占領地(OPT)のイスラエルによる占領をアパルトヘイトのそれにたとえる根拠はないとリチャード・ゴールドストーンが主張したとき、そのように語ることは真実だろうか?こうした提案は「不正確」かつ「有害」であると彼が主張するとき、それは真実なのだろうか?あるいは、これらの提案に実体はあるのだろうか?

もちろんアパルトヘイトと占領では、その支配体制が異なっている。南アフリカのアパルトヘイト体制は、自国の民衆に対する差別を実行する国家であった。白人の南アフリカと黒人のバンツースタンへと国家の分裂を追及した。その国家保安法は、アパルトヘイトに対する抵抗を残酷に鎮圧するために利用された。他方、イスラエルは交戦中の占領として国際法で一般に認められた体制のもとでの外国領土とその民衆を支配する占領権力である。

ところが実際には、違いはほとんどない。双方の体制とも、差別、抑圧、そして領土の断片化(すなわち土地の没収)によって特徴づけられている/いた。

イスラエルは、50万人のイスラエル人入植者に味方して、西岸や東エルサレムのパレスチナ人を差別している。アパルトヘイトの「パス法」によく似ている無数の屈辱的なチェックポイントですでに証明されている移動の自由にかんするその制限。人種別居住区指定の「集団地域法」による黒人の家屋破壊によく似ているパレスチナ人家屋の破壊。似たような記憶を思い出すセキュリティ・ウォール(分離壁)建設の口実によるパレスチナ人農地の没収、などなど。実は、イスラエルは、パレスチナ人と入植者の間に分離(かつ不平等な)道路を建設していて、南アフリカのアパルトヘイト以上にやっているのである。
 
アパルトヘイト体制下の治安警察は、大がかりな拷問を行なった。イスラエルの治安部隊も同様なことをしている。ロベン島には多数の政治犯が監禁されていたが、イスラエル刑務所にはそれ以上のパレスチナ人政治犯が収容されている。

アパルトヘイト体制下の南アフリカは、白人のために黒人の土地を没収した。イスラエルは、パレスチナ人の領地にセキュリティ・ウォール(分離壁)を建設する目的と50万人の入植者のためにパレスチナ人の土地を没収してきた。双方とも国際法に違反している。

西岸を訪れる南アフリカ人の大部分は、アパルトヘイトとイスラエルが実行していることの類似性に驚かされている。ラッセル法廷にとって、1973年の「アパルトヘイト条約」および「ローマ規定」で評決されたアパルトヘイト禁止令をイスラエルが違反しているかどうかという問題にむけて正当な調査を導くためには、証拠は十分にある。  

Source: Al Jazeera

(以上、松元保昭訳)


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パレスチナ連帯・札幌 代表 松元保昭
E-Mail : y_matsu29@ybb.ne.jp



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